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暴露と覚醒

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「ユウ様は大丈夫でしたか?」
「現実に頭が追いつかないから一度少し休む……だそうでござる」
 ユウを部屋まで送って、中で二言三言ふたことみことほど会話をした。
 オタクとして異世界に心躍こころおどらせる気持ちを失ったわけじゃない。けど、ユウのここまで落ち込んだ姿を見ていると浮かれた気分になんてなれなかった。
 それに、今日聞いたサーラ氏の話には所々気になる点がいくつかある。
 ハディでテッサ氏に聞いた過去の戦争の曖昧あいまいな部分を魔族側で王族でもある二人に聞いておきたい。
拙者せっしゃも色々と聞きたいことがあるのでござるが……」
「なんでしょう?」
「ユウ氏が誰かに利用される為に呼ばれたと言っていたでござるが、拙者が呼ばれた理由はなんなのでござろうか?」
 ユウには"魔王と同形の魂"という理由があった。
 では拙者は?
 やはり背中の紋章もんしょうが関係している?
「トウカさんが呼ばれた理由はわかりません」
 サーラ氏が言葉を続ける。
「聖王樹の紋という特別な力を持っているのは分かりましたが、それが目当てで呼ばれたならば今自由の身であることが意味不明です」
「それは……拙者が聖女としてこの世界に呼ばれたわけではないと?」
「そうです。そもそも聖女自体、見つければ保護される存在ではあっても増やしたり……ましてや異世界から呼び付けたりすることはまずありえないかと」
 宗教的な理由、例えば教団の威光いこうを取り戻す為……というのも考えにくい。実際、カガリ氏が騎士団から捜索そうさくされている時に逃走を手伝ってくれた信者もいたわけで……。
「一番の理由は法力マナの問題です。一人を異世界から呼ぶだけで途方もない量の法力マナが必要なのに、二人なんて呼べるわけがありません」
「つまり、拙者は愛の力で無理やりユウ氏に着いて来たと?」
 それを聞いたサーラ氏が冷たい目であきれる。
「そんな馬鹿な話、聞いたことも読んだことも無いですね」
「拙者の無限の愛なら可能かと思ったでござるが……」
 その一言に何故かサーラ氏の表情が固まった。


(最近のご主人様はおかしか……)
 リィルは仕事・・の準備をしつつそう思っていた。
 たしかにご主人様は綺麗な女性に目が無か。それでもって問題が起きてもお金で解決しようとするあやうい人。
 でも五人の奥様方をへだてなく愛する愛妻家あいさいかで、ウチのような孤児こじにも働き口を用意してくれるふところの広い人。
「あのインチキくさい商人が"お近付きの印に"ってご主人様に渡しよった宝石箱がくさかよね……」
 今思えばそのあとやね。変化が起きたのは。
 それまで1回行ったことがあるだけやったあの・・姉妹の元へ頻繁ひんぱんに行くようになって、報酬ほうしゅうとは別にみつぎ物までするように。
 商会の運営に支障ししょうをきたさない範囲はんいやけん特に問題は無かけど……。
「いや、ウチにくれるお小遣こづかいが減っとるのは大問題やし」
 それに、ウチの召喚術で護衛を引き離してどうするつもりなん?
 正面から告白?ご主人様らしいっちゃご主人様らしいけど、そんな方法であの氷みたいな占い師をもの・・にできるとは思えんっちゃんね……。
 そんなことを頭で考えつつ、手は召喚陣とその反転陣をそれぞれ半分につなげたものを正確に描き続ける。
 場所はとある食事処しょくじどころ一角いっかく
 占い師の姉妹が必ず来る常連客じょうれんきゃくという情報を得て、開店前の店内にしのび込み陣を仕掛けているところだ。
 護衛とおぼしき帯剣していた少年を一時的に菖蒲蜥蜴アヤメトカゲの巣に飛ばして、そのすきにご主人様が……って、本当にどうするんやろ?
 上手くいく公算こうさんの低そうな計画に疑問を感じながらも、それが主人の命令なら従う。
「……よし。あとはここを通る瞬間に発動するだけやね」
 準備を終えたリィルは誰にも見つからないようにそそくさと店から出ていった。
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