雨宿りは図書室で

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【第1章】三浦遥陽と植田美月

相合傘

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ーーーーーーー





学校を出るとバケツをひっくりかえしたかのような雨が降っていた





「うわー…すごい雨」






「ほんとですね…、あ、どうぞ」





植田さんが傘を差してくれた





「ありがとう!せめて持たさて!」





傘に入れてもらうのに加えて持たせる訳にはいかない





「あ、ありがとうございます。」







…雨粒が傘に落ちて、伝い良い音がする





そしてひとつ、気がついたことがある





「…この傘」




「はい」




「綺麗だね 」





「…!お目が高いですね。
京都で買った一品です!」






「え!?そうなの!?…って傘自身もそうなんだまけど… 」






「え?」





きょとんとした顔の植田さん





「きちんとお手入れされてる」







「そんなことが分かるんですか!?」






「うん。だってさ…ここの部分とか、使ったあとそのままにしてると錆びてしまうよね」







「はい…そうですね。
そうならない為にも使ったあとは半日干してあげたり、拭いてあげたりすることが必要ですね」






「だよね…植田さん物を大切にするタイプなんだね。いいね。」






「そんな…。
そういう三浦くんはよく気づいてすごいと思いますよ。まわりをみてるんだなぁって」






「え?そうかな?」






「あれ?もしかして気がついていませんでしたか?
三浦くん、すごく周りを見ているな…って。だからみんな三浦くんに安心するんだと思います」





「まじか…そんなこと初めて言われた」





「そうなんですか?意外です」






「うん。でも嬉しい。ありがと!」





「いえ、凄いなっていつも遠くから見ていましたから」





え、それってー





どういうこと?と聞く前にバス停に着いてしまった





運がいいのか悪いのか、
ちょうどバスが来ていたので少し駆け足で乗車する





だから、その意味を聞くタイミングを完全に失ってしまった








「三浦くん、先程言っていましたが、バス停から家が近いんですか?」







「うん。駅から3つ目のバス停を降りて、角を曲がったらすぐだよ」






「なるほど…じゃあ学校が近いんですね。羨ましいです」






「そうだね、俺朝弱いからさ、いつもギリギリまで寝ていられるんだよね。」







「それはいいですね」




ふふっと微笑む





「うん。助かってる。
…植田さんは?家遠いの?」






「そうですね…、柏山駅まで電車で…、そこからまたバスに乗るので、少し遠いかもしれませんね」






「柏山駅!?…ってことは…
ひぃ、ふぅ、みぃ…」





指をおって数える…が、





あれ、柏山駅まで何駅だっけ…





「5つ先ですね」






「あ、そうだ!5つ…5つか!
うーん、遠いね!大変だ」





「そうですね…朝はいつも早めに出ないと遅刻しちゃいますね」





「うわー、大変そう…でも植田さんが遅刻したところなんて見たことないよ?」






「そうですね、一応遅刻はしないようにしています」







「すごいな~…、俺なんてこんなに家が近くても遅刻してるのに。」







「ふふ、私の場合昔から早起きは得意なんです」





「へぇ~、俺も早起き目指そうかな」









《つぎはー、明光前、明光前です。
降りられる方は降車ボタンでお知らせください》








「おっ、植田さんと話してたらあっという間に次になってた」





早速降車ボタンを押す







「今日はありがとうございました。手伝って頂いて…。とても助かりました」







「いやいや、俺こそ傘に入れてくれてありがとう!
…それに植田さんとこうして話せてよかった。



ずっと話してみたかったからさ。楽しかった!」 
 




「私も楽しかったです」





《明光前ー 、明光前ー》






「あ、着いちゃった。それじゃ明日また学校でね!本も読んでみる!ありがとう!」






「はい、また明日!」





降りる瞬間振り返ってみると植田さんはニコッと微笑み手を振ってくれた





俺もまた手を振り返す

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