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追放された編

第2話 魔術師アオキ

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こうして始まった俺らの旅。

俺、戦士、遊び人、僧侶。四人の旅。

ある時は酒場で語らい、

「オイ、ハヤクキュウリョウハラエ!ソレトプロテイン!」

「ほらよっ!」

まったく、給料だけじゃ飽き足らずプロテインまでなんてな。
今日だけで二箱目だぞ。

……金貨百枚入ってただろうか。

「フンッ。ッテコレジャタリナイ!」

やばい、あいつは給料が足りないと尋常じゃなく怒り狂うのだ。
……最初は金貨十枚だったはずなんだが、いったいなぜ百枚払うことになっているのか。

「待ってくれ。おい、遊び人。この前の『カイフクデキナイソウ』の代金はまだか!」

俺が三日間森をさまよいながら探し、集めあげた大量の『カイフクデキナイソウ』。
まだ代金をもらってない。遊び人、なぜ毎度毎度延滞するのか……。

「ッチ、鳥頭のくせに覚えていましたか。はい、どうぞ。」

ずっしりとした感触。これは金貨百枚あるな。
……『カイフクデキナイソウ』は百個渡したはず。

まあ、いいだろう。

「おうっ!ほらよっ!」

「コレデゼンガクカ。……ッテマダタリナイ!」

「おい、給料は金貨百枚!!!!!!」

「ネアゲ。プロテインタリナカッタ。」

「はあ?おい!!!!!!」

「……シカタナイ。コレデイイデスヨ。」

「って、最初に渡した金貨袋!!!!!」

またある時は町で勝負をし、

「おい、てめえらどの面引っ提げてやがる。ここらの顔役が誰なのかわかっているんだろうな?」

僧侶が荒れ狂ってるな。

「申し訳ございません!!!!!!」

さっき戦いを挑んできた男がきれいに首を垂れている。

「私の服が汚れたじゃないか……。金貨千枚。」

僧侶の服、そんな価値があったのか……。俺も気を付けないと。

「そ、そんな……。」

顔面蒼白になる男。

「すごいぞ僧侶!戦わずに勝っている!!!!!お前は最高だ!!!!!!」

戦いに貢献した仲間をねぎらう。しっかりしたコミュニケーションは集団で生活する以上必須だ。

「さっさとあんたらのボスを出してきな!!!!!あら~、ほめてくれてありがと~。」

古代遺跡にだって冒険に行った。

「うおーーー!!!!!」

ここが超古代文明があったという遺跡……。

「ココニアレガ……。」

戦士は呆然と立ったままだ。

「おい!!!!!!戦士!!!!!!やったな!!!!!!」

「ア、アア……。」

「全部持ってくよっ!あんたらもぼさっとしてないで手伝いな!!!!!」

僧侶はどこからともなく大勢の人を呼び寄せ、遺跡から大量に物を運んでいる。

「どっかから来たんだ?こいつら。」

「気にしなくていいのよ~。」

まあ、いいか。

「素晴らしい……。すべて我が家に飾りたい……。」

遊び人は遺跡をキラキラした目で見つめている。

「おい!!!!!!それは私のものだ!!!!!!」

「なんだ、持ってかれちまったのか?」

遊び人は運ばれている物の中から小さな小物を取り出す。

「ああ……。これが古代のアーティファクト……。

僧侶の勧めに従ってここに来てよかった。
みんな満足している。

「うおーーー!!!!!冒険最高!!!!!!」

いつも金欠だったが、それ以上に大切なものをたくさん手に入れた。

それは仲間だ。

「戦士!!!!!!」

「プロテイン、クウ。」

「遊び人!!!!!!!」

「はいはい。」

「僧侶!!!!!!」

「おいっ!支払いが足りてねえぞ!!!!!!あら~。」

「俺らには何かが足りねえ……。なんだと思う?」

「スベテ。」

「知能だね。」

「何かしら~。」

「仲間だ!!!!!!!」

おもむろに樽をひっくり返す。

「出てこい!!!!!!」

新しく仲間が欲しいと思って、ギルドの掲示板で募集していたのだ。

「よろしくお願いします。」

「魔法使いのアオキだ!!!!!!今日からパーティーに入る!!!!!!」

魔術師としてのレベルはトップに近いらしい。
「たしかにアオキ様は優秀です。ただ……。」
「雇うぞ!!!!!」
何かを言おうとした受付の人を静止して、俺はこいつを雇った。

「王立魔術学園を学年トップの実力で今年卒業しました。至らない点もあると思いますが、一緒に冒険をしたいと考えています。」

「おうっ!まだ慣れないと思うがよろしくな!!!!!!」

「はい。」

 ひそひそ

「ヤバクナイ?」

「……ああ。魔法使いは常識と実力が反比例しているからな。王立魔術学園といえばこの国トップレベルの魔術師養成所だ。その首席ともなれば相当にやばいやつだろう。」

「へぇ、面白いわあ。社会の厳しさを教えてあげましょう。うふふ。」

「ダイジョウブナノカ?」

「私を誰だと思っているの?あんな子なんて手玉にとれるわよ。もっとやばい奴を操ってきたんだから。」

「ふん、その自信がいつまで続くかな。」

「……どういうことかしら?」

「これだから成り上がり者は……。いいか、王立魔術学園の成績上位層は本来王室の管理下に置かれるんだ。野に放すとろくなことをしないからな。それがどういうわけだか野放しになっている。それも“王立魔術学園の首席”がだ。なにか大変な事実が隠されているんだよ。」

「……貴族のボンボンさんのお話はよく分かったわ。さすが青い血の生まれね、生まれた時から最高機密を知っているってわけかしら?まあ、“王立魔術学園の首席“がやばいことは分かったわ。だけど、私たち平民にはなにがやばいのか伝わってないの。」

「……オレモシラナイ。ウワサテイドニハキイタコトガアルガ。」

「へえ、弁護士は知っているみたいだよ?やっぱり君みたいな薄汚いやつにはそういう情報が回らないのかな。」

「あら~、いい加減にしてくれる?じゃねえとぶっ潰すぞ。」

「未来の公爵にそんなこと言うんだ。ふーん。」

「フタリトモオチツイテ。イマハオハナシヲシマショウ。」

「……そうね。」

「はいはい。」

「デ、ナニガヤバインダ?」

「ニシノ平野の大崩落を覚えているかい?」

「まあ。あの時は稼がせてもらったわ~。」

「ホケンガイシャニヤトワレテ、スゴイイソガシカッタ。」

「実はあれ、サトウって魔術師が起こしたんだ。」

「ダレ?」

「王立魔術学園第1045期、席次第三位の“奈落のサトウ”だよ。」

「聞いたことないわ。」

「クワシクオシエテクレ。」

「“奈落のサトウ”はだいぶネガティブな性格で、暇さえあれば嘆いているような性格だった。」

「ホウ。」

「続けてちょうだい。」

「ある日、彼が木の下を歩いていると毛虫が落っこちてきたんだ。」

「……ちょっと待って、なんでそんなことまでわかるの?」

「王立魔術学園はありとあらゆる場所が常に監視カメラで見張られているんだ。魔術師たちが起こす奇行は貴族たちにとっていい娯楽だからね。」

「趣味わるっ!」

「やれやれ、こういう高尚な娯楽がわからないなんて、人生を損しているとしか言いようがないよ。」

「マアマア、ソレデサトウハドウシタノデス?」

「ニシノ平原を崩落させた。」

「は?」

「チョットマッテクダサイ、マジュツシノキコウハボクモヨクシッテイマス。シカシソレデハアマリニロンリニツナガリガナイ。」

「詳しく言うと、サトウは毛虫が存在しない場所に行きたかったんだ。それでニシノ平原の地下に巨大な地下空間を作ってそこに避難したと。」

「ホウ、マジュツシナラアリエマスネ……。」

「……確かにそういうことを考えそうな魔術師はいる。だが、それでもニシノ平原を崩落させるなんて。」

「崩落したのは結果だよ。サトウはそれだけの実力があった。」

ん?なんだあいつら。アオキの挨拶を聞いていないみたいだな。

「おいっ、皆こっちを向け!!!!!!ほら挨拶!!!!!!」

「みなさん、よろしくお願いいたします。」

「ヨロシク……。」

「……。」

「あら~。」

「じゃあ早速出発だ!!!!!」

やっぱりパーティーは五人だよな。
俺、戦士、遊び人、僧侶、そして新しく入った魔法使いのアオキ。

これからもっともっと冒険が楽しくなりそうだ!!!!!
まあ、出費ももっともっと増えそうだが……。
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