薄幸の王女は隻眼皇太子の独占愛から逃れられない

宮永レン

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第七章

5.(※)お仕置きとご褒美(2)

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  怜悧で端正な顔立ちのフェザンにそぐわず、獰猛な獣のような存在に胸がドキドキする。怖くはなかった。何度もアルエットを快楽の果てに押し上げるそれに、静かに口づける。先端はすでに濡れていて、ぬるりと離れた唇がちゅっと水音を立てる。



 フェザンはいつもどうやって自分を気持ちよくさせていたのか、思い出しながら舌先を伸ばしておずおずと舐めてみる。秘所を熱くかき乱す彼の舌遣いを思い描くと、自然と蜜壺がきゅんきゅんとうずいて新たな雫が溢れてきた。



 自分だけ気持ちよくなってはいけないと反省したばかりなのに、意識がぼうっとしかけたアルエットは、舌をさらに伸ばして筋張った剛直を舐め上げる。すると少しだけフェザンの体がぴくんと反応した気がした。



 アルエットにも触れられて特別気持ちいい部分がある。男性も同じように感じる場所があるのだろうか。

 もっと気持ちよくなってほしくて、思いきって怒張した男の塊を口に含む。あまりにも大きくて根元まですっぽりと咥えることはできない。ぎこちなく吸いついたり、舌を這わせてみたり、溢れる唾液をそのままに懸命にしゃぶりつく。



「……っは」

 フェザンの嘆息が聞こえて、ちらりと彼を見上げた。



 気持ちよくできているだろうか。自信はないが、口腔に含んだ唾液に瑞々しい男の精の味が濃くなっているということは、きっとこのまま続けてもいいのだろうと必死に口を動かした。



 彼のためにしていることなのに、この熱が自分の体を貫く所を想像するのを止められなくて、蜜口がひくひくと雫を零し続ける。さきほど絶頂を感じたばかりなのにもっと欲しいと最奥が訴えてくる。



 ――フェザンが大好き。



 言葉が発せないから蕩けるような瞳を向ければ、彼も熱っぽい目でこちらを見ていてくれる。優しい手つきで頭を撫でられ、嬉しくなったアルエットは夢中で吸いつく。じゅぽじゅぽといやらしい音を立てても恥ずかしくなかった。



「……くっ……は……っ」

 色気の混じった吐息にアルエットの気持ちも高ぶってくる。



 何もかも忘れて奉仕に耽っていると頬を撫でられ、そっと顔を離された。太く濡れ光る銀糸がアルエットの唇と剛直の先端を繋ぎ、とろんと滴る。



「これ以上は……口の中に出してしまいそうだ……」

 その掠れた囁き声にアルエットの頭の芯がゾクゾクと震えた。



「よくがんばったな。約束通り褒美をくれてやる」

 リボンを解かれ、立ち上がるように手を引かれる。



 再び窓の方を向かされ、びしょ濡れの下着を膝の辺りまで引き下ろされた。こんな体勢でも抵抗がないのは、ずっと最奥が疼いて苦しかったからだ。フェザンしかこれを鎮めてくれる人はいない。



「入れるぞ」

 何がとは聞かなくても、蜜口に押し当てられた質量でわかった。猛った剛直がずぷずぷと蜜をまといながら奥へめり込んでくる。



「は――あっ……」

 待ち望んでいた熱杭に蜜襞が打ち震え、きゅうときつく締まる。



「これが欲しかったのか?」

 そう聞かれてアルエットはこくこくと頷いた。



「熱くて蕩けてしまいそうだ。イってから時間が経つが、俺のを咥えながら興奮していたのか?」

 それには答えられなかった。でもフェザンにはそうだと答えたようなもので、彼が嬉しそうにくすっと笑うのがわかった。



「かわいすぎてたまらない」

 ずずっと蜜襞を引きずりながら隘路を戻り、再び最奥へ穿たれた熱い衝動が背筋を伝わって額に抜けていく。



「ああっ……」

 甘い愉悦に腰が崩れ落ちそうになって、必死に窓枠にしがみつく。



「そんなに締めつけられたら抜けなくなってしまう」

 ぐりぐりと剛直の先端を最奥に擦りつけられ、アルエットの瞳から感じ入った涙が零れた。



「やぁ……っ、だって、気持ちよくて、どうしていいか、わからない……」

 しゃくりあげながら答えるとぎゅっと抱きしめられる。密着した体温が伝わって幸せで満たされた。



「ああ、アルエット。愛している」

 熱い吐息が耳朶にかかり、真っ赤になっていたそこに口づけられる。



 そのまま何度も最奥を貫かれ、接合部からはとめどなく愛蜜が零れ続けた。体がぶつかる度に淫らな水音が部屋に響く。



「フェザン……フェザン。好き、大好きなの……っ、フェザン」

 遠慮のない抽送に理性を蕩かされ、切ない声で啼きながらうわごとのように彼の名前を繰り返した。



 露わになったままの揺れる乳房を鷲掴みにされ、大きくこねられる。指の間に乳嘴を挟んで抽送と一緒に揺さぶられれば、再び意識が霞み始める。



「あぁっ……やあぁぁ……っ」

 一際激しく貫かれて、目の前が光で何も見えなくなる。その瞬間にどくんと中でフェザンの精が弾けた感覚があった。



「……く、アルエット……」

 互いに息を乱しながら、最後の最後まで快楽を拾い上げるのに必死だった。一滴残らず吐精するように何度も打ち震える剛直を、奥へ引き込もうと蜜襞が攣縮を繰り返す。



 くったりと沈んでしまいそうな体をフェザンに支えてもらわなければ、その場で倒れてしまいそうだった。

 結局、お仕置きもご褒美もアルエットにとっては同列のものだった。



 まだつながったままの部分から熱い雫がたらたらと伝い落ちて、淫らに濡れ光っていた。



「フェザン……」

 ぬちゅりと粘った音を立てて剛直を引き抜かれると、蜜壺は名残惜しそうに雫を零した。



 涙でぐちゃぐちゃになった恍惚とした顔で振り向けば、彼の腕の中に囚われる。



「お望み通り、ベッドへ連れていってやる」

 耳元で囁かれ、アルエットはぱちぱちと大きな瞳を瞬かせた。



「え?」



「ご褒美は多い方が嬉しいだろう?」

 もう十分受け取った、そう答える間もなくアルエットは横抱きに抱え上げられた。



 フェザンには敵わない――



 完全に気を失うまで何度も絶頂に押し上げられ、アルエットの上気した肌には独占の証が上書きされる。

 夜が更けて、ようやく穏やかな時間が訪れたことを、銀砂の撒かれた空に浮かぶ月だけが知っていた。



 
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