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○~第2章~○ 卵子:膣美(ちつみ)

2排卵目!このブス

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 オ・マーン国立卵巣スタジアム――

 普段は、女子ソフトボールリーグに使用されているスタジアムであるが、今日という日はその様相を変える。
 スタンド観客席は、オ・マーン公国の国民のほとんどが集まり、“その瞬間”を今か今かと心待ちにし、ざわめき立っている。

 そう。
 今日という日は、排卵最終試験日なのだ。つまり、20万人の卵子の頂点に立つ者が決まる。

◇◆◇

「今日の最終試験、何家と何家なんだい?」
「ハッ! 土田つちだ家と草谷くさや家にございます閣下!」

(土田家…… ああ。膣実か。もうそんな歳になったんだな)

「時に子宮こみや子宮しきゅう閣下!」
「ん? なんだい?」
「そろそろ本日の最終試験内容をお決めください!」
「ああ。そうだったな……」

(膣美のことだ。暴れたいに決まっている)

「えーっとじゃあ、“死ぬまで殴り合い”で」
「ハッ!」

◇◆◇

 膣美さまは本当に困ったお方です。

 結局、お屋敷を出発できたのは朝の9時でした。
 お屋敷から最終試験会場であるオ・マーン国立卵巣スタジアムまで、馬車で1時間はかかるというのに……
 本来なら遅刻も遅刻大遅刻であり、出場取り消し処分を受けるところでございます。
 なのに膣美さまときたら……

「キャハハハ! 婆や! もっとよ! もっとスピード出して!」

 あろうことか、私の特殊能力である『鉄の女アイアン・レディ』第2形態:モデル膣鳩ちつばと※通称チッツー を移動用としてお使いになったのでございます。

 しかし、そうは言っておれませんでした。
 なんとしても9時30分までにオ・マーン国立卵巣スタジアムへ到着しなければなりません。

 私は精一杯飛びました。
 力の限り大空を駆け抜けました。
 結果、2分で着きました。

「婆や…… 早すぎ……」

 スタジアムの関係者出入り口前に到着しましたが、膣美さまは私が飛ぶそのスピードに耐えるのに必死であったようで、フラフラになっておりました。
 これにはこの婆や、猛省にございます。

 風の影響を直接受けたためか、膣美さまの髪はこの世界に重力が失われてしまったのかと心配になるほど逆立っておりました。
 そのお姿はまさに、1990年代のビジュアル系バンドが如くにございました。
 ※マリスミゼルがいつの間にか活動を休止しておりました。

「相変わらずダッセー髪型してんなー! 膣美!」

!!

 突然、私どもの後方から声がかかりましたので、膣美さまと私が同時に振り返ると、そこにはオカッパ頭のお嬢様が立っておられました。この方は確か……

「ば、婆や。もしかして…… 最終試験の相手ってまさか……」
「どうやら…… そのようでございますね膣美さま」

 そう。
 排卵最終試験の相手は、名家、草谷家の長女であり膣美さまと同じ歳、そして幼少からのライバルでもある、“草谷 満子くさやまん○こ”お嬢様にございました。

 私も久しぶりに満子お嬢様をご拝見致しましたが、控えめに言ってブスでございました。
 ただ…… 見るからに体の大きさは圧倒的にこのブス…… 失礼いたしました。満子お嬢様の方が大きく成長されたようです。

「膣美! 今日の最終試験の競技、もう聞いたか?」
「いえ…… いま到着したばかりなの……」
「なら教えてやるよ! 喜べ膣美! “死ぬまで殴り合い”だってよ!」

!!

 なんと!
 排卵最終試験で“死ぬまで殴り合い”を選択されるのは10数年ぶりのはず……
 子宮こみや子宮しきゅう公爵も何故また……

(もし万が一、膣美さまが……)

 私は膣美さまの身を案じました。
 膣美さまも、先ほどからプルプルと体が小刻みに震えているご様子です。きっと久しぶりに再会したこのブス…… 失礼いたしました。満子お嬢様が自分より大きく成長されているので、恐怖感を抱いていることと存じます。

「じゃあな! 膣美! 今日でお別れだな!」

 満子お嬢様がそう言うと、膣美さまの肩をポンと叩き、スタジアムの中へ入ってお行きになられました。
 挑戦的なそのご態度に、私の特殊能力『鉄の女アイアン・レディ』第3形態:モデル膣熊ちつぐま※通称チツ五郎 の鉄の爪で殺めてしまおうかとも思いましたが、今は膣美さまの身を案じる方が先でございます。

「膣美さま…… 大丈夫にございますか?」
「……こ……………ろす……」
「え?」
「殺す殺す殺す殺す殺す殺す! うぉぉおおおおおおお! 殺ぉおおおおおす!」


 あ、大丈夫にございました。
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