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迎え(奏斗side)
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「?」
施設に帰ると門の前に見覚えのある車が止まっていた。以前俺を引き取りたいって言ってくれた、確か名前が、御園さんだ。
ガラガラ
「ただいま~ カスミさん帰ったよ」
「お帰りなさい奏斗くん。この前の御園さんがいらっしゃってるわ」
カスミさんに導かれるようにまた事務所までついていく。
コンコン
「失礼します」
少し緊張しながら部屋に入る。前回と違ったのは部屋にいるのが息子さんの方だけだったこと。
「奏斗くんおかえり」
「あ、はい」
「すいません小島さん、少し席を外していただけませんか。奏斗くんと2人で話がしたくて」
御園さんはそう言ってカスミさんを部屋から出した。
「奏斗くん、久しぶり。元気にしてたかな?」
「あ、はい、おかげさまで」
「よかった。前回言ったこと考えてくれたかな?」
「はい。ですが俺は、何度考え直してもここを離れるつもりはありません。」
「どうして?うちに来れば絶対奏斗くんに不自由させない。」
「ありがたいお話だとは思います。でも、俺はここが好きなので。」
しばらくの沈黙の後、御園さんが声を発した。
「奏斗くん、正直に言うとね、奏斗くんの意思なんていらないんだよ。」
「え?」
「俺のところに来ないか聞けば、奏斗くんはきっと受け入れるはずだと思ってこうやって奏斗くんに考える時間を与えた。でもね、奏斗くんが望まなくても俺が奏斗くんを見つけたときから奏斗くんは俺のものになることが決まってるんだよ。」
「どういう…」
ガチャッ
御園さんがドアを開けてカスミさんを中に呼んだ。
「奏斗くん、ごめんね」
カスミさんは申し訳無さそうな顔で言った。
「なんのことですか?」
「実は、何年か前から施設の支援者が減っていてずっとギリギリの運営を続けていたの。だけど御園さんが、奏斗くんを渡したら支援を約束するって言ってくださって。だから、奏斗くんには申し訳ないけど御園さんのところへ行ってほしいの。」
御園さんに視線を移す。
「こういうことだから奏斗くん、今すぐこの書類にサインして」
渡されたのは養子縁組の同意書だった。
今、俺がこれに同意すればみんなが路頭に迷うことはなくなる。でも、そしたらやっと見つけた俺の居場所はどうなる。
いや、そんな事を考えている場合ではない。俺のわがままでみんなに苦しい思いをさせたらだめだ。
葛藤しながらも、俺は渡された同意書にサインをした。
施設に帰ると門の前に見覚えのある車が止まっていた。以前俺を引き取りたいって言ってくれた、確か名前が、御園さんだ。
ガラガラ
「ただいま~ カスミさん帰ったよ」
「お帰りなさい奏斗くん。この前の御園さんがいらっしゃってるわ」
カスミさんに導かれるようにまた事務所までついていく。
コンコン
「失礼します」
少し緊張しながら部屋に入る。前回と違ったのは部屋にいるのが息子さんの方だけだったこと。
「奏斗くんおかえり」
「あ、はい」
「すいません小島さん、少し席を外していただけませんか。奏斗くんと2人で話がしたくて」
御園さんはそう言ってカスミさんを部屋から出した。
「奏斗くん、久しぶり。元気にしてたかな?」
「あ、はい、おかげさまで」
「よかった。前回言ったこと考えてくれたかな?」
「はい。ですが俺は、何度考え直してもここを離れるつもりはありません。」
「どうして?うちに来れば絶対奏斗くんに不自由させない。」
「ありがたいお話だとは思います。でも、俺はここが好きなので。」
しばらくの沈黙の後、御園さんが声を発した。
「奏斗くん、正直に言うとね、奏斗くんの意思なんていらないんだよ。」
「え?」
「俺のところに来ないか聞けば、奏斗くんはきっと受け入れるはずだと思ってこうやって奏斗くんに考える時間を与えた。でもね、奏斗くんが望まなくても俺が奏斗くんを見つけたときから奏斗くんは俺のものになることが決まってるんだよ。」
「どういう…」
ガチャッ
御園さんがドアを開けてカスミさんを中に呼んだ。
「奏斗くん、ごめんね」
カスミさんは申し訳無さそうな顔で言った。
「なんのことですか?」
「実は、何年か前から施設の支援者が減っていてずっとギリギリの運営を続けていたの。だけど御園さんが、奏斗くんを渡したら支援を約束するって言ってくださって。だから、奏斗くんには申し訳ないけど御園さんのところへ行ってほしいの。」
御園さんに視線を移す。
「こういうことだから奏斗くん、今すぐこの書類にサインして」
渡されたのは養子縁組の同意書だった。
今、俺がこれに同意すればみんなが路頭に迷うことはなくなる。でも、そしたらやっと見つけた俺の居場所はどうなる。
いや、そんな事を考えている場合ではない。俺のわがままでみんなに苦しい思いをさせたらだめだ。
葛藤しながらも、俺は渡された同意書にサインをした。
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