御曹司に捕まった孤児

胡宵

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心の穴(冬夜side)

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「冬夜様、お迎えに上がりました。」
「ああ。」

学校が終わり、いつもと同じように校門の前に止まっている迎えの車に乗り込む。

「この後、18時より南雲邸にて行われるパーティーに出席するようお父上から仰せつかっております。」
「、、、。」
 
進学先がすでに決まっていることもあってか、最近はパーティーに参加させられる頻度が増えた。おおかた、俺の婚約者選びが目的なのだろう。
正直、どれが婚約者になろうと大して興味はない。ただ、こうも頻繁にパーティーに参加させられるくらいならさっさと決めてくれれば少しは休む時間ができるというのに。
そんなことを思いながらふと窓の外を見たときだった。
花屋で嬉しそうに微笑む一人の姿が目にうつったのは。

「っ!」

本当に一瞬だった。時間にすれば3秒にも満たない時間だろう。それなのに俺はそいつから目が離せなかった。

「止めろ!!」

突然の怒鳴り声に運転手は驚き、しばらくしたところで車を止めた。

「冬夜様、どうされ、、、」

運転手の声には耳も傾けず、車から飛び出した俺はさきほど見えた花屋へ走り出した。

(ほしい。さっきの。やっと見つけた。俺のものだ。ずっと探していたんだ。)

運命だと思った。
ずっと、何を与えられても埋まることのなかった心の隙間が、その姿をひと目見ただけで満たされていくように感じた。
何としてでも手に入れる。そう強く心に決めた。

「どこだ!くそ!」

冬夜が花屋についたとき、あの姿はもうなかった。あたりを見渡してもそれらしき姿はない。

「冬夜様!どうされたのですか」

遅れて運転手が迎えに来た。

「いや、なんでもない。今日のパーティーは参加しない。親父にそう伝えろ。屋敷に帰るぞ。」
「承知致しました。」

絶対に見つけてやる。そして俺のものにするんだ。どんな手を使ってでも。
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