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9 変えた運命

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父様から話があると応接室に呼び出され、やっと普通の方の釣書が届いたのかとワクワクした。


「ボリシュ侯爵から連絡があって、ウィルソン君は、騎士学校に転入することになるそうだ。今週中には、王立学園で本人が、手続きをして転校する。突然すぎて私も驚いた。明日明後日の話だけど、彼に会いたくなければ、休んでも構わない」

と言われた。
騎士学校に行くなんて。だから学園には、来ないで準備をしていたのかな。

「ウィルソン様とは、確かに会いたくはないけど、もう関係ない人だし、私に会いに来るとは思えないわ。だって私達は円満な婚約解消ですもの」

と言えば、父様は複雑な顔をした。

「今まで謹慎していた理由は、ウィルソン君の口からの嘘や甘い言動が原因もあるが、彼の恨み節が酷かったらしいんだ。ボリシュ侯爵も自業自得だと叱っていた事さえ、逆ギレを起こし、怒りを爆発させて、リディに危害を加えるのではないかと思えたらしい」

本当に?うわぁ、怖い。全然円満解消じゃないー。想定外。

「ウィルソン様が逆ギレ?何故?彼がこんなこと二度としないとか言っておきながら、ルーナさんとデートしていたからですよね。ほんの数日前の手紙に嘘ありを指摘しただけですよね」

「リディが、ウィルソン君を追い込む為に、わざと二人の後をつけたとか、意地悪だとか、あんなに好意を押し付けてきたのに、一度の失敗を許せないなんて、心の狭い女だと言っているらしい。とても人前に出せる状態ではないと、侯爵は判断した。特に夫人が心を病んでしまっているらしく、侯爵は、ウィルソン君を屋敷に置いておくことも、危険だと思ったそうだよ。そして自分に甘いその考えを、剣で鍛え心技体を身につけて欲しいという親心だそうだ。ボリシュ侯爵もかなり参っている様子だった」

なんて面倒くさい男。

「侯爵様は、お気の毒というか申し訳ないかなという思いはありますよ。でもウィルソン様とは、街であったのは偶然ですし、私のことは陰で好きなように言って構いません、意地悪で心の狭い女でいいです。腹を立てても仕方ないので無視します。しかし、彼は、お互いの経歴に傷がつかないように、婚約解消したという意味をわかっているのでしょうか?それも、彼から提案してきたというのに…本当に彼は、自分勝手で逃げるというか、日が経つほど、最低最悪になっているのではありませんか?何故ボリシュ侯爵は、そんな精神状態のウィルソン様を学園に行かせて、転校を発表させるのですか?しれっと辞めさせ、騎士学校に入れてしまえばいいです」

と言えば、

「何度もお見舞いに通ってくるそうだよ、例の男爵令嬢…クラスメイトを伴ってらしいが。一応、私には門前払いにしているとは言っていたが、実際は見てないし、知らない。侯爵は二人が本気なら、騎士や文官として、自分自身で身を立ててから、認めるつもりだと言っていた。私にも許してくれと言われたから、頷いたし、そうなる未来に我が家は関係ないからね」

「それは真っ当な判断ですね。私は気にしてませんから、どうぞご自由にしていいです。お似合いだと思います」

「自分の手で、王立学園の最後手続きをやることで、区切りになって新しい道に進んで欲しいという、ボリシュ侯爵の親心なのかな。こちらとしても、彼の精神状態の不安定さは、リディのせいにしているから、早く切り替えて欲しいよ、本当に」

うーん。
いちいち我が家に、ウィルソン様の報告されても、確かにもうお腹いっぱいだわ。
なんか色々変な話だけど、最後別れの挨拶をクラスメイトというルーナさんとしたいだけなのか?
まさか二人で私の教室に突撃なんかしないよね?
文句言われたら、キレるよ。婚約解消を提案したのだって、浮気を継続して私に謝罪の手紙をかいていたのも、ウィルソン様本人。今回の落とし所だって両家の親が頑張ってけれたというのに、彼は、めちゃくちゃ面倒くさい~

「父様、一応言っておくなら、男爵令嬢ルーナさん、もう新しい恋人いるみたいですよ。何人も学園内に。腕絡ませて歩いてましたし、男子生徒に囲まれてました。ボリシュ侯爵も、きちんとルーナさんを調べた方が、いいのではないでしょうかね」

と言えば、

「面倒な、本当に厄介な人間を家に入れるところだった」

と父様も溜息を再び吐きながら漏らした。
ほら、私気づいて偉いでしょう!と言いたくなったが我慢した。
再び、父様に溜息を吐かれたが、もう何も言われなかった。

次の日、休もうかと考えたが、言われたら言い返せるし、私が逃げるような負けた気持ちになるのは、嫌だったから学園に登校した。馬車留で待ち伏せされたり、偶然だとしても会いたくはないので、早く学園についてしまう作戦だ。

「万が一、我が家に迎えに来るなんてことは」

ないとは思うが、私が彼の運命を変えたというのは、本能的に気づいているのではないかと思った。だって、婚約者の時は、私の事なんて右から左に流していた。婚約解消となった後からの執着というか、私が悪いという感覚が怖かった。ルーナさんと新しく進めばいいに。
精神的に、執着されてると思うと凄い怖いね。
私、これ、やっていたんだよね。凄い怖い女ですわ、私。

馬車の中、ゆっくり呼吸をして、気持ちを落ちつかせた。

初めて誰もいない教室に入る。
やる事がない。座っていてもつまらない。
ならどうする?ウィルソン様とルーナさんの再会を見に行くしかないでしょう。
ストーカーとしての性分か見たいという感情が押さえられない。隠れて見ていれば、会わなくて済む。二人のクラスは、バレてしまうから無理だし、ルーナさんは門前によく立っているとクロエ達も話していた。

まだまだ人の気配もない。
どこで観察するか、ポイントを探す為に校舎入り口をウロウロする。

「おい、新入生何をしている?」

この声は…
思わず、両手を上げてしまった。相変わらず、怖い。明らかに声が怒っているんだもの。

「お前か、最近、無断で机やロッカーに手紙を入れたりする人間は!」

えっ、ストーカー!?

「違います!そんな行動してません」

「では何故さっきからウロウロしては、隠れられそうな場所を探している?」

どのくらい見られていたのだろうか?気配を感じなかったのだけど。
後ろを振り返ると、引き込まれるような綺麗な青い目がこちらをじっと見ていた。
何度目だろう?この瞳を見たのは。
一瞬、見惚れしまった。
今、そんなことしている暇も時間もないのに!馬鹿だ、私は。

「…おはようございます、生徒会の方。私は都合がありまして、隠れなければいけません。話なら後日させてください」

と言えば、「駄目だ」と一言で会話を切った。

最悪だ。私の身の上話なんて興味もないくせに。

「説明、新入生」

見目が良くても、この人駄目だわ。
圧が強すぎる。
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