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○~第7章~○ 憧れのオ・マーン公国編

1射精目! クリスマスへ向けて①

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「――というわけなんじゃ」
「ふ~ん。で、その卵子じゃない女の人、本当に来たの?」
「ああ。来たよ…… ワシらはそれから毎晩同じ山の頂上で落ち合うことにした」
「敵同士なのに!?」
「ああ。今思えばおかしいよな。昼はお互い戦って、夜は一緒に魔法の修行なんてな」
「絶対おかしいだろ」
「まあな。それももう昔の話じゃ。アイツももう生きてはいまい。そんなことよりテツオ、そろそろじゃ!」
「うしっ!」

 俺は両手で自分の頬をパンっ! と叩き気合を入れた。
 今日の射精は一味違う。はず。
 なんて言ったって今日はクリスマス・イブなのだから!


      『Sオナ!』
 ~SランクDNAの精子だけど、今回どう見てもオナ○ニーです~○~○
     ○~第7章~○ 精子:テツオ編


 今から遡ること約1か月。
 あの小説、“変態魔法賢者アレックスの大冒険~中だしパラダイス~”の作者がじいちゃんだと判明して以来、俺とエイデンは魔法の修行をじいちゃんに見てもらうこととなった。

「ふむ。エイデンはもう卒業といったところじゃな。後は実戦で鍛え、そのまま受精を目指すのじゃ」
「ありがとうさ」
「じいちゃん俺は!?」
「テツオ、お前はダメじゃ。そんな魔法の威力じゃオ・マーン公国に行った途端瞬殺じゃぞ」

 俺には魔法のセンスが全くなかった。
 一応、サンダーもマラも出せるようにはなったのだが、いかんせん物質の量自体が全然足りず、威力もめちゃ弱だった。火系の魔法であるマラなんて、ロウソクの火くらいだった。

「テツオは集中力が足りんのじゃ。そんな浅い宇宙では魔法となる物質もいないじゃろうに」
「うるせ! 俺だって頑張ってんだよじじい!」
「ま、待て! どこ行くんじゃ!」
「あー。また始まったさ」

 この光景が当たり前の日常になってしまっていた。
 どんどんと魔法が成長していくエイデンに対し、俺は全くだった。
 そしてそのまま2週間ほど経過したある日――

『うわぁぁぁあああああああ!!』

 俺が魔法の修行をサボって家の裏山で昼寝をしていたところ、スパ次郎が大声を上げ、スマホ片手に慌てて飛んできたのだ。

「どうしたんだよそんな血相変えて。っていうかスパ次郎久しぶりだな」
『テツオ! えらいことやで! いや、えらいことが起こるんやで!』
「え? なになに? 」
『再来週の12月24日はクリスマス・イブって言うらしい!』
「……それがどうしたんだよ」
『本題はこっからや! よう聞きや。12月24日のセックスはだいたいらしい!』

!!

「っということは!?」
『せや! オ・マーン公国へやっと行けるんや!』
「ま、マジか!?」
『ああ! マジや!」
『「うぉぉおおおおおおおお!!」』

 俺とスパ次郎は抱き合って歓喜した。

『テツオ! 残り2週間で魔法の修行も終わらせてもらうんや!』
「…………そ、それが」

◇◆◇

 実は魔法の修行が上手くいっていないことをスパ次郎に打ち明けた。

『マジか…… SランクDNAが付与されてても魔力には関係ないねんな』
「うん…… 俺も最初そう思ってた。SランクDNAの俺はきっと特別なんだって……」
『で、でもさ! 一応使えるには使えるんやろ!?』
「ああ。サンダーとマラの2種類使えるようになったよ」
『それだけでもスゴいやん。なあ1回見せてやテツオの魔法』

“それだけでもスゴい”
 魔法の修行をしだして初めて褒めてもらえた言葉だった。
 スパ次郎の言葉に気を良くした俺は、いかにも魔法使いっぽくゴニョゴニョと詠唱し、大声を張り上げ火系の魔法“マラ”を出した。

「出でよ! マラっ!」

…………ポっ

 俺の右手の平からは、いつも通りローソクレベルの火が出た。

『ちっさwwww え!? ナニコレ? ローソクやん! しかも誕生日ケーキに刺さってる細い方のローソクレベルやんwww え!? ナニナニ!? 自分これでほんまに魔法使えるとか言うてたんwww 草生えるでほんま』
「くそがぁぁあああ!」

 ブチ切れた俺は、スパ次郎の毛むくじゃらの下半身に火をつけてしまった。

 ボッ! ボボボッ!

『お! おい! なにすんねん! あっ! あっ! ぎゃぁぁああああああああ!!』 

 瞬く間に火だるまになってしまったスパ次郎を見て、俺は正気を取り戻した。そして毛はよく燃えることも理解した。

「し、しまった! どどどどうしようスパ次郎!!」
『助けて! ダズゲテ! アヅイ! テツオ水! 水ぶっかけて!』
「みみみ水? 水なんて持ってない!」

 俺たちがいる場所は家の裏山の中腹だった。
 今から家に水をとりに戻っていては到底間に合うはずがなかった。

『ぎゃぁぁああああああ! なんでもいいから早ぐだずげでぇぇえええ!』

 空中に浮遊していたスパ次郎が地面に落ち、ゴロゴロとのたうち回り出した。

「ああぁぁぁああああどうしよどうしよどうしよ!」

 俺はパニックになり、髪をクシャクシャと掻いた。
 その時――

 チャポンッ……

 頭の中に溜まっていた酵素が揺れ、音が鳴った。

(これだっ!)

 酵素は液体 ⇒ 液体は水 ⇒ 水で火が消える ⇒ スパ次郎が助かる
 という単純な発想だったが、“これしかない!”と思った。
 そしてすぐさま頭頂部の切れ目を目いっぱい広げた俺は、もがき苦しむスパ次郎に全ての酵素をぶっかけた!
 ※いやらしい表現ではありません

 が、次の瞬間―― 

ッドォォォォオオオオオオオオオオオン!!
  
(え……)

 酵素をぶっかけた瞬間、なんとスパ次郎から凄まじい火柱が上がったのだ。火柱の先端部分は雲を突き抜け、目視できないほどの高さだった。

(な、なんで……)

 原因を探っている場合ではなかった。
 火柱の中心にいるスパ次郎は真っ黒になっており、動くこともなく声を発することもなくなっていた。そんなことはお構いなしに火柱は炎々と燃え続けている。

「なんとかしなきゃ! スパ次郎が―― ス…… パ…… あ、あれ……?」

 なぜか突然強烈なめまいに襲われ、俺はその場で倒れ込み、そのまま気を失ってしまった。
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