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「状況はどうなっている?」
現場に到着したワイアットが、エレノアを追い詰めた班員に問いかける。
「はい。崖に追い詰めたまでは良かったのですが……飛び降りて逃げようとしたので、これ以上近づけない状態です」
ワイアットは茂みから崖の前に立つエレノアを見やった。
海を背にし、数人の隊員と対峙する彼女の顔は焦りで歪んでいる。
この崖から海までは数十メートルの高さがある。ここから飛び降りればひとたまりもないだろう。
「無謀なことを考えるものだな……」
人間がどれくらいの衝撃で死ぬのかわかっていないようだ。
否、わかっているが、皇帝の元で処刑をされるくらいなら自ら死を選ぶということだろうか。
どちらにしてもここで海に飛び込まれるのは避けたい。限りなく確率は低いが、万が一ということもある。
ワイアットは深く息を吐いた後、茂みから出てエレノアの前に姿を現した。
その後ろをマシューがついて来る。
「エレノア・ウィルズ、投降しろ」
突然現れた大男に、エレノアは怯んだ様子を見せる。
しかし彼女はすぐに表情を取り繕うと鼻で笑った。
「さっきも言ったでしょう。私にはゼレンハノン家がついているんだから、下手なことはしない方が良いって」
それはきっと、彼女がスクロールを使う前に会場内で叫んでいたことだろう。
その時の詳細はワイアットもエイダンから聞いている。
するとエレノアは品定めををするように、ワイアットのことを上から下までじろじろと見た。
「あぁ……けど、あなた、ホールでは見かけなかったわね。それもそうよね。あなたみたいな不細工な大男が居たらとっても不自然だもの」
エレノアは愉快そうに肩を揺らして笑う。
「この……っ!」
尊敬する上官が侮辱されたことにマシューは怒りをあらわにした。
しかし、それをワイアットが手で制する。
この部下はいかんせん情に流されやすいのが短所だ。
先ほどエレノアを捜索している時もそうだったが、どうにかして挽回しようという焦りが透けて見えた。
ワイアットは部下に冷静さを取り戻してもらいたく、鋭い瞳で彼を見た。
そんな上官の表情を見たマシューは、少し不服そうにしていたが、その場で怒りを収めた。
その様子に内心胸を撫でおろしながら、ワイアットはもう一度エレノアと向き合う。
「それはわしの部下が聞いていたな。なんでも、ゼレンハノン公爵家当主が魔神を崇拝してるんだって?」
彼の言葉にエレノアは心の底から嬉しそうに笑った。
「ええ、そう!そうよ!神獣の末裔である公爵家当主が、私と一緒に魔神を崇拝しているんだから!すごいことなのよこれは!」
自身に三大公爵家の力があるわけでもないのに、まるで自身も同じ神獣の末裔かのように振舞う女に虫唾が走る。
それはワイアットの傍に立つマシューも同じで、聞くに堪えないエレノアの演説に頭が痛くなってきた。
「しかし、お前さんと公爵家当主が共謀して魔神を崇拝していたなら、どうして離婚なんてされたんだ」
「じきに魔神崇拝の疑いが公爵家にかけられるってアルバート様は知っていたからよ。私だけでも逃がそうとしてくださったの」
エレノアは恍惚とした表情で語る。
ワイアットは頭を抱えた。よくそんな“嘘”がペラペラと口をついて出るものだと。
「もう一度聞くが、本当にゼレンハノン公爵が魔神を崇拝しているんだな?」
「しつこいわね。そうだって何度も言っているじゃない」
エレノアは不快感をあらわにし、ワイアットを睨みつける。
ワイアットは片方の口角を上げ、「そうか。残念だ」と呟いた。
「神獣の血を引く者たちは物理的に魔神崇拝が行えないことを、お前さんは知らないんだな」
ワイアットの言葉に、エレノアは硬直した。
それは隣で聞いていたマシューも同じで、ワイアットの言葉の意味がすぐには理解できなかった。
「女神アクアィヤは魔神ゲニウスを打ち倒した後、魔神の崇拝を重罪とし、今後この帝国で紡がれていく自身の神獣たちの血にある細工をした」
エレノアの表情がどんどん強張っていく。
「それは、神獣の血を引く者が魔神を崇拝すると、その瞬間に絶命するように仕組んだんだ」
エレノアは顔を真っ青にし、「嘘よ!」と叫んだ。
「嘘じゃない。神獣の血を引く者は特別な能力を持っている。だから、その特別な力を悪用されないよう、女神に背いたことがわかった瞬間に、命を落とすように女神が意思を刻んだのだ」
ワイアットは淡々と説明を続けた。
帝国が建国されてから三大公爵家から魔神崇拝者が出たことは一度もない。
それは神獣の血に刻まれた女神の意思を恐れているからとも言えるが、ひとえに神獣の末裔である彼らが生まれた瞬間から女神に絶対的な敬愛を抱いているからだろう。
帝国民にとって、三大公爵家から魔神崇拝者が出るなど、西から日が出ることと同じくらいにありえないことだ。
だからこそ、この事実について改めて周知されるようなことはなく、三大公爵家の者か皇室、またはそれに近い人間など、知る人ぞ知る情報になっていった。
ワイアットは代々皇室に仕えて来た家門の出であったため、この事実を知っていた。
そして博識なエイダンもこのことを認知しており、エレノアが会場で豪語していた内容に疑問を持ち、隊長であるワイアットに報告した。
エレノアは親指の爪を噛み、ガタガタと震えている。
「アルバート様は、魔神崇拝者よ……。そうじゃなきゃいけないんだから……」
そんな彼女の異常な様子にマシューは眉を顰める。
するとワイアットが一歩前に出た。
「公爵家当主が魔神崇拝者だと吹聴すれば、世間が混乱に陥ると思ったのだろう。そして、公爵家が処刑されれば万々歳といったところか?」
「ち、違う……」
「三大公爵家の一つが没落すれば世間は一層混沌とする。そして民から生まれたその不安や怒りが、魔神ゲニウスの養分になる」
違うか?、というワイアットの問いに、「うるさいうるさいうるさい!」とエレノアは頭を掻きむしった。
「もう少しだったのに……」
乱れた髪から覗く敵意むき出しの瞳に、マシューは戦慄する。
彼はこれまで生きて来て、根っからの悪人など居ないと思っていた。
どんな悪人も、全ては環境によって形成されてしまった可哀想な人格であり、正しい道へ導いてやれば、皆更生できると信じて疑っていなかった。
しかし、この世には存在するのだ。悪魔に魂を売ったような人間が。
全てを魔神に捧げ、それ以外の物などどうでもいいと考えている。
民が混乱に陥ろうと、自分の嘘で帝国を長年支えて来た公爵家が処刑されようと、結果的にそれが魔神ゲニウスのためになるのなら喜んでやる。
そんな女なのだ。
「悪魔だ。お前のようなやつは生きていてはいけない……!」
マシューは怒りで剣を握る手を震えさせながら叫んだ。
「あぁ、ゲニウス様。どうかお許しください。課せられた使命を全うできなかった私を」
エレノアはもう何も聞こえていないかのように空を見上げている。
そして、突然左腕を前に掲げた。
その左手首に巻かれた細い布を見て、マシューはつい先ほどのことを思い出した。
(移動魔法道具……!)
もう二度と同じ過ちは犯さない。
エレノアがその布を解く前に、マシューは剣気を纏い、斬撃を飛ばした。
「ハッタリだ!」
そう叫んだワイアットがマシューの剣を抑える。
しかし斬撃は既に飛ばされた後で、定めた狙いと逸れた方向へ進んだ。
向かってくる斬撃にエレノアは一瞬反応したが、ただの令嬢が避ける体術など持ち合わせていない。
布を解こうとする彼女の右手に命中するはずだったそれは、彼女の胴に大きな傷を作り、エレノアはバランスを崩した。
マシューはその瞬間を、スローモーションのように見ていた。
血しぶきを上げながら、ゆっくりと後ろに倒れていく彼女。
そんな彼女の元へ走る隊員たち。
しかし、エレノアが落下する速度と彼らが走って彼女のもとにつく時間を考えれば、絶対に間に合わない。
彼女はゆっくり、ゆっくりと崖の下に飲み込まれていった。
そして彼女の姿が見えなくなったゼロコンマ数秒の後、彼女が立っていた場所に隊員が着く。
皆一斉に下を覗いたが、為すすべなく立ち尽くしていた。
そして永遠のように感じられる一瞬が過ぎた後、質量のある大きな物体が海に飲み込まれたような音がした。
隊員はすぐに崖の方から視線を戻すと、「海の中を捜索しましょう」とワイアットに進言した。
「……いや、捜索は夜が明けてからだ」
ワイアットは苦々しく告げる。
「どうしてですか!今ここで捜索しなければあの女を見失ってしまいます!」
「今捜索しても死人が増えるだけだ!」
ワイアットの剣幕に、隊員たちは息を吞み黙り込む。
時刻はもうすぐ日を跨ごうとしている。
暗い上に足場もなく不安定な場所、ましてや体温が奪われ続ける場所で人員を割いて捜索はできない。
もし生きていても、あの怪我では泳いでどこかに着くことは不可能に近しい。
「今できることは、傍にある海岸全てを封鎖して監視することだけだ」
ワイアットの言葉に隊員たちは黙って頷いた。
そしてワイアットの視線がマシューの方へ向く。
新米騎士の彼は上官の視線にわかりやすく固まった。
「……さっきのスクロールは使用済みだった。あの動きは我々を攪乱させるための行動だ」
そう言われ、マシューは崖から落ちる前に彼女の手首に巻かれていた布の色を思い出した。
黒の布は使用済みの証だ。
一度選択を誤った焦りが判断を鈍らせ、不必要な行動を起こした。
「申し訳……申し訳ございません」
震える声でマシューは頭を下げる。
そんな彼にワイアットは何も言わず、ただ淡々と周囲の隊員に指示を告げた。
周囲の音をまるで遠い出来事のように感じながら、マシューはずっしりと重たい責任を感じていた。
それから数日間、付近の海岸は閉鎖され、明るくなってから海中の捜索もされたが、エレノアを見つけることはできなかった。
ただ、ドレスの切れ端と彼女の髪飾りだけが沖で発見され、彼女が流血していたことなども踏まえ、状況的に海洋生物に捕食された可能性が高いと判断された。
この一件はどの新聞も一面を飾り、世間を震撼させた。
それと同時に、神獣の血を引く者は魔神崇拝が物理的に不可能なことが改めて世間に周知された。
元々ゼレンハノン公爵には『魔神崇拝を黙認した疑い』だけがかかっていたのだが、それを『公爵に魔神信仰の疑いがかかっている』と解釈する民も一定数居たのだ。
この再周知によってゼレンハノン公爵への不満はある程度落ち着いた。
そして、公爵家に嫁いだにも関わらず神獣の血についての知見がなく、ゼレンハノン家を陥れようとした愚かなエレノアに非難が集中した。
今回の騒動を起こしたエレノアは容疑者死亡として不起訴になり、公爵は元夫人の暴走に巻き込まれただけとして無罪放免となった。
世間を騒がせた一連の事件は、帝国歴史上最も愚かな婦人としてエレノアの名が歴史に刻まれ終幕する形となった。
***
ベンヤミンは主の部屋をノックし、中から小さな返事があったのを聞いて扉を開けた。
中に入ると、わかっていてもその荒れ果てた部屋の様子に思わず慄く。
上質なカーテンは意味をなさない程に破られ、床にはガラスや陶器の破片、割れた椅子が転がっている。
足の踏み場もない程に荒らされた部屋の中で、ただ一人ポツンと立ち尽くす人物が居る。
「ご主人様……」
大きな音がしたため、また新しく何かを壊したのだろうと思い部屋にやって来た。
彼の足元に割れた花瓶が転がっているのを見るに、それを投げつけたのだろう。
「お怪我はありませんか」
ゆっくり近づこうとすると、「エレノアはどこだ」と低い声で問われた。
全身を縛り付けるような威圧感のある声に、ベンヤミンはその場で立ち尽くす。
ベンヤミンは一つ唾を飲み、意を決して口を開いた。
「ご主人様。エレノア様は先日離婚され、公爵邸を出られました。それから……」
一瞬言い淀んだ執事の横を破片がすり抜ける。
ベンヤミンの背後でガラスが割れる音がした。
「エレノアは絶対に生きている」
まるでうわ言のように呟いた主人に、ベンヤミンは心を痛めた。
不器用ながらも、二人が徐々に心を通わせていくところを、ベンヤミンはずっと見ていた。
だからこそ、突然こんなことになってしまったことには驚きを隠せない。
実感が湧いていないのはベンヤミンも同じだ。
主人もきっとすぐに立ち直ることはできないだろう。
だが、時間が解決してくれることは多い。
今は闇に蝕まれて光を失った主人も、いつかは前を向き、新たな光を見つけて再び歩き出すだろう。
今はそっとしておいた方が良い。
ベンヤミンはそう思い、一礼して踵を返した。
執事が出ていき一人残された自室で、この屋敷の主人であるアルバートは無気力に立ち尽くしていた。
「エレノア……エレノア……」
何度名前を呼んでもあの声が返ってくることはない。
突然離婚したいと言い出した時から疑うべきだった。
(エレノアが魔神を崇拝していた……?)
そんなはずはない。きっと何者かによって嵌められたのだ。
自分のことは蔑ろにして他人のことばかり気に掛ける上に敏い彼女のことだ。
自分に災いが降りかかることを察知して、公爵家に迷惑をかけないために出て行ったに違いない。
どうしてもっと話を聞こうとしなかったのだろう。
どうしてもっと彼女を引き留めなかったのだろう。
どうして、話してくれなかったのだろう。
「僕は君にとって、そんなに頼りない男だったのか……」
アルバートは蚊の鳴くような声で呟き、その場にうずくまった。
いや、本当はわかっている。彼女が自分を頼れないのは当然だったのだろう。
政略結婚だと割り切って、初めから十分なコミュニケーションも取らず、ただ静かに暮らしてくれることを望んでいた。
そんな自身の思いを彼女が知らないはずがない。
面と向かって何度も突き放し続けたのだから。
それでも、誘拐事件のことがあってからは、少しずつ打ち解けられていると思っていた。
だが、思い返せば彼女はあの頃から自分に遠慮するばかりで、接触を避けていた。
手のひらを返したようなアルバートの態度に嫌気がさしていたのかもしれない。
そもそもエレノアの中に、アルバートに対する信頼など微塵も存在していなかったのかもしれない。
もしかすると、彼女が公爵家を守るために屋敷を出たなんてただの願望で、本当に公爵家に嫌気が差して離婚した可能性もある。
「ごめん……エレノア……本当にごめん……」
彼女が何者かによって嵌められたのなら、それはきっとゼレンハノン家に関わってしまったせいだ。
上流貴族の中でも更に特別な三大公爵家には敵が多い。
時にはその権威を恐れた皇室から刃を向けられることだってある。
そして公爵家を出た彼女が恰好の餌食として利用されたのかもしれない。
もしそんな誰かの陰謀によって彼女が本当に亡くなってしまったのなら……
「絶対に首謀者を見つけ出してやる」
死すら生温いほどの地獄を見せ、いっそ殺してくれと泣いて縋るほどの苦痛を味わわせてやる。
エレノアを愚者と罵り嘲笑う世間も同罪だ。
彼女の名誉を取り戻し、自分たちがいかに愚かだったかを自覚させる。
だから、どうか生きていて欲しい。
「君が安心して暮らせる世界を、僕がつくるから……」
縋るように思いをこぼす。
そんな言葉に誰からも返事がもらえることはないことを、アルバートは頭の片隅でわかっていた。
現場に到着したワイアットが、エレノアを追い詰めた班員に問いかける。
「はい。崖に追い詰めたまでは良かったのですが……飛び降りて逃げようとしたので、これ以上近づけない状態です」
ワイアットは茂みから崖の前に立つエレノアを見やった。
海を背にし、数人の隊員と対峙する彼女の顔は焦りで歪んでいる。
この崖から海までは数十メートルの高さがある。ここから飛び降りればひとたまりもないだろう。
「無謀なことを考えるものだな……」
人間がどれくらいの衝撃で死ぬのかわかっていないようだ。
否、わかっているが、皇帝の元で処刑をされるくらいなら自ら死を選ぶということだろうか。
どちらにしてもここで海に飛び込まれるのは避けたい。限りなく確率は低いが、万が一ということもある。
ワイアットは深く息を吐いた後、茂みから出てエレノアの前に姿を現した。
その後ろをマシューがついて来る。
「エレノア・ウィルズ、投降しろ」
突然現れた大男に、エレノアは怯んだ様子を見せる。
しかし彼女はすぐに表情を取り繕うと鼻で笑った。
「さっきも言ったでしょう。私にはゼレンハノン家がついているんだから、下手なことはしない方が良いって」
それはきっと、彼女がスクロールを使う前に会場内で叫んでいたことだろう。
その時の詳細はワイアットもエイダンから聞いている。
するとエレノアは品定めををするように、ワイアットのことを上から下までじろじろと見た。
「あぁ……けど、あなた、ホールでは見かけなかったわね。それもそうよね。あなたみたいな不細工な大男が居たらとっても不自然だもの」
エレノアは愉快そうに肩を揺らして笑う。
「この……っ!」
尊敬する上官が侮辱されたことにマシューは怒りをあらわにした。
しかし、それをワイアットが手で制する。
この部下はいかんせん情に流されやすいのが短所だ。
先ほどエレノアを捜索している時もそうだったが、どうにかして挽回しようという焦りが透けて見えた。
ワイアットは部下に冷静さを取り戻してもらいたく、鋭い瞳で彼を見た。
そんな上官の表情を見たマシューは、少し不服そうにしていたが、その場で怒りを収めた。
その様子に内心胸を撫でおろしながら、ワイアットはもう一度エレノアと向き合う。
「それはわしの部下が聞いていたな。なんでも、ゼレンハノン公爵家当主が魔神を崇拝してるんだって?」
彼の言葉にエレノアは心の底から嬉しそうに笑った。
「ええ、そう!そうよ!神獣の末裔である公爵家当主が、私と一緒に魔神を崇拝しているんだから!すごいことなのよこれは!」
自身に三大公爵家の力があるわけでもないのに、まるで自身も同じ神獣の末裔かのように振舞う女に虫唾が走る。
それはワイアットの傍に立つマシューも同じで、聞くに堪えないエレノアの演説に頭が痛くなってきた。
「しかし、お前さんと公爵家当主が共謀して魔神を崇拝していたなら、どうして離婚なんてされたんだ」
「じきに魔神崇拝の疑いが公爵家にかけられるってアルバート様は知っていたからよ。私だけでも逃がそうとしてくださったの」
エレノアは恍惚とした表情で語る。
ワイアットは頭を抱えた。よくそんな“嘘”がペラペラと口をついて出るものだと。
「もう一度聞くが、本当にゼレンハノン公爵が魔神を崇拝しているんだな?」
「しつこいわね。そうだって何度も言っているじゃない」
エレノアは不快感をあらわにし、ワイアットを睨みつける。
ワイアットは片方の口角を上げ、「そうか。残念だ」と呟いた。
「神獣の血を引く者たちは物理的に魔神崇拝が行えないことを、お前さんは知らないんだな」
ワイアットの言葉に、エレノアは硬直した。
それは隣で聞いていたマシューも同じで、ワイアットの言葉の意味がすぐには理解できなかった。
「女神アクアィヤは魔神ゲニウスを打ち倒した後、魔神の崇拝を重罪とし、今後この帝国で紡がれていく自身の神獣たちの血にある細工をした」
エレノアの表情がどんどん強張っていく。
「それは、神獣の血を引く者が魔神を崇拝すると、その瞬間に絶命するように仕組んだんだ」
エレノアは顔を真っ青にし、「嘘よ!」と叫んだ。
「嘘じゃない。神獣の血を引く者は特別な能力を持っている。だから、その特別な力を悪用されないよう、女神に背いたことがわかった瞬間に、命を落とすように女神が意思を刻んだのだ」
ワイアットは淡々と説明を続けた。
帝国が建国されてから三大公爵家から魔神崇拝者が出たことは一度もない。
それは神獣の血に刻まれた女神の意思を恐れているからとも言えるが、ひとえに神獣の末裔である彼らが生まれた瞬間から女神に絶対的な敬愛を抱いているからだろう。
帝国民にとって、三大公爵家から魔神崇拝者が出るなど、西から日が出ることと同じくらいにありえないことだ。
だからこそ、この事実について改めて周知されるようなことはなく、三大公爵家の者か皇室、またはそれに近い人間など、知る人ぞ知る情報になっていった。
ワイアットは代々皇室に仕えて来た家門の出であったため、この事実を知っていた。
そして博識なエイダンもこのことを認知しており、エレノアが会場で豪語していた内容に疑問を持ち、隊長であるワイアットに報告した。
エレノアは親指の爪を噛み、ガタガタと震えている。
「アルバート様は、魔神崇拝者よ……。そうじゃなきゃいけないんだから……」
そんな彼女の異常な様子にマシューは眉を顰める。
するとワイアットが一歩前に出た。
「公爵家当主が魔神崇拝者だと吹聴すれば、世間が混乱に陥ると思ったのだろう。そして、公爵家が処刑されれば万々歳といったところか?」
「ち、違う……」
「三大公爵家の一つが没落すれば世間は一層混沌とする。そして民から生まれたその不安や怒りが、魔神ゲニウスの養分になる」
違うか?、というワイアットの問いに、「うるさいうるさいうるさい!」とエレノアは頭を掻きむしった。
「もう少しだったのに……」
乱れた髪から覗く敵意むき出しの瞳に、マシューは戦慄する。
彼はこれまで生きて来て、根っからの悪人など居ないと思っていた。
どんな悪人も、全ては環境によって形成されてしまった可哀想な人格であり、正しい道へ導いてやれば、皆更生できると信じて疑っていなかった。
しかし、この世には存在するのだ。悪魔に魂を売ったような人間が。
全てを魔神に捧げ、それ以外の物などどうでもいいと考えている。
民が混乱に陥ろうと、自分の嘘で帝国を長年支えて来た公爵家が処刑されようと、結果的にそれが魔神ゲニウスのためになるのなら喜んでやる。
そんな女なのだ。
「悪魔だ。お前のようなやつは生きていてはいけない……!」
マシューは怒りで剣を握る手を震えさせながら叫んだ。
「あぁ、ゲニウス様。どうかお許しください。課せられた使命を全うできなかった私を」
エレノアはもう何も聞こえていないかのように空を見上げている。
そして、突然左腕を前に掲げた。
その左手首に巻かれた細い布を見て、マシューはつい先ほどのことを思い出した。
(移動魔法道具……!)
もう二度と同じ過ちは犯さない。
エレノアがその布を解く前に、マシューは剣気を纏い、斬撃を飛ばした。
「ハッタリだ!」
そう叫んだワイアットがマシューの剣を抑える。
しかし斬撃は既に飛ばされた後で、定めた狙いと逸れた方向へ進んだ。
向かってくる斬撃にエレノアは一瞬反応したが、ただの令嬢が避ける体術など持ち合わせていない。
布を解こうとする彼女の右手に命中するはずだったそれは、彼女の胴に大きな傷を作り、エレノアはバランスを崩した。
マシューはその瞬間を、スローモーションのように見ていた。
血しぶきを上げながら、ゆっくりと後ろに倒れていく彼女。
そんな彼女の元へ走る隊員たち。
しかし、エレノアが落下する速度と彼らが走って彼女のもとにつく時間を考えれば、絶対に間に合わない。
彼女はゆっくり、ゆっくりと崖の下に飲み込まれていった。
そして彼女の姿が見えなくなったゼロコンマ数秒の後、彼女が立っていた場所に隊員が着く。
皆一斉に下を覗いたが、為すすべなく立ち尽くしていた。
そして永遠のように感じられる一瞬が過ぎた後、質量のある大きな物体が海に飲み込まれたような音がした。
隊員はすぐに崖の方から視線を戻すと、「海の中を捜索しましょう」とワイアットに進言した。
「……いや、捜索は夜が明けてからだ」
ワイアットは苦々しく告げる。
「どうしてですか!今ここで捜索しなければあの女を見失ってしまいます!」
「今捜索しても死人が増えるだけだ!」
ワイアットの剣幕に、隊員たちは息を吞み黙り込む。
時刻はもうすぐ日を跨ごうとしている。
暗い上に足場もなく不安定な場所、ましてや体温が奪われ続ける場所で人員を割いて捜索はできない。
もし生きていても、あの怪我では泳いでどこかに着くことは不可能に近しい。
「今できることは、傍にある海岸全てを封鎖して監視することだけだ」
ワイアットの言葉に隊員たちは黙って頷いた。
そしてワイアットの視線がマシューの方へ向く。
新米騎士の彼は上官の視線にわかりやすく固まった。
「……さっきのスクロールは使用済みだった。あの動きは我々を攪乱させるための行動だ」
そう言われ、マシューは崖から落ちる前に彼女の手首に巻かれていた布の色を思い出した。
黒の布は使用済みの証だ。
一度選択を誤った焦りが判断を鈍らせ、不必要な行動を起こした。
「申し訳……申し訳ございません」
震える声でマシューは頭を下げる。
そんな彼にワイアットは何も言わず、ただ淡々と周囲の隊員に指示を告げた。
周囲の音をまるで遠い出来事のように感じながら、マシューはずっしりと重たい責任を感じていた。
それから数日間、付近の海岸は閉鎖され、明るくなってから海中の捜索もされたが、エレノアを見つけることはできなかった。
ただ、ドレスの切れ端と彼女の髪飾りだけが沖で発見され、彼女が流血していたことなども踏まえ、状況的に海洋生物に捕食された可能性が高いと判断された。
この一件はどの新聞も一面を飾り、世間を震撼させた。
それと同時に、神獣の血を引く者は魔神崇拝が物理的に不可能なことが改めて世間に周知された。
元々ゼレンハノン公爵には『魔神崇拝を黙認した疑い』だけがかかっていたのだが、それを『公爵に魔神信仰の疑いがかかっている』と解釈する民も一定数居たのだ。
この再周知によってゼレンハノン公爵への不満はある程度落ち着いた。
そして、公爵家に嫁いだにも関わらず神獣の血についての知見がなく、ゼレンハノン家を陥れようとした愚かなエレノアに非難が集中した。
今回の騒動を起こしたエレノアは容疑者死亡として不起訴になり、公爵は元夫人の暴走に巻き込まれただけとして無罪放免となった。
世間を騒がせた一連の事件は、帝国歴史上最も愚かな婦人としてエレノアの名が歴史に刻まれ終幕する形となった。
***
ベンヤミンは主の部屋をノックし、中から小さな返事があったのを聞いて扉を開けた。
中に入ると、わかっていてもその荒れ果てた部屋の様子に思わず慄く。
上質なカーテンは意味をなさない程に破られ、床にはガラスや陶器の破片、割れた椅子が転がっている。
足の踏み場もない程に荒らされた部屋の中で、ただ一人ポツンと立ち尽くす人物が居る。
「ご主人様……」
大きな音がしたため、また新しく何かを壊したのだろうと思い部屋にやって来た。
彼の足元に割れた花瓶が転がっているのを見るに、それを投げつけたのだろう。
「お怪我はありませんか」
ゆっくり近づこうとすると、「エレノアはどこだ」と低い声で問われた。
全身を縛り付けるような威圧感のある声に、ベンヤミンはその場で立ち尽くす。
ベンヤミンは一つ唾を飲み、意を決して口を開いた。
「ご主人様。エレノア様は先日離婚され、公爵邸を出られました。それから……」
一瞬言い淀んだ執事の横を破片がすり抜ける。
ベンヤミンの背後でガラスが割れる音がした。
「エレノアは絶対に生きている」
まるでうわ言のように呟いた主人に、ベンヤミンは心を痛めた。
不器用ながらも、二人が徐々に心を通わせていくところを、ベンヤミンはずっと見ていた。
だからこそ、突然こんなことになってしまったことには驚きを隠せない。
実感が湧いていないのはベンヤミンも同じだ。
主人もきっとすぐに立ち直ることはできないだろう。
だが、時間が解決してくれることは多い。
今は闇に蝕まれて光を失った主人も、いつかは前を向き、新たな光を見つけて再び歩き出すだろう。
今はそっとしておいた方が良い。
ベンヤミンはそう思い、一礼して踵を返した。
執事が出ていき一人残された自室で、この屋敷の主人であるアルバートは無気力に立ち尽くしていた。
「エレノア……エレノア……」
何度名前を呼んでもあの声が返ってくることはない。
突然離婚したいと言い出した時から疑うべきだった。
(エレノアが魔神を崇拝していた……?)
そんなはずはない。きっと何者かによって嵌められたのだ。
自分のことは蔑ろにして他人のことばかり気に掛ける上に敏い彼女のことだ。
自分に災いが降りかかることを察知して、公爵家に迷惑をかけないために出て行ったに違いない。
どうしてもっと話を聞こうとしなかったのだろう。
どうしてもっと彼女を引き留めなかったのだろう。
どうして、話してくれなかったのだろう。
「僕は君にとって、そんなに頼りない男だったのか……」
アルバートは蚊の鳴くような声で呟き、その場にうずくまった。
いや、本当はわかっている。彼女が自分を頼れないのは当然だったのだろう。
政略結婚だと割り切って、初めから十分なコミュニケーションも取らず、ただ静かに暮らしてくれることを望んでいた。
そんな自身の思いを彼女が知らないはずがない。
面と向かって何度も突き放し続けたのだから。
それでも、誘拐事件のことがあってからは、少しずつ打ち解けられていると思っていた。
だが、思い返せば彼女はあの頃から自分に遠慮するばかりで、接触を避けていた。
手のひらを返したようなアルバートの態度に嫌気がさしていたのかもしれない。
そもそもエレノアの中に、アルバートに対する信頼など微塵も存在していなかったのかもしれない。
もしかすると、彼女が公爵家を守るために屋敷を出たなんてただの願望で、本当に公爵家に嫌気が差して離婚した可能性もある。
「ごめん……エレノア……本当にごめん……」
彼女が何者かによって嵌められたのなら、それはきっとゼレンハノン家に関わってしまったせいだ。
上流貴族の中でも更に特別な三大公爵家には敵が多い。
時にはその権威を恐れた皇室から刃を向けられることだってある。
そして公爵家を出た彼女が恰好の餌食として利用されたのかもしれない。
もしそんな誰かの陰謀によって彼女が本当に亡くなってしまったのなら……
「絶対に首謀者を見つけ出してやる」
死すら生温いほどの地獄を見せ、いっそ殺してくれと泣いて縋るほどの苦痛を味わわせてやる。
エレノアを愚者と罵り嘲笑う世間も同罪だ。
彼女の名誉を取り戻し、自分たちがいかに愚かだったかを自覚させる。
だから、どうか生きていて欲しい。
「君が安心して暮らせる世界を、僕がつくるから……」
縋るように思いをこぼす。
そんな言葉に誰からも返事がもらえることはないことを、アルバートは頭の片隅でわかっていた。
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