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宝箱(臣side)
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陽向がいなくなった日、2人の居場所は案外すぐに見つかった。
大したつてもない瑠はタクシーで隣の県のホテルまで向かったようでそのドライブレコーダーやタクシーが移った防犯カメラからそのことはしっかりと確認が取れた。
「臣、2人が見つかったのに迎えに行かないのか?」
本心は今すぐにでも陽向を連れ戻しに行きたい。だが、イギリスに発つまであと1週間、仕事も立て込みまともに時間も作れない。
それならせっかくだ。あと1週間だけ夢を見させるのもいいかもしれない。特に陽向はこの先、日の光を見ることすら叶わないだろうから。
それから1週間、毎日2人の動向に関する報告を聞きながら俺は陽向との新しい生活に向けて準備を進めた。
親父には後継者を瑠に譲り、イギリスを拠点に仕事をすると伝えた。最初こそ反対されたものの最終的には半ば強引に認めさせた。
そして、今日は大事な陽向を迎えに行く日だ。
夜、日付が変わる頃家を出る。向かうのはもちろん愛しい陽向の待つホテル。
コツコツコツコツ
ホテルの廊下には革靴の音が鳴り響き、その一室の前で止まった。
電子キーで扉を開錠するとベッドの上には2人の影があった。そしてそのうちの小柄な方が音に反応して起き上がる。
「臣くん?」
あぁ、なんて愛しいんだろう。さっきまで怒りと嫉妬でおかしくなりそうだった心が陽向の声を聞いた瞬間全てどうでも良くなるほどだ。
「陽向、こっちにおいで」
手を広げると陽向はこちらへ来ようとする。しかし、その行動はもう一つの影によって阻まれた。
「陽向くん、行ったらダメだ」
俺は俺のものを取り返しにきただけなのにその態度はなんだ。
俺と陽向とを引き裂こうとするこいつは邪魔でしかない。さっさと眠らせてしまおう。
首から睡眠薬を投与すればそれはすぐに効き、ベッドに倒れ込んだ。
「瑠くん?どうしたの?大丈夫?」
陽向がその様子を心配することにわずかな苛立ちを感じる。
「陽向、行こうか」
陽向を担ぎ上げるとわずかに抵抗はするものの弱すぎる陽向の力ではたかが知れている。
そのまま車で空港まで連れて行くと、薬で眠らせてから貸し切った飛行機に乗せ、イギリスへと飛び立った。
イギリスの新しい家には広い地下室のあるものを選んだ。
広い地下室にはキングサイズのベッドだけが置いてあり、その上に陽向を寝かせると二重ロックの鍵をしめ、地上で荷物の整理を始めた。
それから3時間、そろそろ陽向が起きてくるかも知れないと思い、地下室に向かう。
「陽向、起きたか?」
声をかけると目を擦りながらも返事をしてくる。
まだ新しい環境に理解が追いつかないようで不安そうな表情を見せる陽向。
それを可愛いなんて呑気に思えた時が一番幸せだった。
新しい家を探検すると言った陽向に俺はこの部屋からは出せないと言った。今までだってそうだったようにこれからもそれは変わらない。なのに陽向はあろうことか瑠と俺を比べ出した。
「瑠くんはいろんなところに連れて行ってくれた」「瑠くんなら、、、」
陽向の口から俺以外の名前が出るだけでも不快で仕方ないというのに陽向は俺よりも瑠の方がいいという。
こんなにも愛しているのに。陽向のことを思って、大事にこの宝箱にしまっているのに。
赦せない。
大したつてもない瑠はタクシーで隣の県のホテルまで向かったようでそのドライブレコーダーやタクシーが移った防犯カメラからそのことはしっかりと確認が取れた。
「臣、2人が見つかったのに迎えに行かないのか?」
本心は今すぐにでも陽向を連れ戻しに行きたい。だが、イギリスに発つまであと1週間、仕事も立て込みまともに時間も作れない。
それならせっかくだ。あと1週間だけ夢を見させるのもいいかもしれない。特に陽向はこの先、日の光を見ることすら叶わないだろうから。
それから1週間、毎日2人の動向に関する報告を聞きながら俺は陽向との新しい生活に向けて準備を進めた。
親父には後継者を瑠に譲り、イギリスを拠点に仕事をすると伝えた。最初こそ反対されたものの最終的には半ば強引に認めさせた。
そして、今日は大事な陽向を迎えに行く日だ。
夜、日付が変わる頃家を出る。向かうのはもちろん愛しい陽向の待つホテル。
コツコツコツコツ
ホテルの廊下には革靴の音が鳴り響き、その一室の前で止まった。
電子キーで扉を開錠するとベッドの上には2人の影があった。そしてそのうちの小柄な方が音に反応して起き上がる。
「臣くん?」
あぁ、なんて愛しいんだろう。さっきまで怒りと嫉妬でおかしくなりそうだった心が陽向の声を聞いた瞬間全てどうでも良くなるほどだ。
「陽向、こっちにおいで」
手を広げると陽向はこちらへ来ようとする。しかし、その行動はもう一つの影によって阻まれた。
「陽向くん、行ったらダメだ」
俺は俺のものを取り返しにきただけなのにその態度はなんだ。
俺と陽向とを引き裂こうとするこいつは邪魔でしかない。さっさと眠らせてしまおう。
首から睡眠薬を投与すればそれはすぐに効き、ベッドに倒れ込んだ。
「瑠くん?どうしたの?大丈夫?」
陽向がその様子を心配することにわずかな苛立ちを感じる。
「陽向、行こうか」
陽向を担ぎ上げるとわずかに抵抗はするものの弱すぎる陽向の力ではたかが知れている。
そのまま車で空港まで連れて行くと、薬で眠らせてから貸し切った飛行機に乗せ、イギリスへと飛び立った。
イギリスの新しい家には広い地下室のあるものを選んだ。
広い地下室にはキングサイズのベッドだけが置いてあり、その上に陽向を寝かせると二重ロックの鍵をしめ、地上で荷物の整理を始めた。
それから3時間、そろそろ陽向が起きてくるかも知れないと思い、地下室に向かう。
「陽向、起きたか?」
声をかけると目を擦りながらも返事をしてくる。
まだ新しい環境に理解が追いつかないようで不安そうな表情を見せる陽向。
それを可愛いなんて呑気に思えた時が一番幸せだった。
新しい家を探検すると言った陽向に俺はこの部屋からは出せないと言った。今までだってそうだったようにこれからもそれは変わらない。なのに陽向はあろうことか瑠と俺を比べ出した。
「瑠くんはいろんなところに連れて行ってくれた」「瑠くんなら、、、」
陽向の口から俺以外の名前が出るだけでも不快で仕方ないというのに陽向は俺よりも瑠の方がいいという。
こんなにも愛しているのに。陽向のことを思って、大事にこの宝箱にしまっているのに。
赦せない。
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