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幕間~○2
婆や(キヨ子)の過去 その1
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――アレックスと初めて出会ったのは…… そう。子宮城の第1の城門にある砦だった。
若くして士官学校を首席で卒業し、オ・マーン公国の軍事指揮官に着任したばかりの私の最初の仕事は、この最初の、第1の城門に到着する精子を全滅させることだった。
「あら。今度来た指揮官さんはなんともかわいらしいお嬢さんだこと」
「おいおい! 精子と戦う前にオムツを交換した方がいいんじゃねーのか!?」
「「「ワハハハ!!」」」
歳が若い上に童顔だった私が、指揮官にまで登り詰めたのが気に入らなかったのだろう。
部下であるはずの白血球ゴリラたちは皆、私を見てヤジを飛ばした。
「おい! 偵察ゴリラ! 現在の精子の数を教えろ!」
「ウッホ!? ウホウホウッホ? ウホオオオオオ!」(あ? なんだって? 偵察ゴリラ様だろがぁあああ!と言っています)
※頭の悪い白血球ゴリラはしゃべれません
「おい! 誰か敵の数を知っている者はいないのか!? 作戦が立てれないじゃないか!」
「へへ……」
「くっくっく……」
私の必死の問いかけに対し、白血球ゴリラたちは薄気味悪い笑みを浮かべるだけであった。
「へいへい新しい指揮官さんよ。数なんてどうでもいいじゃんかよ。精子たちが来たら突っ込んで抹殺する。それだけでいいんじゃねーの? 俺らは今までそうやってきたんだぜ?」
「「「そうだそうだ!」」」
「「「ウッホウッホ!」」」(そうだそうだ!と言っています)
「馬鹿者! そんなだから前の指揮官が殺されてしまったのだ! そんなことも分からないのか!!」
「前のアイツが死んだのは弱えから悪いんだよ!」
「「「ウッホウッホ!」」」(そうだそうだ!と言っています)
間もなく精子たちがここを攻めてくるというのにも関わらず、私は部下の白血球ゴリラたちをまとめることすらできていなかった。バナナの皮を投げてくるゴリラまで出る始末だった。
私はそこで悟った。
“ここ”では精子も含めて全てが敵であると。頼れるのは自分だけだと……
そう落胆しているその時だった――
カンカンカン! カンカンカン!
!!
見張り塔の報せが鳴った。
精子たちがもうそこまで来ているという合図だ。私は自身の初陣に息を飲み、手がじんわりと汗ばんでいるのが分かった。
一方、白血球ゴリラたちは、まるで待ちに待ったオモチャでも到着したかのように甲高い雄たけびを上げ、砦から飛び出し突っ込んで行った。
「キタ来た! 行くぞぉぉおおおお!」
「ウホッ! ウホッ! ウホォォオオオ!」(あとに続けぇぇえええ!!と言っています)
「ま、待て! おい! 勝手に行くな! まだ作戦を伝えてないだろうがっ!」
――が、気が付けば砦の屋上にいるのは私一人だけになってしまった。
(クソッ! アイツら……)
出遅れた私は、鉄の女第5形態:おデコに一重ひとえの千里眼 ※通称ハッブルの能力を展開し、城門の遥か向こうで精子と白血球ゴリラが戦闘を繰り広げる様子を観察することとした。
精子はざっと見積もって3,000体はいた。士官学校で習った通り移動速度が早い。
が、精子たちには悪いがこちらの戦力は圧倒的だ。精子たち3,000体に対し、白血球ゴリラは精子たちの倍の6,000頭はいる。アイツらがうれしそうに突っ込んでいくわけだ。
(私が出る幕もないか……)
そう、安堵したその時だった――
ッズゥゥウウウウウンンン!!
「なっ!!」
一瞬ピカッと光ったと同時に凄まじい爆風が私のいる砦まで到達した。
私は何が起こったのか分からずその場で身を伏せ、爆風が通り過ぎるのをじっと待った。
(な、何が起こったというのだ!?)
そう思いながら爆風が通り過ぎたのを確認し、ゆっくり立ち上がり戦況の確認を行った。
が――
「え……?」
私がさっきまで眺めていた景色から一変しており、地面には巨大なクレーターができ、そこから黒い禍々しい煙が上がっていた。
クレーターの周りには、黒焦げになった白血球ゴリラが数百頭と倒れている。
(あ、あれは……)
火の魔法であるということはすぐに分かった。しかし、あれほどの規模の魔法を出せるのは恐らくこの国にはいない。
「っということはまさか精子が!?」
その時だった――
「マラゾーマっていう名前にしたんだ」
!!
私の背後から突然聞き慣れない声がした。
突然現れたそいつからは凄まじい殺気が溢れだしており、生まれて初めて後ろをとられた私は動くことすらできなかった。
(いつ後ろをとられた? いやでも動いたら…… 殺される!!)
しかし、そいつは私に構うことなく背後から近づき、私の右肩をポンと触り、
「ねえ? 聞いてる?」
と言ったのだ。思わず私は「キャッ!」という乙女チックな甲高い声を出してしまったが、右肩に置かれたそいつのその手を振り払い、睨み付けた。
「あっ! ごめんごめん。殺気を消すの忘れてた!」
そいつが軽いノリでそう言った途端、先ほどまでとはウソのように殺気が消えていった。
ニコッと軽い笑みを浮かべたそいつは紛れもない精子だった。
「君がここの指揮官だね? 初めまして。俺は精子のアレックス!」
若くして士官学校を首席で卒業し、オ・マーン公国の軍事指揮官に着任したばかりの私の最初の仕事は、この最初の、第1の城門に到着する精子を全滅させることだった。
「あら。今度来た指揮官さんはなんともかわいらしいお嬢さんだこと」
「おいおい! 精子と戦う前にオムツを交換した方がいいんじゃねーのか!?」
「「「ワハハハ!!」」」
歳が若い上に童顔だった私が、指揮官にまで登り詰めたのが気に入らなかったのだろう。
部下であるはずの白血球ゴリラたちは皆、私を見てヤジを飛ばした。
「おい! 偵察ゴリラ! 現在の精子の数を教えろ!」
「ウッホ!? ウホウホウッホ? ウホオオオオオ!」(あ? なんだって? 偵察ゴリラ様だろがぁあああ!と言っています)
※頭の悪い白血球ゴリラはしゃべれません
「おい! 誰か敵の数を知っている者はいないのか!? 作戦が立てれないじゃないか!」
「へへ……」
「くっくっく……」
私の必死の問いかけに対し、白血球ゴリラたちは薄気味悪い笑みを浮かべるだけであった。
「へいへい新しい指揮官さんよ。数なんてどうでもいいじゃんかよ。精子たちが来たら突っ込んで抹殺する。それだけでいいんじゃねーの? 俺らは今までそうやってきたんだぜ?」
「「「そうだそうだ!」」」
「「「ウッホウッホ!」」」(そうだそうだ!と言っています)
「馬鹿者! そんなだから前の指揮官が殺されてしまったのだ! そんなことも分からないのか!!」
「前のアイツが死んだのは弱えから悪いんだよ!」
「「「ウッホウッホ!」」」(そうだそうだ!と言っています)
間もなく精子たちがここを攻めてくるというのにも関わらず、私は部下の白血球ゴリラたちをまとめることすらできていなかった。バナナの皮を投げてくるゴリラまで出る始末だった。
私はそこで悟った。
“ここ”では精子も含めて全てが敵であると。頼れるのは自分だけだと……
そう落胆しているその時だった――
カンカンカン! カンカンカン!
!!
見張り塔の報せが鳴った。
精子たちがもうそこまで来ているという合図だ。私は自身の初陣に息を飲み、手がじんわりと汗ばんでいるのが分かった。
一方、白血球ゴリラたちは、まるで待ちに待ったオモチャでも到着したかのように甲高い雄たけびを上げ、砦から飛び出し突っ込んで行った。
「キタ来た! 行くぞぉぉおおおお!」
「ウホッ! ウホッ! ウホォォオオオ!」(あとに続けぇぇえええ!!と言っています)
「ま、待て! おい! 勝手に行くな! まだ作戦を伝えてないだろうがっ!」
――が、気が付けば砦の屋上にいるのは私一人だけになってしまった。
(クソッ! アイツら……)
出遅れた私は、鉄の女第5形態:おデコに一重ひとえの千里眼 ※通称ハッブルの能力を展開し、城門の遥か向こうで精子と白血球ゴリラが戦闘を繰り広げる様子を観察することとした。
精子はざっと見積もって3,000体はいた。士官学校で習った通り移動速度が早い。
が、精子たちには悪いがこちらの戦力は圧倒的だ。精子たち3,000体に対し、白血球ゴリラは精子たちの倍の6,000頭はいる。アイツらがうれしそうに突っ込んでいくわけだ。
(私が出る幕もないか……)
そう、安堵したその時だった――
ッズゥゥウウウウウンンン!!
「なっ!!」
一瞬ピカッと光ったと同時に凄まじい爆風が私のいる砦まで到達した。
私は何が起こったのか分からずその場で身を伏せ、爆風が通り過ぎるのをじっと待った。
(な、何が起こったというのだ!?)
そう思いながら爆風が通り過ぎたのを確認し、ゆっくり立ち上がり戦況の確認を行った。
が――
「え……?」
私がさっきまで眺めていた景色から一変しており、地面には巨大なクレーターができ、そこから黒い禍々しい煙が上がっていた。
クレーターの周りには、黒焦げになった白血球ゴリラが数百頭と倒れている。
(あ、あれは……)
火の魔法であるということはすぐに分かった。しかし、あれほどの規模の魔法を出せるのは恐らくこの国にはいない。
「っということはまさか精子が!?」
その時だった――
「マラゾーマっていう名前にしたんだ」
!!
私の背後から突然聞き慣れない声がした。
突然現れたそいつからは凄まじい殺気が溢れだしており、生まれて初めて後ろをとられた私は動くことすらできなかった。
(いつ後ろをとられた? いやでも動いたら…… 殺される!!)
しかし、そいつは私に構うことなく背後から近づき、私の右肩をポンと触り、
「ねえ? 聞いてる?」
と言ったのだ。思わず私は「キャッ!」という乙女チックな甲高い声を出してしまったが、右肩に置かれたそいつのその手を振り払い、睨み付けた。
「あっ! ごめんごめん。殺気を消すの忘れてた!」
そいつが軽いノリでそう言った途端、先ほどまでとはウソのように殺気が消えていった。
ニコッと軽い笑みを浮かべたそいつは紛れもない精子だった。
「君がここの指揮官だね? 初めまして。俺は精子のアレックス!」
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