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32話 ★
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少しでも気を緩めると吐いてしまいそうな不快感。
母親に言いたいことをきっぱりと言った勇姿は一瞬のこと。
隼人はぐったりと疲労困憊になりながら帰宅すると、ソファに倒れ込む。
鼓膜に刺さるようなヒステリックな声がまだ聞こえてくるような気がする。
隼人は幻聴を振り払うように今に集中するように努めた。
自分の鼓動と呼吸音しか聞こえないリビング。
(そういえば一人ってこんな感じだっけ……)
なんだかいつもより部屋が広く感じられて、無性に孤独をかき立てられた。
「……やめやめ、夕飯作らないと」
忍び寄る不安を払い除けるように、隼人は食事の準備に動き出す。
疲れているし、休みたいと感じている自分がいる。
しかし、いま動かなければ更に余計なことを考えてしまっておかしくなりそうな気がした。
「カレーでいいかな、ルーは買ってあるし。えーと、人参とじゃがいもと――」
かつてはインスタント頼りの食事だったが、今では隼人も簡単なものなら作れるようになった。
隼人の料理スキルだと、まだ一つの料理に時間がかかるものの、以前に比べて大分成長していた。
たどたどしい手つきで野菜の皮を剥き、不揃いで不格好な形に切って鍋に入れていく。
余計なことに意識を向けないように、夕食の用意にだけ集中していく。
ルーを入れて鍋をかき混ぜていると玄関の鍵が開く音がした。
隼人は待ちわびていた音に、コンロの火を止めて玄関に駆け出す。
「――――修二さん、おかえりっ!」
愛する人の姿が目に入り、隼人はたまらず抱きつく。
仙崎は隼人を難なく抱き留めると、熱い抱擁で隼人を包む。
ああ、やっぱりこれだ。
ここに確かに愛がある。
彼の正体とか、細かいことはどうでもいい。
隼人は満足げに彼の胸に頬ずりして、胸いっぱいに彼の香りを吸い込む。
仙崎もそんな隼人を止めることなく、隼人の頭を撫でてキスを交わす。
「ただいま戻りました。一人にしてすみませんでした」
「ううん、大丈夫だよ。修二さんの方は解決した?」
「まあ、なんとか落とし所は見つかりました。ご迷惑をおかけしました」
「全然大丈夫、修二さんこそお疲れ様。でも本音を言えば修二さんがいなくて少し寂しかったな~」
「少しだけなんですか?」
「うそ。本当は結構寂しかった。でも頑張りました。褒めて?」
「いい子。よく頑張りました」
「えへへっ!」
二人でいちゃいちゃしながらリビングに移動すると、仙崎は先にソファに座って自分の膝の上に隼人を座らせた。
隼人は待ってましたとばかりに仙崎の首に腕を回し、ピッタリと身体を密着させる。
「今日の仕事は何事もなく終わりましたか?」
「あー、まあ大丈夫……かな。少なくとも仕事は普通に終わったよ」
隼人は仙崎の発言に言葉を濁す。
仕事は何もなかった。あったのはその後。
でも彼には知られたくないし、隼人も上手く言葉に出来るほど母親との関係を消化できていない。
何よりも大切な二人の時間にあの人の話はしたくない。
「何かあったんですか?」
「大丈夫、問題なし。それよりも願い聞いて欲しいな~」
仙崎は隼人の普段と違う様子を敏感に察知したようだが、隼人はとっさに笑顔を作って誤魔化した。
そして隼人は事前に考えていた願いを口にする。
「色々考えたんだけど、デートがしたい! ほとんど家か仕事かでどこも遊びに行けてないし……。まあ、俺の仕事のせいなんだけど」
「いいですね。確かにあまり外で楽しめてませんでした。それなら私がデートプランを考えますね。もちろん、隼人が人の目を気にせずに楽しめるものを用意しますよ」
「やった! 楽しみにしてるね!」
隼人は仙崎に抱きついて甘えると、話を完全に流すため間髪をいれずに夕飯を作ったことを切り出した。
「ご飯にしよ。俺、今日一人でカレー作ったよ。凄いでしょ」
「それは凄い。食べるのが楽しみです。でも指を切ったりしませんでしたか?」
「あー、あはは。いやー、ちょっとヒヤッとしたことはあったかな。ピーラー使ってたんだけど、じゃが芋がすべってこう手の皮ごと――」
「切ったんですか!?」
「大丈夫、大丈夫。ちょっとだけ。血は出てない」
仙崎は慌てて隼人の手を取ってじっくり観察し始める。
隼人はそんな彼の心配する顔を見て、たまらなく嬉しくなった。
俺は愛されている。
もういい加減、あの人の支配から逃げるべきだ。
彼さえ側にいてくれればそれでいい。
隼人は顔がニヤけるのを抑えて、逆に仙崎の手を取ると膝から降りてキッチンに案内する。
「俺は大丈夫だから、もうご飯食べよう。俺、お腹空いた」
「隼人、小さい傷でもきちんと消毒をしないと――」
「手は洗ったって。それよりも俺カレー作るので精一杯で、他の副菜? とか全然出来てないんだ。修二さん、なんか簡単に作れない?」
「わかりました。スープとサラダ、後フルーツも用意しましょう」
「さすが、修二さん! ありがとう!」
隼人は冷蔵庫に向かう仙崎の背に思い切り抱きついた。
そのまま逞しい背中に甘えていると、くるりと振り返ってきた仙崎に包み込まれる。
「今日は一人にさせてしまいましたから、もちろん夕食だけでなくその後もたっぷりと楽しませてあげます」
「っ――――!!」
仙崎の低く鼓膜をくすぐるような声が、隼人の腰骨に響いて腹の奥を疼かせる。
隼人は彼の底の見えない深い瞳から目が離せない。
「う、うん。……そっちも楽しみにしてる」
頬を染めてうっとりと見上げる隼人に、甘いキスが与えられた。
彼の手が身体のラインを辿って、服の下に忍び込む。
脇腹を撫でながら上がっていくと、胸の突起をなぞられる。
「んっ、んっ……、あっんっ。ふふっ、もう、駄目だよ修二さん。その気になっちゃうじゃん」
「少しだけ付き合って。隼人のここを可愛がるのが私の最高の癒やしなんですよ」
「修二さんもお疲れなんだね。いいよ。好きなだけいじって」
隼人が許可を出した途端、乳首を刺激する指の動きが激しくなる。
突起を摘まれて弾かれて、指の腹でくすぐっていく。
「んんっ! あっ、ん、はあ、あっ!」
「すっかり感度が良くなりましたね」
「んんっ、ふうっ! 修二さんがたくさん可愛がってくれるから…。あっ、ん!」
乳首への愛撫で股間がどんどん反応していく。
仙崎もそれが分かっていてあえて乳首しか触ってこない。
そこも触ってしまったら、もう行為を止められないことをお互いによく分かっているからだ。
「舐めてもいい?」
「あっ、んっ、ん、一回だけなら…」
隼人が小さく呟くと、シャツをめくられて赤くなった乳首が顔を出す。
彼を誘うように色づいて立ち上がっている突起に、隼人はぞくぞくと欲望が溢れてくる。
隼人は仙崎が舐めやすいようにシャツの端を噛んで胸を突き出した。
「ん、んんっ、んっ! んんっ!! んっ!」
「ああ、本当に可愛い。今日の疲れを忘れさせてくれます」
「んうっ! ふっ、んんっ!」
開発された乳首に、舌が這わされ舐め転がされる。
もう片方の乳首も指で刺激されて、隼人のそこは完全に勃ち上がってズボンを押し上げる。
(ヤバい……! もうイきそう!)
隼人が必死に鼻で息をしていると、仙崎は指と舌で高速で弾いてきた。
乳首に与えられる快楽は、下肢にダイレクトに伝わって我慢の限界を超えていく。
「んんっ!! ふうっ、ふうっ、んんんっ! ふうっ、んっ――――!!」
隼人は仙崎の頭を抱えながら、下着の中に白濁を溢れさせた。
陰茎に触ることなく達した衝撃に、隼人は目を大きく見開いて快感に身体を震わせた。
噛んでいたシャツは口から外れ、脱力した身体を仙崎に預ける。
「んあっ……、あっ、おれ…、いっちゃった…」
「乳首だけで上手にイけましたね。これでまた一つ、隼人は私好みの身体になりました。おめでとうございます」
仙崎は本当に嬉しそうに隼人を抱きしめてくた。
今のイき方は衝撃的だがもどかしい。
まだあそこがムズムズしているし、濡れている感覚が気持ち悪い。
だが彼の喜ぶ顔を見ると、隼人も同じ感情が湧き上がってくる。
「あは、俺がエロくなるのがそんなに嬉しいの?」
「ええ、もちろん。私だけの隼人に育ってくれて大変嬉しいです」
「もうエッチだね、修二さんは」
隼人は恥ずかしくて笑って誤魔化したが、仙崎に独占したいと想われていることに喜びを感じる。
「さあ、お腹が空きましたね。残りの品を簡単に作ってしまいましょうか」
「えっ!? あの、このまま?」
夕食作りに動き出した仙崎に、隼人は自分の状態の続きを尋ねる。
具体的には、下着の中に達してしまった後始末について。
夕食を食べたあとに行為をするにしても、今これはどうすればいいのだ。
「それも一興かと」
「ええ!? マジ?」
「気持ち悪いのなら脱いでしまって、そのまま食事というのもいいかもしれませんね」
つまり下は全裸で夕飯を食べろと!?
「もう、エッチ! でもこのまま履き続けるのはちょっと…」
隼人はもぞもぞと脱ぎ始めると、仙崎は楽しげに頷いている。
「目の保養になります。素晴らしい」
「……まあいいか」
「さっと作りますね。隼人は油が跳ねるといけないので先に座って待っていてください」
「はーい」
修二さんってかなり変態だよな、なんて思いつつキッチンを離れる。
彼が変態だったとしても、声を荒げることもなく、八つ当たりすることもなく、お金をせびることも暴力もない。
優しくしてくれて、褒めてくれて、愛してくれる。
それだけで充分すぎる。
「修二さん、好きだよ」
隼人は去り際に振り返ってウインクする。
それを見た仙崎は、微笑んで隼人の欲しい言葉を与えてくれた。
「私も愛していますよ。お腹いっぱいになったら、気持ち良いことをたくさんしましょうね」
幸福な時間を過ごした翌朝。
隼人は突き放したはずの母親の邪悪さを知ることになる。
母親に言いたいことをきっぱりと言った勇姿は一瞬のこと。
隼人はぐったりと疲労困憊になりながら帰宅すると、ソファに倒れ込む。
鼓膜に刺さるようなヒステリックな声がまだ聞こえてくるような気がする。
隼人は幻聴を振り払うように今に集中するように努めた。
自分の鼓動と呼吸音しか聞こえないリビング。
(そういえば一人ってこんな感じだっけ……)
なんだかいつもより部屋が広く感じられて、無性に孤独をかき立てられた。
「……やめやめ、夕飯作らないと」
忍び寄る不安を払い除けるように、隼人は食事の準備に動き出す。
疲れているし、休みたいと感じている自分がいる。
しかし、いま動かなければ更に余計なことを考えてしまっておかしくなりそうな気がした。
「カレーでいいかな、ルーは買ってあるし。えーと、人参とじゃがいもと――」
かつてはインスタント頼りの食事だったが、今では隼人も簡単なものなら作れるようになった。
隼人の料理スキルだと、まだ一つの料理に時間がかかるものの、以前に比べて大分成長していた。
たどたどしい手つきで野菜の皮を剥き、不揃いで不格好な形に切って鍋に入れていく。
余計なことに意識を向けないように、夕食の用意にだけ集中していく。
ルーを入れて鍋をかき混ぜていると玄関の鍵が開く音がした。
隼人は待ちわびていた音に、コンロの火を止めて玄関に駆け出す。
「――――修二さん、おかえりっ!」
愛する人の姿が目に入り、隼人はたまらず抱きつく。
仙崎は隼人を難なく抱き留めると、熱い抱擁で隼人を包む。
ああ、やっぱりこれだ。
ここに確かに愛がある。
彼の正体とか、細かいことはどうでもいい。
隼人は満足げに彼の胸に頬ずりして、胸いっぱいに彼の香りを吸い込む。
仙崎もそんな隼人を止めることなく、隼人の頭を撫でてキスを交わす。
「ただいま戻りました。一人にしてすみませんでした」
「ううん、大丈夫だよ。修二さんの方は解決した?」
「まあ、なんとか落とし所は見つかりました。ご迷惑をおかけしました」
「全然大丈夫、修二さんこそお疲れ様。でも本音を言えば修二さんがいなくて少し寂しかったな~」
「少しだけなんですか?」
「うそ。本当は結構寂しかった。でも頑張りました。褒めて?」
「いい子。よく頑張りました」
「えへへっ!」
二人でいちゃいちゃしながらリビングに移動すると、仙崎は先にソファに座って自分の膝の上に隼人を座らせた。
隼人は待ってましたとばかりに仙崎の首に腕を回し、ピッタリと身体を密着させる。
「今日の仕事は何事もなく終わりましたか?」
「あー、まあ大丈夫……かな。少なくとも仕事は普通に終わったよ」
隼人は仙崎の発言に言葉を濁す。
仕事は何もなかった。あったのはその後。
でも彼には知られたくないし、隼人も上手く言葉に出来るほど母親との関係を消化できていない。
何よりも大切な二人の時間にあの人の話はしたくない。
「何かあったんですか?」
「大丈夫、問題なし。それよりも願い聞いて欲しいな~」
仙崎は隼人の普段と違う様子を敏感に察知したようだが、隼人はとっさに笑顔を作って誤魔化した。
そして隼人は事前に考えていた願いを口にする。
「色々考えたんだけど、デートがしたい! ほとんど家か仕事かでどこも遊びに行けてないし……。まあ、俺の仕事のせいなんだけど」
「いいですね。確かにあまり外で楽しめてませんでした。それなら私がデートプランを考えますね。もちろん、隼人が人の目を気にせずに楽しめるものを用意しますよ」
「やった! 楽しみにしてるね!」
隼人は仙崎に抱きついて甘えると、話を完全に流すため間髪をいれずに夕飯を作ったことを切り出した。
「ご飯にしよ。俺、今日一人でカレー作ったよ。凄いでしょ」
「それは凄い。食べるのが楽しみです。でも指を切ったりしませんでしたか?」
「あー、あはは。いやー、ちょっとヒヤッとしたことはあったかな。ピーラー使ってたんだけど、じゃが芋がすべってこう手の皮ごと――」
「切ったんですか!?」
「大丈夫、大丈夫。ちょっとだけ。血は出てない」
仙崎は慌てて隼人の手を取ってじっくり観察し始める。
隼人はそんな彼の心配する顔を見て、たまらなく嬉しくなった。
俺は愛されている。
もういい加減、あの人の支配から逃げるべきだ。
彼さえ側にいてくれればそれでいい。
隼人は顔がニヤけるのを抑えて、逆に仙崎の手を取ると膝から降りてキッチンに案内する。
「俺は大丈夫だから、もうご飯食べよう。俺、お腹空いた」
「隼人、小さい傷でもきちんと消毒をしないと――」
「手は洗ったって。それよりも俺カレー作るので精一杯で、他の副菜? とか全然出来てないんだ。修二さん、なんか簡単に作れない?」
「わかりました。スープとサラダ、後フルーツも用意しましょう」
「さすが、修二さん! ありがとう!」
隼人は冷蔵庫に向かう仙崎の背に思い切り抱きついた。
そのまま逞しい背中に甘えていると、くるりと振り返ってきた仙崎に包み込まれる。
「今日は一人にさせてしまいましたから、もちろん夕食だけでなくその後もたっぷりと楽しませてあげます」
「っ――――!!」
仙崎の低く鼓膜をくすぐるような声が、隼人の腰骨に響いて腹の奥を疼かせる。
隼人は彼の底の見えない深い瞳から目が離せない。
「う、うん。……そっちも楽しみにしてる」
頬を染めてうっとりと見上げる隼人に、甘いキスが与えられた。
彼の手が身体のラインを辿って、服の下に忍び込む。
脇腹を撫でながら上がっていくと、胸の突起をなぞられる。
「んっ、んっ……、あっんっ。ふふっ、もう、駄目だよ修二さん。その気になっちゃうじゃん」
「少しだけ付き合って。隼人のここを可愛がるのが私の最高の癒やしなんですよ」
「修二さんもお疲れなんだね。いいよ。好きなだけいじって」
隼人が許可を出した途端、乳首を刺激する指の動きが激しくなる。
突起を摘まれて弾かれて、指の腹でくすぐっていく。
「んんっ! あっ、ん、はあ、あっ!」
「すっかり感度が良くなりましたね」
「んんっ、ふうっ! 修二さんがたくさん可愛がってくれるから…。あっ、ん!」
乳首への愛撫で股間がどんどん反応していく。
仙崎もそれが分かっていてあえて乳首しか触ってこない。
そこも触ってしまったら、もう行為を止められないことをお互いによく分かっているからだ。
「舐めてもいい?」
「あっ、んっ、ん、一回だけなら…」
隼人が小さく呟くと、シャツをめくられて赤くなった乳首が顔を出す。
彼を誘うように色づいて立ち上がっている突起に、隼人はぞくぞくと欲望が溢れてくる。
隼人は仙崎が舐めやすいようにシャツの端を噛んで胸を突き出した。
「ん、んんっ、んっ! んんっ!! んっ!」
「ああ、本当に可愛い。今日の疲れを忘れさせてくれます」
「んうっ! ふっ、んんっ!」
開発された乳首に、舌が這わされ舐め転がされる。
もう片方の乳首も指で刺激されて、隼人のそこは完全に勃ち上がってズボンを押し上げる。
(ヤバい……! もうイきそう!)
隼人が必死に鼻で息をしていると、仙崎は指と舌で高速で弾いてきた。
乳首に与えられる快楽は、下肢にダイレクトに伝わって我慢の限界を超えていく。
「んんっ!! ふうっ、ふうっ、んんんっ! ふうっ、んっ――――!!」
隼人は仙崎の頭を抱えながら、下着の中に白濁を溢れさせた。
陰茎に触ることなく達した衝撃に、隼人は目を大きく見開いて快感に身体を震わせた。
噛んでいたシャツは口から外れ、脱力した身体を仙崎に預ける。
「んあっ……、あっ、おれ…、いっちゃった…」
「乳首だけで上手にイけましたね。これでまた一つ、隼人は私好みの身体になりました。おめでとうございます」
仙崎は本当に嬉しそうに隼人を抱きしめてくた。
今のイき方は衝撃的だがもどかしい。
まだあそこがムズムズしているし、濡れている感覚が気持ち悪い。
だが彼の喜ぶ顔を見ると、隼人も同じ感情が湧き上がってくる。
「あは、俺がエロくなるのがそんなに嬉しいの?」
「ええ、もちろん。私だけの隼人に育ってくれて大変嬉しいです」
「もうエッチだね、修二さんは」
隼人は恥ずかしくて笑って誤魔化したが、仙崎に独占したいと想われていることに喜びを感じる。
「さあ、お腹が空きましたね。残りの品を簡単に作ってしまいましょうか」
「えっ!? あの、このまま?」
夕食作りに動き出した仙崎に、隼人は自分の状態の続きを尋ねる。
具体的には、下着の中に達してしまった後始末について。
夕食を食べたあとに行為をするにしても、今これはどうすればいいのだ。
「それも一興かと」
「ええ!? マジ?」
「気持ち悪いのなら脱いでしまって、そのまま食事というのもいいかもしれませんね」
つまり下は全裸で夕飯を食べろと!?
「もう、エッチ! でもこのまま履き続けるのはちょっと…」
隼人はもぞもぞと脱ぎ始めると、仙崎は楽しげに頷いている。
「目の保養になります。素晴らしい」
「……まあいいか」
「さっと作りますね。隼人は油が跳ねるといけないので先に座って待っていてください」
「はーい」
修二さんってかなり変態だよな、なんて思いつつキッチンを離れる。
彼が変態だったとしても、声を荒げることもなく、八つ当たりすることもなく、お金をせびることも暴力もない。
優しくしてくれて、褒めてくれて、愛してくれる。
それだけで充分すぎる。
「修二さん、好きだよ」
隼人は去り際に振り返ってウインクする。
それを見た仙崎は、微笑んで隼人の欲しい言葉を与えてくれた。
「私も愛していますよ。お腹いっぱいになったら、気持ち良いことをたくさんしましょうね」
幸福な時間を過ごした翌朝。
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