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第1話 初陣

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時は乱世、絶対権力者の将軍家が失墜し全国各地の大名達は己の領土拡大をもくろみ戦に明け暮れている時代なのである。



この物語は架空の時代乱戦という時代の物語である。





経丸は民に連れられた場所には子供から大人まで何人もの人が斬り殺されている姿があった。



「殿、もう今月に入って400人以上は何にも罪がないのに都賀の配下の者に強奪にあったり斬り殺されております」



「畑に火を放たれたりして農作物もできません」



「このままじゃこの大多喜は滅びます。殿、何とかしてください」



経丸は斬り殺された人達に深く頭を下げながら



「すみません、本当にすみません。私の力不足です」



「殿、このような手紙が」



経丸は家臣の片倉に渡された手紙を読んだ



手紙を読んだ経丸は



「わかりました、必ず何とかしますから」



「お願いします」



大多喜の民の者は経丸に頭を下げて帰っていった





ここは千葉県大多喜町、坊主頭で首にタオルを巻いている赤いジャージを着た少年外岡士郎18歳(この物語の主人公)は5人の30代前半くらいの歳の野武士達に囲まれている。



「おい、小僧この5円玉と500円交換しろ」



急に意味のわからないことを野武士達に言われた士郎は



「はい?」



野武士達は士郎の返事に苛立ち



「だから!俺の5円玉とお前の500円を交換しろ!!」



士郎は野武士達に対して少し震えながら



「えー、普通に嫌ですよ」



「嫌だじゃねぇんだよ!交換しろよ」



士郎はキレる野武士達のことを



こいつら、ヤバ!!マジで言ってるよこれ。めっちゃ頭おかしいやん



士郎は丁寧な口調で



「すみません、僕にはあなた方の言語がわからないので誰か通訳できる方を呼んでいただけませんか」



「お前、俺達をなめてるのか!!」



「なめてはおりません。頭が悪いと思っています」



野武士の親分らしき男が皆に向かって



「こいつは殺す、皆!刀を抜け!!」



野武士達は次々と刀を抜いて刃を士郎に向けた。



「待て、待てそれがしは腰に爆弾を持っているんだぞ」



「腰に爆弾を持ってる?」



野武士達は士郎の言葉にざわついた。



「腰の爆弾、いつ爆発するかわからないから戦うのはやめといた方がいいぞ」



「親分、腰に爆弾なんて言うのはハッタリです。どこにも爆弾らしき物は見当たりませんよ」



親分はニヤッとし



「そっか、ハッタリか」



士郎は大声で



「ハッタリ、なんかじゃない!それがしは腰痛という爆弾を抱えてるんだ」



士郎の言葉に



「おい、もうこのバカを殺せ」



士郎は慌てて



「待て、待てお前らそれがしを誰だと思ってるんだ!」



「それがしはなぁ、」



士郎の言葉の途中に野武士達は一斉に声を揃えて



「外岡士郎」



名前を当てられた士郎は慌てて



「えっ?なんでわかるんだ!」



野武士達は呆れた感じで



「だって胸に名前書いてあるもん」



「あっ、母上それがしよく落し物するから大きく名前と住所を書きやがって」



「もう、こんなくだらない奴に関わってる暇はない殺せ」



士郎は襲いかかってくる野武士達の恐怖で刀を抜くこともできずただその場に立ち尽くすことしかできなかった。



すると士郎の後ろからいきなり男が現れ野武士達を簡単に斬り倒していった。



身長180センチ代のイケメンの男は刀を鞘に納めながら



「ダメだよ士郎くん。自分に刃を向けてくる奴は敵だとみなして殺さないと」



士郎はいきなり現れた片倉に驚き



「片倉さん!!」



「怪我はないですか、士郎くん」



「片倉さん、遅いですよ15分も遅刻してますよ」



片倉は少し笑いながら



「ごめん、ごめん」



「相変わらず遅刻癖は治らないんですね」



片倉はへへへと笑ってごまかした。





士郎と片倉は大多喜城城主天羽経丸が待つ大衆食堂富田亭に急いで向かった。



士郎は経丸の行きつけのお店富田亭に入ると



「ごめん、経丸待たせたか」



黒髪ロングで髪は後ろで縛っていて、田舎娘丸出しの顔立ちで右頬に刀傷があり色白の少女の経丸は呆れた感じで



「遅い、何してたのよ」



士郎は笑いながら



「いや、片倉さんが遅刻したせいでちょっと野武士に囲まれちゃってさ」



経丸は少し驚いた顔で



「大丈夫だったの!怪我はない!?」



「大丈夫、片倉さんが助けてくれたから」



経丸はホッとした表情で



「片倉さんが助けてくれたなら大丈夫ね」



士郎は偉そうに椅子に腰をかけながら



「で、話って何よ」



「腹が減っては戦はできぬか」



と経丸は小さい声で呟いてから笑顔で



「その前にお昼食べない?」



「いいね、奢ってくれるの?」



「いいよ、好きなもの頼みな」



「やったね、じゃあおじさん。それがしもつ煮込みと炊き込みご飯と豚汁をください」



「じゃあ、私は炊き込みご飯とチャーシューとワカメスープをお願いします」



「俺は、炊き込みご飯と卵のサラダと豚汁をお願いします」



おじさんは優しい表情で



「はい、わかりました」



しばらくすると士郎達元に熱々の鹿の肉を使ったもつ煮と卵のサラダと近くで取れた山菜などを使った具沢山な麦飯の炊き込みご飯や豚汁、ワカメスープが運ばれた。



士郎は慌てて食べ始めた。



ガツガツ、ムシャムシャ、パクパク



「懐かしい、やっぱりここの炊き込みご飯ともつ煮込み、めちゃくちゃ美味しい」



「そうよね、ここの料理はすごく美味しいよね」



士郎達は和気あいあいと飯を食べた。



飯を食べ終わると士郎が



「経丸、ところで話ってなんだ」



「士郎、私結婚することになったんだ」



士郎は経丸の言葉に驚きすぎて椅子から転げ落ちた。



「結婚!!誰と!」



「市原、袖ケ浦、木更津、君津を治めている久留里城城主の都賀勝敏さんと」



「経丸は都賀勝敏って奴のこと好きなのか?」



経丸は唇を震わせながら



「うん、好きよ」



士郎は動揺しながらもその動揺を悟られないように



「それなら良かったじゃないですか」



「うん、ありがとう」



「じゃあ、今日はそれがしが奢りますよ。経丸さんの結婚を祝して」



「いや、いいよ悪いよ」



「まぁ、まぁ、こんな時くらいかっこつけさてください」



士郎は会計を済ませた。



士郎は声を震わせながら



「結婚おめでとうございます、さようなら」



深々と頭を下げた。



片倉は士郎の様子を見ておかしいと思い経丸を大多喜城に送った後



「殿、士郎君に渡すものがあったの忘れてたんで届けに行っていいですか」



「はい、気をつけて」



片倉は急いで士郎を追いかけて森で落ち込んで座り込んでいる士郎を見つけ肩をポンと叩きながら。



「おい、士郎君」



「片倉さんどうしてここに」



「ちょっと俺、行きたい店があるんだ付き合ってくれないか」



「この後,別に予定ないからいいですけど」



二人は小さな居酒屋に入りカウンターに座った。



「ここ鹿の内蔵肉を焼く奴が旨いらしいんだよ」



「えっ、それがし内蔵肉なんか食べたことないんですけど気持ち悪くないんですか?」



片倉は笑顔で



「俺も食べたことなくて一人じゃ恐いから士郎君を誘ったんじゃないか」



「何もそれがしを巻き込むな事ないじゃないですか経丸と一緒に行けばいいのに」



「殿に何かあったら困るだろ」



「確かにそれはそうだけどそれがしにだって何かあったら困るじゃないですか」



「士郎君は大丈夫だよ。小さい頃田んぼの水のんでも平気だったじゃないか」



「平気じゃないですよ、あの時上から、下からも出るものでて大変だったんですからね」



「汚いなぁ、そういう話ご飯の前にするべきじゃないぞ」



士郎はツッコむように



「あなたがこんな話になるようなこと言ったんじゃないか!」



片倉は笑いながら



「そっか、ごめんごめん」





片倉は店員に



「すみません、酒二つと鹿の内蔵肉二つとお水一つお願いします」







片倉は明るい声で



「士郎君、今日は思いっきり食べようぜ」



「はい、そうですね」



「じゃあ、乾杯」



「おい、内蔵肉焼けたみたいだぞ」



「じゃあ、片倉さん先どうぞ」



「いや、士郎君先食べていいよ」



えっ、こんなわけわからないもの食べたくないなぁ



「わかった、二人でせいの!で食べようぜ」



士郎は目をつぶりながら内蔵肉を口に入れた。



「あっ、美味しい!片倉さん美味しくないですか?」



「ごめん、俺ダメみたい」



士郎はツッコむように



「あんたがダメなんかい!」



苦手でもなんとか飲み込もうとする片倉を士郎は思わず笑った。



しばらくして酒を飲みながら士郎が



「片倉さん、経丸嘘をついてましたよね」



「嘘をついてた?」



「経丸は都賀なんとかのこと好きじゃないでしょ」



「そうだな、好きじゃないな」



「やっぱり、そうだと思った」



「何で嘘だとわかった?」



「経丸は嘘つくとき唇が震えるんですよ」



片倉は感心した感じで



「よく見てるなぁ、士郎君は」



士郎は得意気に



「そりゃ、そうだよ!それがし経丸のこと好きなんだから」



「そうだね」



「ちょっと待って、ちょっと待って、ヤバい!ヤバい!ヤバい!ヤバい!!」



慌てる士郎に片倉は冷静に



「どうした?」



「今言ってたこと聞かなかったことにして」



「殿のこと好きってこと?」



「そう、絶対に経丸に言わないでね」



「おう、わかった」



士郎は恥ずかしさで机に突っ伏しながら



「最悪、ホント最悪」



「大丈夫だよ、元から知ってたから」



「何で知ってんの!」



「士郎君の殿に対する態度を見ていたらすぐわかるよ」



「えっ、じゃあ経丸もそれがしが好きなこと知ってるのかなぁ」



「いや、殿は気づいてないでしょ。気づいていたら傷つけないように振るだろうし」



「何で経丸がそれがしを振る前提なんだよ」



片倉は笑いながら



「冗談だよ、冗談」



「ところで経丸は何で好きじゃない奴と結婚するんだ」



「それは、」



片倉は小さな声で事情を説明した。



士郎は片倉の説明を聞いて



「そんなのふざけてる!ちょっとそれがし直接経丸と話し合う」



「じゃあ、今から城に行こうか」



「もちろんです。片倉さん」



片倉が会計を済まして二人は大多喜城に向かった。



大多喜城とは大多喜という小さな田舎村の小高い山の上から街を見下ろすように建っている連郭式平山城で麓には夷隅川が流れている。



士郎と片倉は経丸の部屋の前に行き戸を越しに



「殿、士郎君を連れてきました。部屋に入ってもよろしいでしょうか?」



「えっ、士郎を連れてきたんですか?」



「はい」



「とりあえず、入っていいですよ」



「ありがとうございます」



士郎は戸を開けるとそこには湯上がり状態の経丸がいた。



士郎は経丸の姿を見てドキッ!としぎこちない感じで



「よっ、経丸」



「ごめんもうちょい待って、髪を乾かすから」



「早くしろよ」



と口では言ってる士郎だが心の中では



湯上がり姿の経丸も、可愛いと思っていた



「お待たせ。どうしたの士郎?こんな時間に」



「いや、ちょっと片倉さんと飲んでてさ」



「えっ、いいなぁ。私も誘ってくれればよかったのに」



「いや、まぁ男だけの話し合いだったからなぁ」



「殿、今度は三人で行きましょう」



経丸は少し拗ねた感じで少しほっぺを膨らませながら



「今度があればいいですけどね」



士郎は



うわぁー経丸の拗ねた姿可愛い。



「ところで士郎何しに来たの?」



士郎はさっきまでの少しニヤけた顔から真剣な顔で



「単刀直入に言う。大宮なんとかと結婚するのはやめろ」



「何言い出すの士郎」



「経丸、都賀なんとかのこと好きじゃないんだろ。好きじゃない奴と結婚することないじゃないか」



「あのね、士郎私は大多喜城の城主私の役目は大多喜の民を守ることだから自分のわがままで結婚相手なんか決められないの」



「都賀勝敏はお前がほしいんじゃなくて大多喜城と代々猛将揃いと言われている天羽家の血が欲しいんだぞ。その事わかってるのか」



「わかってるわよ」



「それがしは絶対に賛成しないそれに反対してるのはそれがしだけじゃないぞ!いつもお前の一番そばにいる片倉さんは今回の結婚賛成してないぞ!!」



「えっ」



「殿、都賀勝敏と結婚するのはやめていただきたい」



「何言ってるんですか片倉さんそんなこと無理なこと一番わかってるじゃないですか。都賀勝敏さんは私の治めている大多喜村の約七倍の面積を治めている。それに人口はこの村の三百倍はいるんですよそんな人に逆らえるわけないじゃないですか」



経丸は下を向いて



「私が嫁げば戦いをしなくて済む、大多喜の人達が無駄に命を奪われなくて済むんですよ」



 士郎は静かな声で



「お前ホントにそれでいいのか?」



「うん、いいの」



「お前、それで幸せか?」



経丸は強い口調で



「私の幸せなんか関係ないから!!」



士郎は経丸の両肩に両手を力強くおいて経丸の目を本気で見て



「関係なくねぇーんだよ‼それがしにとってはお前の幸せが一番の大切なんだよ!!」



「ありがとう。でもね、私城主なの、父と母のいない私を小さい時から娘のように可愛がってくれた大多喜の方々と親代わりになって支えてくれた家来の方々を守らなきゃいけないの」



「だからって自分の幸せを捨てて都賀に嫁ぐのはおかしいだろ」



片倉も士郎に同調するように



「私は殿をお守りし大多喜城の城主としてふさわしい武将にするのが役目でございます、だから最低な人間の都賀勝敏の元に送ることなどできませぬ」



「おっし、じゃあ戦おうぜ」



経丸は二人の顔を見て



私のせいで巻き込んではいけない



「士郎、人一人も殺生したことない臆病者のクセに、ましてや喘息の発作が出ていつ倒れてしまうかわからない人間が戦うなんて無責任な事言うなよ」



「なんだと」



「片倉さん、いつも私の行動に色々忠告してきて面倒だったんだよね。もうさ二人とも私の前から消えてくれない」



「殿、どうされたんですか」



「いいから、出て行けって言ってんだろうがよ」



「なんだよ、その言い草はふざけんなよ」



「士郎君、やめろ!」



経丸は二人を無理やり追い出して思いっきり戸を閉め泣きながら



「これで、良かったんだよね」







追い出された、士郎と片倉は城の裏の木で



できた椅子と机が置いてある場所で



「ふざけんな!あいつ何様だ!」



片倉はふっふと笑って



「士郎、まだ青いな」



「何がだよ」



「殿は士郎君と俺を守るためにあんな事言ったんだろ」



士郎は後頭部を思いっきり殴られたような衝撃を受けた。



「くっそー、なんだあいつ、自分一人かっこつけやがって」



「なぁ士郎、女性の殿が俺らを守ろうとしていて男の俺らが殿を守らないのはおかしくないか」



「おかしいです!」



「そうだよな」



 士郎は片倉に向かって膝をつき



「それがし、あいつの事が自分にとって一番大切なんだ、だから頼むそれがしと共にあいつを助けに行ってくれませんか」



 頭を地面につける士郎に



「おい、よせよ俺だって助けに行くつもりだったんだから」



「なんだよ、頭下げて損しました」



「損っておかしいだろ」



「それより策はあるのか、片倉さん」



「都賀の戦力の方が我らより格段に上だが奴は久留里城に全勢力を常時おいているわけではないし殿が奴らの元に向かったんだ我らの降伏とみて警戒は全くしてないだろ」



「そうだろうけど、それで」



「だから、明日の夜久留里城に攻め込みに行くんよ」



「救出だけじゃなくて潰す、それ最高に燃えるやつだな」



「だろ」



 士郎と片倉は堅い握手を交わした。



「士郎ってよっぽど殿が好きなんだな」



「あー好きじゃない、大好きだよ‼なにかおかしいですか?」



「おい、素直だな、殿本人に言ってあげなよ」



「やかましいわ、それより絶対に殿を救出しましょう」



「もちろん、だけど俺らだけじゃ都賀に勝てないだから皆に協力してもらおうぜ」



翌日の朝早く士郎と片倉は村に行き村の人を集めた。



「皆さん、経丸が都賀勝敏に嫁ぐことになった。」



「何!経丸様が」



士郎の衝撃的な発表に大多喜の民達はざわついた



「それがしは経丸が都賀勝敏に取られるなんて嫌だ。だからお願いします共に戦ってくれませんか」



士郎の言葉に大多喜の民達は



「当たり前だろ!何で我々の大好きな経丸様をあんな屑男に取られないといけないんだ!!」



「そうだ、そうだ!経丸様は俺らの子供みたいなもんだあんな奴に渡してたまるか!」



「俺らは戦うぞ!絶対に経丸様を助け出すんだ!!」



「そうだ!そうだ!」



士郎はみんなの気持ちに感動して声を震わせながら



「ありがとう、皆さん」



士郎達は都賀の居城久留里城に向かった。



士郎は久留里城に向かう前に便所に籠り戦前の恐怖に震えながら大声で



「経丸のためなら外岡士郎ならできる!経丸のためなら外岡士郎ならできる!気持ちー!!気持ちー!!」



と自分を鼓舞して臆病な気持ちに打ち勝とうとした。



そして士郎はジャージ、首タオルから戦闘服に着替え直した。



城の前に着いた士郎達は



「今から経丸を助けにいく、相手は数が多い、でもそれがし達は絶対に経丸を救うぞー!」



皆は興奮状態で



「オー‼」



「気持ちー‼気持ちー‼」



皆はこの声に合わせて爆弾などを爆発させ



城の門を破壊し爆音響かせ門が壊れると同時に士郎と片倉を先頭に城になだれ込んで行った。







久留里城内の二階の部屋では経丸が手足を縄でくくりつけられていた。



薄暗く無機質な部屋で都賀はニヤニヤしながら



「おっ、経丸縛られて身動きできない気分はどうだ」



こんな扱いを受けると思っていなかった経丸は凄く腹が立ち都賀を睨みつけながら



「うるさいですよ」



「お前、だいぶ反抗的だな」



都賀は経丸の顔に触れようとすると経丸はその手にかぶりついた。



「いって、このバカ女」



都賀は噛まれていない方の手で経丸の頬を



思いっきりビンタした。



「この野郎、女のくせに逆らうな、女は所詮子供を産む道具にしか過ぎないんだから」



こいつマジで屑だ



経丸は抵抗したくてもできないことに悔しくて仕方なかった。



都賀は経丸の服を脱がせようとしたその時



「申し上げます、何者かがたくさんの農民を連れていきなり城に攻めこんで来ました」



「おいお前、こっちは今からお楽しみなんだ少しは空気読まぬか」



「しかし、城中大混乱に陥っております」



「うるさい奴だ、仕方ないすぐ片してくるからお前はここで待ってろ」



都賀は経丸を置いて現場に向かった。



いつもは臆病だが経丸を救い出すと覚悟を決めた士郎は「気持ち!!気持ちはー!!」と叫び血だらけになりながら次々と敵を斬り殺していき



「おい、お前殺されたくなかったら経丸の居場所を答えろ」



士郎の殺気に恐怖を感じた兵は



「たぶん一番上の階にいると思います」



「片倉さん、ここは任せていいですか?」



「任せろ、後は始末しておくから」



片倉は敵に突っ込んでいき鋭い目つきをし



低い声で



「てめぇら、めざわりだ、失せろ」



敵は片倉のオーラに一瞬凍り付き反応が遅れたところを次々と片倉に斬られる。



「片倉さん、頼みますよ、必ず経丸を救出しますから」



片倉は自分に振り向く士郎に



「頼んだぞ、士郎君」



士郎は次々と敵を倒し一旦混乱している城を出て



「この城の最上階に経丸はいる。よじ登るしかないか」



恐怖で震える体全体に



「高所恐怖症がなんだ、よじ登るしかないんだ、経丸のためなら外岡士郎ならできる!経丸のためなら外岡士郎ならできる!気持ちー‼気持ちー‼」



士郎は恐がる自分を奮い立たながら登って行った。



士郎は無事に登りおえ最上階に入りきょろきょろしながら部屋を戸を開けると縛られている経丸の姿が視界に入り強烈すぎて声も出なかった。



経丸は士郎の出現に驚きながらも



「バカ、こんな危険なところに何で来たの」



士郎は何も言わず経丸に近づき縄を手際よくほどき経丸を抱きしめ



「恐かっただろ、怪我はないか?」



経丸は士郎の言葉に今まで強がっていた気持ちの糸がプッツンと切れ涙が溢れでた。



経丸は震えた声で



「この前、あんなにひどいこと言ったのに」



うつむく経丸に



「お前、凄いな」



「え?」



「たくさんの方がお前の為に命がけで戦ってくれているぞ」



「えっ何で、私の為なんかに」



士郎は経丸の両頬から流れている涙を自分の持っていた布で拭いてあげ右手を取って両手で優しく包み込み



「お前が皆の事を大切に思うように皆もお前を大切に思っているんだよ」



「なんで、なんで涙が止まらない」



 士郎は経丸の顔を指さし



「うはははは!泣きすぎて妖怪みたい」



 士郎は腹を抱え転がり回るように笑った。



 士郎の言葉に経丸は涙が引っ込みイラっとし



「士郎ってホント最低‼」



士郎は涙が引っ込んだ経丸の顔を見て笑うのをやめ真剣な顔をし



「お前、これでもまだ戦わないのか?」



経丸は怒鳴るように



「戦うに決まってんでしょ、バーカ」



「じゃあ行こうぜ」



士郎はしゃがんで経丸を肩に乗せて肩車する。経丸はいきなり肩車されて驚いて



「えっえっ、どういう事?」



「行くぞ、勝つか負けるかは気持ち次第、気持ちー‼気持ちー‼」



士郎は経丸を肩車しながら敵に突っ込んでいく



経丸は刀で斬りこんで行くと人ごみの中にいる都賀を見つけた。



「士郎、都賀がいたよ」



「距離はどれくらい?」



「士郎を踏み台にしてジャンプすれば届くくらい」



「そっか、じゃあ行けるか?」



経丸は大きく深呼吸し



「覚悟はできた」



「じゃあ、全力で殺してこい」



「わかった」



士郎と経丸は声を揃えて



「せぇーの‼」



士郎は足に思いっきり力を入れて経丸は士郎に遠慮することなく思いっきり力を入れて士郎の肩を蹴りジャンプした。



経丸の体が宙に浮く



「気持ちー‼気持ちー‼」



経丸は叫びながら都賀を力いっぱい斬りつけた。思いっきり刎ねられた都賀の首は宙に浮きそれを経丸は左手でキャッチし都賀は持っている左手を上に掲げ大声で怒鳴るように



「敵将、討ち取りましたー‼」



 経丸のこの一言で矢部との戦いに終わりを告げた。



城主を討ち取られて唖然としている都賀の



家来達を横に討ち取った都賀の返り血をもろ顔に浴びて血だらけの士郎と清々しい達成感に満ち溢れている経丸とホッとした表情の片倉の三人は大多喜城まで帰って行った。







夜が明けて士郎と経丸と片倉は階段の長い神社の上で朝焼けを眺めていた。



士郎は笑顔で



「よかったなお前、清々しい気持ちで朝焼けが見れて」



経丸は小さな声で



「士郎のおかげだよ」



一瞬、間が空いて



「今なんて?」



「別に」



「経丸、やっぱりそれがしは経丸の事が一番大切だ。それがしは経丸を幸せにしたい」



「えっ?」



士郎の言葉にドキドキする経丸



何、まさかプロポーズ



士郎の言葉を横で聞いていた片倉も



おっ、士郎君ここでプロポースはセンスいいぞ



士郎は両膝と両手を地面につけて



「それがしはずっと経丸のそばにいたいからそれがしを天羽家の家臣にしてください。お願いします」



頭が地面につくぐらい下げた。



あっ、プロポーズではないなね



複雑な気持ちになった経丸はしばらく間を置いてから



「私には私に勇気を与え戦う決意をさせてくれた外岡士郎が必要なの。外岡士郎がいないと私また戦わず逃げ出してしまうかもしれないから」



経丸は地面に両手、両膝をつけて頭を下げながら



「だから、お願い私と共にこれからも戦ってください」



士郎はいきなの経丸の土下座に驚いて



「おい、おい、何やってんだ顔をあげろよ」



経丸は士郎の言葉を聞いて頭を上げ真剣な顔で



「私は士郎がいてくれたらもう二度と逃げないから、だから」



士郎は経丸をぎゅっと抱きしめたいけどそんなことをできる勇気はなく本音がこぼれるように



「それがし、ずっと経丸のそばにいていいんだね」



満面の笑みで



「もちろん」



士郎は経丸の笑みにドキッとし



何、今のめちゃめちゃ可愛いじゃないか



士郎は胸の動悸が止まらなかった。



経丸は服の袖から士郎に涙を拭いてもらった布をだし



「士郎そういえばこの布ありがとう、洗って返すね」



「あっそれあげるよ」



「なんで?」



「それ、それがしがお腹壊して野グソした時に使う布だから」



一瞬にして先ほどまでのいい雰囲気が破壊され経丸は大声で怒鳴るように



「士郎って、ホント最低‼そんな汚いので私の顔を拭いたの」



 さすがの片倉も呆れるように



「士郎君、殿の綺麗な顔をそんな汚い布で拭くとは‼」



 士郎は慌てて



「いや、もちろん使用済みではないよ」



 経丸は大声で



「当たり前でしょうが‼」



 経丸は刀に手をかけた。それを見た片倉は



 ヤバい、殿は本気で怒っておられる。



 経丸は目を血走らせながら



「士郎、一旦この手で叩き斬ってやる」



片倉は慌てて刀を抜こうとする経丸の手を抑えて



「士郎君、逃げろ!」



士郎は慌てて経丸と片倉に背を向け勢いよく長い階段を駆け下りた。



片倉に羽交い絞めされた経丸は大きな声で



「片倉さん、離してください」



片倉は止めなきゃと思う気持ちと経丸を羽交い絞めにしている罪悪感の感情が入り混じった顔で



「殿、申し訳ございません、落ち着いてください」



勢いよく階段を下る士郎に経丸は怒鳴るような声で



「待ってぇー‼士郎‼」



士郎は後ろを振り返り



「待てと言われて待つバカいないわ」



経丸は大きな声で



「やっぱ士郎って、ホント最低―‼」



士郎が天羽家に入ったこの瞬間、今は小さな英雄たちの強い気持ちが戦乱という大河の中に一滴の雫として流れ込んでいくのである。

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