Sオナ! ~SランクDNAの精子だけど、今回どう見てもオ○ニーです~○~○

巻き爪たろう

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幕間~○1

じいちゃん(アレックス)の過去

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「キンタマーニ王に伝令! 伝令! 魔法賢者のアレックスがオ・マーン公国より帰還いたしました!」
「き、帰還!? 帰還だと!? 何かの間違いではないのか!」
「い、いえ…… 確かに戻ってきております」
「して、アレックスは今どこなのだ!」
「それが疲れ切っている様子でして…… 現在は兵の宿舎で休ませております」

◆◇◆

 目が覚めると、そこは見慣れない天井だった。

(俺はまだ生きてるのか……)

 目を覚ました場所は見慣れない天井であったが、ここがキンタマーニ王国だと気付くには時間がかからなかった。
 ふと左の頬を軽くさすってみる。
 の最後の攻撃の痛みが、温もりが…… まだ残っているような気がした。
 
 俺はオ・マーン公国から戻ってきてしまった……


         『Sオナ!』 
 ~SランクDNAの精子だけど、今回どう見てもオナ○ニーです~○~○
  ○~幕間その1~○ じいちゃん(アレックス)の過去


「アレックス、アレックス。私だ。入るぞ」

 キンタマーニ王の声で俺は再び目を覚ました。あれからまた眠ってしまっていたようだ。
 王が入室する前に体を起こし、ひざまずこうとしたが体に力が入らず、全く動くことができなかった。

「申し訳ありませんキンタマーニ王。恥ずかしながらどうにも体が動かないのでございます」
「いや構わん。そのままで良い」

 王がそう言うと俺の近くまでやってきて、険しい顔つきとなりつま先から頭のてっぺんまでくまなくジロジロと見始めた。

「アレックスよ。お前という者がここまでボロボロになるとは…… 一体何があったのだ」
「それは……」

 俺はそっと目を閉じ、オ・マーン公国で起きたこと、戻ってきてしまった現象を全て王に話した――

「……なんと。そんな出来事がオ・マーン公国で本当に起こったのだな?」
「はい。間違いありません」
「うーむ…… 困ったことだぞそれは」
「ええ。このままでは射精にイク精子はこの国からいなくなってしまうことも危惧されます」
「………………」
「………………」
「………………」
「………………」

 長い沈黙だった。
 王が黙っているのは、この国の今後の制度や教育を考えてくれているものだと思っていた。俺は王の考え込む表情をじっと見つめていた。
 だが王が最初に言葉にした内容は、俺の期待するそれではなかった。

「アレックスよ……」
「はい」
「オ・マーン国で起こった出来事は全て秘密にするのだ」
「!? しかし! 王!」
「私とお前だけの秘密にしておくのだ。よいな」

 王はそれだけ言うと、俺に背を向け部屋から出て行こうとした。もちろん俺は抵抗した。

「王! このままでは…… このままでは射精にイク精子全てが皆殺しにされるだけです!」
「アレックス。もしお前がこのことを口外するようなことがあれば、お前を殺すだけでは済まさん。親兄弟、親戚、そしてこれからお前の家族となる者も全て殺す。よいな」
「………………」

 それ以上は言い返すことができなかった。

◆◇◆

 あれから3日ほど静養し、俺は西の村の自宅へ戻ってきた。
 射精から帰還した俺を見て両親はとても驚き、その理由を尋ねてきたが本当のことを言える気にならなかった。俺は悩んでいた。

(今もこの瞬間も射精が行われている。毎回2億5千万もの精子たちが犬死にするのを俺は黙って見ていろというのか!)

 こんなことなら…… こんなことなら……

「アイツに殺されていた方が良かったかもな」

 俺は左頬をさすりながら目を閉じ、アイツとの最後の一戦を思い出した。

◆◆◆

「ま、待てアレックス! お前まさか逃げるつもりじゃないだろうな……」
「逃げるつもりはない! だがこのままではお前も俺もあの空間に吸い込まれてしまうぞ!」

 俺とアイツはすごい勢いでに吸い込まれそうになっていた。俺は短剣を地面に突き刺し、なんとか吸い込まれるのを耐えに耐えていた。

「ちいっ! 仕方がない! 待ってろ! 鉄の女アイアン・レディ! 最終形態:鉄の処女アイアンメイデンキヨ子!」

 アイツがそう言うと特殊能力を発動し、全身鉄の塊となり、吸い込まれる影響をほとんど受けなくなった。

「アレックス! お前も手を出せ! 私が手を繋いでおいてやる!」

 差し出されたアイツの鉄の右手を俺は必死で握った。
 お互い敵同士で何度も死闘を繰り広げてきたが、いざ手を繋いでみるとなんともかわいらしい手であることに気付いた。

「…………」
「…………」

 一瞬でも力を抜くと空間に吸い込まれてしまう激しい状況の中、お互い何故か黙ってしまった。

「か、かかかわいい手だな……」
「なっ! ………………ば、ばか! そんなこと言っている場合じゃないじゃない」

 アイツがそう言うと、左手で俺の左頬を思いきりひっぱたいてきた。

「て、鉄の手でたたくなよ!」

 そう言ってアイツの左手を確認したが、左手だけ鉄化が解除され、通常の手に戻っていた。

「す、すまない……」
「………………」

 そうしている間にも空間の吸い込む力がどんどん増し、俺はアイツの右手を握り続けるのに体力的にも限界を感じていた。

(このままでは……)

「が、頑張れアレックス! 絶対に手を離すなよ!」
「キヨ子。すまない。俺はもう限界だ」
「バカなこと言うな! まだ闘いの決着もついてないじゃない!」
「もしも…… もしも次に会えることができたら―― そのときは――」


 “一緒になろう”


 そう言おうと思った。
 しかし口に出そうとしたその瞬間、俺の握力は限界に達し、アイツの手を放してしまった。

(しまったっ!)

 その瞬間、俺は凄まじい勢いで空間に吸い込まれていった。
 最後に見たアイツの顔はなんとも寂しげな表情であり、今まで幾度となく死闘を繰り広げてきた相手とは思えないほど魅力的で…… なんていうか…… かわいかった。

 そして完全に空間内に吸い込まれてしまった俺は気を失い、目を覚ませばキンタマーニ王国の兵の宿舎だった。

 俺は再び左頬をさすった。
 アイツの、キヨ子の温もりだけが残っているような気がした。

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