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第六章 オンラインゲームとギルメン募集
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オンラインの場は、俺のような世間から後ろ指を指される人種にとって、気軽に交流できる数少ないコミュニティの一つだ。
ロクに働いていない経歴、ふわふわした、地に足がついていないと評される価値観。……そういった、例え自分は気に入っていたとしても、世間の皆様方は厳しい目で見てくる諸々のことを隠すことができる。
勿論、完全に隠すことは不可能だが……リアルで会うよりは遥かに隠せるし、ネットだからこそ、自分と似たマイナーな価値観の人間と出会うこともできる。
俺と同じような所謂本物の「社会不適合者」は、現実世界だとそれほど大勢の人間とつるまないことが多いし、自分のことを隠したがる。それは、日本だろうと異世界だろうと変わらない。
出会うことは望み薄だろうが……。そんなことを思いながら、俺はゲームの中のギルドへ向かった。
「ようこそ。当ギルドは初めての方ですよね?」
ギルドに入ると、NPCのギルド嬢が声をかけてきた。
ハイエルフの村らしくとても美しい女性だったが、服は質素で下着もなく、毛皮を加工した乱雑な作りの薄い服を着ていた。
おおよそのやり方は把握していたので、テキストを流し読みして早速ギルドボードを見に行く。
ギルドボードは、古っぽい木製の板に魔法で光る文字が書かれた大きな板のことだ。
人族の町ではもっと普通らしいが、ハイエルフの町では演出とリアリティ追及でこんなデザインになっているらしい。
ギルドボードは二つあり、一つには今受注できるクエストが、もう一つにはパーティメンバー募集やプレイヤーが依頼したクエストが表示されている。
ようするに、片方はゲーム運営会社が提供するクエストや公式イベントの告示が表示され、もう片方はプレイヤー同士のコミュニケーションに使うものとなっている。
俺が今いるこのハイエルフの村は、ゲーム中でも人気にある場所の一つだから、コミュニティは結構盛んだ。パーティメンバー募集だけでもかなりの数がある。だから、選択肢はかなり多い。
「うーん、難しいな」
そこまでオンラインゲームに精通しているわけじゃないので、イマイチ勝手が分からない。
「とりあえず、紹介文に初心者歓迎って書いてあるところだけ見るか」
フィルタをかけて再検索すると、かなりの数がヒットする。
このゲームのギルドボードの面白い特徴は、パーティのチャットを、パーティ未加入の人間でも直近のコメント五つまで遡って閲覧できるというところだろう。
これで、入る前に予めパーティの雰囲気を見て、馴染めるか確認できるというわけだ。
例えばこのハイエルフ騎士団01というパーティ。
直近のコメントの日付をチェックすると、一番新しいコメントの日付が一週間前、一番古いものが一月前と表示されている。
パーティとしての活動は最小限で、最近はこのゲームをしていない人や、普段は別のメンバーと冒険している人が多そうなパーティだ。
俺もそこまでがっつりゲームをするつもりはないから、このくらいの緩い空気感はありがたい。……が、入ったところで得るものは少なそうだ。
次に、お姉さん愛好会。
名前でお察しの通り、異世界転移・転生者を中心としたキモオタの巣窟だ。
今はゲームに新しく実装された、イベントのメインヒロインの腑がエロい! という話で盛り上がっているようだ。加工した写真が次々とチャットに貼られていく。
俺としてはこんな丸見えのところでこういう話をするのは気が引ける。それと、このキャラは個人的には足がイイと思う。褐色の健康的な肌とヘソのエロスも理解はできるが、スラっとした足の魅力には遠く及ばないと思う。だから、シュミも合いそうにない。
「全く、これだからヘソフェチは……」
お腹に抱き着きたいとでも思っているのだろうか? 足を撫でたい俺より変態だ。――いや。俺の方が変態か?
まぁいいか。
次だ、次。
暇法(火魔法)イズ・ジャスティス。
クセのあるネーミングセンスだ。日本語の発音による言葉遊びだから、これも日本人に違いない。
このパーティの特徴は、それぞれが名前を呼びあう最後に「氏」をつけることだ。
「〇〇氏、このアイテム持っているでござるか?」
「××でござるね? 勿論でござるよ、△△氏!」
……みたいなチャットが続いている。
争いはなく、かなり平和で和やかなパーティのようだ。しかし如何せん、ジェネレーションギャップが凄い。
残念ながら俺はその「氏」や「ござる」を使う時代とは世代が違う。
「ちょっと、混ざりにくいなぁ……」
一瞬入るか悩んだが、俺は別のパーティを探すことにした。
他にもオタサーの姫が存在するパーティ、ガチガチのコアユーザーで構成された職人肌のパーティ、リアルの話題が絶えない、出会い厨だらけのパーティー……色々なパーティが目に付くが、入りたいパーティは見当たらない。
改めて考えると、俺には属性と呼べるようなものがない。
ライトなオタクってくらいで、ガチガチのオタクにはついていけないし、リア充や陽キャと呼ばれるような人種でもない。どのパーティに入っても浮いてしまいそうだ。
「何とか話題を合わせるか? ……混ざれそうなのはお姉さん愛好会くらいかなぁ」
直近のコメントを見るにヘソフェチの巣窟にしか見えないが、俺がフェチを偽装するか、少数派の足フェチが少しはいることに賭けてみるか……。
「うーん……」
迷いながら画面とにらめっこしつつ「更新」をクリックすると、新しく「あなたにおススメのパーティ」が表示された。
それは「エルフ弓道部」という名の、結成して間もない、まだリーダーしかいないパーティだった。
「おススメポイント……種族・ジョブが同じ ログインポイントが近い」
パーティの下に、そう表示されていた。
この世界のゲームにはしばしば、ログインポイント……すなわち、ゲームをしている時の「住所」を参照にするシステムがあったりする。勿論オンオフ可能だが、どうやらこのパソコンはオンになっていたようだ。
現代日本なら間違いなく危険性を問われるサービスだろうが、こちらの世界は剣と魔法のファンタジー世界だ。冒険者を生業としている輩も多く、彼ら彼女らは宿屋を拠点とする。日本とは異なり、住所が割れる危険性は皆無に等しい。
そんなわけで、このゲームにもサービスの一環としてログインポイントの参照が搭載されていた。
一か八か、このパーティに入るのはどうだろう?
近場なら世間話のネタも合うだろうし、結成したてのパーティなら初心者も多く、混ざりやすいだろう。
「……アリだな」
他に入りたいパーティもないし、ひとまずここに潜り込んでみよう。
さっそく、俺は加入アイコンをクリックした。
ロクに働いていない経歴、ふわふわした、地に足がついていないと評される価値観。……そういった、例え自分は気に入っていたとしても、世間の皆様方は厳しい目で見てくる諸々のことを隠すことができる。
勿論、完全に隠すことは不可能だが……リアルで会うよりは遥かに隠せるし、ネットだからこそ、自分と似たマイナーな価値観の人間と出会うこともできる。
俺と同じような所謂本物の「社会不適合者」は、現実世界だとそれほど大勢の人間とつるまないことが多いし、自分のことを隠したがる。それは、日本だろうと異世界だろうと変わらない。
出会うことは望み薄だろうが……。そんなことを思いながら、俺はゲームの中のギルドへ向かった。
「ようこそ。当ギルドは初めての方ですよね?」
ギルドに入ると、NPCのギルド嬢が声をかけてきた。
ハイエルフの村らしくとても美しい女性だったが、服は質素で下着もなく、毛皮を加工した乱雑な作りの薄い服を着ていた。
おおよそのやり方は把握していたので、テキストを流し読みして早速ギルドボードを見に行く。
ギルドボードは、古っぽい木製の板に魔法で光る文字が書かれた大きな板のことだ。
人族の町ではもっと普通らしいが、ハイエルフの町では演出とリアリティ追及でこんなデザインになっているらしい。
ギルドボードは二つあり、一つには今受注できるクエストが、もう一つにはパーティメンバー募集やプレイヤーが依頼したクエストが表示されている。
ようするに、片方はゲーム運営会社が提供するクエストや公式イベントの告示が表示され、もう片方はプレイヤー同士のコミュニケーションに使うものとなっている。
俺が今いるこのハイエルフの村は、ゲーム中でも人気にある場所の一つだから、コミュニティは結構盛んだ。パーティメンバー募集だけでもかなりの数がある。だから、選択肢はかなり多い。
「うーん、難しいな」
そこまでオンラインゲームに精通しているわけじゃないので、イマイチ勝手が分からない。
「とりあえず、紹介文に初心者歓迎って書いてあるところだけ見るか」
フィルタをかけて再検索すると、かなりの数がヒットする。
このゲームのギルドボードの面白い特徴は、パーティのチャットを、パーティ未加入の人間でも直近のコメント五つまで遡って閲覧できるというところだろう。
これで、入る前に予めパーティの雰囲気を見て、馴染めるか確認できるというわけだ。
例えばこのハイエルフ騎士団01というパーティ。
直近のコメントの日付をチェックすると、一番新しいコメントの日付が一週間前、一番古いものが一月前と表示されている。
パーティとしての活動は最小限で、最近はこのゲームをしていない人や、普段は別のメンバーと冒険している人が多そうなパーティだ。
俺もそこまでがっつりゲームをするつもりはないから、このくらいの緩い空気感はありがたい。……が、入ったところで得るものは少なそうだ。
次に、お姉さん愛好会。
名前でお察しの通り、異世界転移・転生者を中心としたキモオタの巣窟だ。
今はゲームに新しく実装された、イベントのメインヒロインの腑がエロい! という話で盛り上がっているようだ。加工した写真が次々とチャットに貼られていく。
俺としてはこんな丸見えのところでこういう話をするのは気が引ける。それと、このキャラは個人的には足がイイと思う。褐色の健康的な肌とヘソのエロスも理解はできるが、スラっとした足の魅力には遠く及ばないと思う。だから、シュミも合いそうにない。
「全く、これだからヘソフェチは……」
お腹に抱き着きたいとでも思っているのだろうか? 足を撫でたい俺より変態だ。――いや。俺の方が変態か?
まぁいいか。
次だ、次。
暇法(火魔法)イズ・ジャスティス。
クセのあるネーミングセンスだ。日本語の発音による言葉遊びだから、これも日本人に違いない。
このパーティの特徴は、それぞれが名前を呼びあう最後に「氏」をつけることだ。
「〇〇氏、このアイテム持っているでござるか?」
「××でござるね? 勿論でござるよ、△△氏!」
……みたいなチャットが続いている。
争いはなく、かなり平和で和やかなパーティのようだ。しかし如何せん、ジェネレーションギャップが凄い。
残念ながら俺はその「氏」や「ござる」を使う時代とは世代が違う。
「ちょっと、混ざりにくいなぁ……」
一瞬入るか悩んだが、俺は別のパーティを探すことにした。
他にもオタサーの姫が存在するパーティ、ガチガチのコアユーザーで構成された職人肌のパーティ、リアルの話題が絶えない、出会い厨だらけのパーティー……色々なパーティが目に付くが、入りたいパーティは見当たらない。
改めて考えると、俺には属性と呼べるようなものがない。
ライトなオタクってくらいで、ガチガチのオタクにはついていけないし、リア充や陽キャと呼ばれるような人種でもない。どのパーティに入っても浮いてしまいそうだ。
「何とか話題を合わせるか? ……混ざれそうなのはお姉さん愛好会くらいかなぁ」
直近のコメントを見るにヘソフェチの巣窟にしか見えないが、俺がフェチを偽装するか、少数派の足フェチが少しはいることに賭けてみるか……。
「うーん……」
迷いながら画面とにらめっこしつつ「更新」をクリックすると、新しく「あなたにおススメのパーティ」が表示された。
それは「エルフ弓道部」という名の、結成して間もない、まだリーダーしかいないパーティだった。
「おススメポイント……種族・ジョブが同じ ログインポイントが近い」
パーティの下に、そう表示されていた。
この世界のゲームにはしばしば、ログインポイント……すなわち、ゲームをしている時の「住所」を参照にするシステムがあったりする。勿論オンオフ可能だが、どうやらこのパソコンはオンになっていたようだ。
現代日本なら間違いなく危険性を問われるサービスだろうが、こちらの世界は剣と魔法のファンタジー世界だ。冒険者を生業としている輩も多く、彼ら彼女らは宿屋を拠点とする。日本とは異なり、住所が割れる危険性は皆無に等しい。
そんなわけで、このゲームにもサービスの一環としてログインポイントの参照が搭載されていた。
一か八か、このパーティに入るのはどうだろう?
近場なら世間話のネタも合うだろうし、結成したてのパーティなら初心者も多く、混ざりやすいだろう。
「……アリだな」
他に入りたいパーティもないし、ひとまずここに潜り込んでみよう。
さっそく、俺は加入アイコンをクリックした。
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