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第一章
37 探し物は何でしょう
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どたばたしていたので遅くなったがクッキングタイム。
まず蛇肉は鳥に近い味でそれなりに美味いが、かなり固い。牛筋みたいだ。言い換えれば柔らかくなりさえすれば食べられそうだ。
寄生虫も怖いし蛇の肉はきちんと火を通そう。
柔らかくするにはやはり酒と生姜かな。余っていたシードルの蓋を開けるといい香りが……? あれ?このシードルちょっと硫黄臭い? なんでだろう?
そういえばワインを発酵させるときに硫黄化合物が発生することがあるって聞いたことがある。そのせいかな? ある程度の硫化物は保存の為に必要なはず。単離に成功すれば必要な酵母だけを選別して硫黄臭さを軽減できるかな。まあそれでも美味くなるようには思えないけどな。
ではシードルとすりおろした生姜に蛇肉を漬けこんでいく。すりおろす時に辛生姜の宝石を削ってしまって、がりっという嫌な音が聞こえてしまった。魔物の植物の難点だな。渋リンの果実には宝石が含まれてないからいいけど、辛生姜には思いっきり可食部に宝石があるから注意しないと。果実酒と蛇が合うのかどうかは不安だがまあ何事も挑戦だ。
次はさっき見つけた自然薯あるいは長芋らしきものを使おう。ちなみに魔物ではなく普通の植物で、恐らく自生していたんだろう。齧ってみても変な味はしないから問題ないはず。
まず自然薯をすりおろす。すりおろす時初めは皮を少し残しておくのがポイントだ。生の自然薯を持つと痒くなるらしいからな。蟻もそうなるのかはわからないけど。
ちなみに自然薯はおろし金ですりおろすよりもすり鉢で細かくこすったほうが美味くなるのだが―――この時点でわかるはずもなかった。おのれの無知を嘆くべし。
で、半分くらいすりおろしたらあとは一口大に切っておく。異世界初の芋だ。大事に食べよう。栽培したほうがいいかなとも思ったがやっぱり食欲には勝てなかったよ。そのうちもう一本見つかるだろ。
んじゃ、まずはすりおろした自然薯を焼いていく。生でも食べれるらしいけど出汁でのばしたりした方が食べやすいので今回はやめておく。お好み焼きのようになるのが理想的だな。
「これは失敗?」
どことなくシュンとした蟻の顔が目に入る。やっぱり油なしで焼こうとしたのがまずかったらしい。かなり焦げてしまった。触感もお好み焼きというよりは餅に近い。粉がなければそうなるか。
「まあこれはこれで食べれるだろう。次いこう、次」
次に干したネズミ肉を煮立たせた鍋に入れる。かつお節代わりに干し肉を入れてみたが美味いだろうか? 魔物には骨がないからガラスープすらできない。はあ。
「うーん、ちょっとコクはあるか。ないよりましかな」
昆布とかカツオでもあればな。
じゃあ蛇肉を……ん?
「おおい!? 何で倒れてんだ!? 生姜に触ったのか!?」
「ごめんチャイ」
料理するのも命懸けだな。数分酒に漬けたくらいでは辛生姜の魔法は有効らしい。やっぱり危険物だぞ、この生姜。
今度は生姜が付かないように慎重に鍋に肉と自然薯を入れる。自然薯や長芋のいいところは煮ても焼いても生でも食べられることだ。いつかはバリエーション豊かな食生活を取り戻したいものだ。
多少煮詰まってきたら蛇の血と輪切りにした生姜を入れて味を整える。……整ってるのかなあ?
後はじっくりコトコト煮込んでいく。よし! 自然薯と蛇肉の生姜煮の完成!
日はとっくに暮れ、辺りは静かに、川のせせらぎが聞こえるだけ。異世界の夜は地球では想像もできないほど暗く、密やかだ。
夜空の星の瞬きは今まで見たことがないほど強く、地球の月よりも小さな月が青く輝いている。星を眺めるなんていつ以来だろう? 勝利の後にはなお輝きを増しているようだ。
天文学には今まで興味がなかったが一度修めてみるのもいいだろう。季節や自分の位置を確かめる方法としては有効なはず。
まあ今は先のことを考えるのはやめておこう。
「では蛇への勝利と第二の巣奪還を記念して乾杯!」
「かんぱーい」
酒じゃなくて水だけどな。ちょっとしまらない。
自然薯のおろし焼きは、焦げてることを除けば悪くない。餅みたいで味よりも食感を楽しむ食べ物だな。……醤油か塩が欲しい。
醤油か塩かソース。
せうゆかしおをください。誰か恵んでください。お願いします。渋リンいくらでもあげるから。
はあ、ないものねだり終了。
自然薯と蛇肉もいい感じ。いやこれ食べた感じは長芋だな。見た目はどっちかっていうと自然薯だけど。
なんにせよ上手くできた。長芋のホクホク感はよく出てるし、蛇も食べやすくなっている。辛生姜のピリッとした辛味も上手く活かせている。
実際に食べてはないけどな。あ、そういえばオレの料理こいつらに食べさせちゃった。オレが直接料理してないからいいか。
「ね~ね~」
無視しよう。
「ね~ってば~」
嫌な予感しかしない。
「無視しないでよ~」
……………………………………………………(青虫を嚙み潰したような顔)。さっきからテレパシーで話しかけてくる蜘蛛に注意を向ける。繋がりのようなものを切ればテレパシーによって話しかけられることはないけど……。
「何の用だ?」
「りょうり食べたい」
言うと思った。つーかこいつもオレの思考読んだのか? オレが思考を漏らしただけか。
「りょうりちょうだ~い」
「お前が食いまくるからなかなか料理作れないんだよ! 作ってもいいけど今日夕飯抜きになるぞ!」
「いいよ~~」
予想外の反応。この大喰らいが飯抜きでもいいとは。
食材が節約できるだけましだな。蛇肉をこっちに持ってこさせるか。できれば蛇肉を保存したいな。
燻製とか? ……塩なしでか。ここでも塩か。
なんでも願いを叶える魔人がいたら塩をくれって言いそうだ。どっかに落ちてないかな。
まず蛇肉は鳥に近い味でそれなりに美味いが、かなり固い。牛筋みたいだ。言い換えれば柔らかくなりさえすれば食べられそうだ。
寄生虫も怖いし蛇の肉はきちんと火を通そう。
柔らかくするにはやはり酒と生姜かな。余っていたシードルの蓋を開けるといい香りが……? あれ?このシードルちょっと硫黄臭い? なんでだろう?
そういえばワインを発酵させるときに硫黄化合物が発生することがあるって聞いたことがある。そのせいかな? ある程度の硫化物は保存の為に必要なはず。単離に成功すれば必要な酵母だけを選別して硫黄臭さを軽減できるかな。まあそれでも美味くなるようには思えないけどな。
ではシードルとすりおろした生姜に蛇肉を漬けこんでいく。すりおろす時に辛生姜の宝石を削ってしまって、がりっという嫌な音が聞こえてしまった。魔物の植物の難点だな。渋リンの果実には宝石が含まれてないからいいけど、辛生姜には思いっきり可食部に宝石があるから注意しないと。果実酒と蛇が合うのかどうかは不安だがまあ何事も挑戦だ。
次はさっき見つけた自然薯あるいは長芋らしきものを使おう。ちなみに魔物ではなく普通の植物で、恐らく自生していたんだろう。齧ってみても変な味はしないから問題ないはず。
まず自然薯をすりおろす。すりおろす時初めは皮を少し残しておくのがポイントだ。生の自然薯を持つと痒くなるらしいからな。蟻もそうなるのかはわからないけど。
ちなみに自然薯はおろし金ですりおろすよりもすり鉢で細かくこすったほうが美味くなるのだが―――この時点でわかるはずもなかった。おのれの無知を嘆くべし。
で、半分くらいすりおろしたらあとは一口大に切っておく。異世界初の芋だ。大事に食べよう。栽培したほうがいいかなとも思ったがやっぱり食欲には勝てなかったよ。そのうちもう一本見つかるだろ。
んじゃ、まずはすりおろした自然薯を焼いていく。生でも食べれるらしいけど出汁でのばしたりした方が食べやすいので今回はやめておく。お好み焼きのようになるのが理想的だな。
「これは失敗?」
どことなくシュンとした蟻の顔が目に入る。やっぱり油なしで焼こうとしたのがまずかったらしい。かなり焦げてしまった。触感もお好み焼きというよりは餅に近い。粉がなければそうなるか。
「まあこれはこれで食べれるだろう。次いこう、次」
次に干したネズミ肉を煮立たせた鍋に入れる。かつお節代わりに干し肉を入れてみたが美味いだろうか? 魔物には骨がないからガラスープすらできない。はあ。
「うーん、ちょっとコクはあるか。ないよりましかな」
昆布とかカツオでもあればな。
じゃあ蛇肉を……ん?
「おおい!? 何で倒れてんだ!? 生姜に触ったのか!?」
「ごめんチャイ」
料理するのも命懸けだな。数分酒に漬けたくらいでは辛生姜の魔法は有効らしい。やっぱり危険物だぞ、この生姜。
今度は生姜が付かないように慎重に鍋に肉と自然薯を入れる。自然薯や長芋のいいところは煮ても焼いても生でも食べられることだ。いつかはバリエーション豊かな食生活を取り戻したいものだ。
多少煮詰まってきたら蛇の血と輪切りにした生姜を入れて味を整える。……整ってるのかなあ?
後はじっくりコトコト煮込んでいく。よし! 自然薯と蛇肉の生姜煮の完成!
日はとっくに暮れ、辺りは静かに、川のせせらぎが聞こえるだけ。異世界の夜は地球では想像もできないほど暗く、密やかだ。
夜空の星の瞬きは今まで見たことがないほど強く、地球の月よりも小さな月が青く輝いている。星を眺めるなんていつ以来だろう? 勝利の後にはなお輝きを増しているようだ。
天文学には今まで興味がなかったが一度修めてみるのもいいだろう。季節や自分の位置を確かめる方法としては有効なはず。
まあ今は先のことを考えるのはやめておこう。
「では蛇への勝利と第二の巣奪還を記念して乾杯!」
「かんぱーい」
酒じゃなくて水だけどな。ちょっとしまらない。
自然薯のおろし焼きは、焦げてることを除けば悪くない。餅みたいで味よりも食感を楽しむ食べ物だな。……醤油か塩が欲しい。
醤油か塩かソース。
せうゆかしおをください。誰か恵んでください。お願いします。渋リンいくらでもあげるから。
はあ、ないものねだり終了。
自然薯と蛇肉もいい感じ。いやこれ食べた感じは長芋だな。見た目はどっちかっていうと自然薯だけど。
なんにせよ上手くできた。長芋のホクホク感はよく出てるし、蛇も食べやすくなっている。辛生姜のピリッとした辛味も上手く活かせている。
実際に食べてはないけどな。あ、そういえばオレの料理こいつらに食べさせちゃった。オレが直接料理してないからいいか。
「ね~ね~」
無視しよう。
「ね~ってば~」
嫌な予感しかしない。
「無視しないでよ~」
……………………………………………………(青虫を嚙み潰したような顔)。さっきからテレパシーで話しかけてくる蜘蛛に注意を向ける。繋がりのようなものを切ればテレパシーによって話しかけられることはないけど……。
「何の用だ?」
「りょうり食べたい」
言うと思った。つーかこいつもオレの思考読んだのか? オレが思考を漏らしただけか。
「りょうりちょうだ~い」
「お前が食いまくるからなかなか料理作れないんだよ! 作ってもいいけど今日夕飯抜きになるぞ!」
「いいよ~~」
予想外の反応。この大喰らいが飯抜きでもいいとは。
食材が節約できるだけましだな。蛇肉をこっちに持ってこさせるか。できれば蛇肉を保存したいな。
燻製とか? ……塩なしでか。ここでも塩か。
なんでも願いを叶える魔人がいたら塩をくれって言いそうだ。どっかに落ちてないかな。
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