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アルド・カガリ
覚悟
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「このまま逃げきれると思うか?」
「無理でござろうな。戦闘機より速く走りでもしない限り……」
聖法で強化しているとはいえ、馬車のスピードはせいぜい自動車レベル。
対して、追いかけてくるであろうエルさんは空を飛ぶ飛行機そのものだ。
「どこかで馬車を捨てましょう。ユウ様の力で私達も走れます。エルが追いついてもバラバラに逃げれば……」
「サーラ氏は囮になる気でござろう?」
灯花に指摘されてサーラさんは押し黙る。
「……私が捕えられても、お二人が逃げおおせてしまえばこちらの勝ちです。もし人質にされても無視してしまえば……!」
「ユウ氏~。捕まったサーラ氏を無視できるでござるか?」
「無理だ!」
女の子を身代わりにして逃げるなんてできるわけがない。
「ただ、固まらずに逃げるのは拙者も賛成でござる。つまり……」
「僕と灯花、サーラさんとアルネリアちゃんの二手に分かれる……だろ?」
灯花が頷く。
「もっと正確に言うなら、拙者たちがエル氏と戦う……でござるな」
「! ……む、無理です! 相手は龍王樹の加護を受けた人界最強の騎士ですよ!?」
「加護とやらは拙者も貰ってるでござるし、なによりこっちにはユウ氏がいるでござる」
そもそも、エルさんの目的が僕だったらサーラさんが無視される可能性だって充分にありえる。
だったらエルさんを縛り上げるか眠らせるかで行動不能にしてから逃げた方が、全員が助かる確率は高いはずだ。
「ダメだと言っても聞く気はありませんよね?」
灯花と僕は頷く。
「……わかりました。でも、勝算はあるんですか?」
「当然でござる! 作戦としては……」
サーラさんと灯花が話し込む横で、アルネリアちゃんが不安そうな顔をしている。
「大丈夫だよ。灯花は強いし、僕も聖法と魔法で戦うから」
「ユウお兄さま……」
アルネリアちゃんは泣きそうな顔で服の裾をキュッと握っている。
そのとき。
「ん?」
頭上を何かが通り過ぎたのか、一瞬暗くなった。
「……来ました。ユウ様、トウカさん……ご武運を」
緊張感のあるサーラさんの言葉を聞いて馬車を止め、最低限の荷物を持って降りる。
「あ、コレを渡すの忘れてた」
僕は鞄の中から、あるものをサーラさんに渡す。
「二人が目的地に到着したときに使ってほしい。灯花と僕がすぐに向かうから」
「これは……。はい、私が責任を持ってお預かりします!」
ここからが正念場。
この世界が嫌いなわけじゃないけど、僕たちには帰る場所がある。
「灯花、準備はいいか?」
「いつでもオッケーでござるよ!」
エルさんは強いけど、こっちには見せてない手の内と灯花がいる。
「それじゃあ……"速身"!」
勝って家に帰るんだ!
「無理でござろうな。戦闘機より速く走りでもしない限り……」
聖法で強化しているとはいえ、馬車のスピードはせいぜい自動車レベル。
対して、追いかけてくるであろうエルさんは空を飛ぶ飛行機そのものだ。
「どこかで馬車を捨てましょう。ユウ様の力で私達も走れます。エルが追いついてもバラバラに逃げれば……」
「サーラ氏は囮になる気でござろう?」
灯花に指摘されてサーラさんは押し黙る。
「……私が捕えられても、お二人が逃げおおせてしまえばこちらの勝ちです。もし人質にされても無視してしまえば……!」
「ユウ氏~。捕まったサーラ氏を無視できるでござるか?」
「無理だ!」
女の子を身代わりにして逃げるなんてできるわけがない。
「ただ、固まらずに逃げるのは拙者も賛成でござる。つまり……」
「僕と灯花、サーラさんとアルネリアちゃんの二手に分かれる……だろ?」
灯花が頷く。
「もっと正確に言うなら、拙者たちがエル氏と戦う……でござるな」
「! ……む、無理です! 相手は龍王樹の加護を受けた人界最強の騎士ですよ!?」
「加護とやらは拙者も貰ってるでござるし、なによりこっちにはユウ氏がいるでござる」
そもそも、エルさんの目的が僕だったらサーラさんが無視される可能性だって充分にありえる。
だったらエルさんを縛り上げるか眠らせるかで行動不能にしてから逃げた方が、全員が助かる確率は高いはずだ。
「ダメだと言っても聞く気はありませんよね?」
灯花と僕は頷く。
「……わかりました。でも、勝算はあるんですか?」
「当然でござる! 作戦としては……」
サーラさんと灯花が話し込む横で、アルネリアちゃんが不安そうな顔をしている。
「大丈夫だよ。灯花は強いし、僕も聖法と魔法で戦うから」
「ユウお兄さま……」
アルネリアちゃんは泣きそうな顔で服の裾をキュッと握っている。
そのとき。
「ん?」
頭上を何かが通り過ぎたのか、一瞬暗くなった。
「……来ました。ユウ様、トウカさん……ご武運を」
緊張感のあるサーラさんの言葉を聞いて馬車を止め、最低限の荷物を持って降りる。
「あ、コレを渡すの忘れてた」
僕は鞄の中から、あるものをサーラさんに渡す。
「二人が目的地に到着したときに使ってほしい。灯花と僕がすぐに向かうから」
「これは……。はい、私が責任を持ってお預かりします!」
ここからが正念場。
この世界が嫌いなわけじゃないけど、僕たちには帰る場所がある。
「灯花、準備はいいか?」
「いつでもオッケーでござるよ!」
エルさんは強いけど、こっちには見せてない手の内と灯花がいる。
「それじゃあ……"速身"!」
勝って家に帰るんだ!
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