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カトリーヌ編プロローグ
いつかのために
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私は、シャロン公爵家の長女として今まで恥のないように生きてきた。
お父様もお母様も、私には愛情を注いでくれて、私が立派な淑女になることを望んでいた。
特に、お父様は私を溺愛していた。
皇太子であるフランシス・オーヴェルニュを婚約者として紹介されたのは彼の5歳の誕生日の時だった。
私は恥ずかしくて初めは、お母様の後ろに隠れて彼の様子を窺っていた。
金色の癖っ毛に、優しげな垂れ目は落ち着いた緑色の瞳をもっていた。
フランシスは、私をみつめると優しそうに微笑んで手を差し伸べた。
「一緒に遊ぼう」
私は彼が話しかけてくれたのが、嬉しくてたまらなかった。この時、私は彼に恋をしたのだと思う。
私は彼の妻になっても恥ずかしくないように努力を重ねた。地理や歴史、ピアノや刺繍などなんでも、冷静に完璧にこなした。
しかし、私が努力すればするほど彼は私から遠ざかっていくような気がした。
日に日に彼が会いにくる日は減っていき、私が勉強していても嫌味しか言わなくなった。
いつしか、彼への恋心は消え、政略結婚の相手としてしか考えないようになっていた。
聖フランソワール学園に入学しても、彼と必要以外の会話をすることもなく、昼食を一緒に食べようと言っても断られる。
そのわりに、生徒会長の仕事のほとんどを私に押し付けた。私のサポートがなければ生徒会長にはなれなかったというのに。
それに私は、フランシスが聖女であるアメリア・キースと仲良くするのもある程度目を瞑っていた。アメリア自体は、気さくで元気な令嬢で、私は嫌いではなかったからだ。
これだけしても、フランシスは私に冷たいままだった。
フランシスも結婚すれば変わると思っていた。私がどれだけ尽くしてきたのかをわかってくれるだろうと。
お父様もお母様も、私には愛情を注いでくれて、私が立派な淑女になることを望んでいた。
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私は恥ずかしくて初めは、お母様の後ろに隠れて彼の様子を窺っていた。
金色の癖っ毛に、優しげな垂れ目は落ち着いた緑色の瞳をもっていた。
フランシスは、私をみつめると優しそうに微笑んで手を差し伸べた。
「一緒に遊ぼう」
私は彼が話しかけてくれたのが、嬉しくてたまらなかった。この時、私は彼に恋をしたのだと思う。
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