異世界ハローワーク

猫まる様

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初仕事

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"人生は一度きり"という言葉がある。生き物は性別・格差・種族に関係なく平等に終わりが来る。

3XXX年日本ーー

技術と創造の発達により、地球では異世界転生が可能となった。初めは膨大なエネルギーが必要でコントロールの効かない異世界への転生だったが、技術の進歩によってまるで旅行をするかのように異世界転生ができるようになった。そして、多くの異世界転生物語が増加するに連れ、その壮大さ、自由に憧れて異世界転生をする者達が増えていった。しかし、素人の転生はまさに自殺行為と同じでとても危険な行為だった。転生先で死傷者、行方不明者が後を経たず、日本政府は異世界転生を法律で取り締まる事に決めた。これを"異世界転生基準法"というーー

僕は四ツ谷天青(よつやそら)。近くの大学に通っていてリリカさんの店である"異世界ハローワーク"で住み込みのアルバイトをしている。
「さぁ、テンセイ!今日も頑張って仕事するよ」
リリカさんは今日も元気だ。僕の目の前にいるのは兎の亜人リリカさん。幼女の姿をしているが僕よりも年上で人生経験豊富らしい。なぜ僕がリリカさんに"テンセイ"と呼ばれているかはまた別のお話。
「そういえばリリカさんって何歳なんですか?」
「レディに対して歳を聞くなんて失礼だな君は!……10」
リリカはそう答えると恥ずかしそうに自分の白い右耳をいじっている。
「10……10歳って事ですか?」
「いや……10……と500」
「ババァじゃないですか!?」
「ババァじゃない!亜人の中では若いし、人間で言えば20代だよ」
「でも、510歳は……」
「あまり言うと給料減らすよ?」
「僕、仕事頑張ります!!」
僕はリリカさんから逃げるように店の開店準備を始めた。
(危ない危ない……これからリリカさんには年齢の話は禁句にしよう)
"異世界ハローワーク"での僕の仕事は、基本的に掃除と書類整理が主な仕事で、接客はすべてリリカさんが行っている。
「リリカさん、開店しますよ!」
「ほーい」
リリカさんは気の抜けた声で返事をする。僕は朝10時になると店のシャッターを開け、中にある看板を出す。看板にはあなたの異世界転生応援します!と書かれている。
僕が店内に戻ろうとすると1人の男に声をかけられた。
「あの……僕……はじめてで……」
男は人と話すのが苦手なのか目が合わない。男の体型は大柄で見た目はまるでオークのような凶悪な顔をしている。でも見た目以上に驚きなのは……
「お、おはようございます。お客様ですね、このまま店内にお入りください」
「はい……」
僕は大切なお客様だと言い聞かせて、その男を店の中に入れた。男の顔は緊張しているのか持っていた鞄の紐を強く握りしめた。
僕がカウンターに男を案内すると、中からリリカさんが出てきた。
「いらっしゃいませー、テンセイお茶入れてきて」
そう言うとリリカさんはカウンターの前に座り、男と話し始めた。僕は言われた通りお茶を汲みにいき、2人分のお茶を持っていくと……
「無職で転生は無理!絶対無理!」
リリカさんは仁王立ちし大声で男に言い放っていた。この後あんな修羅場になるとはこの時の僕は思ってもいなかった……





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