超雑談部 ~知識の幅が人生を成功に導く~

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最高の最期(後)

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「結論は先も述べたように、運動をすると頭がよくなるのよ。詳しく説明していくから、足りない頭で考えながら聞きなさい」
「サー、イエスサー」
 桔梗は面白がって敬礼する。威圧的な態度は見せていない。
「運動をするとBDNFという物質が脳内に分泌される。BDMFというはBrain Derived Neurotrophic Factorの略、日本語にすると脳由来神経栄養因子で、タンパク質の一種よ」
「えっ、いきなり覚えられん」
「名前は特に覚える必要はないわ。桔梗の頭じゃそこまで覚えれると思えないし」
 重要なのは名前ではなく、運動の効果だ。運動をしたら、なんかいい感じの物質が出る、くらいの認識でいい。
「BDNFは脳細胞や脳神経に影響を与えてくれるから、記憶力や学習能力が上がるの。またニューロンを新しく作り出す働きもあるから、脳内の情報伝達の効率も上がる。すごい物質よ」
「おお! すごい物質しかわからん」
 ある程度噛み砕いているが、まだまだ内容は学術的である。科学に興味でもなければ、理解しがたい。
「簡単に言うと、脳の栄養よ。植物が成長するのに肥料が必要なように、人間の脳を成長させるにはBDNFが必要なのよ」
 植物が伸びたり、太くなったり、枝分かれするには栄養、つまり肥料を与えないといけない。
「それなら、わかる。最初からそう言ってくれよ。窒素、リン酸、カリウムのことだろ」
 窒素、リン酸、カリウムは植物を生育させるのに必要な肥料の三要素だ。
 なぜ知っているか、と疑問は浮かぶが話が脱線するので指摘しない。いずれ問いただすと心に決める華薔薇であった。
「つまり、そのすごい物質が出るから頭がよくなるってことだよな。なんか不思議だな」
 なんとなく理解した雰囲気をしている桔梗だが、運動のメリットは他にもある。
「運動のメリットはまだまだあるわよ。ちゃんと覚えなさい、人生を満喫したいなら」
「お、おう、どんとこいだぜ。聞く準備はいつでもできてる」
 意気込みは十分だが、右耳から入った情報がそのまま左耳から出ていくようでは意味がない。知識というのは聞いて、覚えて、実践してこそ意味がある。
「聞くだけじゃ、覚えられないでしょ。だから続きを聞きたいなら、スクワット10回しなさい」
「えーっ、そりゃないよ、華薔薇のいけず」
「私は別に困らないから、運動のメリットについての話はここまでね。そういえば、教室にあるゴミ箱のゴミが一杯になるのは平均して何日くらいかしら?」
 会話の主導権はいつだって華薔薇が所持している。桔梗が拗ねたところで勝ち目はない。反発して欲しい情報を逃すか、従って欲しい情報を手に入れるか。
「くっそー、教室のゴミ箱の話とかどうでもいい。スクワットだろ。やってやるぜ。1、2、3、4、5、6、7、8、9、10。どうだ、はぁはぁ。ピロリン、俺の知性が10上がった」
 運動をしたからといって、すぐに頭がよくなることはない。
「よくてきました。それでは続いての運動のメリットは、集中力が上がる。脳には前頭葉というのが額の後ろにあって、集中力や思考力、他に感情や行動のコントロールをしている。運動をすると、この前頭葉が鍛えられる」
 運動することで基本的な集中力が上がる。これにより集中状態にすぐに入れるようになる。また集中できる時間が延びる。
 前頭葉は感情もコントロールしているので、メンタルの安定に役立つ。
「まじか、運動スゲー。ん? 待てよ、普段から運動している運動部って頭いいの?」
「そうね、普段から運動していと脳はどんどん成長していくのは確かね」
 文武両道という言葉があるように、勉強と運動の両方に優れた生徒はいる。一握りの天才の専売特許ではなく、努力で獲得できるスキルだ。
「よし、じゃあ俺も運動する。ちなみにどれくらいしたらいいの?」
「人によるけど、有酸素運動を30分から60分、これを週に4回くらいね。後は体育の授業を毎回全力でするといいと思うわ」
 有酸素運動の目安は心拍数が上がり、軽く汗が出る程度の軽いもの。マラソンやジョギングでもいいが、早歩きでも効果はある。
「結構やらなくちゃいけないんだな。できるか」
「最初はできることから、始めればいいのよ。5分の散歩でも効果はあるし」
「5分でいいの、それだったら楽勝じゃん」
 運動はできることから初めて、物足りなくなったら負荷を上げればいい。一番大事なのは続けることだ。
「一緒に運動する人がいると続けやすいわよ」
「そうか、なら華薔薇、一緒にしよう」
「それは嫌。なんで私が桔梗ごときと一緒に運動しないといけないのよ。仮に一緒にすることになっても、ついてこれないわよ」
 運動のメリットを知っている華薔薇は当たり前に運動をしている。口がよく回るのは運動のおかげかもしれない。
「いやいや、俺ってば男の子よ、女子高生にそうそう遅れは取らないぜ」
「私、余裕でフルマラソン完走できるわよ。スクワットだったら、200回しても息切れしないわ」
「まじ?」
「まじよ」
 華薔薇は至って真剣である。そもそも嘘を吐く理由がない。
 運動を続けていくうちに、段々と負荷が上がった結果、フルマラソンの完走である。見た目は華奢でくびれもあるが、しっかりと筋肉はついている。
「華薔薇が隠れマッチョだったとは、今日一番の驚きだ。……はっ」
 女性がマッチョと言われて喜ばないと気づいたのは、失言した後。どんな口撃がくるのかと、身を固める。
「確かにクラスメイトと比べて筋肉量が多いのは事実ね」
「あれ、怒ってない」
「別に怒らないわよ。事実だし」
 地雷を踏んでいないことにほっと一息吐く。肩透かしに終わったが、地雷を踏むより万倍マシであった。
「いやー、マジで勉強になったな。運動すると、頭がよくなって、集中力が上がる。目から鱗が落ちるってやつだな。……なんか忘れてるような。思い出したっ」
 ニュートンが木からリンゴを堕ちるのを見て万有引力を発見したのと同じような桔梗の閃き。
「モテるんだよ。華薔薇は最初、なんやかんや言ってた時に、モテるって言ってた。でも答えてもらってない」
「ああ、それね。スクワット20回したら、教えてあげる」
「待ってろ、すぐやる」
 男子高校生のモテにかける情熱は並大抵ではない。あっという間にスクワットを終えてしまう。
「はぁはぁはぁはぁ、早く、教えて」
 息を切らして女子高生に迫る男子、見ようによっては犯罪者と被害者だ。
「あまり近寄らないでくれる。汗臭いわ」
「スクワットやれって言ったからだろぅぅぅ」
 的確に思春期の男の子の嫌なことをつつく。同世代の女子に臭いと言われて傷つかない訳がない。
 いともたやすく崩れ落ちる桔梗であった。追い討ちをかけるように華薔薇が数歩後ろに下がる。近づきたくないと行動で示す。
「そんなにモテたいの? まあいいわ。運動をしたら健康になるから、見た目がよくなる。見た目がいいほうがモテるのは当然でしょ」
「それだけ」
「うん、それだけ」
 語ろうと思えばまだまだ語れるが、鬱陶しい方向に舵が進むのを避けるため、さらっと流して切り上げた。
 男子高校生のモテへの情熱を見誤った華薔薇のミスだ。一見完璧に見えても、ミスをしていることはある。しかしミスが人目に触れなければ、ミスはミスにならない。
「あい、わかった。運動をしたらなんちゃら物質ってのが出て、頭がよくなったり、集中力が上がったり、モテモテになるのはわかった。でも、これらは自分にしか影響はないよな」
 あくまで運動の効果は実行した本人にしか享受できない。自分自身の人生をよくするための方法だ。
「俺はさ、人生を満喫する上で外せないことがあると思うんだ。人は一人で生きていけない、人という字が人と人が支えあっているように」
 遠い目をして桔梗がどこへともなく語りかける。
 演技だとしたらお粗末だし、演出というなら陳腐である。惹き付ける魅力が皆無、見ていると苛立ちを覚える醜悪さ。
「さっさと結論を述べなさい。私の貴重な時間を無駄遣いさせるとは、いい度胸ね」
「あっ、はい。自分のレベルアップもいいけどさ、先輩、後輩、友人といろんな関係があるだろ。そこで、後輩にスゲーと思われる先輩になりたいんだ」
「桔梗風情が後輩に慕われたいと。そして、あわよくば後輩に手を出すのね」
「そうそう、いずれは先輩と後輩のラブチュッチュッを……って違ーっう。いや、違わなくないけど。純粋に尊敬されたいの」
 尊敬されたい思いに嘘はないが、モテたい思いが隠れているのは見え見えだ。
「『桔梗先輩は優しくて、頭がよくて、かっこいい、最高の先輩です』みたいに慕われたい。それに余裕で返事する、俺。最高だぜ」
「桔梗が後輩に慕われるイメージが微塵も浮かばないわ。私に想像できるのは笑われて、蔑まれて、土下座している姿ね。ああ、今と変わらないか」
「そのイメージだと俺、イジメられてるよな。クラスの中心で皆を笑顔にするタイプだから」
 当人の認識と周りの認識が違うことは往々にしてある。
「つまらない話を笑ってくれる優しいクラスメイトね」
「……クラスメイトからは称賛されることもしばしば」
「同情でしょうね」
「…………困ったことがあったら、いっつも頼りにされてるから」
「豚もおだてりゃ木に登るという諺を知っている」
「うわぁーん、華薔薇がイジメる」
 自尊心のことごとくを反論されて、ついに泣き出す。泣いているのはパフォーマンスだが、心にグサグサ刺さっていたのは本当だ。
「俺が下に見られているという華薔薇の妄想は横に置いといて。俺は卒業する時に後輩から尊敬されて、惜しまれつつ卒業したいの!」
「ふーん、いいんじゃない。桔梗の人生は桔梗が決めたらいいよ」
 取り立てて感情の籠っていない口調で賛同する。言葉の端々からどうでもいいという思いがひしひしと伝わってくる。
「おう、ありがとよ。これから、頑張って、ちっがーう! 俺に後輩に慕われる方法なんてわからない。これはお悩み相談の続き。華薔薇に答えて欲しいの。ドゥーユーアンダースタン」
 頑張れ、と応援されても桔梗には何を具体的したらいいかわからない。華薔薇に答えを教えてもらう、他力本願な作戦だ。
「少しは自分で考える努力をしなさい」
「まあまあ、そこをなんとか。一生のお願い」
 桔梗の一生のお願い幾ばくの価値があるのか甚だ疑問だ。
「まあ、別に教えてもいいけどね」
 一生のお願いに絆された、ということはない。知識は誰かに与えたからといってなくなるものではない。むしろアウトプットすることで、記憶に定着する。
 どれだけ華薔薇が知識を放出しても損はしない。桔梗が賢くなった程度で脅かされる立ち位置にいないからライバルになることもない。
「後輩に慕われたいなら、カリスマ性を鍛えるといいわ」
「カリスマ? おお、確かに。かっこいい人とか、すげー人ってカリスマがあるって言われてる。そっかカリスマだ。よし、早速鍛えるぞ、って鍛え方なんて知らないじゃーん」
 桔梗の一人小芝居は横に置いておいて、現代ではカリスマは魅力のある人、存在感のある人という意味で使われている。
 つまり桔梗の要件を簡単に満たせる都合のいい言葉だ。
 カリスマ性を鍛えたら万事解決とはいかないが、少なくとも何も行動しないよりは尊敬や好感は持たれる。
「それで、どうやったら鍛えられるんだ? もしかして運動か、運動だろ」
「今回は運動じゃないわよ。そんな芸のないことは言わない」
 語彙力や記憶力があれば会話を膨らませられる。会話が途切れないことで楽しいとは思っても、カリスマ性があるとは思わない。
「運動だったら、一石二鳥どころか三鳥、四鳥なのに。しからば、カリスマ性の鍛え方とはなんぞや?」
「いくつかカリスマ性を鍛える方法を伝授しましょう。まず一つ目はゆっくり喋る。ゆっくり喋ると説得力があると感じるの。これはデータでも示されていて、普通に喋る政治家よりも、ゆっくり喋る政治家の方が当選している」
「わーかーっーた。ゆぅっくぅりぃ、しぃゃぁべぇるぅぞ」
 桔梗の動作が極端にゆっくりになる。
 スローモーション再生のようにゆったりした話し方だと、まず話が伝わらない。単にバカなのか、バカにしているとしか思えない。
 いくらなんでもやりすぎだ。
「声だけじゃなくて、動きもスローモーションになってるじゃない。声だけでいいのよ。程ほどが一番」
 ゆっくり喋ると意識するだけでも、話のスピードはゆっくりなる。ゆっくり喋ろうと意識しずきて、会話がしどろもどろになれば、本末転倒である。最初はゆっくりを意識するくらいでちょうどいい。
「はい、すいません」
 流石に遊びすぎたと反省する桔梗。
「次にイントネーションよ。会話の語尾を下げると力強い印象を感じてもらえる。これは語尾以外の会話の途中であっても効果はあるわ」
「ん、んっ、あーあー、よし。キキョウです」
 出せる限りの低音ボイスに挑戦する。
「極端すぎ! どれだけ高低さを表現したいのよ。会話の語尾だけ異様に低音だと、何かあったと思うでしょうが。半音か一音下げればいいのよ」
 普段はいつも通りに喋り、ここぞという時に下げればいい。普段から低くしていると、基準が低くなるので意味はない。
「他には、相手の話に集中するのも大事よ。何か他に注意が向いていると感じると印象が悪くなるのよ。最悪の場合、友情も壊れる危険な行為よ」
「それなら、俺は大丈夫だ。華薔薇の話を聞き逃さないよう、しっかり聞いているからな」
「ダウト。桔梗は話を聞いている気になっているだけ。心の中では次にどんなボケをしようか考えているでしょうがっ」
 桔梗が話を聞いていたのは間違いない。話を聞いていなければ、適切なボケをできないからだ。
 相手の話に集中するというのは、話を聞くだけでは完結しない。話に集中していれば、自ずと自分の意見が出てくる。意見を主張すれば、相手もまた新たな意見を主張す。
 互いに話に集中していれば、自然と会話のラリーが続いていく。
 ボケを考えて、実行している時点で話に集中していないのは明白だ。
「な、なぜ、バレた。はっ、はめやがったな」
 陥れる意図は全くなく、あくまで指摘しただけだ。被害妄想も甚だしい。
「勝手に策士にしないでちょうだい。桔梗が無駄に意味もなく勝手に誤解して自爆しただけ。私まで低く見られるから、でたらめを口にしないように」
 トラップは一つとして仕掛けられていない。
 平坦な道で転んでも、ただのドジな奴だ。しかし、近くにいたという理由だけで、足を引っかけられた、と言われてしまえば、たまったものではない。
 自己の正当性のため、無罪を主張するだろう。
 バカに付き合って、自分までバカになる必要はない。
「まだまだ他にもあるけど、覚えられないと意味ないし、今日はここまで」
 知識は蓄えるだけでは意味はない。使って、理解して、落とし込んで、使いこなせて意味がある。
 むやみやたらと知識を詰め込んでも、どれから始めたらいいかわからなくなる。ならば、最初は少ないことから始めて、確実に身に付けた方がいい。
 最初からあれやこれやと手を出して、しっちゃかめっちゃかになるより、一つ一つ丁寧にやり抜いて、着実にステップアップするのがスキル習得の王道だ。
「最後に復習しましょうか。ちゃんと覚えていないと罰ゲームよ」
「いやいや罰ゲームはひどくない」
「私の知識を無料で拝借する気なの?」
 信じられないわ、と大袈裟にショックを受ける華薔薇。雑談部の目的は面白おかしく喋ることなので、華薔薇の主張は実際は議論に値しない。これに気付いていたなら、不用なプレッシャーは受けなかった。
「今日の雑談を覚えていたら、罰ゲームは回避できるのよ。こんな簡単なことはないでしょう。そうね、もし全問正解できたら、ご褒美をあげましょう」
「飴と鞭か。いいぞ、絶対正解してやるから、ちゃんとご褒美を考えろよ」
 単純なのか、ご褒美と聞いただけでやる気に満ち溢れていた。
「それでは、最初の問題……」
「ちょい待ち! 全部で何問か聞いてない。間違えるまで、問題を出し続けるつもりだろ」
「ちっ」
「舌打ちした。やっぱりこすいこと考えてたな」
 気づかないようなら、桔梗が間違えるまで問題を出すことを検討していたのは事実だ。
 指摘されても、難問や言葉遊びで翻弄するので一手潰されようが問題ない。
「では選ばさせてあげる。①問題数が少ないけど、問題が難しいコース。②問題数が普通で、問題が普通コース。③問題数が多いけど、問題が簡単コース。さあ、どれにする」
 ちなみに問題数はそれぞれ3問、5問、7問にしている。
「決めた。小細工する暇もなく瞬殺するから、①だ」
 桔梗が選んだのは、3問の難問コース。この選択が吉と出るか凶と出るかはわからない、なんてことはなく。華薔薇の提案に乗っている時点で凶が出るのは確定している。南無三。
「では最初の問題。カリスマ性を鍛える方法として、私が最初に提案したのは何でしょうか?」
「あんまりバカにするなよ。余裕で覚えてるぜ。答えはゆっくり喋ることだ」
「正解よ。まあこれくらい正解してもらわないと、何のために悩み相談という名の雑談をしたのか、根本から考え直す事案よ」
 最初から難しい問題は出さない。希望を持たせて、後から地獄に突き落とすのは悪魔の常套手段である。
「続いて第2問。私が興味のない桔梗の相談を受ける際に提示した相談料はいくらでしょう?」
「えーっと、えーっと、確か語呂合わせになってたやつだろ。高かったのは覚えてるぞ。千、五千、一万、思い出した、嫌々よだから、18184円だ」
 正解。
 実際に払われても受けとる気のない金額だ。
「問題がまじで雑談じゃん。もっとこう、学んだことから出さない普通?」
 桔梗の予想では運動のメリットや運動量の目安などを問われると考えていた。蓋を開けてみれば雑談パートから出題されて、あやうく間違えるところだった。
 ちなみに運動のメリットは頭がよくなる、集中力が上がる、メンタルが安定する、モテるだ。
「あら、学びの方がよかったの? 最終問題は学びから出題ね。第3問。運動すると脳内に分泌されるタンパク質の名前は何? 日本語でも英語でも、正解にしてあげる」
「それって名前覚えなくてもいいって言ってたじゃん! まじで覚えてないぞ。たしか、脳なんとか、だろ。脳は英語でブレインだから、えーっとえっと」
「後10秒。9、8、7、6、5、4、3、2、1、ゼロ。ぶっぶー。正解は脳由来神経栄養因子、もしくはBrain Derived Neurotrophic Factorでした。残念。桔梗の罰ゲームが決定しました」
「ちくしょう、絶対覚えてると思ったのに。わざわざ覚えなくいいのを出すなんて卑怯だ」
「問題を選んだのは桔梗でしょ。それに文句を言われる筋合いはない。選択ミスした自分を恨みなさい」
 桔梗があがいても結末は変わらないので、全ては徒労に終わる。主導権を華薔薇が手放さない以上、桔梗に勝ち目はない。
「ちっくしょぉぉぉ」
「どんな罰ゲームがいいかしら」
 桔梗の叫びを横目に楽しい罰ゲームを考える華薔薇。
 この後、桔梗は罰ゲームでとても憔悴することになり、華薔薇は桔梗を眺めることでとても愉快な気分になるのだが、それはまた別の話。
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