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第一章 迷宮へと挑む
第二十二話 森のオオカミ
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この討伐は主に三つのグループに分けられた。
灰の巨人を主力とする部隊とニスキツルを主力とする部隊。さらに蟻の死体を処理する部隊。ただし、ニスキツルには監視らしき灰の巨人のメンバーも同行していた。
エタは大別すると死体を処理する部隊だ。
当初の仕事は討伐した大白蟻の数を数える……要するに雑用である。戦力になるわけがないので妥当と言えば妥当な配置だった。
正直に言えば死骸を見るのも少しつらいが、大白蟻にせよ、大黒蟻にせよほとんどの死骸が原型をとどめないほど破壊されているので生き物には見えないためなんとか直視できていた。
ちなみに蟻が徹底的に破壊されるのは別に憎まれているからではない。単純にしぶとすぎるのだ。
何しろ手足をもがれても、腹を潰されても平気で這いまわる。頭と胸、腹を潰してようやく死んだと確信できるのだ。
しかし中にはきれいに原型をとどめている死骸があった。
ミミエルに殺害された巨大蟻である。それらは的確に急所である喉と胸の間をくりぬいたように破壊されていた。
緑の森を駆け抜ける巨大な白い蟻。それらは普段土中、あるいは樹木のうろの中に身を潜めていることも多い。
しかし今は虫よけの香草をいぶした煙によって追い立てられていた。混乱した蟻たちは本能的に三匹で固まりながら逃走を続けていた。そのうちの一匹に獣のごとく頭上から降り注ぐ影があった。
ミミエルである。
骨を砕く掟を持った大木槌を飛び降りた勢いのままに振るい、大白蟻の首あたりを叩き潰す。その行為が残りの二匹の敵意を引いたのか反転してミミエルに襲い掛かる。
すぐさま大木槌を携帯粘土板にしまい、外套に仕込んである黒曜石のナイフを二つ、目にも見えぬほどの速さで投擲する。あやまたず蟻の眉間に突き刺さり、二匹の大白蟻は苦しむように身をよじった。
あのナイフは掟ではなく、普通の武器だが彼女が使うと恐ろしい武器に見えていた。
巨大蟻たちは負傷しても気にせず行動しているように見えるが、眉間、または触角を攻撃するとなぜか苦しむ。灰の巨人に長く所属する冒険者は経験則として知っていた。
だから手慣れた冒険者はまず触覚や眉間を攻撃する。無論、そこを正確に攻撃できるのはかなりの熟練が必要である……はずだった。
身をよじっている大白蟻に再び大木槌の一撃で後頭部を打った。しかしまだ息があった大白蟻の傷口に刀身の長い黒曜石のナイフを突き刺し、確実にその命を奪った。
残りの一匹が再びこちらに突進してくるのを見て取ると、今度は銅の槌を携帯粘土板から取り出し、下から地面もろとも掬い上げるような一撃をお見舞いし、喉から胸のあたりを抉られた大白蟻は一撃で絶命した。
灰の巨人を主力とする部隊とニスキツルを主力とする部隊。さらに蟻の死体を処理する部隊。ただし、ニスキツルには監視らしき灰の巨人のメンバーも同行していた。
エタは大別すると死体を処理する部隊だ。
当初の仕事は討伐した大白蟻の数を数える……要するに雑用である。戦力になるわけがないので妥当と言えば妥当な配置だった。
正直に言えば死骸を見るのも少しつらいが、大白蟻にせよ、大黒蟻にせよほとんどの死骸が原型をとどめないほど破壊されているので生き物には見えないためなんとか直視できていた。
ちなみに蟻が徹底的に破壊されるのは別に憎まれているからではない。単純にしぶとすぎるのだ。
何しろ手足をもがれても、腹を潰されても平気で這いまわる。頭と胸、腹を潰してようやく死んだと確信できるのだ。
しかし中にはきれいに原型をとどめている死骸があった。
ミミエルに殺害された巨大蟻である。それらは的確に急所である喉と胸の間をくりぬいたように破壊されていた。
緑の森を駆け抜ける巨大な白い蟻。それらは普段土中、あるいは樹木のうろの中に身を潜めていることも多い。
しかし今は虫よけの香草をいぶした煙によって追い立てられていた。混乱した蟻たちは本能的に三匹で固まりながら逃走を続けていた。そのうちの一匹に獣のごとく頭上から降り注ぐ影があった。
ミミエルである。
骨を砕く掟を持った大木槌を飛び降りた勢いのままに振るい、大白蟻の首あたりを叩き潰す。その行為が残りの二匹の敵意を引いたのか反転してミミエルに襲い掛かる。
すぐさま大木槌を携帯粘土板にしまい、外套に仕込んである黒曜石のナイフを二つ、目にも見えぬほどの速さで投擲する。あやまたず蟻の眉間に突き刺さり、二匹の大白蟻は苦しむように身をよじった。
あのナイフは掟ではなく、普通の武器だが彼女が使うと恐ろしい武器に見えていた。
巨大蟻たちは負傷しても気にせず行動しているように見えるが、眉間、または触角を攻撃するとなぜか苦しむ。灰の巨人に長く所属する冒険者は経験則として知っていた。
だから手慣れた冒険者はまず触覚や眉間を攻撃する。無論、そこを正確に攻撃できるのはかなりの熟練が必要である……はずだった。
身をよじっている大白蟻に再び大木槌の一撃で後頭部を打った。しかしまだ息があった大白蟻の傷口に刀身の長い黒曜石のナイフを突き刺し、確実にその命を奪った。
残りの一匹が再びこちらに突進してくるのを見て取ると、今度は銅の槌を携帯粘土板から取り出し、下から地面もろとも掬い上げるような一撃をお見舞いし、喉から胸のあたりを抉られた大白蟻は一撃で絶命した。
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