上 下
2 / 53
○~第1章~○ 精子:テツオ

2射精目! 膣美(ちつみ)てww

しおりを挟む
『あ…… あの…… テ、テツオさ…… ん……』

 あの日、光り輝くヒ・マラ山の頂上から一筋の光が僕の頭を射して以来、毎晩同じ夢を見るようになった。
 狭く薄暗い部屋の中で、僕の名前を弱々しく、とても恥ずかしそうに呼ぶ女の子の声が聞こえる。

 僕はその女の子の声が大好きになった。
 少し鼻にかかったその声を聞くだけで、心が癒される感じがした。

『テツオ…… さん…… 私…… は…… ここに…… います』
「どこ? どこにいるの?」

 夢の中で僕はいつもそう言って、声が聞こえる方へ走ろうとするのだが、なぜか体が動かない。

「君は誰? どこにいるの? 君の名は?」 
 ※ここで前前前前世みたいなタイトルの音楽が流れます。

『私は…… 膣美ちつみ…… 土田膣美つちだちつみ…… です……』

「………………」


_人人人人人人人人人_
> なんか名前微妙! <
 ̄YYYYYYYYY ̄


「はっ!」


 そう。
 いつもこの場面で目が覚めるんだ。

「土田…… 膣美……」

 聞いたことのない名前だった。
 それにまず、土田つちだという名字はこのキンタマーニ王国には存在しない。

 キンタマーニ王国には、西の村と東の村がある。
 僕が住んでいる西の村の精子たちは皆、“西野”という名字だ。西村だからだ。

 しかし、東の村の精子たちの名字は、“東玉袋ひがしたまぶくろ”という名字なのだ。
 え? “東野ひがしの”じゃないの? って思うかもしれないが、東玉袋ひがしたまぶくろなのだ。
 これには諸説あるが、現在最も有力なのは、西の村に比べて東の村の方が大きいので、ずっとずっと昔のキンタマーニの王様がわざわざ付けた名字だそうだ。

 そのおかげで、僕たち西の村の精子は時々差別を受ける。

「西の精子は弱い弱い!」
「お前たちはカウパー特攻隊行きだ!」

 などなど。
 だから西の村の精子たちはこぞってこう言うんだ。

「ああ…… 俺も名字が東玉袋ひがしたまぶくろが良かったな」
「東玉袋になりたい(切実)」

 と。
 だけど僕は、名字が東玉袋になりたいだなんて一度も思ったことはない。
 カッコいいカッコ悪いとか、偉い偉くないとかじゃなく、お互い受精を目標とした精子には変わりないんだから。

 話しは逸れてしまったが、とにかくこのキンタマーニ王国に、“土田膣美”という女の子はいない。
 だとすれば、毎晩見るあの夢の女の子は一体……

 そう思っていた時のことだった。

♪ピンポンパンテーン(PANTENE)♪  ♪ピンポンパンテーン(PANTENE)♪

 突然、スマホのエリアメールが大音量で鳴りだしたのだ。
 急いで画面を覗き込む。
 王様から国民への緊急メール速報だった。内容はこうだ。


○~キンタマーニ王国の国民諸君~○
 この度、誠にめでたいことに、ヒ・マラ山のDNA採掘場より、『SランクDNA』の採掘に成功した。
 ついては、本日の午後7時より、我が城ゴールデンキャッスル(通称:金城)にて、我が王族たちにSランクDNAを与える付与式を執り行うため、国民諸君は我が城ゴールデンキャッスル(通称:金城)前の、国民集会広場まで集まるように。
           第36代キンタマーニ王:金城たけし


(え、SランクDNAって……なんだろう?)
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【R18】僕の筆おろし日記(高校生の僕は親友の家で彼の母親と倫ならぬ禁断の行為を…初体験の相手は美しい人妻だった)

幻田恋人
恋愛
 夏休みも終盤に入って、僕は親友の家で一緒に宿題をする事になった。  でも、その家には僕が以前から大人の女性として憧れていた親友の母親で、とても魅力的な人妻の小百合がいた。  親友のいない家の中で僕と小百合の二人だけの時間が始まる。  童貞の僕は小百合の美しさに圧倒され、次第に彼女との濃厚な大人の関係に陥っていく。  許されるはずのない、男子高校生の僕と親友の母親との倫を外れた禁断の愛欲の行為が親友の家で展開されていく…  僕はもう我慢の限界を超えてしまった… 早く小百合さんの中に…

淫らなお姫様とイケメン騎士達のエロスな夜伽物語

瀬能なつ
恋愛
17才になった皇女サーシャは、国のしきたりに従い、6人の騎士たちを従えて、遥か彼方の霊峰へと旅立ちます。 長い道中、姫を警護する騎士たちの体力を回復する方法は、ズバリ、キスとH! 途中、魔物に襲われたり、姫の寵愛を競い合う騎士たちの様々な恋の駆け引きもあったりと、お姫様の旅はなかなか困難なのです?!

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

【R-18】クリしつけ

蛙鳴蝉噪
恋愛
男尊女卑な社会で女の子がクリトリスを使って淫らに教育されていく日常の一コマ。クリ責め。クリリード。なんでもありでアブノーマルな内容なので、精神ともに18歳以上でなんでも許せる方のみどうぞ。

婚約破棄?王子様の婚約者は私ではなく檻の中にいますよ?

荷居人(にいと)
恋愛
「貴様とは婚約破棄だ!」 そうかっこつけ王子に言われたのは私でした。しかし、そう言われるのは想定済み……というより、前世の記憶で知ってましたのですでに婚約者は代えてあります。 「殿下、お言葉ですが、貴方の婚約者は私の妹であって私ではありませんよ?」 「妹……?何を言うかと思えば貴様にいるのは兄ひとりだろう!」 「いいえ?実は父が養女にした妹がいるのです。今は檻の中ですから殿下が知らないのも無理はありません」 「は?」 さあ、初めての感動のご対面の日です。婚約破棄するなら勝手にどうぞ?妹は今日のために頑張ってきましたからね、気持ちが変わるかもしれませんし。 荷居人の婚約破棄シリーズ第八弾!今回もギャグ寄りです。個性な作品を目指して今回も完結向けて頑張ります! 第七弾まで完結済み(番外編は生涯連載中)!荷居人タグで検索!どれも繋がりのない短編集となります。 表紙に特に意味はありません。お疲れの方、猫で癒されてねというだけです。

妹に陥れられ処刑決定したのでブチギレることにします

リオール
恋愛
実の妹を殺そうとした罪で、私は処刑されることとなった。 違うと言っても、事実無根だとどれだけ訴えても。 真実を調べることもなく、私の処刑は決定となったのだ。 ──あ、そう?じゃあもう我慢しなくていいですね。 大人しくしてたら随分なめられた事態になってしまったようで。 いいでしょう、それではご期待通りに悪女となってみせますよ! 淑女の時間は終わりました。 これからは──ブチギレタイムと致します!! ====== 筆者定番の勢いだけで書いた小説。 主人公は大人しく、悲劇のヒロイン…ではありません。 処刑されたら時間が戻ってやり直し…なんて手間もかけません。とっととやっちゃいます。 矛盾点とか指摘したら負けです(?) 何でもオッケーな心の広い方向けです。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

処理中です...