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カタラータ神殿②
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わけが分からない。それではラウレルは、予知夢を見る前からビオレッタのことを好きだったということになる。
しかし、ビオレッタはグリシナ村でただ道具屋を営んでいただけだ。どこにラウレルから好かれる要素があるというのだ。
「詳しいことは本人に聞いたこと無いけど、とにかくラウレルはビオレッタちゃんしか見えてないの。
ビオレッタちゃんと離れたくないからグズグズとグリシナ村に留まって、グリシナ村を発つ直前に例の予知夢を見て、発ってからは確実に魔王倒すためにひたすらレベル上げ。キツかったわ、あれは」
カメリアが当時を思い出して遠い目をしている。おかげでカメリアのレベルも99だ。ここまで来れば最上位魔法が軽々と撃てるとのこと。
「あんなに早く魔王討伐出来たのはビオレッタちゃんのお陰みたいなものなんだから、あんまり自分を卑下しなくても良いと思うんだけど」
「とんでもないことを言わないで下さい……」
ビオレッタは震え上がった。結婚するためには魔王を倒さなければならなくて、ラウレル達は相当無理をしたらしい。自分のせいで、と思うと、カメリアに平謝りしたい気分だ。
「……でも、気持ちを聞いてくれてありがとうございました、カメリア様。ずいぶんと心がスッキリした気がします」
「話くらいならいつでも聞くわよ! ラウレルのことも色々教えてあげる」
そう言って、カメリアはまたウインクをした。
二人はポットのお茶が無くなるまで、女同士の話を楽しんだのだった。
「もうこんな時間……ラウレル様も心配しているかもしれませんね」
「そういえば、私ラウレルに言いたいことがあって探しに行ったんだったわ。あいつのことだから絶対、グリシナ村に居座ってると思って」
カメリアの予想はずばり当たっていた。さすがだ。
「そろそろグリシナ村に戻りましょ。……ん?」
突然、二人の上に影が射した。
急な雨雲かと空を見上げると、それは違った。なにやら大きな黒い影が上空を旋回しているではないか。
「カメリア様……あれはモンスターですか!?」
しばらく旋回していた黒い影は、こちら目掛けてどんどん近付いてくる。魔王は倒され、モンスターもいなくなったはずなのに、一体どういうことなのだろう。
「………………ビオレッタちゃん、あれはモンスターじゃないから安心して。竜なの」
「竜?」
「名前はプルガ。ラウレルの竜よ」
カメリアは上空を仰ぎ見ながら大きなため息をついた。
以前、竜族の里をモンスターから救った際に、勇者ラウレルは竜と契約したという。それがプルガ。
「転移魔法で追ってこれなかったから竜で追ってくるとか……もう、あいつ何なの……怖……」
竜のプルガが間近に迫ってきている。
翼の羽ばたきで木々がざわめき、ビオレッタのスカートもたなびく。
「ビオレッタさん!!」
プルガの背中にラウレルの姿が見えた。
彼はビオレッタの姿をとらえると、ためらい無くプルガの背から飛び降りた。
「ラウレル様! 危ないっ……」
ビオレッタの心配をよそに、ラウレルは柔らかな芝をめがけて着地する。
芝に座り込み、こちらを見上げる彼の目には、怒りの色が宿っていた。
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