薄幸の王女は隻眼皇太子の独占愛から逃れられない

宮永レン

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第七章

4.(※)お仕置きとご褒美(1)

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 「その野暮ったい恰好も悪くないが、君の魅力が半減するな」

 今回はそれが功を奏したかもしれない、とフェザンは小さく笑った。その意味がわからず首をかしげるが、彼はそれ以上教えてくれなかった。



 皇太子の私室に連れられて中に入ると、控えていたブラウンのくせ毛の若い男が軽く頭を下げる。



「レオニート。今日はもう下がっていい」



「はい」

 心得たという風に口元に笑みを浮かべた色白の青年は、慇懃に一礼してすぐに部屋を出ていった。



「アルエット――」

 ソファのそばまで進み、そこに座るものだと思っていたアルエットは、突然窓辺の近くの壁に体を押しつけられ、戸惑った。



 背後から逞しい腕で抱きしめられ、目を丸くする。結い上げて露わになっているうなじに温かく柔らかなものが触れて、鼓動が跳ねる。印をつけるようにきつく吸われ、痛みすら覚えるのに、体はざわざわとその先に待つ官能を期待し火がつく。



「フェザン……」

 耳朶に舌が這い、その熱い吐息に体が昂っていく。



「ここで君を抱く」

 振り返ろうとするアルエットの耳に甘い毒のような囁き声が滑り込んだ。



 髪を結っていたリボンを解かれ、緩く崩れた髪が陽光に反射して桃色に輝く。



「でも、ここベッドもないのに――」



「反論するのか? そんな悪い子にはお仕置きをしないとな」

 ぞっとするほど熱のこもった声色に、アルエットの足が小さく震えた。



 リボンで両手首を縛られ、ワンピースの胸元をはだけられる。コルセットは簡易のもので、伸縮性のある生地のせいで彼が引き下ろしただけですぐに乳房がまろび出た。まだ昨晩の独占の証が白い肌の上に散りばめられている。



「いや……こんな所で……」

 艶めかしい行為に似つかわしくない健全な太陽の光に照らされ、アルエットの顔が羞恥で熱くなる。



「君の美しい体がはっきり見えていい。もうこうなったらやめられない」

 再び背後から強く抱きしめられ、体に押しつけられた硬く熱いものの存在が何なのか悟って、こくりと小さく唾を呑んだ。



 アルエットの両腕に挟まれた乳房は押しつぶされる形で晒されていたが、無防備な乳嘴を指で摘ままれると、喉の奥から甘い声が漏れた。



「や……だめ……」

 寝室ならまだしも、私的な空間で淫らな行為に及んでいるのは恥ずかしくて耐えられない。もし誰かが入ってきたら隠すものもなく丸見えだ。



「お願い、こんなところ見られたら……」

 他の者に合わせる顔がない。それなのに乳房を柔らかく揉みしだかれ、弾力をもって形を変えられるたびに体は熱を帯び、乳嘴は色濃くなってつんと尖っていく。



「見せつけてやればいい。俺にだけ感じている姿を、他の奴らに」



「あ、そんな……」

 硬くなった乳嘴を指で掻かれると、下腹部にうねるような熱が生まれて、思わず太腿を擦り合わせてしまう。



「足を開いて、腰を後ろに突き出せ」

 乳房を弄んでいた手が離れたかと思うとスカート部分を裾から大きく捲られて、腰の共布に挟まれる。



 下半身がフェザンの目の前に晒されているのだと思うととてつもなく恥ずかしい。下ろしたくても両手を縛られたままなのでままならない。



「は……ぁ……っ」

 観念して彼の言葉に従うと、下着の中に彼の手が入ってきた。長い指が柔らかな花弁を掻き回す。ぬるぬると濡れすべる指先が隠された秘粒をとらえ、執拗に擦り上げてきた。



「やぁっ……だめっ、ここじゃ……っ」

 白い喉を晒してアルエットは喘いだ。



「だめなら、こんなに濡れたりしないだろう?」

 秘粒をくりくりと弄り、蜜口の縁にも触れながらフェザンは笑った。熱い吐息がかかってアルエットはぞくぞくと震える。



「ほら、君にも聞かせてやる」

 ずぷりと中に沈めた長い指で蜜襞を擦られ、足がガクガクと震えた。



「あ、あ……」

 恥ずかしいのに、体の奥から愉悦がせり上がってきて、潤んだ泉からたっぷりと蜜が溢れてくる。擦られるたびに愛蜜は粘性を増して、ぐちゅぐちゅと卑猥な水音を立てた。



「フェザン……っ」

 縛られた両手をぐっと握りしめて瞳に涙の膜を張って耐えるが、フェザンから与えられる快楽に抗えない。内股に幾筋もぬるい雫が流れ落ちていく。



「もう、とろとろだな」

 指を引き抜かれ、その喪失感に蜜口がはくはくと切なく戦慄いた。



「淫らなアルエットも好きだ」

 溢れる蜜を指にからませ、それを秘粒に塗り込めるように指先で弄られる。一方で、反対の手でやわやわと胸を揉みし抱き、尖った乳嘴を摘まみ上げる。



「ふ……ぁっ……あぁ……っ」

 背中を仰け反らせたアルエットの頬を透明な涙が伝った。甘い痺れが彼女を官能の波に乗せて高みに押し上げてくる。



「や……こんな格好で、恥ずかしいの……っ」

 いやいやとかぶりを振るが、敏感な秘粒をぬるぬると撫でられ、懇願はやがて言葉を成さなくなり、甘い嬌声が零れるだけとなった。



「あん……っ、いや……っ」

 もっと強い愉悦が欲しい。それでないと体の奥に疼く熱を逃がせない。それなのに彼はギリギリのところで止めてしまう。耐えられなくなったアルエットは感じ入った涙を流しながら、自ら腰を振ってフェザンの手に秘所を擦りつけていた。



「素直でかわいい体だな、アルエット」

 熱くなった耳朶を食まれ、滑り込んでくる色気をまとった声に、頭の芯からが蕩けてしまいそうになる。



「あっああぁ……っ」

 大きく膨らんだ秘粒を激しく擦られて、乳嘴を指でこねられると、たちまちアルエットの視界にバチバチと瞬くような星が飛んだ。両脚はピンと突っ張り、背中は大きくしなる。



 甘美な愉悦の嵐が全身を駆け巡り、下着に噴き零れた愛蜜がたちまち内股から足元へ伝い落ちた。



「あ……はぁ……あぁ……」

 こわばった体から力を抜けてくると、足が震えてその場に立っているのが難しくなる。



「気持ちよかったのか? これではお仕置にならないな」

 フェザンが笑うと、耳元でさらさらと黒髪が揺れてくすぐったかった。



「ごめ……なさい。私だけ……気持ちよくなって」

 まだ息が上がってうまく話せない。



「では今度はアルエットの番だ」

 優しく体の向きを変えられ、結んだままの手をとって触れさせた先の熱量に、どきんと心臓が大きく高鳴る。



「同じように俺を気持ちよくできたら、褒美をやろう」

 褒美という言葉にアルエットの下腹部が疼いた。



「フェザンを気持ちよくしてあげたい」

 躊躇う理由は見つからなかった。むしろ彼に尽くせるならなんでもしてあげたいとさえ思う。



「手は使えないから、口で」

 そう言われてその場に膝をつくと、フェザンがトラウザーズの前を寛げた。重力に逆らって腹につくほど反り返った屹立を間近に見るのは初めてで、アルエットは息を呑んだ。

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