薄幸の王女は隻眼皇太子の独占愛から逃れられない

宮永レン

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第十章

5.(※)執愛の溺夜(2)

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「どうしてやめるの、フェザン?」

 アルエットは肩越しに弱々しく振り返る。体が切なく疼いて、早く奥まで来てほしいとでもいうように愛蜜が幾筋も内腿を濡らしていた。



「もう、いきそうなのだろう? アルエットが自分で気持ちよくなるといい」



「ど、どういうこと?」



「今後、俺はここを留守にする時もあるだろう。そんな時アルエットが寂しくないように、俺を思い出して気持ちよくなる方法を教えてやる」



 フェザンがいない時なんて考えたくはない。だが、フェザンは多忙だ。おそらく皇帝に即位すればもっと一緒に過ごせる時間は減るだろう。



 ――彼の言うことに一理あるかもしれない。



 純粋なアルエットはこくりと頷いた。



「自分の手で胸を触って……」



「こ、こう?」

 シーツの上で押しつぶされた膨らみに手を差し込んで触れてみる。指に力を入れてみてもあまり気持ちいいとは感じなかった。しかし乳嘴を摘まんでみると微かに甘い疼きが生まれた。



「反対の手をここに当てて」

 彼に導かれるままに触れた場所が、思った以上にぬるついていてアルエットは恥ずかしくなった。



「一番感じやすい所があるはずだ」

 片方の胸を弄りながら、秘所に手を伸ばす姿は、とてつもなくはしたないのではないか。そう思うと手の動きも止まりそうになる。だが体の内側に籠った熱はくすぶったままで、どうしたらいいのかわからなくなる。



「俺に触られているところを想像してみろ」

 フェザンに言われて目を閉じたアルエットは、いつも彼にどんなふうに愛されているのか思い返してみた。



 乳嘴の根元を優しく扱いたり、先端を指の腹で擦ったりしてみると、さきほどよりも体の奥の疼きがじわじわと高まってくる。それでもまだ突き抜けるような激しい愉悦は訪れない。



「少し手伝ってやる」

 そう言われて、ぬかるんだ泉にしなやかな指が沈み込んできた。



「ひぁ……っ、あ……」

 それだけで一気に全身に甘い痺れが走って、アルエットの表情が蕩ける。



「ここが一番悦いのだろう?」

 薄い皮に包まれていた花芯を剥き出しにされ、そこに触れたら、びくんと腰が跳ね上がった。



「ほら、自分で弄ってもっと気持ちよくなれ」



「あ……やぁ……」

 硬くしこった花芯を蜜にまみれた指で撫で、フェザンがいつもしてくれるように押しつぶして優しく転がすと額の辺りがむずむずとしてきた。



「はっ……あ、あっ……」

 フェザンは蜜口に指を抜くことも押し込むこともしない。耐えられなくなったアルエットは、切ない吐息を漏らしながら自ら腰を振って彼の指を隘路に擦りつける。



 淫らで節操極まりない自分の姿をフェザンはどう思っているのだろう。不安になりながらもアルエットはもう動きを止めることはできなかった。もう限界が近づいていたからだ。



「ああぁ……フェザン、大好き……っ」

 彼の顔、声、匂い、手や舌遣いを思い出しながら、涙目のアルエットの息が上がっていく。



「ああぁぁ……っ」

 一際強く花芯を押さえると得も言われぬ痺れが体の中心を貫いて、目の前がちかちかと眩しくなった。たっぷりの愛蜜を噴き零し、動きを止めたアルエットはそのままベッドに突っ伏す。



 四肢が弛緩して、太腿がふるふると小さく震え、隘路が収斂を繰り返していた。



「一人でもうまくいけたな。いい子だ」

 フェザンに仰向けに寝かされて、乱れた髪をかき上げられ、額に口づけが落とされた。



 自分を慰める淫靡な姿を褒められて、嬉しさで胸がきゅんと疼いた。



「これで俺がいなくても大丈夫か」



「だ……め……。フェザンが一番いいの……」

 潤んだ瞳で訴えかけると、フェザンの瑠璃色の瞳に情欲の炎が宿る。



「本当にアルエットは俺を煽る天才だ」

 指に絡んだ愛蜜を舐め取った彼がアルエットの体を開くと、夜気に触れた媚肉がひくひくと震えて、淫らな雫が双丘へ流れていった。



 綻びきった蜜口に熱い亀頭が押し当てられ、血管の怒張した硬い欲望が隘路の浅い所を掻き回す。



「あ……はぁ……っ」

 自力で昇りつめた体はますます感じやすくなっていて、焦らすようなその動きに我慢できずまた腰が勝手に揺れだした。



「フェザン。あなたがほしい」

 頬を染めて懇願すると震える腰を両手で押さえられ、一気に最奥まで貫かれた。



「ひぁぁ……っ」

 甘く重怠い衝撃が背筋を上って、頭の先へ突き抜けていく。がくがくと足が震えてシーツの海をつま先が虚しく掻いた。収斂を繰り返す蜜襞が熱杭にまとわりつき、その張りつめた形まではっきりとわかるようだった。



「あ、あ……」

 唇をはくはくと動かし、遠のいた意識を取り戻す。



「挿れただけで、いったのか」

 熱を帯びた瞳で見つめられ、感じ入った涙の止まらないアルエットは小さく頷いた。



「ああ、かわいいな。アルエット、離したくない」

 かすれた声で囁かれ、戦慄いた蜜襞がまた彼を締めつける。



「う、動かないで……また、いっちゃう……」

 ぐすっと涙声で訴えると、フェザンは繋がったままアルエットの乳房を柔らかく揉みしだいた。乳嘴を優しく扱かれると、思考が蜂蜜みたいに甘く蕩けた。



「やぁ……っ、だめぇ……」

 発した言葉とは裏腹に、再び体の奥が疼いて、絶頂に押し上げられそうになる。



「アルエットの中、絡みついてきて気持ちがいい」



「いじわる……っ」

 眉を寄せてフェザンを軽く睨むものの、慈しむような笑みを向けられ、それ以上は何も言えなくなってしまう。



「もういいか? そろそろ動くぞ」



「え、待っ――」

 膝の下に手を入れられ、軽く腰が浮いたかと思ったら、ずるりと蜜襞を擦って熱杭が引き抜かれそうになる。あるものがなくなった途端に淫らな欲望が滲み出て、蜜洞を潤した。



 そこに求めていた熱が戻ってきて、媚肉が悦びで打ち震える。



「あぁ……っ」

 子宮口をぐりぐりと責められ、痺れるような愉悦に腰から完全に力が抜けた。



「深い所に……当たって……」

 緩く大きな律動が、やがて速度を上げてアルエットを高みに追い詰めていく。



「この体勢なら繋がっている所がよく見えていいだろう?」

 そう言われて目線をそちらに向ければ、濡れた和毛の奥に猛々しい雄が動いているのが見えた。根元まで深々と咥えこんだ結合部からはとろとろの蜜が溢れてくる。



「やぁ……っ、恥ずかしい……っ」

 アルエットはぎゅっと目を閉じた。



「おかしいな。欲しがったのはアルエットだろう?」

 それはそうなのだが、感じ過ぎて体がおかしくなってしまいそうでこわいのだ。せっかく一人でも気持ちよくなれる方法を教えてもらったのに、またフェザンがいないと駄目な体に塗り替えられてしまう。



「フェザン……やっぱり、フェザンじゃないと、だめ」

 アルエットは涙の膜の張った瞳で彼を見上げた。



「嬉しいことを言ってくれるな」

 足を下ろされ、抱きしめられて唇が重なると、貪るように求められた。口腔を舐め回され、舌を絡め取られる。同時に容赦なく最奥を抉られ、次々と押し寄せる愉悦の波にどうにかなってしまいそうだった。



「はぁっ、あぁ……すごい、奥にきてるの……っ」

 必死で彼につかまっていないと振り落とされてしまいそうな錯覚に陥って、汗ばんだ肌に懸命に手を添わせる。



「アルエットの中は熱くて……気持ちいい」

 フェザンの吐息が耳朶にかかって、それだけで多幸感に包まれる。



 両腕にきつく囚われたまま抽送が激しくなり、肌がぶつかり合う音が寝室に響き渡った。結合部からは愛蜜が溢れ、じゅぷじゅぷとみだりがましい音を立てる。



「あ……あ、激し……っ」

 擦り上げられる度に生まれる愉悦に飲み込まれて、愛の海に溺れてしまいそうだ。



「もっと俺の名前を呼んでくれ」

 耳元で懇願するような甘い声が滑り込んできて、夢中で彼の名を繰り返す。



「フェザン……大好き。フェザン、ああ、フェザン……っ」

 頬を寄せて目を合えば吸い寄せられるように唇が重なった。



「アルエット。俺だけのアルエット――愛している」



 ――幸せにしたい、君を。

 ――幸せになりたい、あなたと。



 絶対に離れたりしない。自分たちはきっと出会うために生まれてきたのだ。



「は……っ、ああぁ……っ」

 性急な抽送にアルエットの意識は時々途切れそうになる。



「フェザン、私、もう……っ」

 しがみついているので精いっぱいだった。快楽の大きな波がすぐそこまで押し寄せてきている。



「ああ、俺も一緒に……」

 余裕のない表情で答えたフェザンが一層激しく蜜襞を擦り上げた。



 ――一緒に。

 アルエットの胸が甘くときめいた。



 低いうめき声とともに、体の奥にどくどくと熱い飛沫が注がれるのがわかった。



「あ……っ、あああぁ……!」

 媚肉が戦慄いて、それを一滴残らず中に引き込もうと収斂を繰り返す。



 恍惚感に包まれて、手放してしまいそうな意識をフェザンにしがみついて必死で耐えた。



「愛している、アルエット」

 乱れた呼吸を整えることもせず、フェザンはそう告げると彼女の体を再び抱きしめた。



「わ、私も……愛しているわ、フェザン」

 汗で濡れた唇を重ね、言葉にならない愛を伝え合う。



「俺を家族だと言ってくれてありがとう。どうせなら賑やかな家庭を築きたいものだ」



 フェザンと、フェザンの家族と、そして――



 アルエットは彼の頬を撫でて微笑んだ。





 それまで当たり前のように行われていた戦争は、やがてクライノート帝国を中心に平和協定が結ばれ、武力による争いは徐々に減っていった。

 人々は光の時代と呼び、ディエルシカ王家の長きにわたる繁栄を祈り続けたのだった。

 
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