Sオナ! ~SランクDNAの精子だけど、今回どう見てもオ○ニーです~○~○

巻き爪たろう

文字の大きさ
上 下
26 / 53
○~第5章~○ 射精の苦悩

2射精目! セックスの先に

しおりを挟む
 ――精暦せいれき2018年11月25日

 その日、“セックス”が起きた。
 巨大直下型地震だと思っていたそれが“セックス”だった。

『テツオやったな! これでとうとうオ・マーン公国に行けるぞ!』

 オ・マーン公国にいける――。つまり“膣美さんに会える”。
 そう思うと、久しく忘れていた膣美さんへの想いが一気に込み上げ、俺は急に緊張してしまい、頭頂部の割れ目から酵素がピュッと出てしまった。
 ※いやらしい表現ではありません

『ほら! 酵素垂れ流しとらんとはよ準備して行くぞ!』
「で、でもさ、次の射精もセックスとは限らないんじゃないの?」
『安心せい。1回セックスが起きると最低でも3回、長いのなんて何十年も続くんや!』

 スパ次郎は自信満々に言い放つが、自身のスマホで調べながら説明しているので説得力に欠けた。
 そう思っていた矢先――


ドンッ!!!!
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!


 また同じ地震!? いやセックスが起きたのだ。

『おいマジかよ…… 短時間に2回連続セックスが起こってるやんけ! テツオ! はよ!』
「分かってる! 今いく!」

 俺は急いで着替えを済ませ、眠っているじいちゃんに最後の別れの挨拶をしようとベッドの側へ寄った。
 じいちゃんは2回目のセックスで起きた震動を気にすることもなくスヤスヤ眠っていた。
 
(多分…… これで最後の別れとなる)

 そう。
 俺はSランクDNAの精子。受精が約束された精子。
 だから――
 セックスが起こっている今このタイミングで射精されれば――

「じいちゃん。俺、イッてくるわ。……今まで、ありがとう」

 一筋の涙が頬を伝った。

◆◇◆

「お前さん、パパやママはいないのか?」
「…………」
「兄弟は? お兄ちゃんや妹もいないのか?」
「…………いない」

 俺は生まれた時から一人ぼっちだった――

 全ての精子は、キンタマーニ王国の“おちんちんビローン病院”※国立です の西病棟と東病棟のどちらかで生まれる。
 この西病棟と東病棟の2階から5階には精巣フロアがあり、そこには小葉しょうよう室というユニットが合計300も区切られている。
 この小葉室はそこから更に精細管せいさいかんという小部屋へいくつも分岐し、みんなそこの小部屋で生まれ、生まれた者同士家族となっていく。

 俺もその精細管の小部屋で生まれた。が、周りをいくら見渡しても誰もいなかった。
 一人で精細管の小部屋を出ると、余所の精子たちはみんな笑顔を浮かべ、生まれた喜びを分かち合い、光に満ち溢れていた。
 思わず目を逸らした先に掲示板があり、そこに張り付けられているあるチラシに目が留まった。

【一人ぼっちで生まれてしまった精子へ! ようこそ! 児童養護施設『デカ・マラ・ドーナ』へ!】
・一人でクヨクヨしないで!
・一緒に精子ライフを楽しみましょう!
・アットホームな施設です!
電話番号:0990-072-○○○

 なんで児童養護施設なのに電話番号がダイヤルQ2なんだろう?とまでは思うことはなかったが、怪しい臭いがプンプンしていた。

 頼るところがない。お金がない。のどが渇いた…… 腹が減った…… もう…… もう……

(死ぬしかない……)

 生まれながらにしてそう思うようになっていた。
 そんな時――

「お前さん、パパやママはいないのか?」

◇◆◇

 あの日からじいちゃんが俺の親代わりとなり、育ててくれた。

「じいちゃん。……今までありがとう。俺、イッてくるわ」

 できるだけ小声で、だけどきちんと聞こえる声でお別れの挨拶をした。
 一筋の涙が頬を伝い、じいちゃんの広いおでこに一滴落ちた。

「……ん んーー……zzz ……キヨ子 ムニャムニャ……」
「ハ…… ハハ…… 最後になんだよもう。キヨ子ってだれだよ」

 寝言でわけの分からないことを言うのもじいちゃんらしかった。
 俺は笑顔で家を出ることができた。


『テツオはよはよ! もっと早く走るんや!』
「分かってるよ! これでも全力だっつーの!」

 全力でひた走り、キンタマーニ王国のゴールデンキャッスル ※通称:金城かねしろ の前にある国民集会広場で射精の受付の手続きを行っていた。
 そのとき――


ドン!!
ゴゴゴゴゴゴゴ!!


 なんと3回目のセックスが起きたのだ。

『おいおいウソやろ!? 連続3回もセックスが起きるとかただのサルやんけ』
「とにかく急ごう! このセックスの間隔だとあともう1回くらい起きそう!」

 そう言いながら12の射精の手続きを済ませ、金城の屋上にある発射砲台まで駆け上がった。12回目となるともう慣れたものだ。
 しかし、屋上の発射砲台に到着した俺は驚愕する。

「だ、誰もいない!?」

 そう。
 いつもは何億といる精子が人っ子一人いなかったのだ。
 アナウンサーも模擬店の売り子も会場整理係すらもいない状況だった。

『そら3回もセックスが起こったらこうなるわな』
「ど、どういうこと?」
『オナニーよりもセックスの方が射精量が多いってことやろうな。前戯長いし』

 スパ次郎が何を言っているのか俺にはさっぱり分からなかったが、とにかく今のこの状況でセックスが起きればグループ分けなんてないはず! つまり花の2グループを確保できるわけだ。
 ※グループ分けについては第3章4射精目参照

『よっしゃ! テツオ! 行くで!』
「うしっ! 行くぞ!」

 俺とスパ次郎が発射砲台に入り、2グループが位置する枠まで砲台内を移動した。
 そしてついに――

ドンッ!!!

 縦に一度大きく揺れたと思った瞬間、背後から物凄い勢いで押し出された!
 12回目だがこれは何度味わっても怖い!

『えー、この速度な、時速45㎞くらいやねんけど、お前ら精子からしたら秒速12㎞やねんて!』

(びょ、秒速!? っていうかそんな情報どうでもええわ!) 

 と言いたいがなにせ秒速12㎞の速さだ。当然呼吸することもできなければしゃべることなんてできるわけがない! だけどこの砲台を抜ければ膣美さんに会える!

(うおぉぉぉおおおおおおおおおおお!!)

 俺は声にもならない声を出した!
 そして外の! あの光り輝く“世界”に飛び出したんだ!


~○ ~○ ~○ ~○ ~○ ~○


「う…… うう。ここは……」

 外の光り輝く世界の明るさにようやく目が慣れ始めた俺はまっさきにその地面を確認した。

「ティ! ティッシュじゃない! スパ次郎! ティッシュじゃない!!」
『そうやな』
「ついに! ついに膣美さんのいるオ・マーン公国に来たんだ!!」

 オ・マーン公国はとても美しい国だった。
 全てが緑がかっている。
 
「スパ次郎! 見てみて! 地面がブヨブヨしてる!」

 空気はキンタマーニ王国とは違い、ちょっと変な臭いだったけど我慢できるレベルだった。

「行こう! スパ次郎! 膣美さんに会いに!」
『……テツオ。ちょっと言いにくいんやけど』
「えっ? なになに聞こえない」
『……あのな、ここはオ・マーン公国やない』
「は? なに言ってんだよ! ちゃんとセックスが起きたからこの国に来れたんじゃないか」
『……ここな、コンドームやわ』
「ふぇ?」


○~【次回予告】~○
 やめて! コンドームの中に射精されてしまっては精子はなにもできないの! 3日は生きれるけどこのままだったらテツオの精神まで燃え尽きちゃう!
 お願い死なないでテツオ! あんたが今ここで倒れたら、アタシとの約束はどうなっちゃうの? ライフはまだ残ってる。ここを耐えればアタシに会えるんだから!

 次回Sオナ! 「テツオ死す!」 受精デュエルスタンバイ!
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

覚えたての催眠術で幼馴染(悔しいが美少女)の弱味を握ろうとしたら俺のことを好きだとカミングアウトされたのだが、この後どうしたらいい?

みずがめ
恋愛
覚えたての催眠術を幼馴染で試してみた。結果は大成功。催眠術にかかった幼馴染は俺の言うことをなんでも聞くようになった。 普段からわがままな幼馴染の従順な姿に、ある考えが思いつく。 「そうだ、弱味を聞き出そう」 弱点を知れば俺の前で好き勝手なことをされずに済む。催眠術の力で口を割らせようとしたのだが。 「あたしの好きな人は、マーくん……」 幼馴染がカミングアウトしたのは俺の名前だった。 よく見れば美少女となっていた幼馴染からの告白。俺は一体どうすればいいんだ?

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

僕と精霊〜The last magic〜

一般人
ファンタジー
 ジャン・バーン(17)と相棒の精霊カーバンクルのパンプ。2人の最後の戦いが今始まろうとしている。

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

処理中です...