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2章

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取り残された私にアイリとレイカが駆け寄ってきたが、2人の後ろには戸惑った顔をしたパートナーの男性がいたので、4人に悪いと言い1人で会場を出た。


会場前にあるガーデンの噴水の脇に腰を下ろして一息着いていた時、
「御機嫌よう。カリナさん。」

とマリアが現れた。

なんだかデジャブだな。私のことつけてきたのかな。
と冷静に考えながら
『御機嫌よう、マリア様』
と返した。


「国王様と王妃様に媚びを売って満足しました?」


当然いつも皇子に見せている顔とは真逆の顔で、意地悪そうに口の端を歪ませて聞いてきた。


『皇子の婚約者としての使命を果たしただけで、媚びなどではありません。』

「そんなこと言って、2人に取り入ろうと必死なのが見え見えなのよ。」

『そもそもこの婚約は親同士が決めた事なので、私が媚びを売ったとしても、何ら関係はないのですが。』

「はっ!そういう嘘で余裕そうに見せて痛い目に見たらいいんだわ。
世間では貴方がわがままを言って皇子と無理やり婚約したってバレてるの知らないの?」

『そうですか。確かに、私はハルト皇子を好いていますがそれを理由に両親に懇願した事はありません。』

「今ならなんとでも言えるでしょうね。小さい頃からハルトは私のものよ。
いつか必ずその婚約を破棄させてやるから。」

『皇子は誰のものでもなく皇子のものです。私物化はいけません。」

「なにっ。貴方に説教される筋合いはないのよ!この勘違い女っ」


そういい、般若のように怒った顔で近づいてきたと思ったら肩をドンッと押され噴水に尻もちを着いてしまった。


そこまでされると思っておらず身構えていなかった為お尻が痛い、、、


「いい気味。もう今夜のパーティには貴方の居場所なんてないし丁度いいわね。
その様にみすぼらしい姿がお似合いですわ。」

ふんっと鼻を鳴らしてカツカツと会場に戻って行ったマリアの後ろ姿を眺めながら、
これじゃあどっちが悪役か分からないわね、と少し笑ってしまった。


元々、会場にはもう戻るつもりはなかったし。

皇子から頂いたドレスを濡らしてしまったことだけが少し残念だった。


噴水から出て、ドレスを絞ると宿舎に戻る前に中央棟に向かった。


今日のパーティは長引きそうだと思ったから約束はしていなかったがカリナが居ればいいなと考えていた。



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