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2章

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最初の開会式と最後のパーティ以外で男性がエスコートをして入場することはあまりないため、アイリとレイカと共に夜のパーティ会場へ向かった。


入場すると、もうそこには沢山の生徒が集まっていて思い思いの場所で立食しながら楽しそうに会話をしていた。


「カリナ様!あそこに美味しそうなものがたくさん!早く食べましょう!」


「アイリ!はしゃぎすぎてはだめよ!目的はご飯じゃなくて婚約者探しでしょ!」

呆れたようにレイカが早歩きになったアイリの腕を掴んだ。

「あ、そうだった。でも美味しそうなんだもの」


『時間はたっぷりあるんです。食事を楽しんでからでも遅くないですわ。」
笑いながら私がそう言うと


「そうですけど....まあ、腹が減ってはなんとやらですね。いいわ、アイリが好きなもの沢山食べましょう。」


そう言いながら3人で食事を楽しんだ。


その間、誰も私たちに近づいて来なかったのはきっと私が居るからだろう。

ある程度お腹が満たされた所で、2人には『私がいるとお邪魔になるから』と言って、1人テラスに出てきた。



音楽が変わり、中ではダンスが始まったことでテラスには誰もいなかった。


少し火照った体に夜風が当たりとても気持ちが良かった。


そこに

《ガチャっ


「ご機嫌よう、カリナ様。」

皇子の幼なじみのマリアが出てきた。
私が小説で読んだマリアは、虚弱体質で何にも控えめな性格であった為にいつも隣にくっついているカリナに睨まれ縮こまっていた印象だ。

その印象とは似ても似つかない、自信があるような態度で私の前に現れた。


『ご機嫌よう、マリア様。」


「あら、以前は私のことはマリア呼ばわりではありませんでしたか?突然汐らしくなって、ハルトの気を引きたいのが丸見えですよ。」


この子は誰だ。

そう思うくらいマリアは強気な態度をとっていた。


『気を引きたいだなんて。今までの愚行を反省しただけですわ。仮にも皇子の婚約者。これ以上恥ずかしい姿は見せられないので。』


「いい心がけですこと。でも遅すぎますわ。
ハルトにどれだけ迷惑がかかったとお思いで?忠告も受けましたでしょう?貴方とハルトは釣り合いが全くと言っていいほど取れませんわ。
ハルトもはやく婚約破棄したらいいのに」


『お言葉ですが、この国の皇子であらせられます。婚約者でもないのに呼び捨てはお辞めになった方がいいかと。』

「あら、私は大切にされている幼なじみよ?噂も聞いているでしょ。貴方と婚約破棄されたらいずれ私がハルトと結婚するの。
貴方は本当に邪魔なのよ。」


この子はいつも猫を被っていたのか。
そして私が今弱い立場になっている事をいいことに、その素を見せている。

『それは私たちが決めることではありません。
王室の恥にならない為に私たちは行動するだけです。』

「今更いい子振らないで。早く自滅してくれないかとずっと思ってたのよ。
もうあなたには私への勝ち目はほぼ無いのよ。
分かったら大人しく身を引いてね。」


そう言捨てると会場に戻って行った。


まるで嵐のようだった。



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