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第壱章 屋上に

東貴の特技

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学園の裏に来た豪。

そこには女子高生の姿はなく、花束や水が入った瓶に入れられた花が複数あり、その前に靴がポツンと置いてある。

豪は不思議に思いつつも靴を拾って履いた。

祖父にうろちょろしてはいけないと言われていたのを思い出し、急いで帰ろうと振り返る。

「うわっ!!!」

振り向くとそこには女子高生が倒れていた。

豪はびっくりして尻餅をついてしまったが、すぐに立って女子高生に声をかける。

「お姉さんどうしたの?大丈夫?」

女子高生から返事は返ってこない。

子どもながらも緊急事態だと思い、祖父を呼びに行こうと走り出そうとしたその時。

 ガ シ ッ

その女子高生は突然豪の足を掴んだ。

豪は掴まれた拍子にまた転ぶ。

顔についた土を落としながら起き上がるが、その女子高生は手を離さない。

「お姉さん大丈夫?」

声をかけても無反応。しかし、掴んでる手には力がこもっている。

そのせいで子どもの豪には振りほどけない。

女子高生が掴む力はだんだん強くなっていく。

「いたい…、足が痛いよお姉さん…!」

掴む力は緩まない。足がちぎれそうになる程痛い。

助けを呼ばなければこのままじゃまずいかもしれない。そう思い豪は大声で叫ぶ。

「誰かー!!!助けてー!!!」

豪は人一倍声が大きいため、学園の裏の森のカラスたちがびっくりして飛び去っていく。

「大丈夫!?」

誰かが来てくれた。

そのおかげか、その人が豪を見つけて駆け寄ると、足を掴んでいた女子高生の姿は消えていた。

豪は自分の足がちぎれていないか手を伸ばし確認する。

無事だった。しかし、足には大きな痣ができていた。痛みもすごく涙は流さなかったが、抑えてる手を離すことができない。

その人は痣を見て冷や汗をかいていた。

大丈夫?もう少ししたら君のおじいちゃんが来るからね。と優しく声をかけてくれた気がする。

その後すぐに、祖父が駆けつけてくれた。

豪は祖父に抱き抱えられ、保健室に連れて行ってもらった。

保健室の先生に足を見せ、消毒後に包帯を巻いてもらった。

その間に豪は祖父に女子高生について祖父に話をする。

「あのお姉さん、助けてあげた?足は痛かったけど、掴んでくる手はすごく冷たくてなんだか苦しそうだったよ。」

祖父は驚いていた。

なぜ驚いていたのかは分からなかった。

「あの子はね、ちゃんと成仏するように努力するからね…。」

祖父はとても寂しそうな顔をしていた。

あの女子高生は今思えば、なんらかの理由で亡くなった幽霊だったのかもしれない。しかし、成仏ができず、豪にちょっかいを出していたのかもしれない。

祖父はまだ仕事が残ってるからごめんねと言いながら、先程助けてくれた人と保険の先生を残し、保険室を後にした。

豪は助けてくれた人に声をかける。

「助けてくれてありがとう!俺、豪って言うんだ!よろしくね!」

それに対し、その人も挨拶をする。

「お……な……はあ……………みっ………んだ。よろしくな。」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

豪はここから先が思い出せない。

「おかしいな…、結構印象的な名前だったから忘れないと思ったんだけど…。」

豪は思い出そうと頭を抱える。

明日香、東貴、真木、レナはその話を聞き、それぞれ違うことを考えていた。

最初に口を開いたのは真木だった。

「豪くん、話の中で出てきた花が置かれてた場所ってどこ?」

なるほど、今の話に出てきた女子高生が霊だとしたら、その花が置いてあった場所が亡くなった場所の可能性がある。

今この場を作っているのがその霊だとしたら、その花が置いてあった場所が関係してるかもしれない。

豪はその花の場所はしっかりと覚えているらしく、4人を案内する。学園裏すぐのところだった。

ネットフェンスのせいで、ギリギリ真下は見えない。

仕方なく、フェンスを越えて下を見ることにした。

実はレナは高所恐怖症であり、フェンスを超えるのは厳しいとのことだった。

豪は一番力があるので、持ち上げる役をやる。

真木は見たものを忘れない能力があるため、立候補してフェンスを超えることになった。

1人だと危ないということで、東貴も行くことになった。

明日香、豪、レナは2人に気をつけてと念を押した。

真木はいざって時は東貴が守ってくれるから大丈夫と言う。東貴は自信なさげに大丈夫と言う。

まずは東貴がフェンスを超える。

靴を脱ぎ、豪の肩に乗り、乗り越える。

フェンスは2.5メートルくらいあるため、降りる時が怖かった。なんとか着地し、足場を確認する。

東貴の足のサイズは27.5センチであり、その倍くらいの足場がある。

続いて真木が豪の肩に乗り、フェンスを乗り越え、東貴の肩を借りて着地した。

東貴は思う。

(これ俺どうやって戻ればいいんだ…?)

豪の顔をチラッと見ると、豪も同じことを考えているみたいだった。

とりあえずまずは下を見よう。そう思い、東貴は下を見る。

確かに、豪が言っていた辺りの位置に花が何輪か置いてある。

「確かに花置いてあるね。菊の花とかたんぽぽもあるぜ。」

東貴は真木に言う。

しかし、真木は東貴を見て驚いている。

東貴には見えない何かが真木に見えている?東貴はそう思いもう一度下を見たが、花が見える以外は特に何も見えない。

真木は平然と下を見ている東貴に声をかける。

「地面まで見えるの…?」

東貴はきょとんとしながら答える。

「え、見えるけど、真木はもしかして見えないの?」

真木はその言葉を聞いてなにかを思い出したようだった。そして呆れている。

明日香も察しているみたいだった。

東貴自身もハッとした。

あまり気にしていなかったが、これは自分にしか見えないのかもしれないと悟る。

この学園は3階+屋上の作りになっているため、普通なら視力が1.0あれば菊の花を見ることは可能である。

しかし、真木の目からは地面が遠くて見えていなかった。下を見ると、なぜか数百メートルは地面から離れているのだ。

真木は視力は悪くないが、すごくいいわけでもない。そのため、かろうじて花が置いてあるのがわかるくらいで、たんぽぽが置いてあることまでは認知できていなかった。

対して東貴の視力は3.0(学園で測れる限界)である。砂漠育ちなんじゃないかと疑うほど視力がいい。弓道が上手いのも、この視力のおかげでもある。

真木は思う。

こんなに近くにいたら肌の荒れとか見られそう…。

とにかく、ここは東貴に全て見てもらい、ここから出る手がかりを探してもらうしかない。

東貴もそれを悟り、地上を見直す。
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