白瀬 悠

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一話

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ー「…んぅ…」ふと目が覚めると、部屋のベッドの上にいた。




「…どこ?」


一つのベッドしかない部屋は無駄に広く、誰もいない。
肌触りのいいシルクのベッドの上で周りを見渡す。
物一つ一つがまるで美術品のようだ。




「しにぞこなったか」



誰もいない部屋で1人空気に漏らす。
視界に入る自分の体は結構な重症だったようで幾重にも包帯が巻かれていた。




魔法の気配がする。





あの高さから落ちたこの体を治すためにかなりの魔力を消費しただろう。




…そういえば私はーーー…




「ふぅ……」




ため息をつき少し苦笑い。
過去をどんなに嘆いても時は巻き戻ることはない。
そう1番身に染みているから深く考えるのはやめた。




こんなことで死ねないのはわかっていた。




ーただ、いまから逃げたくて
物語の主人公みたいに、都合よく記憶がなくなって仕舞えばいいのに…





「…さすが、ここまで生きてきただけある。しぶといな、私も…」



つい皮肉を言ってしまう




ーごめんね。私が悪いんだ。



あなたを狂わせてしまった。知ってたのに…まだまだ甘いもんだねぇ。彼を否定できないくらいには、情が湧いてしまったよ



ここもすぐあの人にバレる。
準備をしないと。




ここまで世話してくれた見知らぬ人に感謝と少しの申し訳なさを持ちながら、全てを未来の自分に託す。





これは最後の手段だ。あまり使いたくはないんだけど、仕方がない。然るべき時がくれば解ける魔法。




あなたの目を覚ます魔法ー




体の殆どの力を持っていかれる。




「……ー…ぇ」




呪文を唱える。
というがいなくなる時が来た。













ーこの時、最古の神の気配がなくなった。







ガチャッー



ドアが開く。




ひらりと燕尾服を靡かせ若い男が入ってきた。





「お目覚めですか」





ベッドに腰掛けながら窓の外に向けていた視線をドアに向ける。




優しげな笑みを浮かべ


「ーここはどこかな?」
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