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秋葉夕雲

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第二章

93 暗中模索

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「時間だ。答え合わせをしよう」
 石板を回収する。ますますテストっぽいのでなんとなく笑ってしまう。
 テストの結果は全員がノーフォーク農法は有効ではないという結論に達している。
 ちょっと感動だ。数週間前まで読み書きができなかった奴らがこんなにも優秀になるとは。
「オッケー。ひとまず全員正解。各人の回答を見ていくぞ」
 まずは風子からだ。ちなみに文字は普段の謎ポエムとは違い普通の文章だ。
「まずクローバーはいらないか。マメ科食物の窒素固定がオレたちには必要ない……少なくともあまり必要がないことを覚えてたんだな。丸をやろう」
「我らが前「はい次」
 ドードーのポエムに付き合ってたら時間が足らない。
「誠也のは……小麦も大麦も持って無いからか。はい正解……ていうかお前畑見たことあったっけ?」
「見えなくてもwwの種類はww」
 匂いとかで作物の種類を判断してるのかな? この二人は考えればすぐにわかることを書いただけだ。もちろん自分で考えて書いたのならそれは褒められるべきだけどな。
 千尋と小春は……うん……すごい。
 石板に文字がびっしり書かれている。大体書いてある内容も一緒だ。凄いのは小麦や大麦などが手に入った場合についても考察してあることか。こいつらちょっと優秀すぎじゃない? 万が一裏切った時が怖いな。そうならないようにちゃんと好かれるようにしないとな。
「仮に大麦や小麦があったとしても大型の家畜がいないから家畜用の飼料を必要としない点。これは確かにそうだけどオレたちはいざとなればクローバーとかも食べられるからな。まったくの無用ってわけじゃないぞ」
「それじゃあ不正解?」
「考えは間違ってないからな。満点じゃあないかな? ただ二人とも冬に食べ物が必要ないって書いてあるけど、どうしてだ?」
「「だって私たちは冬眠するから」」
 二人の声がハモる。千尋はギラリと鋭い視線を小春に送っている。やっぱり競争心が無いわけじゃないのか。その方が健全化もな。
 そう。
 オレたちは地球人類では絶対にできない冬眠という行為を普通に行える。そのため一年中起きなければいけない方がデメリットが多い。冬眠していれば冬の間何も食べなくていいならそっちの方が得だし、多分魔物は低温で動く能力が低い。
 一年中働く必要があるノーフォーク農法は現状に合わない。けどノーフォーク農法が無価値だってわけじゃない。
 もっと南に行って暖かくなれば一年中起きていられるようになるかもしれないし、何らかの事情で年がら年中働かなくてはならなくなるかもしれない。
 そういう時はノーフォーク農法が必要になる可能性はある。
 知識を蓄えておいて損はない。この世界に来てから何度も痛感したことだ。

「ねえ、それじゃあどんな農業をするのがいいの?」
 小春からいい質問がきた。その答えは、

「わからん!」

「へ?」
「え~?」
「wwない?」
「前に進め?」
 堂々と言い切ってやった。や、ホントにわかんないんだよ。
「農業に答えなんかないよ。その時に最善だと思ったことをするだけだ」
 ちょっと肥料を工夫するだとか、道具を作るとか、そんなもんでどうにかなるほど農業は甘くない。もちろん改良はできるし、やらなければならない。そしてそれはオレ一人の力ではどうにもならない。
「だからお前らも考えろ。何か案があれば実行するか、オレに言ってくれ。できるだけ力を貸すからお前らもオレに力を貸せ」
 自分が頼りになるリーダーを目指せるほど立派だとは思えない。もちろん下っ端にはそう振舞うかもしれないけど、こいつらみたいな幹部候補にはある程度自分で考える能力がないとオレの仕事が一向に減らない。
 そのうえでできうる限り人から好かれなくちゃならない。トップの辛いとこだな。
 オレは有能な怠け者を目指したい。だっていつまでも働きたくないからな! 以前の騒動で学んだけどワンマンはしんどいよまじで。孤高のリーダーってかっこいいかもしれないけど実際にはしんどいだけだ。
 頼りつつ、頼られつつ。それくらいの距離感がいい気がする。
「まあこれで全員土地と作物の関連と重要性はよくわかったな? というわけで新しいルールだ。土地を荒らしてはいけない。そして道具、食料などを壊してはいけない。わかったな?」
「「「「はーい」」」」
 超シンプルなルールだけど、だからこそ受け入れられるはずだ。これで三つのルールがことになるかな。
「なら、一つ質問いいかな~?」
「何だ? 千尋」
「紫水はどこでそんな知識を知ったの?」
 あ。
 そりゃまあ気になるよな。今までもしかして気になってたけどあえて聞かなかったのか? だとしたら意外と空気が読める奴なのか?
 オレが地球からの転生者だって正直に答えてもいいけどな。もしもこいつらが裏切った時、あるいは他の魔物に洗脳される魔法なんかをかけられた場合口を滑らせる可能性はゼロじゃない。
 例えばアリヅカコオロギなどの好蟻性昆虫は蟻を騙すフェロモンなどを発生させるし、蟻に寄生したりして蟻などの昆虫を操る生物も実在する。
 警戒はするべきだ。
「それについては、聞くな。以上だ。何か質問は?」
「「「「ない」」」」
 全員何かを察したのか一斉に口をつぐんだ。
「聞くなとは言ったけど疑問を持つなとは言わない。オレの知識が正しいとは限らないし、正確じゃないかもしれない。そういうのも含めて考えろってことだ」
「「「「わかった」」」」
 はきはきと何の疑問も持っていなさそうに答えた。
「よっしゃ。それじゃ飯にすんぞ。飯。」
 全員が一斉に歓声を上げた。単純だよなこいつら。
 料理の腕前は特に小春が上達している。飯を作りながら鼻歌を歌ったりとなんだかそれこそ人間っぽい。ま、オレにはそんな経験はないから漫画とかドラマでそんなことがあったかなあと思うだけだけど。

 地球かあ。懐かしいな。帰りたいかと聞かれるとそりゃあ、
(帰りたいに決まってるだろ)
 何しろ日本は安全だ。まっとうに暮らしていれば突然魔物が襲ってくることもないし、冬に凍えることもない。それだけでも十分なのに飯が美味い!
 オレも大分改善したとはいえまだまだ塩さえない。ひもじいことこの上ない。そこら辺のコンビニの方がまだ品ぞろえが豊富だろう。
 今更日本に帰れるなんてこれっぽっちも思っていないけど。
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