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1章
愚者の狂想曲 6 追憶のワーフォックスの少女 (マルガ視点の物語です)
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私は塔と呼ばれる建物の中に、生まれてからずっと居る。
なぜ塔の中で居なければならないのかは知らない。お母様や、他の大人達が、此処から…塔からは出てはいけないと、言われているのです。
でも、この塔の中では、私は自由に動き回れます。何も叱られたりもしません。
塔の中には本が沢山あるし、お母様が文字やお勉強を教えてくれるので、私は不満に思った事は有りません。
お母様は忙しい人で、たまにしか逢えませんが、私と一緒の時はとても優しくしてくれます。
私はお母様が大好きです。私を優しく撫でてくれるお母様が。微笑んでくれるお母様が…
この塔に居る他の大人の人達は、私とお母様の事を、良く思っていない事は解っています。
私達を見る目や、接する態度で解ります。
私とお母様は人間族とは違い、亜種と呼ばれている種族で、ワーフォックスと言う種族です。
別名、狐族とも言われ、エルフさんやドワーフさん、ワーキャットさん達に比べ、数が凄く少ない種族らしいです。
その中でも私は、人間族とワーフォックスとのハーフとの事。更に数は少ないと聞いています。
お父様が人間族で、お母様がワーフォックス。お父様には、今迄会った事はありません。
お母様も、お父様の事は何も教えてくれません。なので、私もお父様の事は聞かない方が良いと思っていて、聞く事はしません。お母様の困った顔を見たくはありませんから…
塔の中での生活は、穏やかでした。
塔から出る事は出来ませんが、たまに来てくれる優しいお母様と、楽しい時間を過ごす事が出来ましたから。
私は、優しく微笑んでくれるお母様と、このまま過ごせれば良いと思っていました。
しかし、その望みは、儚くも打ち砕かれてしまいます。
私が7歳になったばかりの日でした。
私はいつもの様に、塔の中で本を読んでいました。すると塔の外から、大きな爆発音が聞こえ、地響きが塔全体を揺らします。それと同時に、沢山の人々の声が聞こえ、塔の外は大変な事になっているのが解りました。
私は怖くて、部屋の隅で丸くなっていました。塔の外は更に騒がしくなり、人々の悲鳴や、剣をかち合わせている音、それに爆音…。塔の部屋の高くにある窓から、とても嫌な匂いがしました。
そんな時、塔の扉が開き、誰かが走り込んで来ました。私は恐怖でその場を動く事は出来ませんでした。部屋の隅で膝を抱えて震えている私に、その侵入者は、優しく私を抱きかかえました。
「マルガ…無事でしたのね…良かった…」
私を抱きかかえてくれたのは、お母様でした。私は安堵して、お母様にしがみつき、泣いていました。
そんな私を優しく撫でながら、お母様は
「マルガ、此処から一緒に逃げます。これにすぐに着替えて」
お母様はそう言うと、私に男物の長袖の服と、長いスラックスを渡して来ました。
私はお母様の言われた通りに、急いでそれに着替えました。それを確認したお母様は、懐から何かを取り出しました。
それは豪華な装飾のついた、綺麗な赤い石のネックレスでした。
お母様は、その綺麗な赤い石のネックレスを、私の首にかけて、
「マルガ…これは、お父様と私が、貴女の為だけに作った物よ。きっと何時か…貴女の役に立ってくれるわ。だから、無くさないで、大切に持っていなさいね」
そう言って、お母様は、綺麗な赤い石のネックレスを、私の服の中に、キチンと入れてくれました。
「さあマルガ!逃げますよ!」
お母様はそう言うと、私の手を引っ張って、廊下を走って行く。そして、塔の一つの部屋に入り、扉に鍵をかける。
そこは、この塔で唯一暖炉がある部屋で、私は冬になると、いつもこの部屋で過ごしていた。
お母様は、私の手を引っ張って暖炉まで来ると、暖炉の中に腕を入れ、暖炉の上部の方で何かを探している様でした。
そして、何かを探し当てた様で、お母様の顔に安堵の表情が見えた。お母様が探し当てたのは、先に輪っかの付いた鎖でした。
お母様はその輪っかの付いた鎖を、力いっぱい引っ張ると、大きな音を立てて、暖炉が左に移動した。
その暖炉の後ろから、地下に降りる階段が現れました。
私はこの部屋のこんな仕掛けが有る事に驚いていると、私の手を引っ張って、その地下に降りる階段を、降り始めます。
地下の階段の壁は、清潔で綺麗でした。そして、ほんのり光っているので、明かりがなくても、通路を進むことが出来ました。
長く長く続く通路…
私はお母様に手を引っ張られて、かなりの距離を走りました。
すると、通路の先に扉が見えてきました。その扉の中に入ると、上に登る梯子がありました。
「さあマルガ、これを登るわよ。私に付いて来てね」
そう言うとお母様は梯子に登り始めました。私もお母様の後に続いて登って行きます。
お母様は、途中で何度も下を見て、私の無事を確認しながら、登って行きました。
梯子を登り切ると、そこは小さな部屋でした。
お母様は、その小さな部屋の壁を調べ、出っ張っているレンガを発見すると、それに触りました。
レンガは壁に入って行き、それと同時に音を立てて、壁が左右に開きました。
小さな部屋から出ると、そこはかなり使われていないとすぐに解る様な、埃っぽい小屋でした。
「追手が来ない内に、早く此処から離れましょう」
お母様はそう言うと、再度私の手を引っ張って、埃っぽい小屋から出ました。
そして、小屋から出た私は、その光景に目を奪われました。
高い塔が何棟かある、城塞で囲まれた街は、沢山の煙を上げて燃え上がっています。
その空には飛竜らしきものに乗った兵士達が、街に向かって魔法で攻撃しています。
此処からでも、町の人々の逃げ惑う声や、悲鳴が聞こえます。
その中で、街の中心にある大きな建物が、炎に包まれ大きな音を立てて、崩れ落ちました。
「イタ…」
私は思わず声を上げました。お母様が私の握っている手を、強く握っていたのです。
お母様の顔を見ると、悲しそうな顔をして、涙を流していました。
「お…お母様?」
私が声をかけると、涙を流しながら私を見て、ギュッと私を抱きしめました。
私は訳が解ら無くて、困惑していると、お母様は、涙を拭いて
「さあマルガ行きましょう。早く此処から離れないと」
お母様は私にそう告げると、また私の手を引いて、走り出しました。
燃え盛る街から離れ、私とお母様は森の中をひたすら走りました。
私は初めて見る塔の外の森の様子を見ながら走りました。
しかし、私は塔の中でも走る事など無かったので、すぐに息切れをしてしまいます。
「マルガ頑張って。一刻も早く国境に向かって、この国から離れないと駄目なんです。走り慣れない森の中なのは解っていますが、頑張ってね…マルガ…」
お母様は悲しそうな顔で私に言います。私はお母様の悲しそうな顔を見たく無かったので、微笑みながら頷きます。
お母様は私に微笑んで、国境に向かって再度走り出しました。
途中で何回も息切れする私の心配をしながら、お母様は必死でした。
かなりの距離を走った様に感じます。もう、街も見えませんし、声も聞こえません。
私とお母様は、息を切らしながら走っていました。その時、お母様は何かに気が付かれた様で、ワーフォックスの特徴でもある、少し毛の生えた耳をピクピクと動かし、何かの音を聞いている様でした。
そして、苦悶の表情を浮かべ
「そ…そんな…もう此処まで追手が追いついてきているなんて…只の追手では無さそうですね…」
お母様の鬼気迫った顔に、私まで体が強張ってしまいます。
私のその顔を見たお母様は、私の頭を優しく撫でて
「マルガ…貴女はどんな事をしても守って見せます。お父様とも約束しましたしね。…せめて、あそこ迄逃げ切れたら…」
そう言うとお母様は、私の手を取って、再度走り出しました。
お母様は回りの気配を耳で感じながら走っています。その表情は、刻一刻と悪くなって行きました。
そんな時、森が開けました。眼の前に入ってきたのは、大きな崖でした。
対岸までは100m位はありそうです。崖の下は、見えないくらいの深さです。落ちればどうなるか…
私がそんな事を考えていたら、お母様の耳がピクピクと動き、今迄で一番きつい顔をしました。
そして、何かを決心したような顔で
「マルガ…貴女は彼処に見える橋を渡りなさい」
お母様はそう言うと、一本の吊り橋に指を指しました。
その吊り橋は、馬車も通れるくらいの大きさの橋で、他に橋らしきものは有りませんでした。
私は、何か不安な感じがして、お母様に抱きついて
「橋を渡るならお母様と一緒が良いです…私一人は…嫌です…」
私はそう言うとギュッとお母様にしがみつきました。
お母様はそんな私に優しく微笑んで
「大丈夫ですよ。マルガが橋を渡ったら、私も行きますから」
そう微笑んで私の頭を優しく撫でてくれました。私は頷き橋の前までお母様と来ました。
そして私は吊り橋の向こう側迄走り出しました。お母様は橋の手前で、私が渡り終わるのを待っています。
私は橋を渡り終えて、お母様の方を見ました。その瞬間、私の体は凍りつきました。
橋の向こう側では、黒い装束を着た6人位の男がお母様を取り囲もうとしていました。
「お母様!」
私は思わず叫んでしまいました。その声に気が付いた黒い装束を着た3人の男達が、吊り橋を走って私の所に来ようとしました。
その時に、お母様は胸元から何かを取り出し、吊り橋に向かって投げつけました。その瞬間、
「ドオオオン!!!」
大きな爆音と共に、すごい煙が立ち上がりました。
私は、その爆風に飛ばされてしまい、尻餅を着いて座り込んでしまいました。
そして、落ち着いてきて、吊り橋の方を見ると、馬車も通れるような大きな吊り橋は、崩れ落ちていました。私は絶望しました。此処には橋は、これ1つしか無いのです。お母様が取り残された…
「お母様ー!!!」
私の声を聞いたお母様は、黒装束の男達に捕まって抑えつけられていました。
「お母様待ってて!!橋を探してすぐにそっちに行くから!助けに行きますから!」
私は叫びました。お母様の元に行きたい!私は必死でした。
そんな私にお母様が髪を振り乱して
「マルガ来ないで!!そのまま逃げなさい!こっちに帰ってきては駄目!早く!逃げて!!」
お母様のその取り乱した声が、私を更に不安にさせます。
「お母様と離れるのは嫌!お母様と一緒じゃなきゃ嫌ー!!」
私は、力のかぎりそう叫びました。お母様と別れるなんて、考えられない。
身から涙が知らぬ間に出ていました。そんな崖の淵で叫ぶ私に
「お願いマルガ!私とお父様の気持ちを無駄にしなで!貴女が此処で捕まってしまったら、貴方を逃すと約束した私は、お父様に顔向け出来無いわ!お願い!マルガ逃げて!そして生き延びて!」
私はお母様の、身を切られる様な悲痛な叫びを聞いて、どうして良いか解らずに立ち尽くしてしまいました。
その時、私の頬を何かがかすめていきました。私は驚いて振り返ると、後ろの木に弓矢が刺さっていました。対岸から、黒装束の男達が、私に向かって矢を放っているのです。
次々に私に襲いかかる弓矢。私は恐怖に身を支配されたしまいました。
怖くて動けなくなっている私に、響く声がありました
「マルガ!逃げなさい!貴女は生きて!!!」
そのお母様の声に、私は我を取り戻しました。ゆっくり立ち上がり、お母様を見ると、その表情は見えないはずなのに、何故か私に微笑んでくれてるような気がしました。
「わあああああああ!!!」
私は駆け出しました。その崖から離れ、反対側の森の中に、精一杯の力で走りました。
無我夢中で、その場を離れて行きます。
「お母様…お母様ー!!!」
私はそう叫びながら、嗚咽混じりに、暗い森の中を只走るのでした。
お母様と別れてから4日が立ちました。もうどれ位あの崖から離れたのかも解りません。
無我夢中で、お母様から言われた通りに、逃げ続けています。
途中で何回も転び、沼地に落ちてしまったせいで、髪の毛は勿論、全身真っ黒に汚れてしまいました。
川も無く、喉もカラカラ…。何も食べていないので、歩くのにも力は有りません。
私は、此のまま死ぬのかなと、考え始めていた時に、少し離れた所で、何かの音がします。
恐る恐るその音の方にゆっくりと近づいていくと、何台かの馬車が止まっています。
その馬車の傍には、薪があり、そこには美味しそうに焼かれている魚が有りました。
私は空腹の余り、その焼かれている魚に飛びつき、食べ始めました。
焼かれた魚はとても美味しく、無我夢中で食べていました。
魚を全部食べ終わった時に、何者かの声がしました。
「なんだ…おめえ…あ!俺の魚食いやがったのか!こいつめ!」
そう言ってその男は、私の両腕をしっかりと握り捕まえました。
私は身動きが取れません。その男は大きな男で、力がとても強かったのです。
「この汚ねえガキめ!…まあいい、お前みたいな小汚いガキでも幾らかにはなるか…おい!こいつも、檻に入れておけ!」
そう大きな男が言うと、3人の男が私をしっかりと掴み、馬車まで連れて行きました。
その馬車の荷台には、檻があり、その中には何人もの男女が檻の中で、手枷を付けられていました。
私は恐怖し、抵抗しましたが、抵抗むなしく手枷を付けられて、檻の中に入れられてしまいました。
檻に入れられて震えている私をよそに、大きな男は、怒鳴るような声で
「おい!お前等出発するぞ!早く用意をしねえか!」
そう言って手に持っている鞭で、男の人を殴っています。殴られている男は、慌てて準備を始めました。そして準備が整ったのか、馬車の一団は出発しました。
私は手枷を付けられ、檻の中で、此れからどうなるのか不安でたまりませんでした。
あの大きな男に連れ去られてから、一週間が立ちました。
私は、あの男の三級奴隷と言うやつにさせられてしまいました。
あの大きな男は、私が居た街の近くで、街から逃げてきた者達を捕まえ奴隷にして、売ったり、働かせたりしているみたいです。人攫いと言うやつでしょう。
一度奴隷にされてしまえば、もう自由は有りません。私も最初は奴隷なんかになりたくないので、抵抗しようと思いました。
しかし、その気持ちはすぐに消されてしまいました。
私と同じ様に、抵抗しようとした、その青年の結末を見てしまった為に…
青年は20歳位でしょう。元気もあって力もありそうな青年は、三級奴隷にされて、解放を望み、あの大きな男に、詰め寄りました。しかし、その次の瞬間…
その青年は、大きな男の護衛の2人の男に剣で体を貫かれて、大量の血を流しています。苦しそうに顔を歪める青年。
そんな青年に大きな男は近づき、腰から剣を抜き、青年の頭を掴み、その剣で青年の首を一瞬で切り落としました。青年の首の無くなった体から、大量の血が吹き出ています。
大量の返り血を浴び、青年の切り落とした首を掴み上げて、此方に見せる大きな男
「これで俺様に逆らったらどうなるか解ったな!お前等は俺様の奴隷だ!お前達には何の権利も自由も意志もない!ただ俺様の物で、俺様の自由に出来る所有物だけだって事だ!俺様に一瞬でも逆らったら、瞬時にこいつと同じ目に会う。すぐに処分するからな!解ったかゴミどもが!」
そう私達に怒鳴りつけると、青年の血だらけの首を、此方に投げつけました。
私は余りの恐怖に体が動かなくて、失禁してしまいました。あんな簡単に、人を何も考えていない様に、ゴミの様に殺すこの男に、私は只々恐怖に支配されていました。
もう逃げられない…逆らえない…私は恐怖と絶望に染まっていました。
あの青年が殺された日から、一週間が立ちました。
私は再度馬車に乗せられて、山間にある高い塀に囲まれた大きな施設に連れてこられました。
そこはとある貴族が運営する、繊維関係の労働場だと言う事です。
私達、あの大きな男の奴隷は、各地の労働場に出稼ぎに出される事になりました。
私は力もなく、まだ歳も満たないので、繊維関係の力を使わない、主に女の人がする針仕事をさせられると教えられました。
この施設は、貴族が運営しているのですが、此処の施設には奴隷しかいません。
この施設の管理者は男の一級奴隷。
施設側の仕事や警備をするのが男女の2級奴隷が数十人程度。
そして最後に、この施設で労働する、私達三級奴隷男女が数百名。
私はこの労働場で本格的に働かされる事になりました。
此処での生活は、熾烈を極めました。
朝は日の出と共に起こされ、朝食を取ります。朝食は自分専用の木のボウルの様な皿とコップに、管理側の奴隷の2級奴隷が、入れて行ってくれます。
木の皿に入れられたソレは、食物と呼ぶには疑わしい物です。
味は非常に不味く、変な匂いがして、ジャリジャリしており、何の食物か解らない物でした。
しかし、食事はこれしかなくて、これを食べないと、たちまち死んでしまいます。
食事は一日一回の朝食のみ。この皿に入れてくれる食物と、コップ一杯の水のみ。
その唯一の食事を食べ終わると、すぐに作業場に連れて行かれて、作業開始です。
休憩はなく、作業時間の終わる夜までずっと働かされます。作業中は2回までトイレに行く事を許されます。2回以上は行かせてもらえず、作業が終わり、牢獄に戻されるまではトイレは出来ません。
もし、漏らしたり、商品を汚したり、失敗をしようものなら、鞭で何回も叩かれて、罰を与えられます。その罰のせいで、死んでしまう人が居るくらいです。命がけで作業しないと、死の可能性があるのです。なので、死なない為に、細心の注意をして作業していました。
そんな感じでやっとの思いで夜になり、一日の作業が終わると、自分の房の牢獄に戻されます。
そこは大部屋で、一部屋20人位の男女が入れられ住まわされています。
部屋の高いところに鉄格子の付いた窓が一つ、トイレも部屋の隅に一つ有るだけです。
掃除される事の無いその房は、大変汚く、異臭が漂っています。
トイレは汲み取り式で、たまにしか糞尿が取り除かれないので、よく糞尿が溢れかえっていました。
そんな環境の牢獄が唯一の安らげる場所なのですが、気の滅入る事がすぐに始まります。
同じ牢獄の女の奴隷達が、同じ牢獄の男の奴隷達に、集団で犯され始めるのです。
管理側の二級奴隷も、その事については放置している様で、全く感知していない様でした。
奴隷の女達は、沢山の男に犯され、泣き叫ぶ者、諦めてされるがままになる者、逆にその快楽に溺れる者と様々でした。その犯されている女達の声が、あちこちの牢獄から聞こえ、木霊して、異様な音になって聞こえています。
私はその光景を、いつも牢獄の隅で、静かに見ていました。私も女の子なので、犯される可能性があるので、極力目立たない様に、全てが終わるまで、牢獄の隅でじっとしているのです。
そして、夜も遅くなり、男の奴隷達も疲れて女の奴隷を犯すのをやめて眠り始めます。
その時になってやっと女の奴隷達は、ゆっくり出来るのです。言わば犯される事も仕事かもしれません。男の奴隷の欲求不満を、女の奴隷を犯させる事で抑えているみたいに…
私は、身の安全が確保出来た事に安堵して、明日の朝出される、臭くて不味い朝食を食べる事と、変な虫の混じっている水を飲むのを楽しみにして、今日も空腹と疲労の中、眠りにつくのでした。
あの住んでいた塔から出て6年が経ちました。歳も13歳になり、少し大きくもなりました。
私は今もあの大きな男の三級奴隷として、連れてこられたこの施設で、なんとか生き延びています。
この施設の牢獄での生活は熾烈で、大体の奴隷は1~3年で死んでしまいます。
男は働かせ過ぎで死ぬ事が多く、女は男に犯され妊娠し、途中でほぼ流産するのですが、その時に病気にかかって死ぬ者が多い。
今この牢獄で私が一番の古株である。色々な人が入ってきては死んで、また入ってくるの繰り返し。
変わらないのは、夜に犯される女の奴隷達の、卑猥で悲壮な声の木霊だけです。
この世界は男は15歳で成人、女は13歳で成人なので、私も何時犯されてもおかしくない様な歳なのですが、私は小柄であり、此処に連れてこられた時から、男だと思われていて、男の奴隷服を着ているせいもあって、今迄犯された事が無い。見た目もひどく汚れていて、男の子にしか見えない。なので生き残れていると思っています。影も薄いので、私の事を古株だと思っている人もいないようです。きっと私の事など興味は無いのでしょうが…
今の私には希望というものは無い。
今の自分の置かれている三級奴隷と言う立場を良く理解しているのです。これも、生き残れた理由であると思います。
奴隷になると、首に奴隷の紋章が刻まれます。この奴隷の紋章には、とある効力があるのです。
一つは、主人に危害を加えられないように、危害防止の効力がある。
例えば、奴隷が主人にナイフを持って殺そうと、主人を刺そうとすると、魔法の効力によって、金縛りに勝手になってしまうのです。その金縛りを解くには、主人しか出来ません。なので、奴隷は主人に対して絶対に危害は加えられないのです。
もう一つは、殺害の効力です。
主人は自分の所有している奴隷なら、何処からでも奴隷を殺すことが出来る魔法を使う事が出来ます。
どんなに離れていても、奴隷を殺す魔法さえ唱えれば、一瞬で殺したい奴隷を、殺す事が出来るのです。なので、奴隷にされた者は、ほとんど逃亡したりはしません。逃亡した所で、すぐに魔法で殺されてしまうのですから…
奴隷が生き残るには、主人の為に役に立ち、絶対服従するしか無いのです。
なので、今の私には希望というものは無い。もう、死ぬまで自由の無い、三級奴隷として生きて行く事しか無いのですから。
そんな私でも、時折は昔の事を思い出したりします。
あの時以来、離れ離れのお母様…生きていられるのかさえ解らないお母様。
お母様に逢いたい…叶わぬ願いと知りながら、つい思ってしまいます。
私はお母様から貰った、黒くなってしまったネックレスを握りながら、お母様の唯一望まれた約束を果たしています。
『…貴女は生きて…』
私はこの言葉だけを頼りに生きてきた様に思います。勿論、死ぬ事が怖いのもありますが…
こんな状況にあって、まだ生きたいと思う私は、きっと馬鹿なのだと思います。
しかし、その約束も、もう果たせないかもしれません。
今の私は、フラフラで、目もぼやけ始め、体に力も入りません。原因は、此処3日程何も食べていないからです。
ついこの前入ってきた男の奴隷に目を付けられてしまい、3日程食事と水を、毎朝その男の奴隷に奪われてしまっているのです。
もともと、栄養のある食物では無いので、わずかの期間その食事を抜いてしまうと、たちまち死に近づいていきます。私は怖くてその男の奴隷に歯向かう事が出来ず、俯くしか有りませんでした。
もうダメかも知れない…そう思った時でした。
「おい!そこの三級奴隷!こっちに来い!」
施設側の仕事をしている二級奴隷が、私を呼びます。罰を与えられる様な事をしたのかと思い、萎縮しながら行くと、
「お前は今日迄だ。ここから出される。迎えが来るらしいから、ついて来い」
私は理由は解らないが、とりあえずついていく。暫くフラフラしながらついていくと、この施設にある門の近くにある建物に連れて行かされた。
「ここで待っていろ。もうすぐ迎えが来るらしいから」
そう告げて、二級奴隷は部屋から出ていく。
私はフラフラになりながらも、此処から出れる事に歓喜した。
このままあそこに居たら、間違いなく死んでいたと思うからです。少なくとも、此処より生き残れる可能性が上がったと思ったのです。
こんな事を考えながら待っていると、部屋に男たちが入ってきた。私はその男を見て、忘れていた恐怖が蘇り、体を支配するのを感じた。
そこには、6年前に私を無理やり三級奴隷にした、大きなあの男の顔がありました。
「まさか、あの時の生き残りが残ってたとな。お前は運がイイな。お前を売りに行くから、此処とはおさらばするぞ。オイ!」
そう私に告げると、横に居た大きな男の奴隷が私の首に鎖をつけた。そして、そとに止まっていた鉄の檻の付いた馬車に載せられる。まるで、6年前のあの時の様に。
私はまた不安になりながら、身をまかせるしか有りませんでした。
馬車に乗せられてから3日が経ちました。
その間に、野菜の屑や、草を食べさせられ、一日一回のコップの水を貰う事で、何とか生き残れていました。聞いた話では、今日の昼頃には、私が売られる街の奴隷館に到着するとの事です。
お腹が空きすぎて、フラフラするので、眠りながらその時を待つ事にしました。
どれ位寝ていたのかは解りませんが、馬車が止まった事を感じて目を覚ましました。それと同時に飛んでくる叫び声
「おら!お前等!とっとと馬車から降りろ!グズグズしてると、処分しちまうぞ!」
大きな男はそう叫ぶと、鎖を強引に引っ張ります。馬車から引きずるように下ろされた、私を含め5人の男女の奴隷は、レンガ作りの割と大きい建物の前に連れてこられた。
入り口には鎧を着た門番が4人、腰に剣をさげている。幾人もの人が出入りしている。
私はその建物に有る看板を読み上げる
「ガリアス奴隷商店…」
小声でそう呟く。どうやら此処に私達を売るつもりらしい。
大きな男は私たちの鎖を引きずりながら、中に入っていく。中には沢山の人が居ました。
皆が良い服を着ているのが解る。裕福な人が多いのだと解ります。
大きな男に引きずられながら歩いている時に、不意に目眩が私を襲ってきました。急に目の前が真っ暗になって、私は床に倒れてしまった。そんな私に大きな声を出す大きな男
「おら!なに寝てるんだよ!さっさと起きねえか!この犬っころが!!」
そう言って、倒れている私の腹を蹴り飛ばす。余りの痛さに、苦しくて声が出せません。その時、私の胸元から、何かが転がって行くのが見えました。その転がった物を拾って見ている大きな男
「あん?なんだこりゃ~?小汚ねえ石ころだな~?」
小さな黒くなった石のようなものを見つめる。私は自分の胸元を見ると、蹴られたショックで紐が切れて、お母様の形見のネックレスが無くなっていました。そして、その大きな男に持たれているのがソレであると解りました。
「それは!か…返して!そ…それは大切な物なんです!」
ソレは大事なお母様の形見!お腹を蹴られて、痛いし苦しいけど、必死で返してとお願いする私に
「何口答えしてるんだよ!犬っころの奴隷の分際で!!」
そう怒鳴り散らし、怒りの形相で、私を激しく蹴ってきます。そのものすごい激痛に、私の意識は無くなりそうになります。体のあちこちを蹴られ、血が出てきています。
私は余りの痛さと恐怖に、何も考えられなくなっていました。体の芯から震えているのを感じます。
蹴られる度に、意識が飛んでいきます。…此のまま殺される…怖い…死にたくない…誰か…誰か…
『…誰か私を助けて!!』
私は心の底から嘆願した。無意識に手を伸ばす。
そしてソレは……ほぼ偶然に近い事だったと思う。
視界に他とは明らかに違う色が映ったので、偶然そこに視線が行ったのだと思います。
私の視線の先には、見た事の無い、黒髪に黒い瞳の少年が居ました。
その少年と視線が合うと、一瞬…少年の黒い瞳が、真紅に光った様な気がした。
「もうやめろ!それ位で良いだろう!それ以上その子に暴力を振るうな!!」
椅子から立ち上がりそう叫んだ黒髪に黒い瞳の少年…青年かな?…蹴られて視界が定まりません。
黒髪の少年の様な青年は、大きな男と言い合いを始めました。
私は蹴られすぎて、意識が徐々に遠のいて行っているので、何を言ってるのか、解らなくなっていました。懸命に、話の内容を聞こうと努力している私。しかし、次の瞬間
「ボキ!」
っという乾いた嫌な音と共に、私の顔に激しい衝撃が突き抜けました。
その後体が全く動かなくなってしまいました。体の感覚がほとんど有りません。
体中がピクピクと痙攣しているようにも感じるのですが、ソレすらも解らなくなってきました。
視界が徐々に暗くなります。私は完全に意識を失ってしまいました。
そこは暗くて、寒い世界でした。
私は何処とも解らない所を、漂って居る様な感じに包まれていました。私はどうなってしまったのかを考え、思い出していきます。
そして、大きな男の暴力で意識を無くした所迄は、思い出しました。そして、今の状況を考え
「…私…死んじゃったのかな…」
そう呟き、三角座りをして、両手で膝を抱えていると、頭上に一筋の暖かい光が私に射しました。
私はソレを見上げ、その光の方に向かって行きます。
上に上に…まるで何かに引き寄せられる様に、私の体はその光に向かって進んで行きます。
そして、その光に手が届いた瞬間、私の目にうっすらと人影が見え、私に口付けをしている様に見えます。その人影に、何か神々しい物を感じました。
『…黒い…天使様…?』
私は思わず心の中で呟きました。私の目に映ったその黒い天使は、とても優しい眼で私を見ていました。
そう…まるで…お母様が、私を見ている時の様な瞳…
私はその瞳に包まれる様に、ゆっくり意識が遠のいていきました。
「う…うん…」
体の怠さと、痛さに目が覚める。どうやら眠っていたようです。視界が定まらず、頭はボーっとしています。私はどうなってしまったのか考えていると、声が聞こえました
「お!起きたか?大丈夫か?痛い所は無いか?」
その優しい声の方を向くと、黒髪に黒い瞳の男の人が椅子に座って居ました。心配そうに私を見ています。
「え…えっと…貴方は…誰ですか?…此処は何処でしょうか?」
私は今の現状がどうなっているのか解らなくて、辺りを見回します。頭もスッキリして、視界も回復してきました。そんな私に、
「此処は、俺が宿泊している宿の部屋だ。そして俺は、お前の新しい主人だ」
その黒髪に黒い瞳の青年は、ニコっと微笑み私に告げます。私は何がどうなっているのか解らずに、困惑していたのか、その表情を読み取った黒髪に黒い瞳の青年は、此れまでの事を説明してくれました。
私は、その内容を聞いて、思わず絶句してしまいました。
この私の新しいご主人様は、あの大きな男の暴力から救ってくれただけで無く、お医者さんに迄連れて行ってくれたと言うのです。その結果、死にかけの私は助かり、今こうしてベッドの上に、寝かされて居ると言うのが現況らしいのです。
私は身分の低い三級奴隷。それだけの事をして貰って更に、今こうしてベッドに寝ている。
その様な事が決して許されないと理解している私は、急いでベッドから降りようとして、体中に走る痛みで、身を捩れさせてしまいました。
私の新しいご主人様は、そんな私を心配そうな顔で見つめ、ベッドに寝る様に促されて、挙句に、奴隷にとっての絶対である『命令』を使って迄、私を寝かせ様とします。
私は何故三級奴隷である私に、その様な事をするのか理解不能でしたが、ご主人様の『命令』は絶対。
逆らえばすぐに処分されてしまいます。私がその命令に従うのを確認したご主人様は、『夕食を取って来る』と、言って部屋から出ていきます。
その夕食と言う言葉に、私のお腹が反応してしまっています。困った物です。
ご主人様は、私の分とおっしゃられていました。私の分…つまり、あの労働場の様な、ジャリジャリしたとても不味い食べ物…。でも私は、三級奴隷。ソレを食べなければ、生きてはいけないのです。
むしろ、理由は解りませんが、これだけして貰って尚、食べ物を頂けるですから、ご主人様にとても感謝しなければならないと、心の底からそう思っていました。
暫く待っていると、ご主人様が帰って来られました。
その瞬間、とても良い匂いが、私の鼻を刺激します。ソレはとても美味しい物だと解る匂いを、醸し出していました。
でも、ソレは私達三級奴隷の食べる物では無いのを、私は知っています。
私が食べて良いのは、ジャリジャリしたとても不味い食べ物…
ご主人様が持ってきたソレは、私達が決して手を付けてはいけない物なのです。
『きっと…あれはご主人様が召し上がる分…私の分は有るのかな?』
とても良い匂いに刺激されている私は、卑しくも、ジャリジャリしたとても不味い食べ物を、探してしまいます。
ご主人様は、ご自分の食事を、ベッドの傍のテーブルに置かれると、私をベッドの背もたれに、もたれかけさせ、私を抱かえる様にして座る。
私はこんな見た目ですが一応女の子。一瞬こんな私を犯すのかな?と、思っていると、余りにも予想外の事が、目の前で起こります。
「ほら。あ~んして。あ~ん」
目の前には、ご主人様が召し上がる食べ物であろう物が、スプーン一杯に掬われ、私の口元に出されて居るのです。私は、意味が解らなくなって、暫くボーっと、そのスプーンに掬われたソレを見つめていました。そんな私に軽く溜め息を吐くご主人様は、
「…お前は体が痛くて自分で食べれないだろう?だから、体が動くようになるまで、俺が食べさせてやる。解った?ほら、あ~んして。あ~~ん」
ご主人様は、あ~んと言って、口を開かれています。どうやら、コレを私に食べろとおっしゃっている様です。
でも此れは、私などが決して口にして良い物では無い。
しかし、ご主人様は、そんな私に構う事無く、ソレを食べる様に促します。
『…この食べ物に…毒でも入って居るのかな…』
私の心の中で警鐘が、鳴り響いています。
私は最下級の三級奴隷。三級奴隷には人権は無く、武器の試し斬りや、娯楽の為に殺されると言う事も多々あります。
私は、この食事に毒が入っていて、ご主人様は、私が苦しみながら死んで逝くのを、嬉しみたいのかも知れないと、思ったのです。
ですが、私には拒否権はありません。この『命令』に近い状態で、ご主人様のなさる事を断れば、どのみち処分されてしまいます。私は覚悟を決めました。
口を開いて、そのスプーンに掬われているソレを、口の中に入れました。
そして、ソレを口に入れた瞬間、私を今までに無い衝撃が、体を突き抜けます。
なんとも言えない濃厚な味、ジャリジャリする事など全く無く、それどころか、口全体に暖かく染み入って来ます。柔らかいお肉と野菜のその味と言ったら…
私はこの時に食べさせて貰った、野菜と羊の肉のシチューの味は、一生忘れる事は無いでしょう。
そんな固まっている私を心配されたご主人様が、慌てていらっしゃいます。
「え!?ど…どうしたの!?シチュー熱かった!?それとも体に合わなかった!?」
「い…いえ…違うんです…その…余りにも美味しくて…私…こんな美味しいもの…生まれて初めて食べました!」
「そうかそれなら良かった。じゃ~冷めない内に、全部食べちゃおうな。ほら、あ~んして。あ~ん」
ご主人様はそうおっしゃると、感動している私に、次々と食べ物を口に運んで食べさせてくれます。
香ばしい匂いのする、少し焼かれた柔らかいパン、喉を清流に包み込む様な、甘く味わいのある、喉越しの良い果実ジュース、そして、お肉と野菜のシチュー…
私は次々と運ばれてくる神様の食べ物を、どんどん食べていきます。その素晴らしく美味しい味だけでは無く、きっと、私の体がソレを求めて居るのを、本能で感じていました。
ご主人様は、私の食べている姿を見て、とても優しい目をして私を見て、微笑んでいます。
時折、頭をヨシヨシと撫でてくれるその手が、私をとても暖かくしてくれます。
そう…まるで…お母様の様な…
食事を食べ終わった私はその事を思っていると、何かが私の両目を流れていきます。
「ちょ!ちょっと!どうしたの!?何処か痛くなった!?」
私が泣いているのを心配されたご主人様は、凄く慌てていらっしゃいます。
こんな…三級奴隷の私に、こんな事までして下さった上に、何故…こんなに、優しくしてくれるのだろう…
私の事を心配されている、ご主人様の瞳は、優しさで満たされている…
「いいえ…何処も痛くはありません…私…人からこんなに優しくされた事が無くて…それが嬉しくて…嬉しくて…」
涙ながらにそう言う私の頭を、ポンポンと優しく叩くご主人様の手が心地良い。
『…あの食事に、毒が入って居るかもしれないだなんて…こんなに優しい目をされる、ご主人様がするはずが無い。…私は…最低…です…』
そんな事を思い、私が泣いていると、ご主人様は何も言わずに、ずっと頭を優しく撫で撫でしてくれます。
ソレがとても嬉しくて、ありがたくて、自然に笑みが浮かびます。そんな私に、眩しい微笑みを私に向けてくれます。
『黒い天使様…』
私は神々しく見えるご主人様を、見つめてしまいます。私はどの様な顔で、ご主人様を見ていたのかは解りませんが、ご主人様は相変わらず、その優しい微笑みを私に向けてくれています。
そうして、落ち着いてきた私に、ご主人様が薬の入ったカップを私に差し出します。
私は今度は迷う事無く、その差し出された薬を、コクっと飲みます。
その瞬間、その薬の余りの苦さに、思わず飲むのを躊躇ってしまいます。
そんな私にご主人様は、私のおでこにピシっと、指を弾きます。軽い痛みを覚えて、おでこをさすっている私に、この薬は大変良く効いて、物凄く高価な物だから、必ず全て飲む様にと『命令』されます。
私は諭すように、私の事を心配されているのが解る、ご主人様の事を思い、一気に飲んでいきます。
そんな私を見て、少し楽しんでいらっしゃる様に見えたのは、私の心の中の秘密にしようと思っています。
私は、この優しいご主人様と、此れからどの様に生活をしていくのか、この時は全く解っていませんでした。
私がご主人様に買われて早7日。私にとても優しくしてくれるご主人様のお陰で、体は元気になり、前よりも体中に力、生命力が溢れているのを感じます。
朝、昼、夜と、あの美味しい料理を食べさせてくれるだけでなく、オヤツ?と、呼ばれる物迄食べさせてくれます。
当然、こんなに食べた事の無い私は、とても幸せに思っています。まるで…夢の様…
そんな優しい私の新しいご主人様は、美味しい料理を私にくれるだけではなく、色々一緒に遊んでもくれます。
元気の出て来た私の為と言って、運動もさせてくれるんです。
今迄した事の無い変な踊りの様な『ラジオタイソウ?』なる事を、私と一緒にしてくれます。体を拭く布を丸めて、お互いに投げ合う『キャッチボウル?』も、楽しくて大好きです。
そのお陰で、私は体に力が溢れて居るのを感じられる様になれたのです。
私の新しいご主人様は、本当に優しくしてくれます。
夜寝る時には、今迄見た事の無い綺麗な、真っ白な羊皮紙の様な物に書かれた物語を読んでくれます。
『モモタロウ?』『カグヤヒメ?』『シラユキヒメ?』『サルカニガッセン?』…
ご主人様の読んでくれる物語を、楽しく聞かせて貰って、私は柔らかいベッドで眠るのです。
私が寝たのを確認して、微笑みながら私の頭を撫で撫でして部屋を出て行かれます。その後ろ姿が、とても愛おしい…
私がこの事を知っているのは、寝たふりをしてチラッと何時も見ているからです。
そのご主人様の顔が大好きな私は、そうするのが癖になっちゃって居る事は、私だけの秘密です。
私はご主人様と一緒に居るのが好き。ご主人様と一緒に遊ぶのが好き、とても楽しい。
私とご主人様は、当然、別々の部屋で寝ています。身分の低い三級奴隷と一緒に寝るなど、聞いた事はありません。
しかし、私は一人でいる時は、何時もご主人様の事を考えてしまっています。
今日はどんな料理を食べさせてくれるのかな?どんな楽しい事で、一緒に遊んでくれるのかな?どんな、面白い物語を読んで、寝かせてくれるのかな…。
私は何時も、ご主人様がその扉から入って来るのを、心待ちに楽しみに待っているのです。
そんな事を考えていると、今日もその優しい微笑みを携えながら、その扉から部屋に入って来るご主人様。
私は我慢出来無くなって、すぐにご主人様に近寄って行き、朝の挨拶をします。
ご主人様の足元で平伏して、ご主人様の足の甲に、何度も口付けをします。
三級奴隷が良くする挨拶ですが、私は今迄した事は在りませんでした。前の主人である、私を攫った大きな男は、私に関心が無かったので、その様な事をさせませんでした。
普通であれば、足にキスをするなど、嫌に思うのでしょうが、それが新しい私の優しいご主人様に出来るのであれば、私は喜んでします。いえ…むしろしたいのが、私の本音なのでしょう。
そんな私をご主人様は、優しく抱きかかえあげ、ニコっと優しく微笑んでくれます。
その顔を見て、私は何時も幸せに包まれるのです。
そんなご主人様がまずする事は、私の糞尿の始末です。
この部屋にはトイレは無く、何処か別の場所に有るのですが、ご主人様からこの部屋から出ない様に言われているのです。なので、私は尿瓶と言う物に、ソレらをするのです。
本来なら逆に、三級奴隷である私がその様な事を、しなければいけないのですが、ご主人様は、ニコっと微笑みながら、嫌な顔ひとつせず、ソレらを処理してくれます。
私はとても申し訳なく思うのと、恥ずかしく思うのとで、何時も俯いてしまうのですが、優しいご主人様は、クスっと少し笑って、ソレらを持って部屋から出て行かれます。
そして、暫くすると、綺麗に洗われた尿瓶と、した後にお尻を拭く布を、そっと部屋の隅に置かれます。私は感謝の言葉を述べ、再度平伏して、ご主人様の足の甲に、何度もキスをします。
そして、また優しく私を抱きかかえて、ニコっと微笑んでくれるご主人様。ソレを、心から喜んで見ている私…。ほんと、癖になっちゃってます。
部屋に来られたご主人様は、今日は何時もと違う事をおっしゃられました。
「今日は体を洗いに川に行きます!」
指を窓の外を指し、私に告げるご主人様の顔は、とても自信有り気で楽しそうです。
私もそんなご主人様に、パチパチと拍手をしていると、何か考えられている様な、呆れている様な表情を私に向けます。
『ズ~~~~~ン…』
私は今、落ち込んでいます。すっごく、すっごく…
私は体を洗いに行くのは、ご主人様だけと思っていたのです。
三級奴隷である私は、長い間体を拭くとか、洗うと言った事をしていません。三級奴隷にその様な事をする水が、勿体無いからでしょう。
そんな私にご主人様は、『体を洗いに行くのは、君が主で、君はものすごく汚くて、ものすごい悪臭をはなっているんだよ。だから綺麗にしに行くんだ』と、言われました。
ガーンと来ました。すっごく、すっごく…
私は長い間、汚いままだったので、自分の匂いが解らなかったのです。
よく自分の体を見れば、黒くなってくすんでいるし、髪の毛もバリバリです。よく考えたら、そういう事が有っても可笑しくは在りません。
私は、きっと今迄ご主人様が我慢してくれていたと思うと、恥ずかしいやら、情けないやら、やりきれないやら、申し訳ないやらで、沢山の感情が湧いてきます。
そんな私に、ニコっと笑い『気にする事は無い。此れから凄く綺麗に、良い香りにしてあげる』と、優しく言ってくれます。そんな優しいご主人様の微笑みに、また私は見蕩れてしまいます。
暫く体を洗う川に向かって居ると、ご主人様が、何故三級奴隷になったのか、聞いてこられました。
私は少しためらいながら、ゆっくりと今まであった事を説明していきます。
大好きなお母様と離れ離れになった事、前の主人である大きな男に捕まって、三級奴隷にされた事、過酷で熾烈な労働場で、何とか6年間生き抜いた事、そして、ご主人様に買って頂いた事…
そんな事を説明していると、何故か自然と涙が流れていました。
そんな私の涙を指で拭いてくれ、優しく頭を撫でてくれるご主人様。ご主人様に出会えた事が嬉しくて、何だか涙が止まりませんでした。それでも優しく頭を撫で続けてくれるご主人様…大好きです…
「此処が今回のミッション遂行の目的地、ジルレー川です!!」
川に到着した私達。ご主人様が嬉しそうに言って、川に指をさしています。
私も何だか嬉しくなって、パチパチと拍手すると、ご主人様も何だか嬉しそう。
ご主人様は川辺に、色々な物を並べていかれます。どうやらそれで、私の事を綺麗にするらしいです。
先に、虫下しと言うお薬を、ご主人様と一緒に飲みました。ソレを飲むと、死んだ虫がお尻の穴から、出てくるらしいです。私がその事で恥ずかしそうにしていると、なんだかちょっと楽しげなご主人様。意地悪なのです…。
色々ご主人様の説明を聞いて、いよいよ体を洗う事になりました。
ご主人様が服を全部脱ぎさって、素っ裸になられました。
どういう訳か、私はご主人様の裸を、直視する事が出来ません。何故か…胸が…ドキドキして、顔が熱くなります。
今迄男の人の裸など、沢山見て来ているはずなのに…私どうしちゃったんだろ…
そんな私を見て楽しそうなご主人様は、私の汚く汚れた男物の奴隷服を、一気に脱がしました。
私は、この汚れた体を、ご主人様に見られたくなくて、思わず胸と性器を両手で隠してしまいます。
ご主人様は、呆れた様な、少し可笑しそうな微笑みを浮かべ、川辺に立たせます。
川の水を掛けられ、少し冷たく感じましたが、すぐに背中の気持ち良さが勝ってきました。
ご主人様が私の背中を丁寧に洗ってくれます。私は気持ち良いので、ご主人様にそのままお任せする事にしました。…本当に私って、奴隷失格です…
そして背中を洗い終わり、私の前に立つご主人様は、私の手をどけて、胸を洗っていかれます。
ご主人様に、胸を見られているのと、その洗い方が気持ち良いのとで、何だか体が火照って来ます。
乳房の先の乳首が、少し固くなっているのが自分で解ります。恥ずかしい…
ご主人様は、そんな私を不思議そうに見ながら、どんどん私を洗っていかれます。
そして、上半身が終わり、下半身に移ろうとされて、私の手をパッとどけたご主人様が、カチっと音がしそうな位、固まってしまいました。私は自分の性器がよほど醜いのかと、恥ずかしく、情けなくなって俯いてしまったのですが、頑張って視線をご主人様に戻すと、ご主人様は何処か上空を眺めています。私も釣られて空を見ると、鳥が輪を書いて、飛んでいます。
それを見たご主人様は深呼吸されて、再度私の性器を見ます。そして、驚きの表情をされて、私に衝撃の言葉を掛けられました。
「君は男の子だよね?」
その言葉に、私は何か鈍器で頭を殴られた様な衝撃を受けました。
なんだろう…凄く悲しい…ご主人様にそう言われる事が…女の子として見て貰えない事が悲しいし、寂しい。私の体は、自然とワナワナと震えていました。そして何とか声を絞り出します。
「私は女の子です…」
「えええええええええええ!!!」
私のかすれる声を聞いて、ご主人様が大きな声を上げて驚かれます。
薄々気がついていましたが、やっぱり私の事を男の子だと思っていたみたいで、私は少し泣きそうになっているのでした。
「マ…マルガ?…君はマルガって言うのかな?」
「ハ…ハイ!私はマルガです!」
私の名前を呼んでくれる、大好きなご主人様。私の事をネームプレートで確認された様です。
私の事を男の子だと思っていた事に謝罪までしてくれます。私は恐れ多くて、仕方が無い事を伝えると、苦笑いをして、私の体を洗う事を告げられます。
私は、今までの分を取り戻すかの如く、頭や体を何回も洗われています。
体の痒かった所が無くなり、石鹸や頭洗いの液の、良い香りが鼻に入って来ます。
そんな、アワアワになっている私を抱えて、ご主人様は少し深い所に、一緒に飛び込みます。
私の体と頭を包んでいた泡は、一瞬で流されます。水中から浮かび上がった私とご主人様は、水面で再会を果たします。
そして、私を見られたご主人様は、再度固まってしまいました。
私は自分の顔がよほど醜くなっているのかと、再度ガーンとなる所だったのですが、ソレが起きたせいで、出来ませんでした。
何だかお尻の穴がムズムズします…そしてお尻を見ると、何かが出てきていました。
「ご…ご主人様…何か…お尻がムズムズします…」
恥ずかしさの余り、顔の熱くなっている私を見て、ギュっと私の腰を引き寄せるご主人様。
わたしはご主人様の裸が目の前に有り、思わず抱きついて、しがみついていました。
ご主人様の裸…ご主人様の胸…暖かい…
ご主人様は私の腰を掴みながら、次々と虫の死骸を、私のお尻の穴から、引き抜いていかれます。
その感覚に、私は身を悶えさせます。息も荒くなり、ソレをご主人様に見られているせいで、顔も熱々です。そんな私を見ていたご主人様が、
「マルガ…目を閉じちゃダメ…こっちを向いて俺を見て…」
私の顎を掴み、艶かしい声で私に命令されます。私は必死にご主人様の瞳を見つめます。私とご主人様の吐息が交じり合って、私はボーっとしてきます。その次の瞬間、私に驚く事が起きました。
「う…んん…」
私は微かな声を上げます。ソレは、ご主人様が私にキスをなさったからです。
ご主人様の柔らかく、暖かい舌が、私の口の中に入ってきます。その気持ち良さに、私もご主人様の舌を欲し、舌を絡めて行きます。
すると、私の胸の下辺りに、何かをご主人様が擦りつけてられます。
ソレは、大きくなった立派なご主人様の性器でした。ソレを見た私は、歓喜に染まっていました。
『私に…欲情なさっている?こんな私を…女の子として、見て下さっている!?』
私の心は喜びで満たされます。胸の奥が、まるで魔法で焼かれた様に、熱せられています。
私のお腹に、切なそうに性器を擦りつけているご主人様…もっと、気持良くさせてあげたい…
私はご主人様のモノを優しく握ります。すると、ご主人様は、私の口の中を、舌で味わっていきます。
もっと私を味わって欲しい…私も…ご主人様を…味わいたい…
心の奥から湧き上がるその欲望を、私は止める事が出来ませんでした。
私は、あの過酷な労働場で、女達が男達に犯されるのを、6年間毎晩見ていたので、男の人がどうしたら気持ち良いのか、多少は心得ているつもりです。私はご主人様と舌を絡めながら、ご主人様のモノを愛撫していきます。ご主人様は、私の口を吸いながら、次々と虫の死骸を、お尻の穴から引きぬいていきます。その感じも合わさって、私の性器は、滴るように濡れているのが解ります。
気持ち良さそうなご主人様を感じていると、ご主人様がピクっと身悶え、私の胸に、ご主人様の子種…精液が飛び散ります。そのご主人様の精液の香りに、私のお腹が熱くなります。
私のお尻から、全ての虫を取られたご主人様は、私の胸に飛び散っている、ご主人様の精液を指ですくい、私の口の中に入れられます。その瞬間に、私は嬉しさに身を包まれる。
『精液って…変な味…でも…ご主人様の子種だと思うと…とても美味しい…もっと…欲しい…もっと…私の体の中に、ご主人様の精を取り入れたい…』
私は、その欲求を抑えられず、全ての精液を口に含み、それをコクコクと味わいながら、呑み込みます。そして、私の口の中に精液が残っていないのを、確認したご主人様は、至高の表情を浮かべる。
「可愛かったよマルガ…」
微笑みながら言われるご主人様に、私の全てが鷲掴みにされた様でした。
ギュッとご主人様に抱きつくと、ご主人様もギュっと抱き返してくれる。
私はその幸福に身を包みながら、きらめく川の中で、ご主人様と抱き合っていました。
私とご主人様は、宿の部屋に帰ってきていました。
川で再度ご主人様に綺麗にして貰って、一杯キスもして貰えた私は、密かに上機嫌でした。
帰りに、髪まで切って貰えて、しかも上等なメイド服迄貰っちゃうなんて…この幸せを、誰に告げれば良いのでしょうか?
今も美味しい夕食をご主人様と一緒に食べている。汚く無くなって、石鹸の香りのする私は、ご主人様の部屋に来ている。
私は、ニコニコしていたのでしょうか、ご主人様が優しく撫で撫でしてくれます。気持ち良いのです。
その時、メイド服をくれた奴隷商の言っていた事が気になり、ご主人様に全てを話して貰いました。
その内容に私は驚愕して、ご主人様に平伏をして、足の甲に何度もキスをする。
こんな私の為に…嬉しさと申し訳なさが私の心の中で、グルグルと渦巻いて居ました。
そんな私を優しく抱きかかえ、ベッドの隣に座らせるご主人様。
「マルガ大切な話があるんだ。俺の話を聞いて、マルガに何方か選んで欲しいんだ」
いつになく真剣なご主人様にドキっとしながら、静かに私は頷きます。
「マルガ…君には2つの道を選ばせてあげよう。二つの道というのは、このまま俺の奴隷として、永遠に俺に服従するか、奴隷から解放されて自由に生きるかだ」
そのご主人様の言葉を聞いて、一瞬目の前が真っ暗になりました。私…やっぱり…捨てられるの?
心の奥がキュンとなり、目に涙が自然と湧いてくるのを感じます。
「そ…それは、どういう事でしょうか?…やっぱり私の事がお邪魔なので捨てると言う事でしょうか?」
私は必死になんとかご主人様に理由を尋ねました。するとご主人様はゆっくりと首を横に振り、
「そうじゃないよ。…俺はマルガ自身の意思を俺に見せて欲しいだけなんだ。自分の意思で俺に永遠の服従を誓うのか、自由を選ぶのか。奴隷から解放されて自由を選ぶなら、多少のお金も持たせてあげる。もう惨めな思いもする事は無い。…マルガ。君はどうしたい?君の意思を教えて」
私はご主人様の話を聞いて、とても驚きました。
私は三級奴隷…もう二度と、解放される事は無いと思っていたのに、ご主人様は開放しても良いと、しかも、お金まで持たせて、自由にしてくれると言っている。
私は余りの事に、考えがまとまりませんでしたが、ご主人様が私の顎を掴み
「さあ…選んで…。永遠の服従か…自由か…」
吸い込まれる様な黒い瞳に、私が映し出されている。それを見た私は、不意に有る事に気がついた。
『自由になったら…ご主人様とはどうなるの?一緒に居られるの?…いえ…奴隷じゃなくなった私は、きっとご主人様と別れる事になる………嫌…そんなの嫌!…ご主人様と離れるなんて…絶対に嫌!』
私の心の底から、絞り出されるかの様なその感情が、私の体中を駆け巡る。
その時に、私はやっと気が付きました。
私は、ご主人様の事が好き…一人の女の子として、ご主人様を好きになっている…ご主人様を一人の男性として、大好きなんだ!
それを心と体で実感できた私は、もう迷う事は無かった。
「私は…ご主人様の奴隷として…生きて行きたいと思います!」
「本当にいいの?もう二度と奴隷から解放してあげないよ?」
「はい…私はご主人様の奴隷になりたいです…」
「今日…川でした様な事をいっぱいされるんだよ?それ以上の事も…いいの?」
「はい…私の体で良ければ…何時でも好きな様に使って下さい…」
私の決意を感じられたご主人様が、私に至高の命令をくだされた。
「…じゃあ…此処で誓えマルガ…」
「私…マルガは…ご主人様に全て…身も心も捧げます…私は永遠にご主人様の奴隷です…」
私には迷いは一切無かった。奴隷からの開放より、ご主人様と一緒に居られる事の喜びが、体中を支配しているからです。
「解った…マルガは…俺の奴隷だ…永遠に…もう…離さないからな!」
「はい…私の全てはご主人様の物です…永遠に…」
私はこの夜、私の全てをご主人様に捧げれる事に、喜びを感じていた。
「う…うん…」
私はベッドでご主人様に抱き寄せられて、キスをしている。
ご主人様の舌が、私の口の中で滑らかに動いている。私はご主人様の舌を味わい、同じ様に舌を絡める。ご主人様の手が、私の服に手をかけます。私をゆっくりとベッドに寝かせ、服を脱がそうとしてくれています。私はいよいよだと思い、思っている事を素直に言おうと思いました。
「ご主人様…私はこういう事をするのが…初めてでして…ご主人様にきちんとご奉仕できないかも知れません。…きっとご主人様に喜んで頂けるご奉仕が出来る様に頑張りますので、私に失望なさらないでくださいませ…」
私が恐縮しながら言うと、ご主人様は驚いた様な顔をされて、その後、瞳に喜びの色を浮かべる。
「ううん…逆に嬉しいよ…マルガの初めてをすべて奪う…解った?」
「はい…ご主人様に、私のすべての初めてを捧げます」
私にキスをするご主人様を抱きしめながら、私は今迄犯されなかった事に喜びを感じていた。
『ご主人様に、私の初めてを貰って頂ける…嬉しい…』
私が喜びに浸っていると、ご主人様は何かを用意されています。
私は気になって聞いてみると、『今後のお楽しみ』と、言われて、詳しくは教えて頂けませんでした。
そんな私にご主人様はキスをされて、服を脱がしてくれます。私は裸になって恥ずかしくしていると、ご主人様が、キスをしてくれて、私の体を愛撫していかれます。
「ご…ご主人様…き…気持ち良い…です…」
私のその声を聞いて、嬉しそうに私を更に愛撫してくれるご主人様。
私の秘所は、自分でも解る位に、濡れているのが解ります。それを見て嬉しそうなご主人様。
「ほらマルガ…。マルガの大切な所はこんなになってるんだよ?」
「とっても…気持よくて…恥ずかしいです…」
きっと私の顔は真っ赤になっているのでしょう。熱さで解ります。体も火照っていて、その気持ち良さに、頭がボーっとしてきます。
そんな私にご主人様は、立派なモノを私の口の前に出されます。
「さあマルガ…その可愛い口で、俺のモノに奉仕するんだ…」
「解りました…ご主人様…」
私はご主人様のモノを味わえる喜びを感じながら、口に咥えて舐めていきます。
ご主人様の味を感じながら、気持ち良さそうなご主人様を見て、幸せな気持ちに包まれている私。
もっと…気持良くして上げたい…
更に念入りに激しく、ご主人様の立派なモノを愛撫していると、ご主人様の体が、ピクっと強張ります。その瞬間、私の口の中に、ご主人様の子種が、口の中いっぱいに広がります。
私は、ご主人様のモノから、残っている子種を吸いだすと、口を開けてご主人様に見せる。
それを見たご主人様に、子種を頂く許可を貰った私は、味わいながら、コクコクと飲み込んでいく。
ご主人様の精を味わって幸せを感じている私に、ご主人様は愛撫で答えてくれる。
私の秘所やお尻の穴まで、丹念に愛撫をしてくれるご主人様。
その余りの気持ち良さと、ご主人様にしてもらえる喜び、恥ずかしさ、申し訳なさが、体中を駆け巡り、私を更に興奮させます。私の秘所は、まるで洪水にあったかの様になっていました。
「マルガの処女を奪うからね…。優しくはしない…全力で犯すからね…一生に一度の…マルガの処女の喪失している時の顔を存分に見たいから…さあ…おねだりしてごらん…」
そう言って、私ににキスをされるご主人様に、私は両足を開いて、両手で秘所を広げる。
「ご主人様…マルガの処女を捧げます…存分に奪って下さい…」
「ああ…解った…」
いよいよ…ご主人様に…私の初めてを貰ってもらえる…
私が喜びに支配されていると、ご主人様のモノが、誰も入った事の無い、私の中に中にと入ってくる。
「イッ…は…んっうん…」
私は痛みを感じ、少し声を出す。ふと、視線を下に移すと、ご主人様のモノを根本まで入れている、私の秘所が見える。それを見て、喜びが体全てを支配する。
「…マルガの処女膜を破ったよ…。俺のモノを咥えちゃったね…」
「はい…ご主人様に私の処女を奪って貰えて…嬉しくて幸せです…」
私は嬉しさの余り、涙を流してしまった。そんな私の表情を見て、嬉しそうなご主人様は、
「マルガ…此れから全力で動くから…その初めての表情をもっと俺に見せて…」
「ハイ…ご主人様…私の初めての全てを見て下さい…」
そう言い終わると、ご主人様は全力で私を犯し始める。私の体に、身を切り裂く痛みが駆け巡る。
処女を喪失した破瓜の傷み…ご主人様に奪って貰えた喜びの痛み…
私は労働場で、沢山の男達に犯されている女達を見てきました。女性達の表情も良く覚えています。
苦痛、快感、悲愴、屈辱…。様々な感情を篭めた表情で犯されていました。
私も、その様な感情を持って、その様に犯され、全てを無くすのだと思っていました。
でも現実は違った…
私はご主人様に、初めてを奪って貰え、犯される事に喜びを感じている。
好きな人に、処女を捧げ、全てを犯される事が、こんなにも嬉しい事だったなんて…
身を切る痛みさえ、喜びを感じる為の、1つの要因にしかなっていない。私の秘所に出入りしている、ご主人様の立派なモノには、私の愛液と破瓜の血が付いて、艶かしく光っている。
私はそれを見て、至高の気分に浸る。
『ああ…私の愛液が…私の破瓜の血が…ご主人様の立派なモノを汚している…』
私の心は完全にご主人様に囚われている。力一杯私を犯すご主人様が愛おしい。
犯されながら私がキスをせがむと、ご主人様は艶かしい微笑みを湛え、私の口の中に舌を入れてくれる。私は、上と下の口を、ご主人様に犯される事に、喜びを感じていると、ご主人様の体が、少し震えてくる。
「マ…マルガ!出すよ…マルガの可愛いアソコの中に、一杯精液出すからね!」
「ハイ!私の…私の中に沢山注いでください!」
私は、快感に染まっているご主人様の表情を見て、ギュッとご主人様にしがみつく。
すると次の瞬間、ご主人様は大きく体を強張らせる。ご主人様の立派なモノから、勢い良く子種が、私の膣の中に、沢山注がれる。私はソレを感じ、ご主人様をきつく抱きしめる。
『熱い…膣の中が…ヤケドしちゃいそう…私の中に…ご主人様の子種が…染みこんでいく…嬉しい…』
私はご主人様に、焼印の様な精を注がれて、至高の幸福に、身を包まれていた。
「マ…マルガ…出したよ…マルガの可愛い膣に一杯…精子出してあげたよ…」
「ご主人様…マルガに精を注いで頂いて、ありがとうございます…」
私はご主人様の言葉に、お礼を言うと、優しくキスをしてくれるご主人様。
ご主人様の舌を味わい、ご主人様にも私の舌を味わって貰う。
「これでマルガは俺だけの物だからね…」
「はい…マルガはご主人様だけの物です…ご主人様専用です…ご主人様の物になれて…私…幸せです」
心の底から出た私の感謝の言葉を聞いたご主人様は、ギュっと私を抱きしめてくれる。
私もご主人様をきつく抱き返す。何度もキスをしてくれるご主人様が、とても愛おしい…
私とご主人様は、抱き合ったまま、そのまま眠ってしまいました。
私は、暖かい何かに包まれている。
その居心地の良さは、まるでお母様に包まれている様です。
そして、優しく何かに顔を撫でられた私は、光を感じて、目を少しずつ開ける。
するとそこには、私を慈しむ様に、微笑みを向けているご主人様の顔を見つける。
そんな私の頭を優しく撫でてくれるご主人様…。そんな愛おしいご主人様にギュっと抱きつく。
『ご主人様…暖かい…ああ…なんて…幸せなんだろう…』
私は一頻り幸せを噛みしめて、ご主人様に挨拶をする。
「ご主人様…おはようございます…」
私はそう言って、ご主人様にキスをする。ご主人様の口の中に舌を忍ばせる。ご主人様は入れた私の舌に、舌を絡めて味わってくれる。私もご主人様をタップリと味わ合わせて貰って、お互い顔を離します。
「マルガおはよう」
ニコっと微笑むご主人様に見蕩れていると、ご主人様のモノが大きくなっているのが解った。
「ご主人様辛そうです…。此方も毎朝ご奉仕致します…」
私はご主人様のモノを咥え愛撫をします。ご主人様が少し体を悶えさせています。
ご主人様の顔を見ると、とても気持ち良さそうに、私がご主人様のモノを咥えているのを見ています。
私はそのご主人様の顔を見て、また心が鷲掴みにされた様な感覚に囚われ、ご主人様のモノに奉仕するのにも力が入ります。すると、ご主人様は、体を強張らせて、私の口の中に精を注いでくれます。
私はご主人様の精を全て吸出し、口の中で、ご主人様のモノと一緒に味わい、コクコクと飲み込んで行きます。最後に、私の口の中を確認したご主人様は
「マルガ…可愛かったよ…」
「ありがとうございます…ご主人様…」
黒く吸い込まれそうな瞳を私に向け、ニコっと微笑むご主人様に抱きつく。
ご主人様も優しく私を、抱き返してくれます。
『ああ…本当に幸せ…ご主人様…大好きです…』
私とご主人様は暫くの間、そうやって抱き合っていました。
暫くベッドの中で抱き合っていた、私とご主人様ですが、今日は何処かに出かける予定があるとの事で、私とご主人様は、朝食を食べて、宿屋を後にしました。
まだ男物の奴隷服を来ている私ですが、綺麗にした事で、もう男の子には見えないねと、ご主人様にいって貰えた。それに喜んでいると、1軒目の目的の場所に就いた様です。
そこは、宝石や細工品を売るお店で、店構えも大変綺麗にされていた。
その店の前で暫く待っていると、ご主人様が帰ってこられる。
「ご主人様おかえりなさい!」
「待たせたねマルガ。じゃ~行こうか」
私に微笑むご主人様。そして次の目的地に歩き出すご主人様の腕に、思い切って抱きついてみました。
実は外に出てから、ずっとそうしたかったのです。ご主人様とくっついて居たい…
怒られるかな?と、思ったのですが、ご主人様は嬉しそうな微笑みを私に向けてくれる。
『…やりました!作戦成功です!』
私は心の中で作戦の成功を喜んで、ふとご主人様を見ると、ご主人様も何だか嬉しそう。
そんなご主人様を見て、幸せに包まれている私は、ご主人様に付いて行く。
暫く一緒に歩いていると、大きな石造りの立派な建物が見えて来ました。入り口には沢山の鎧を来た兵隊が警護しています。その兵隊達の間を、沢山の身なりの良い人々が出入りをしていました。
「ご主人様…此処はどこですか?」
私は身分の低い三級奴隷。この様な身分と地位の高い人が来る様な所には、一番縁遠い人種。私は辺りを見回して、その事を感じ戸惑っていました。
すると、ご主人様は、何時もの様にニコっと微笑んで
「此処はラングースの町唯一の役場だよ。色々な公的手続きをする所だよ」
「や…役場ですか!?」
ご主人様の返答に、思わず大きな声を出してしまいました。
役所…三級奴隷である私が、役所に連れて来られる…その理由は1つ…
私はその事を考えだし、今迄幸せに浸っていた自分が、とても悲しくなってきました。
そんな私をご主人様は気にしていない様で、私の手を引いて、役所の中にどんどん入って行かれます。
そして、1つの受付の前で歩みを止めるご主人様が、私にニコッと微笑みながら、
「此処が奴隷の財産管理をしている公証人の受付だ」
私はそれを聞いて、目の前が真っ暗になりました。
役所に奴隷を連れて来て、奴隷の財産管理をしている公証人の所に来る理由は…
『ソレは、不要になった奴隷を処分する時…』
私はさっき迄浮かれていた自分が、恥ずかしかった。私はご主人様に気に入られ、喜んで貰って居るとばかりだと思っていた。でも…ソレは違った…
ご主人様は、私を処分なさる為に、此処に連れて来た…それが事実。
私がそんな事を思っていると、私に此処で待つ様に言い、ご主人様は受付の方に歩いて行かれる。
そんなご主人様の後ろ姿を見ながら、ご主人様に気に入って貰えなかった自分が許せなかった。
短い間だったけど、ご主人様と一緒に居られた楽しい時の思い出が、頭の中一杯に広がっています。
すると自然と目に涙が浮かんできました。涙を必死に堪え、ご主人様が戻ってこられたので、最後の感謝を伝えようと、ご主人様に近づく。
「ご主人様…今迄有難うございました…こんな私に色々して下さった事感謝しています。ご主人様のご期待に答えられなかった私を、お許し下さい…」
私はご主人様の足元で平伏して、足の甲に何度もキスをします。
そんな私を見て慌てられるご主人様は、両脇に腕を入れて私を立たせ、少し申し訳なさそうな顔をする。
その顔を見た私は、涙を我慢出来そうに無い位に堪えていました。
すると私を見たご主人様は、私をギュッと抱きしめ、額に優しくキスしてくれます。
「マルガ心配させちゃってごめん。マルガの思ってる様な事じゃないよ?」
そう言って、何時もの優しい微笑みを、私に向けてくれるご主人様。
私はどういう事なのか解らずに戸惑っていると、私の優しく頭を撫でながら
「マルガ、何も心配しなくていいから、あの公証人の所に行って来て」
そう言って、公証人を指さすご主人様。私は、ご主人様を信じて、公証人に向かいます。
途中で不安になって、何度もご主人様に振り返ります。その都度ご主人様は、優しい微笑みを私に向けてくれるのです。
何回かその様な事を繰り返し、公証人の前に来ると、私を見た公証人は、フンと鼻で言うと
「お前が、葵 空の所有している、三級奴隷だな?ネームプレートを見せろ」
そう淡々と告げる公証人。私は頷き、公証人に言われるままネームプレートを差し出します。
「ウム。間違いないな。では、そこでじっとして立っていろ。動くなよ?」
公証人は私に右手を額にかざします。
そして、何やら呪文の様な言葉を発すると、掌から光が出て、私を包みます。
私はその光に若干の恐怖を感じながら見ていると、その光は私に吸い込まれ消えていきます。
何が起こったのか解っていない私に、その表情を見た公証人は、再度フンと鼻で言うと
「これで終わりだ。奴隷の階級変更は無事完了した。ネームプレートで確認する事だな」
そう言って公証人は、私にネームプレートを返却してきました。
私は戸惑いながらネームプレートを受け取ると、ご主人様の所に戻って来ました。
そんな私を見て、少し悪戯っぽい微笑みをするご主人様は、
「マルガ…ネームプレートを、開いて見て。そして、自分の身分の所を見てよ」
私は戸惑いながら、ご主人様の言われた通りに、ネームプレートを開き、確認をする。
「…身分 一級奴隷 所有者 葵 空 遺言状態 所有者死亡時奴隷解放……え!?…わ…私が…一級奴隷!?」
思わず声を上げてしまいます。それほど予想外の事だったのです。
一級奴隷はごく一部の者しかなれない、奴隷階級。人権も普通の人の様に保証されているし、差別される事も無い。しかし、高額な人頭税が掛かるので、余程の事が無い限り、選ばれる事は無いのです。
しかも、三級奴隷から、一級奴隷になるなど…聞いた事が在りません。
私は見間違えかと思い、何度もネームプレートを見直します。目を擦ってはネームプレートを見て、また目を擦って、ネームプレート見る。
そんな私を見て楽しげなご主人様は、優しく私の頭を撫でてくれます。
「マルガを一級奴隷にした。三級奴隷のままなら、他の人に気軽に殺されちゃう可能性が有るからね」
「な…なぜ…私なんかを、一級奴隷になされたのですか?」
私は自分の身に起きている事が信じられず、ご主人様を見ていると、私をギュッと抱きしめるご主人様は
「言ったでしょ?もう離さないって…マルガは俺だけの物、他の誰にも触らせないし、どうこうさせる気はない…大切なんだマルガが…。もう一度聞くよ…マルガは誰の物?俺の大切なマルガは誰の物?」
ご主人様に抱かれながら、耳元で囁かれたその言葉に、私の体は歓喜に支配される。
ご主人様が、私を大切だと言ってくれている…私を…私を…
「私はご主人様の物です!私はご主人様の為にあります!私の全てはご主人様の物です!」
私はそう叫んで、ご主人様の胸に顔を埋め、嗚咽をあげて泣きだしてしまいました。もう我慢出来ませんでした。
そんな私をギュッと抱いて、優しく頭を撫でてくれるご主人様は、ポケットから何かを取り出しました。
「これは、奴隷が首に付けれる唯一のアクセサリー。奴隷専用のチョーカーだよ」
奴隷は、奴隷の証である首の輪っかの様な奴隷の紋章を、隠してはならないと言う奴隷法があります。
しかし、国が認める形式の首飾りなら付けることが出来ます。何故なら、この美しいチューカーも、奴隷だという事が解るように、赤い色をして、その先端には、鎖を繋ぐ飾りが付いているからです。
「マルガ…これはね…俺がマルガに付ける首輪だ。マルガが俺の物だと言う証…さあ…マルガ…言ってご覧…俺に…おねだりするんだ…」
ご主人様に顎を掴まれている私は、その吸い込まれそうな黒い瞳に、歓喜の瞳を向ける。
「ご主人様…その首輪を私につけて下さい…私がご主人様の物であると言う証明に…」
私が首をご主人様に差し出すと、ご主人様はゆっくりと優しく、その奴隷専用の豪華な赤い革のチョーカーを、首に付けてくれました。
「マルガ…可愛いよ。よく似合っている…」
「私にご主人様の証の首輪をつけて頂いて、ありがとうございます…」
ご主人様の可愛いと言う言葉と、ご主人様の物になれた事の嬉しさで、きっと私の顔は、ニマニマしていたと思います。
そんな私を見てクスッと笑うご主人様は、もう一つのポケットから何かを取り出します。
「じゃ~きちんと言えたマルガにご褒美を上げないとね」
そう言って、もう一つのポケットから何かを取り出します。ソレを見た私は、思わずご主人様の手を取って見てしまいます。
「そ…それは!私が無くしたと思っていた、お母様の形見の首飾り…」
ご主人様の手の中には、あの奴隷館で無くしたと思っていた、お母様の形見の石が握られて居ました。
どうやらあの時に、ご主人様がコレを拾って居てくれた様なのです。
私の驚いている顔を、楽しそうに見ているご主人様は
「このマルガの形見のルビーはかなり汚れていて、装飾も傷んでいたからね。俺が直しておいたんだ」
「こんなに綺麗に…まるで…お母様に貰った時の様…」
お母様の形見の石を見て、目を潤ませている私に、ご主人様は
「これね、ちょっと手を加えたんだ。これをここに…」
私から赤いルビーを取り、首に付けられているチョーカーの鎖を繋ぐ部分に、赤いルビーをペンダントのトップの様に付けてくれました。それを、手で触りながら、私が嬉しさを噛み締めていました。
「うん、更に可愛くなったね。凄く似合ってるよマルガ」
ご主人様がそう言って、私の頭を優しく撫でてくれます。私はまた我慢出来無くなって、ご主人様に抱きついて、胸の中で泣いてしまいました。そんな私を、ギュッと抱きしめてくれるご主人様が愛おしい。
「マルガは俺だけの物…絶対に手放さないからね…」
「はい…私はご主人様だけの物です…永遠に…」
ご主人様の言葉に、私は全身全霊で、今ある気持ちの全てを言葉に乗せる。
もう嬉しすぎて、涙が止まりませんでした。私が泣いている間、ずっと抱きしめて、頭を優しく撫でてくれるご主人様。
暫くそうして私が泣き止む迄待ってくれたご主人様は、私の涙を指で拭いてくれます。
そして、私とご主人様は役所を出て外に出てきました。
外は春先の暖かい日差しが眩しくて、先程まで泣いて目を腫らしている私には、少し刺激が強く目を細めてしまいます。そんな私を見て、クスッと笑うご主人様は
「…マルガ…帰ろうか」
ニコッと微笑んで、私の手を優しく握ってくれるご主人様の手を、私はギュッと握り返します。
「ハイ!ご主人様」
力いっぱい返事する私を見て、またクスッと笑うご主人様に、手を引かれる私。そんな私は、正に幸せの絶頂の中に居ました。
『…見てくれていますかお母様。マルガは今こんなに幸せです。…あの時、私を助けてくれてありがとう…お母様』
私は首に付けられた形見の石を握りながら、心の中でそう呟いて、ふと、ご主人様を見ると、何時もの優しい微笑みを私に向けてくれる。春先の暖かく眩しい光に輝らされたその微笑みはとても神々しく、私の瞳に映りました。まさに、黒い天使様…
『私は…この黒い天使様の傍を離れない…この黒い天使様と一緒に行くんだ…何処までもずっと…』
心の中でそう誓った私は、ご主人様に手を引かれて帰って行くのでした。
なぜ塔の中で居なければならないのかは知らない。お母様や、他の大人達が、此処から…塔からは出てはいけないと、言われているのです。
でも、この塔の中では、私は自由に動き回れます。何も叱られたりもしません。
塔の中には本が沢山あるし、お母様が文字やお勉強を教えてくれるので、私は不満に思った事は有りません。
お母様は忙しい人で、たまにしか逢えませんが、私と一緒の時はとても優しくしてくれます。
私はお母様が大好きです。私を優しく撫でてくれるお母様が。微笑んでくれるお母様が…
この塔に居る他の大人の人達は、私とお母様の事を、良く思っていない事は解っています。
私達を見る目や、接する態度で解ります。
私とお母様は人間族とは違い、亜種と呼ばれている種族で、ワーフォックスと言う種族です。
別名、狐族とも言われ、エルフさんやドワーフさん、ワーキャットさん達に比べ、数が凄く少ない種族らしいです。
その中でも私は、人間族とワーフォックスとのハーフとの事。更に数は少ないと聞いています。
お父様が人間族で、お母様がワーフォックス。お父様には、今迄会った事はありません。
お母様も、お父様の事は何も教えてくれません。なので、私もお父様の事は聞かない方が良いと思っていて、聞く事はしません。お母様の困った顔を見たくはありませんから…
塔の中での生活は、穏やかでした。
塔から出る事は出来ませんが、たまに来てくれる優しいお母様と、楽しい時間を過ごす事が出来ましたから。
私は、優しく微笑んでくれるお母様と、このまま過ごせれば良いと思っていました。
しかし、その望みは、儚くも打ち砕かれてしまいます。
私が7歳になったばかりの日でした。
私はいつもの様に、塔の中で本を読んでいました。すると塔の外から、大きな爆発音が聞こえ、地響きが塔全体を揺らします。それと同時に、沢山の人々の声が聞こえ、塔の外は大変な事になっているのが解りました。
私は怖くて、部屋の隅で丸くなっていました。塔の外は更に騒がしくなり、人々の悲鳴や、剣をかち合わせている音、それに爆音…。塔の部屋の高くにある窓から、とても嫌な匂いがしました。
そんな時、塔の扉が開き、誰かが走り込んで来ました。私は恐怖でその場を動く事は出来ませんでした。部屋の隅で膝を抱えて震えている私に、その侵入者は、優しく私を抱きかかえました。
「マルガ…無事でしたのね…良かった…」
私を抱きかかえてくれたのは、お母様でした。私は安堵して、お母様にしがみつき、泣いていました。
そんな私を優しく撫でながら、お母様は
「マルガ、此処から一緒に逃げます。これにすぐに着替えて」
お母様はそう言うと、私に男物の長袖の服と、長いスラックスを渡して来ました。
私はお母様の言われた通りに、急いでそれに着替えました。それを確認したお母様は、懐から何かを取り出しました。
それは豪華な装飾のついた、綺麗な赤い石のネックレスでした。
お母様は、その綺麗な赤い石のネックレスを、私の首にかけて、
「マルガ…これは、お父様と私が、貴女の為だけに作った物よ。きっと何時か…貴女の役に立ってくれるわ。だから、無くさないで、大切に持っていなさいね」
そう言って、お母様は、綺麗な赤い石のネックレスを、私の服の中に、キチンと入れてくれました。
「さあマルガ!逃げますよ!」
お母様はそう言うと、私の手を引っ張って、廊下を走って行く。そして、塔の一つの部屋に入り、扉に鍵をかける。
そこは、この塔で唯一暖炉がある部屋で、私は冬になると、いつもこの部屋で過ごしていた。
お母様は、私の手を引っ張って暖炉まで来ると、暖炉の中に腕を入れ、暖炉の上部の方で何かを探している様でした。
そして、何かを探し当てた様で、お母様の顔に安堵の表情が見えた。お母様が探し当てたのは、先に輪っかの付いた鎖でした。
お母様はその輪っかの付いた鎖を、力いっぱい引っ張ると、大きな音を立てて、暖炉が左に移動した。
その暖炉の後ろから、地下に降りる階段が現れました。
私はこの部屋のこんな仕掛けが有る事に驚いていると、私の手を引っ張って、その地下に降りる階段を、降り始めます。
地下の階段の壁は、清潔で綺麗でした。そして、ほんのり光っているので、明かりがなくても、通路を進むことが出来ました。
長く長く続く通路…
私はお母様に手を引っ張られて、かなりの距離を走りました。
すると、通路の先に扉が見えてきました。その扉の中に入ると、上に登る梯子がありました。
「さあマルガ、これを登るわよ。私に付いて来てね」
そう言うとお母様は梯子に登り始めました。私もお母様の後に続いて登って行きます。
お母様は、途中で何度も下を見て、私の無事を確認しながら、登って行きました。
梯子を登り切ると、そこは小さな部屋でした。
お母様は、その小さな部屋の壁を調べ、出っ張っているレンガを発見すると、それに触りました。
レンガは壁に入って行き、それと同時に音を立てて、壁が左右に開きました。
小さな部屋から出ると、そこはかなり使われていないとすぐに解る様な、埃っぽい小屋でした。
「追手が来ない内に、早く此処から離れましょう」
お母様はそう言うと、再度私の手を引っ張って、埃っぽい小屋から出ました。
そして、小屋から出た私は、その光景に目を奪われました。
高い塔が何棟かある、城塞で囲まれた街は、沢山の煙を上げて燃え上がっています。
その空には飛竜らしきものに乗った兵士達が、街に向かって魔法で攻撃しています。
此処からでも、町の人々の逃げ惑う声や、悲鳴が聞こえます。
その中で、街の中心にある大きな建物が、炎に包まれ大きな音を立てて、崩れ落ちました。
「イタ…」
私は思わず声を上げました。お母様が私の握っている手を、強く握っていたのです。
お母様の顔を見ると、悲しそうな顔をして、涙を流していました。
「お…お母様?」
私が声をかけると、涙を流しながら私を見て、ギュッと私を抱きしめました。
私は訳が解ら無くて、困惑していると、お母様は、涙を拭いて
「さあマルガ行きましょう。早く此処から離れないと」
お母様は私にそう告げると、また私の手を引いて、走り出しました。
燃え盛る街から離れ、私とお母様は森の中をひたすら走りました。
私は初めて見る塔の外の森の様子を見ながら走りました。
しかし、私は塔の中でも走る事など無かったので、すぐに息切れをしてしまいます。
「マルガ頑張って。一刻も早く国境に向かって、この国から離れないと駄目なんです。走り慣れない森の中なのは解っていますが、頑張ってね…マルガ…」
お母様は悲しそうな顔で私に言います。私はお母様の悲しそうな顔を見たく無かったので、微笑みながら頷きます。
お母様は私に微笑んで、国境に向かって再度走り出しました。
途中で何回も息切れする私の心配をしながら、お母様は必死でした。
かなりの距離を走った様に感じます。もう、街も見えませんし、声も聞こえません。
私とお母様は、息を切らしながら走っていました。その時、お母様は何かに気が付かれた様で、ワーフォックスの特徴でもある、少し毛の生えた耳をピクピクと動かし、何かの音を聞いている様でした。
そして、苦悶の表情を浮かべ
「そ…そんな…もう此処まで追手が追いついてきているなんて…只の追手では無さそうですね…」
お母様の鬼気迫った顔に、私まで体が強張ってしまいます。
私のその顔を見たお母様は、私の頭を優しく撫でて
「マルガ…貴女はどんな事をしても守って見せます。お父様とも約束しましたしね。…せめて、あそこ迄逃げ切れたら…」
そう言うとお母様は、私の手を取って、再度走り出しました。
お母様は回りの気配を耳で感じながら走っています。その表情は、刻一刻と悪くなって行きました。
そんな時、森が開けました。眼の前に入ってきたのは、大きな崖でした。
対岸までは100m位はありそうです。崖の下は、見えないくらいの深さです。落ちればどうなるか…
私がそんな事を考えていたら、お母様の耳がピクピクと動き、今迄で一番きつい顔をしました。
そして、何かを決心したような顔で
「マルガ…貴女は彼処に見える橋を渡りなさい」
お母様はそう言うと、一本の吊り橋に指を指しました。
その吊り橋は、馬車も通れるくらいの大きさの橋で、他に橋らしきものは有りませんでした。
私は、何か不安な感じがして、お母様に抱きついて
「橋を渡るならお母様と一緒が良いです…私一人は…嫌です…」
私はそう言うとギュッとお母様にしがみつきました。
お母様はそんな私に優しく微笑んで
「大丈夫ですよ。マルガが橋を渡ったら、私も行きますから」
そう微笑んで私の頭を優しく撫でてくれました。私は頷き橋の前までお母様と来ました。
そして私は吊り橋の向こう側迄走り出しました。お母様は橋の手前で、私が渡り終わるのを待っています。
私は橋を渡り終えて、お母様の方を見ました。その瞬間、私の体は凍りつきました。
橋の向こう側では、黒い装束を着た6人位の男がお母様を取り囲もうとしていました。
「お母様!」
私は思わず叫んでしまいました。その声に気が付いた黒い装束を着た3人の男達が、吊り橋を走って私の所に来ようとしました。
その時に、お母様は胸元から何かを取り出し、吊り橋に向かって投げつけました。その瞬間、
「ドオオオン!!!」
大きな爆音と共に、すごい煙が立ち上がりました。
私は、その爆風に飛ばされてしまい、尻餅を着いて座り込んでしまいました。
そして、落ち着いてきて、吊り橋の方を見ると、馬車も通れるような大きな吊り橋は、崩れ落ちていました。私は絶望しました。此処には橋は、これ1つしか無いのです。お母様が取り残された…
「お母様ー!!!」
私の声を聞いたお母様は、黒装束の男達に捕まって抑えつけられていました。
「お母様待ってて!!橋を探してすぐにそっちに行くから!助けに行きますから!」
私は叫びました。お母様の元に行きたい!私は必死でした。
そんな私にお母様が髪を振り乱して
「マルガ来ないで!!そのまま逃げなさい!こっちに帰ってきては駄目!早く!逃げて!!」
お母様のその取り乱した声が、私を更に不安にさせます。
「お母様と離れるのは嫌!お母様と一緒じゃなきゃ嫌ー!!」
私は、力のかぎりそう叫びました。お母様と別れるなんて、考えられない。
身から涙が知らぬ間に出ていました。そんな崖の淵で叫ぶ私に
「お願いマルガ!私とお父様の気持ちを無駄にしなで!貴女が此処で捕まってしまったら、貴方を逃すと約束した私は、お父様に顔向け出来無いわ!お願い!マルガ逃げて!そして生き延びて!」
私はお母様の、身を切られる様な悲痛な叫びを聞いて、どうして良いか解らずに立ち尽くしてしまいました。
その時、私の頬を何かがかすめていきました。私は驚いて振り返ると、後ろの木に弓矢が刺さっていました。対岸から、黒装束の男達が、私に向かって矢を放っているのです。
次々に私に襲いかかる弓矢。私は恐怖に身を支配されたしまいました。
怖くて動けなくなっている私に、響く声がありました
「マルガ!逃げなさい!貴女は生きて!!!」
そのお母様の声に、私は我を取り戻しました。ゆっくり立ち上がり、お母様を見ると、その表情は見えないはずなのに、何故か私に微笑んでくれてるような気がしました。
「わあああああああ!!!」
私は駆け出しました。その崖から離れ、反対側の森の中に、精一杯の力で走りました。
無我夢中で、その場を離れて行きます。
「お母様…お母様ー!!!」
私はそう叫びながら、嗚咽混じりに、暗い森の中を只走るのでした。
お母様と別れてから4日が立ちました。もうどれ位あの崖から離れたのかも解りません。
無我夢中で、お母様から言われた通りに、逃げ続けています。
途中で何回も転び、沼地に落ちてしまったせいで、髪の毛は勿論、全身真っ黒に汚れてしまいました。
川も無く、喉もカラカラ…。何も食べていないので、歩くのにも力は有りません。
私は、此のまま死ぬのかなと、考え始めていた時に、少し離れた所で、何かの音がします。
恐る恐るその音の方にゆっくりと近づいていくと、何台かの馬車が止まっています。
その馬車の傍には、薪があり、そこには美味しそうに焼かれている魚が有りました。
私は空腹の余り、その焼かれている魚に飛びつき、食べ始めました。
焼かれた魚はとても美味しく、無我夢中で食べていました。
魚を全部食べ終わった時に、何者かの声がしました。
「なんだ…おめえ…あ!俺の魚食いやがったのか!こいつめ!」
そう言ってその男は、私の両腕をしっかりと握り捕まえました。
私は身動きが取れません。その男は大きな男で、力がとても強かったのです。
「この汚ねえガキめ!…まあいい、お前みたいな小汚いガキでも幾らかにはなるか…おい!こいつも、檻に入れておけ!」
そう大きな男が言うと、3人の男が私をしっかりと掴み、馬車まで連れて行きました。
その馬車の荷台には、檻があり、その中には何人もの男女が檻の中で、手枷を付けられていました。
私は恐怖し、抵抗しましたが、抵抗むなしく手枷を付けられて、檻の中に入れられてしまいました。
檻に入れられて震えている私をよそに、大きな男は、怒鳴るような声で
「おい!お前等出発するぞ!早く用意をしねえか!」
そう言って手に持っている鞭で、男の人を殴っています。殴られている男は、慌てて準備を始めました。そして準備が整ったのか、馬車の一団は出発しました。
私は手枷を付けられ、檻の中で、此れからどうなるのか不安でたまりませんでした。
あの大きな男に連れ去られてから、一週間が立ちました。
私は、あの男の三級奴隷と言うやつにさせられてしまいました。
あの大きな男は、私が居た街の近くで、街から逃げてきた者達を捕まえ奴隷にして、売ったり、働かせたりしているみたいです。人攫いと言うやつでしょう。
一度奴隷にされてしまえば、もう自由は有りません。私も最初は奴隷なんかになりたくないので、抵抗しようと思いました。
しかし、その気持ちはすぐに消されてしまいました。
私と同じ様に、抵抗しようとした、その青年の結末を見てしまった為に…
青年は20歳位でしょう。元気もあって力もありそうな青年は、三級奴隷にされて、解放を望み、あの大きな男に、詰め寄りました。しかし、その次の瞬間…
その青年は、大きな男の護衛の2人の男に剣で体を貫かれて、大量の血を流しています。苦しそうに顔を歪める青年。
そんな青年に大きな男は近づき、腰から剣を抜き、青年の頭を掴み、その剣で青年の首を一瞬で切り落としました。青年の首の無くなった体から、大量の血が吹き出ています。
大量の返り血を浴び、青年の切り落とした首を掴み上げて、此方に見せる大きな男
「これで俺様に逆らったらどうなるか解ったな!お前等は俺様の奴隷だ!お前達には何の権利も自由も意志もない!ただ俺様の物で、俺様の自由に出来る所有物だけだって事だ!俺様に一瞬でも逆らったら、瞬時にこいつと同じ目に会う。すぐに処分するからな!解ったかゴミどもが!」
そう私達に怒鳴りつけると、青年の血だらけの首を、此方に投げつけました。
私は余りの恐怖に体が動かなくて、失禁してしまいました。あんな簡単に、人を何も考えていない様に、ゴミの様に殺すこの男に、私は只々恐怖に支配されていました。
もう逃げられない…逆らえない…私は恐怖と絶望に染まっていました。
あの青年が殺された日から、一週間が立ちました。
私は再度馬車に乗せられて、山間にある高い塀に囲まれた大きな施設に連れてこられました。
そこはとある貴族が運営する、繊維関係の労働場だと言う事です。
私達、あの大きな男の奴隷は、各地の労働場に出稼ぎに出される事になりました。
私は力もなく、まだ歳も満たないので、繊維関係の力を使わない、主に女の人がする針仕事をさせられると教えられました。
この施設は、貴族が運営しているのですが、此処の施設には奴隷しかいません。
この施設の管理者は男の一級奴隷。
施設側の仕事や警備をするのが男女の2級奴隷が数十人程度。
そして最後に、この施設で労働する、私達三級奴隷男女が数百名。
私はこの労働場で本格的に働かされる事になりました。
此処での生活は、熾烈を極めました。
朝は日の出と共に起こされ、朝食を取ります。朝食は自分専用の木のボウルの様な皿とコップに、管理側の奴隷の2級奴隷が、入れて行ってくれます。
木の皿に入れられたソレは、食物と呼ぶには疑わしい物です。
味は非常に不味く、変な匂いがして、ジャリジャリしており、何の食物か解らない物でした。
しかし、食事はこれしかなくて、これを食べないと、たちまち死んでしまいます。
食事は一日一回の朝食のみ。この皿に入れてくれる食物と、コップ一杯の水のみ。
その唯一の食事を食べ終わると、すぐに作業場に連れて行かれて、作業開始です。
休憩はなく、作業時間の終わる夜までずっと働かされます。作業中は2回までトイレに行く事を許されます。2回以上は行かせてもらえず、作業が終わり、牢獄に戻されるまではトイレは出来ません。
もし、漏らしたり、商品を汚したり、失敗をしようものなら、鞭で何回も叩かれて、罰を与えられます。その罰のせいで、死んでしまう人が居るくらいです。命がけで作業しないと、死の可能性があるのです。なので、死なない為に、細心の注意をして作業していました。
そんな感じでやっとの思いで夜になり、一日の作業が終わると、自分の房の牢獄に戻されます。
そこは大部屋で、一部屋20人位の男女が入れられ住まわされています。
部屋の高いところに鉄格子の付いた窓が一つ、トイレも部屋の隅に一つ有るだけです。
掃除される事の無いその房は、大変汚く、異臭が漂っています。
トイレは汲み取り式で、たまにしか糞尿が取り除かれないので、よく糞尿が溢れかえっていました。
そんな環境の牢獄が唯一の安らげる場所なのですが、気の滅入る事がすぐに始まります。
同じ牢獄の女の奴隷達が、同じ牢獄の男の奴隷達に、集団で犯され始めるのです。
管理側の二級奴隷も、その事については放置している様で、全く感知していない様でした。
奴隷の女達は、沢山の男に犯され、泣き叫ぶ者、諦めてされるがままになる者、逆にその快楽に溺れる者と様々でした。その犯されている女達の声が、あちこちの牢獄から聞こえ、木霊して、異様な音になって聞こえています。
私はその光景を、いつも牢獄の隅で、静かに見ていました。私も女の子なので、犯される可能性があるので、極力目立たない様に、全てが終わるまで、牢獄の隅でじっとしているのです。
そして、夜も遅くなり、男の奴隷達も疲れて女の奴隷を犯すのをやめて眠り始めます。
その時になってやっと女の奴隷達は、ゆっくり出来るのです。言わば犯される事も仕事かもしれません。男の奴隷の欲求不満を、女の奴隷を犯させる事で抑えているみたいに…
私は、身の安全が確保出来た事に安堵して、明日の朝出される、臭くて不味い朝食を食べる事と、変な虫の混じっている水を飲むのを楽しみにして、今日も空腹と疲労の中、眠りにつくのでした。
あの住んでいた塔から出て6年が経ちました。歳も13歳になり、少し大きくもなりました。
私は今もあの大きな男の三級奴隷として、連れてこられたこの施設で、なんとか生き延びています。
この施設の牢獄での生活は熾烈で、大体の奴隷は1~3年で死んでしまいます。
男は働かせ過ぎで死ぬ事が多く、女は男に犯され妊娠し、途中でほぼ流産するのですが、その時に病気にかかって死ぬ者が多い。
今この牢獄で私が一番の古株である。色々な人が入ってきては死んで、また入ってくるの繰り返し。
変わらないのは、夜に犯される女の奴隷達の、卑猥で悲壮な声の木霊だけです。
この世界は男は15歳で成人、女は13歳で成人なので、私も何時犯されてもおかしくない様な歳なのですが、私は小柄であり、此処に連れてこられた時から、男だと思われていて、男の奴隷服を着ているせいもあって、今迄犯された事が無い。見た目もひどく汚れていて、男の子にしか見えない。なので生き残れていると思っています。影も薄いので、私の事を古株だと思っている人もいないようです。きっと私の事など興味は無いのでしょうが…
今の私には希望というものは無い。
今の自分の置かれている三級奴隷と言う立場を良く理解しているのです。これも、生き残れた理由であると思います。
奴隷になると、首に奴隷の紋章が刻まれます。この奴隷の紋章には、とある効力があるのです。
一つは、主人に危害を加えられないように、危害防止の効力がある。
例えば、奴隷が主人にナイフを持って殺そうと、主人を刺そうとすると、魔法の効力によって、金縛りに勝手になってしまうのです。その金縛りを解くには、主人しか出来ません。なので、奴隷は主人に対して絶対に危害は加えられないのです。
もう一つは、殺害の効力です。
主人は自分の所有している奴隷なら、何処からでも奴隷を殺すことが出来る魔法を使う事が出来ます。
どんなに離れていても、奴隷を殺す魔法さえ唱えれば、一瞬で殺したい奴隷を、殺す事が出来るのです。なので、奴隷にされた者は、ほとんど逃亡したりはしません。逃亡した所で、すぐに魔法で殺されてしまうのですから…
奴隷が生き残るには、主人の為に役に立ち、絶対服従するしか無いのです。
なので、今の私には希望というものは無い。もう、死ぬまで自由の無い、三級奴隷として生きて行く事しか無いのですから。
そんな私でも、時折は昔の事を思い出したりします。
あの時以来、離れ離れのお母様…生きていられるのかさえ解らないお母様。
お母様に逢いたい…叶わぬ願いと知りながら、つい思ってしまいます。
私はお母様から貰った、黒くなってしまったネックレスを握りながら、お母様の唯一望まれた約束を果たしています。
『…貴女は生きて…』
私はこの言葉だけを頼りに生きてきた様に思います。勿論、死ぬ事が怖いのもありますが…
こんな状況にあって、まだ生きたいと思う私は、きっと馬鹿なのだと思います。
しかし、その約束も、もう果たせないかもしれません。
今の私は、フラフラで、目もぼやけ始め、体に力も入りません。原因は、此処3日程何も食べていないからです。
ついこの前入ってきた男の奴隷に目を付けられてしまい、3日程食事と水を、毎朝その男の奴隷に奪われてしまっているのです。
もともと、栄養のある食物では無いので、わずかの期間その食事を抜いてしまうと、たちまち死に近づいていきます。私は怖くてその男の奴隷に歯向かう事が出来ず、俯くしか有りませんでした。
もうダメかも知れない…そう思った時でした。
「おい!そこの三級奴隷!こっちに来い!」
施設側の仕事をしている二級奴隷が、私を呼びます。罰を与えられる様な事をしたのかと思い、萎縮しながら行くと、
「お前は今日迄だ。ここから出される。迎えが来るらしいから、ついて来い」
私は理由は解らないが、とりあえずついていく。暫くフラフラしながらついていくと、この施設にある門の近くにある建物に連れて行かされた。
「ここで待っていろ。もうすぐ迎えが来るらしいから」
そう告げて、二級奴隷は部屋から出ていく。
私はフラフラになりながらも、此処から出れる事に歓喜した。
このままあそこに居たら、間違いなく死んでいたと思うからです。少なくとも、此処より生き残れる可能性が上がったと思ったのです。
こんな事を考えながら待っていると、部屋に男たちが入ってきた。私はその男を見て、忘れていた恐怖が蘇り、体を支配するのを感じた。
そこには、6年前に私を無理やり三級奴隷にした、大きなあの男の顔がありました。
「まさか、あの時の生き残りが残ってたとな。お前は運がイイな。お前を売りに行くから、此処とはおさらばするぞ。オイ!」
そう私に告げると、横に居た大きな男の奴隷が私の首に鎖をつけた。そして、そとに止まっていた鉄の檻の付いた馬車に載せられる。まるで、6年前のあの時の様に。
私はまた不安になりながら、身をまかせるしか有りませんでした。
馬車に乗せられてから3日が経ちました。
その間に、野菜の屑や、草を食べさせられ、一日一回のコップの水を貰う事で、何とか生き残れていました。聞いた話では、今日の昼頃には、私が売られる街の奴隷館に到着するとの事です。
お腹が空きすぎて、フラフラするので、眠りながらその時を待つ事にしました。
どれ位寝ていたのかは解りませんが、馬車が止まった事を感じて目を覚ましました。それと同時に飛んでくる叫び声
「おら!お前等!とっとと馬車から降りろ!グズグズしてると、処分しちまうぞ!」
大きな男はそう叫ぶと、鎖を強引に引っ張ります。馬車から引きずるように下ろされた、私を含め5人の男女の奴隷は、レンガ作りの割と大きい建物の前に連れてこられた。
入り口には鎧を着た門番が4人、腰に剣をさげている。幾人もの人が出入りしている。
私はその建物に有る看板を読み上げる
「ガリアス奴隷商店…」
小声でそう呟く。どうやら此処に私達を売るつもりらしい。
大きな男は私たちの鎖を引きずりながら、中に入っていく。中には沢山の人が居ました。
皆が良い服を着ているのが解る。裕福な人が多いのだと解ります。
大きな男に引きずられながら歩いている時に、不意に目眩が私を襲ってきました。急に目の前が真っ暗になって、私は床に倒れてしまった。そんな私に大きな声を出す大きな男
「おら!なに寝てるんだよ!さっさと起きねえか!この犬っころが!!」
そう言って、倒れている私の腹を蹴り飛ばす。余りの痛さに、苦しくて声が出せません。その時、私の胸元から、何かが転がって行くのが見えました。その転がった物を拾って見ている大きな男
「あん?なんだこりゃ~?小汚ねえ石ころだな~?」
小さな黒くなった石のようなものを見つめる。私は自分の胸元を見ると、蹴られたショックで紐が切れて、お母様の形見のネックレスが無くなっていました。そして、その大きな男に持たれているのがソレであると解りました。
「それは!か…返して!そ…それは大切な物なんです!」
ソレは大事なお母様の形見!お腹を蹴られて、痛いし苦しいけど、必死で返してとお願いする私に
「何口答えしてるんだよ!犬っころの奴隷の分際で!!」
そう怒鳴り散らし、怒りの形相で、私を激しく蹴ってきます。そのものすごい激痛に、私の意識は無くなりそうになります。体のあちこちを蹴られ、血が出てきています。
私は余りの痛さと恐怖に、何も考えられなくなっていました。体の芯から震えているのを感じます。
蹴られる度に、意識が飛んでいきます。…此のまま殺される…怖い…死にたくない…誰か…誰か…
『…誰か私を助けて!!』
私は心の底から嘆願した。無意識に手を伸ばす。
そしてソレは……ほぼ偶然に近い事だったと思う。
視界に他とは明らかに違う色が映ったので、偶然そこに視線が行ったのだと思います。
私の視線の先には、見た事の無い、黒髪に黒い瞳の少年が居ました。
その少年と視線が合うと、一瞬…少年の黒い瞳が、真紅に光った様な気がした。
「もうやめろ!それ位で良いだろう!それ以上その子に暴力を振るうな!!」
椅子から立ち上がりそう叫んだ黒髪に黒い瞳の少年…青年かな?…蹴られて視界が定まりません。
黒髪の少年の様な青年は、大きな男と言い合いを始めました。
私は蹴られすぎて、意識が徐々に遠のいて行っているので、何を言ってるのか、解らなくなっていました。懸命に、話の内容を聞こうと努力している私。しかし、次の瞬間
「ボキ!」
っという乾いた嫌な音と共に、私の顔に激しい衝撃が突き抜けました。
その後体が全く動かなくなってしまいました。体の感覚がほとんど有りません。
体中がピクピクと痙攣しているようにも感じるのですが、ソレすらも解らなくなってきました。
視界が徐々に暗くなります。私は完全に意識を失ってしまいました。
そこは暗くて、寒い世界でした。
私は何処とも解らない所を、漂って居る様な感じに包まれていました。私はどうなってしまったのかを考え、思い出していきます。
そして、大きな男の暴力で意識を無くした所迄は、思い出しました。そして、今の状況を考え
「…私…死んじゃったのかな…」
そう呟き、三角座りをして、両手で膝を抱えていると、頭上に一筋の暖かい光が私に射しました。
私はソレを見上げ、その光の方に向かって行きます。
上に上に…まるで何かに引き寄せられる様に、私の体はその光に向かって進んで行きます。
そして、その光に手が届いた瞬間、私の目にうっすらと人影が見え、私に口付けをしている様に見えます。その人影に、何か神々しい物を感じました。
『…黒い…天使様…?』
私は思わず心の中で呟きました。私の目に映ったその黒い天使は、とても優しい眼で私を見ていました。
そう…まるで…お母様が、私を見ている時の様な瞳…
私はその瞳に包まれる様に、ゆっくり意識が遠のいていきました。
「う…うん…」
体の怠さと、痛さに目が覚める。どうやら眠っていたようです。視界が定まらず、頭はボーっとしています。私はどうなってしまったのか考えていると、声が聞こえました
「お!起きたか?大丈夫か?痛い所は無いか?」
その優しい声の方を向くと、黒髪に黒い瞳の男の人が椅子に座って居ました。心配そうに私を見ています。
「え…えっと…貴方は…誰ですか?…此処は何処でしょうか?」
私は今の現状がどうなっているのか解らなくて、辺りを見回します。頭もスッキリして、視界も回復してきました。そんな私に、
「此処は、俺が宿泊している宿の部屋だ。そして俺は、お前の新しい主人だ」
その黒髪に黒い瞳の青年は、ニコっと微笑み私に告げます。私は何がどうなっているのか解らずに、困惑していたのか、その表情を読み取った黒髪に黒い瞳の青年は、此れまでの事を説明してくれました。
私は、その内容を聞いて、思わず絶句してしまいました。
この私の新しいご主人様は、あの大きな男の暴力から救ってくれただけで無く、お医者さんに迄連れて行ってくれたと言うのです。その結果、死にかけの私は助かり、今こうしてベッドの上に、寝かされて居ると言うのが現況らしいのです。
私は身分の低い三級奴隷。それだけの事をして貰って更に、今こうしてベッドに寝ている。
その様な事が決して許されないと理解している私は、急いでベッドから降りようとして、体中に走る痛みで、身を捩れさせてしまいました。
私の新しいご主人様は、そんな私を心配そうな顔で見つめ、ベッドに寝る様に促されて、挙句に、奴隷にとっての絶対である『命令』を使って迄、私を寝かせ様とします。
私は何故三級奴隷である私に、その様な事をするのか理解不能でしたが、ご主人様の『命令』は絶対。
逆らえばすぐに処分されてしまいます。私がその命令に従うのを確認したご主人様は、『夕食を取って来る』と、言って部屋から出ていきます。
その夕食と言う言葉に、私のお腹が反応してしまっています。困った物です。
ご主人様は、私の分とおっしゃられていました。私の分…つまり、あの労働場の様な、ジャリジャリしたとても不味い食べ物…。でも私は、三級奴隷。ソレを食べなければ、生きてはいけないのです。
むしろ、理由は解りませんが、これだけして貰って尚、食べ物を頂けるですから、ご主人様にとても感謝しなければならないと、心の底からそう思っていました。
暫く待っていると、ご主人様が帰って来られました。
その瞬間、とても良い匂いが、私の鼻を刺激します。ソレはとても美味しい物だと解る匂いを、醸し出していました。
でも、ソレは私達三級奴隷の食べる物では無いのを、私は知っています。
私が食べて良いのは、ジャリジャリしたとても不味い食べ物…
ご主人様が持ってきたソレは、私達が決して手を付けてはいけない物なのです。
『きっと…あれはご主人様が召し上がる分…私の分は有るのかな?』
とても良い匂いに刺激されている私は、卑しくも、ジャリジャリしたとても不味い食べ物を、探してしまいます。
ご主人様は、ご自分の食事を、ベッドの傍のテーブルに置かれると、私をベッドの背もたれに、もたれかけさせ、私を抱かえる様にして座る。
私はこんな見た目ですが一応女の子。一瞬こんな私を犯すのかな?と、思っていると、余りにも予想外の事が、目の前で起こります。
「ほら。あ~んして。あ~ん」
目の前には、ご主人様が召し上がる食べ物であろう物が、スプーン一杯に掬われ、私の口元に出されて居るのです。私は、意味が解らなくなって、暫くボーっと、そのスプーンに掬われたソレを見つめていました。そんな私に軽く溜め息を吐くご主人様は、
「…お前は体が痛くて自分で食べれないだろう?だから、体が動くようになるまで、俺が食べさせてやる。解った?ほら、あ~んして。あ~~ん」
ご主人様は、あ~んと言って、口を開かれています。どうやら、コレを私に食べろとおっしゃっている様です。
でも此れは、私などが決して口にして良い物では無い。
しかし、ご主人様は、そんな私に構う事無く、ソレを食べる様に促します。
『…この食べ物に…毒でも入って居るのかな…』
私の心の中で警鐘が、鳴り響いています。
私は最下級の三級奴隷。三級奴隷には人権は無く、武器の試し斬りや、娯楽の為に殺されると言う事も多々あります。
私は、この食事に毒が入っていて、ご主人様は、私が苦しみながら死んで逝くのを、嬉しみたいのかも知れないと、思ったのです。
ですが、私には拒否権はありません。この『命令』に近い状態で、ご主人様のなさる事を断れば、どのみち処分されてしまいます。私は覚悟を決めました。
口を開いて、そのスプーンに掬われているソレを、口の中に入れました。
そして、ソレを口に入れた瞬間、私を今までに無い衝撃が、体を突き抜けます。
なんとも言えない濃厚な味、ジャリジャリする事など全く無く、それどころか、口全体に暖かく染み入って来ます。柔らかいお肉と野菜のその味と言ったら…
私はこの時に食べさせて貰った、野菜と羊の肉のシチューの味は、一生忘れる事は無いでしょう。
そんな固まっている私を心配されたご主人様が、慌てていらっしゃいます。
「え!?ど…どうしたの!?シチュー熱かった!?それとも体に合わなかった!?」
「い…いえ…違うんです…その…余りにも美味しくて…私…こんな美味しいもの…生まれて初めて食べました!」
「そうかそれなら良かった。じゃ~冷めない内に、全部食べちゃおうな。ほら、あ~んして。あ~ん」
ご主人様はそうおっしゃると、感動している私に、次々と食べ物を口に運んで食べさせてくれます。
香ばしい匂いのする、少し焼かれた柔らかいパン、喉を清流に包み込む様な、甘く味わいのある、喉越しの良い果実ジュース、そして、お肉と野菜のシチュー…
私は次々と運ばれてくる神様の食べ物を、どんどん食べていきます。その素晴らしく美味しい味だけでは無く、きっと、私の体がソレを求めて居るのを、本能で感じていました。
ご主人様は、私の食べている姿を見て、とても優しい目をして私を見て、微笑んでいます。
時折、頭をヨシヨシと撫でてくれるその手が、私をとても暖かくしてくれます。
そう…まるで…お母様の様な…
食事を食べ終わった私はその事を思っていると、何かが私の両目を流れていきます。
「ちょ!ちょっと!どうしたの!?何処か痛くなった!?」
私が泣いているのを心配されたご主人様は、凄く慌てていらっしゃいます。
こんな…三級奴隷の私に、こんな事までして下さった上に、何故…こんなに、優しくしてくれるのだろう…
私の事を心配されている、ご主人様の瞳は、優しさで満たされている…
「いいえ…何処も痛くはありません…私…人からこんなに優しくされた事が無くて…それが嬉しくて…嬉しくて…」
涙ながらにそう言う私の頭を、ポンポンと優しく叩くご主人様の手が心地良い。
『…あの食事に、毒が入って居るかもしれないだなんて…こんなに優しい目をされる、ご主人様がするはずが無い。…私は…最低…です…』
そんな事を思い、私が泣いていると、ご主人様は何も言わずに、ずっと頭を優しく撫で撫でしてくれます。
ソレがとても嬉しくて、ありがたくて、自然に笑みが浮かびます。そんな私に、眩しい微笑みを私に向けてくれます。
『黒い天使様…』
私は神々しく見えるご主人様を、見つめてしまいます。私はどの様な顔で、ご主人様を見ていたのかは解りませんが、ご主人様は相変わらず、その優しい微笑みを私に向けてくれています。
そうして、落ち着いてきた私に、ご主人様が薬の入ったカップを私に差し出します。
私は今度は迷う事無く、その差し出された薬を、コクっと飲みます。
その瞬間、その薬の余りの苦さに、思わず飲むのを躊躇ってしまいます。
そんな私にご主人様は、私のおでこにピシっと、指を弾きます。軽い痛みを覚えて、おでこをさすっている私に、この薬は大変良く効いて、物凄く高価な物だから、必ず全て飲む様にと『命令』されます。
私は諭すように、私の事を心配されているのが解る、ご主人様の事を思い、一気に飲んでいきます。
そんな私を見て、少し楽しんでいらっしゃる様に見えたのは、私の心の中の秘密にしようと思っています。
私は、この優しいご主人様と、此れからどの様に生活をしていくのか、この時は全く解っていませんでした。
私がご主人様に買われて早7日。私にとても優しくしてくれるご主人様のお陰で、体は元気になり、前よりも体中に力、生命力が溢れているのを感じます。
朝、昼、夜と、あの美味しい料理を食べさせてくれるだけでなく、オヤツ?と、呼ばれる物迄食べさせてくれます。
当然、こんなに食べた事の無い私は、とても幸せに思っています。まるで…夢の様…
そんな優しい私の新しいご主人様は、美味しい料理を私にくれるだけではなく、色々一緒に遊んでもくれます。
元気の出て来た私の為と言って、運動もさせてくれるんです。
今迄した事の無い変な踊りの様な『ラジオタイソウ?』なる事を、私と一緒にしてくれます。体を拭く布を丸めて、お互いに投げ合う『キャッチボウル?』も、楽しくて大好きです。
そのお陰で、私は体に力が溢れて居るのを感じられる様になれたのです。
私の新しいご主人様は、本当に優しくしてくれます。
夜寝る時には、今迄見た事の無い綺麗な、真っ白な羊皮紙の様な物に書かれた物語を読んでくれます。
『モモタロウ?』『カグヤヒメ?』『シラユキヒメ?』『サルカニガッセン?』…
ご主人様の読んでくれる物語を、楽しく聞かせて貰って、私は柔らかいベッドで眠るのです。
私が寝たのを確認して、微笑みながら私の頭を撫で撫でして部屋を出て行かれます。その後ろ姿が、とても愛おしい…
私がこの事を知っているのは、寝たふりをしてチラッと何時も見ているからです。
そのご主人様の顔が大好きな私は、そうするのが癖になっちゃって居る事は、私だけの秘密です。
私はご主人様と一緒に居るのが好き。ご主人様と一緒に遊ぶのが好き、とても楽しい。
私とご主人様は、当然、別々の部屋で寝ています。身分の低い三級奴隷と一緒に寝るなど、聞いた事はありません。
しかし、私は一人でいる時は、何時もご主人様の事を考えてしまっています。
今日はどんな料理を食べさせてくれるのかな?どんな楽しい事で、一緒に遊んでくれるのかな?どんな、面白い物語を読んで、寝かせてくれるのかな…。
私は何時も、ご主人様がその扉から入って来るのを、心待ちに楽しみに待っているのです。
そんな事を考えていると、今日もその優しい微笑みを携えながら、その扉から部屋に入って来るご主人様。
私は我慢出来無くなって、すぐにご主人様に近寄って行き、朝の挨拶をします。
ご主人様の足元で平伏して、ご主人様の足の甲に、何度も口付けをします。
三級奴隷が良くする挨拶ですが、私は今迄した事は在りませんでした。前の主人である、私を攫った大きな男は、私に関心が無かったので、その様な事をさせませんでした。
普通であれば、足にキスをするなど、嫌に思うのでしょうが、それが新しい私の優しいご主人様に出来るのであれば、私は喜んでします。いえ…むしろしたいのが、私の本音なのでしょう。
そんな私をご主人様は、優しく抱きかかえあげ、ニコっと優しく微笑んでくれます。
その顔を見て、私は何時も幸せに包まれるのです。
そんなご主人様がまずする事は、私の糞尿の始末です。
この部屋にはトイレは無く、何処か別の場所に有るのですが、ご主人様からこの部屋から出ない様に言われているのです。なので、私は尿瓶と言う物に、ソレらをするのです。
本来なら逆に、三級奴隷である私がその様な事を、しなければいけないのですが、ご主人様は、ニコっと微笑みながら、嫌な顔ひとつせず、ソレらを処理してくれます。
私はとても申し訳なく思うのと、恥ずかしく思うのとで、何時も俯いてしまうのですが、優しいご主人様は、クスっと少し笑って、ソレらを持って部屋から出て行かれます。
そして、暫くすると、綺麗に洗われた尿瓶と、した後にお尻を拭く布を、そっと部屋の隅に置かれます。私は感謝の言葉を述べ、再度平伏して、ご主人様の足の甲に、何度もキスをします。
そして、また優しく私を抱きかかえて、ニコっと微笑んでくれるご主人様。ソレを、心から喜んで見ている私…。ほんと、癖になっちゃってます。
部屋に来られたご主人様は、今日は何時もと違う事をおっしゃられました。
「今日は体を洗いに川に行きます!」
指を窓の外を指し、私に告げるご主人様の顔は、とても自信有り気で楽しそうです。
私もそんなご主人様に、パチパチと拍手をしていると、何か考えられている様な、呆れている様な表情を私に向けます。
『ズ~~~~~ン…』
私は今、落ち込んでいます。すっごく、すっごく…
私は体を洗いに行くのは、ご主人様だけと思っていたのです。
三級奴隷である私は、長い間体を拭くとか、洗うと言った事をしていません。三級奴隷にその様な事をする水が、勿体無いからでしょう。
そんな私にご主人様は、『体を洗いに行くのは、君が主で、君はものすごく汚くて、ものすごい悪臭をはなっているんだよ。だから綺麗にしに行くんだ』と、言われました。
ガーンと来ました。すっごく、すっごく…
私は長い間、汚いままだったので、自分の匂いが解らなかったのです。
よく自分の体を見れば、黒くなってくすんでいるし、髪の毛もバリバリです。よく考えたら、そういう事が有っても可笑しくは在りません。
私は、きっと今迄ご主人様が我慢してくれていたと思うと、恥ずかしいやら、情けないやら、やりきれないやら、申し訳ないやらで、沢山の感情が湧いてきます。
そんな私に、ニコっと笑い『気にする事は無い。此れから凄く綺麗に、良い香りにしてあげる』と、優しく言ってくれます。そんな優しいご主人様の微笑みに、また私は見蕩れてしまいます。
暫く体を洗う川に向かって居ると、ご主人様が、何故三級奴隷になったのか、聞いてこられました。
私は少しためらいながら、ゆっくりと今まであった事を説明していきます。
大好きなお母様と離れ離れになった事、前の主人である大きな男に捕まって、三級奴隷にされた事、過酷で熾烈な労働場で、何とか6年間生き抜いた事、そして、ご主人様に買って頂いた事…
そんな事を説明していると、何故か自然と涙が流れていました。
そんな私の涙を指で拭いてくれ、優しく頭を撫でてくれるご主人様。ご主人様に出会えた事が嬉しくて、何だか涙が止まりませんでした。それでも優しく頭を撫で続けてくれるご主人様…大好きです…
「此処が今回のミッション遂行の目的地、ジルレー川です!!」
川に到着した私達。ご主人様が嬉しそうに言って、川に指をさしています。
私も何だか嬉しくなって、パチパチと拍手すると、ご主人様も何だか嬉しそう。
ご主人様は川辺に、色々な物を並べていかれます。どうやらそれで、私の事を綺麗にするらしいです。
先に、虫下しと言うお薬を、ご主人様と一緒に飲みました。ソレを飲むと、死んだ虫がお尻の穴から、出てくるらしいです。私がその事で恥ずかしそうにしていると、なんだかちょっと楽しげなご主人様。意地悪なのです…。
色々ご主人様の説明を聞いて、いよいよ体を洗う事になりました。
ご主人様が服を全部脱ぎさって、素っ裸になられました。
どういう訳か、私はご主人様の裸を、直視する事が出来ません。何故か…胸が…ドキドキして、顔が熱くなります。
今迄男の人の裸など、沢山見て来ているはずなのに…私どうしちゃったんだろ…
そんな私を見て楽しそうなご主人様は、私の汚く汚れた男物の奴隷服を、一気に脱がしました。
私は、この汚れた体を、ご主人様に見られたくなくて、思わず胸と性器を両手で隠してしまいます。
ご主人様は、呆れた様な、少し可笑しそうな微笑みを浮かべ、川辺に立たせます。
川の水を掛けられ、少し冷たく感じましたが、すぐに背中の気持ち良さが勝ってきました。
ご主人様が私の背中を丁寧に洗ってくれます。私は気持ち良いので、ご主人様にそのままお任せする事にしました。…本当に私って、奴隷失格です…
そして背中を洗い終わり、私の前に立つご主人様は、私の手をどけて、胸を洗っていかれます。
ご主人様に、胸を見られているのと、その洗い方が気持ち良いのとで、何だか体が火照って来ます。
乳房の先の乳首が、少し固くなっているのが自分で解ります。恥ずかしい…
ご主人様は、そんな私を不思議そうに見ながら、どんどん私を洗っていかれます。
そして、上半身が終わり、下半身に移ろうとされて、私の手をパッとどけたご主人様が、カチっと音がしそうな位、固まってしまいました。私は自分の性器がよほど醜いのかと、恥ずかしく、情けなくなって俯いてしまったのですが、頑張って視線をご主人様に戻すと、ご主人様は何処か上空を眺めています。私も釣られて空を見ると、鳥が輪を書いて、飛んでいます。
それを見たご主人様は深呼吸されて、再度私の性器を見ます。そして、驚きの表情をされて、私に衝撃の言葉を掛けられました。
「君は男の子だよね?」
その言葉に、私は何か鈍器で頭を殴られた様な衝撃を受けました。
なんだろう…凄く悲しい…ご主人様にそう言われる事が…女の子として見て貰えない事が悲しいし、寂しい。私の体は、自然とワナワナと震えていました。そして何とか声を絞り出します。
「私は女の子です…」
「えええええええええええ!!!」
私のかすれる声を聞いて、ご主人様が大きな声を上げて驚かれます。
薄々気がついていましたが、やっぱり私の事を男の子だと思っていたみたいで、私は少し泣きそうになっているのでした。
「マ…マルガ?…君はマルガって言うのかな?」
「ハ…ハイ!私はマルガです!」
私の名前を呼んでくれる、大好きなご主人様。私の事をネームプレートで確認された様です。
私の事を男の子だと思っていた事に謝罪までしてくれます。私は恐れ多くて、仕方が無い事を伝えると、苦笑いをして、私の体を洗う事を告げられます。
私は、今までの分を取り戻すかの如く、頭や体を何回も洗われています。
体の痒かった所が無くなり、石鹸や頭洗いの液の、良い香りが鼻に入って来ます。
そんな、アワアワになっている私を抱えて、ご主人様は少し深い所に、一緒に飛び込みます。
私の体と頭を包んでいた泡は、一瞬で流されます。水中から浮かび上がった私とご主人様は、水面で再会を果たします。
そして、私を見られたご主人様は、再度固まってしまいました。
私は自分の顔がよほど醜くなっているのかと、再度ガーンとなる所だったのですが、ソレが起きたせいで、出来ませんでした。
何だかお尻の穴がムズムズします…そしてお尻を見ると、何かが出てきていました。
「ご…ご主人様…何か…お尻がムズムズします…」
恥ずかしさの余り、顔の熱くなっている私を見て、ギュっと私の腰を引き寄せるご主人様。
わたしはご主人様の裸が目の前に有り、思わず抱きついて、しがみついていました。
ご主人様の裸…ご主人様の胸…暖かい…
ご主人様は私の腰を掴みながら、次々と虫の死骸を、私のお尻の穴から、引き抜いていかれます。
その感覚に、私は身を悶えさせます。息も荒くなり、ソレをご主人様に見られているせいで、顔も熱々です。そんな私を見ていたご主人様が、
「マルガ…目を閉じちゃダメ…こっちを向いて俺を見て…」
私の顎を掴み、艶かしい声で私に命令されます。私は必死にご主人様の瞳を見つめます。私とご主人様の吐息が交じり合って、私はボーっとしてきます。その次の瞬間、私に驚く事が起きました。
「う…んん…」
私は微かな声を上げます。ソレは、ご主人様が私にキスをなさったからです。
ご主人様の柔らかく、暖かい舌が、私の口の中に入ってきます。その気持ち良さに、私もご主人様の舌を欲し、舌を絡めて行きます。
すると、私の胸の下辺りに、何かをご主人様が擦りつけてられます。
ソレは、大きくなった立派なご主人様の性器でした。ソレを見た私は、歓喜に染まっていました。
『私に…欲情なさっている?こんな私を…女の子として、見て下さっている!?』
私の心は喜びで満たされます。胸の奥が、まるで魔法で焼かれた様に、熱せられています。
私のお腹に、切なそうに性器を擦りつけているご主人様…もっと、気持良くさせてあげたい…
私はご主人様のモノを優しく握ります。すると、ご主人様は、私の口の中を、舌で味わっていきます。
もっと私を味わって欲しい…私も…ご主人様を…味わいたい…
心の奥から湧き上がるその欲望を、私は止める事が出来ませんでした。
私は、あの過酷な労働場で、女達が男達に犯されるのを、6年間毎晩見ていたので、男の人がどうしたら気持ち良いのか、多少は心得ているつもりです。私はご主人様と舌を絡めながら、ご主人様のモノを愛撫していきます。ご主人様は、私の口を吸いながら、次々と虫の死骸を、お尻の穴から引きぬいていきます。その感じも合わさって、私の性器は、滴るように濡れているのが解ります。
気持ち良さそうなご主人様を感じていると、ご主人様がピクっと身悶え、私の胸に、ご主人様の子種…精液が飛び散ります。そのご主人様の精液の香りに、私のお腹が熱くなります。
私のお尻から、全ての虫を取られたご主人様は、私の胸に飛び散っている、ご主人様の精液を指ですくい、私の口の中に入れられます。その瞬間に、私は嬉しさに身を包まれる。
『精液って…変な味…でも…ご主人様の子種だと思うと…とても美味しい…もっと…欲しい…もっと…私の体の中に、ご主人様の精を取り入れたい…』
私は、その欲求を抑えられず、全ての精液を口に含み、それをコクコクと味わいながら、呑み込みます。そして、私の口の中に精液が残っていないのを、確認したご主人様は、至高の表情を浮かべる。
「可愛かったよマルガ…」
微笑みながら言われるご主人様に、私の全てが鷲掴みにされた様でした。
ギュッとご主人様に抱きつくと、ご主人様もギュっと抱き返してくれる。
私はその幸福に身を包みながら、きらめく川の中で、ご主人様と抱き合っていました。
私とご主人様は、宿の部屋に帰ってきていました。
川で再度ご主人様に綺麗にして貰って、一杯キスもして貰えた私は、密かに上機嫌でした。
帰りに、髪まで切って貰えて、しかも上等なメイド服迄貰っちゃうなんて…この幸せを、誰に告げれば良いのでしょうか?
今も美味しい夕食をご主人様と一緒に食べている。汚く無くなって、石鹸の香りのする私は、ご主人様の部屋に来ている。
私は、ニコニコしていたのでしょうか、ご主人様が優しく撫で撫でしてくれます。気持ち良いのです。
その時、メイド服をくれた奴隷商の言っていた事が気になり、ご主人様に全てを話して貰いました。
その内容に私は驚愕して、ご主人様に平伏をして、足の甲に何度もキスをする。
こんな私の為に…嬉しさと申し訳なさが私の心の中で、グルグルと渦巻いて居ました。
そんな私を優しく抱きかかえ、ベッドの隣に座らせるご主人様。
「マルガ大切な話があるんだ。俺の話を聞いて、マルガに何方か選んで欲しいんだ」
いつになく真剣なご主人様にドキっとしながら、静かに私は頷きます。
「マルガ…君には2つの道を選ばせてあげよう。二つの道というのは、このまま俺の奴隷として、永遠に俺に服従するか、奴隷から解放されて自由に生きるかだ」
そのご主人様の言葉を聞いて、一瞬目の前が真っ暗になりました。私…やっぱり…捨てられるの?
心の奥がキュンとなり、目に涙が自然と湧いてくるのを感じます。
「そ…それは、どういう事でしょうか?…やっぱり私の事がお邪魔なので捨てると言う事でしょうか?」
私は必死になんとかご主人様に理由を尋ねました。するとご主人様はゆっくりと首を横に振り、
「そうじゃないよ。…俺はマルガ自身の意思を俺に見せて欲しいだけなんだ。自分の意思で俺に永遠の服従を誓うのか、自由を選ぶのか。奴隷から解放されて自由を選ぶなら、多少のお金も持たせてあげる。もう惨めな思いもする事は無い。…マルガ。君はどうしたい?君の意思を教えて」
私はご主人様の話を聞いて、とても驚きました。
私は三級奴隷…もう二度と、解放される事は無いと思っていたのに、ご主人様は開放しても良いと、しかも、お金まで持たせて、自由にしてくれると言っている。
私は余りの事に、考えがまとまりませんでしたが、ご主人様が私の顎を掴み
「さあ…選んで…。永遠の服従か…自由か…」
吸い込まれる様な黒い瞳に、私が映し出されている。それを見た私は、不意に有る事に気がついた。
『自由になったら…ご主人様とはどうなるの?一緒に居られるの?…いえ…奴隷じゃなくなった私は、きっとご主人様と別れる事になる………嫌…そんなの嫌!…ご主人様と離れるなんて…絶対に嫌!』
私の心の底から、絞り出されるかの様なその感情が、私の体中を駆け巡る。
その時に、私はやっと気が付きました。
私は、ご主人様の事が好き…一人の女の子として、ご主人様を好きになっている…ご主人様を一人の男性として、大好きなんだ!
それを心と体で実感できた私は、もう迷う事は無かった。
「私は…ご主人様の奴隷として…生きて行きたいと思います!」
「本当にいいの?もう二度と奴隷から解放してあげないよ?」
「はい…私はご主人様の奴隷になりたいです…」
「今日…川でした様な事をいっぱいされるんだよ?それ以上の事も…いいの?」
「はい…私の体で良ければ…何時でも好きな様に使って下さい…」
私の決意を感じられたご主人様が、私に至高の命令をくだされた。
「…じゃあ…此処で誓えマルガ…」
「私…マルガは…ご主人様に全て…身も心も捧げます…私は永遠にご主人様の奴隷です…」
私には迷いは一切無かった。奴隷からの開放より、ご主人様と一緒に居られる事の喜びが、体中を支配しているからです。
「解った…マルガは…俺の奴隷だ…永遠に…もう…離さないからな!」
「はい…私の全てはご主人様の物です…永遠に…」
私はこの夜、私の全てをご主人様に捧げれる事に、喜びを感じていた。
「う…うん…」
私はベッドでご主人様に抱き寄せられて、キスをしている。
ご主人様の舌が、私の口の中で滑らかに動いている。私はご主人様の舌を味わい、同じ様に舌を絡める。ご主人様の手が、私の服に手をかけます。私をゆっくりとベッドに寝かせ、服を脱がそうとしてくれています。私はいよいよだと思い、思っている事を素直に言おうと思いました。
「ご主人様…私はこういう事をするのが…初めてでして…ご主人様にきちんとご奉仕できないかも知れません。…きっとご主人様に喜んで頂けるご奉仕が出来る様に頑張りますので、私に失望なさらないでくださいませ…」
私が恐縮しながら言うと、ご主人様は驚いた様な顔をされて、その後、瞳に喜びの色を浮かべる。
「ううん…逆に嬉しいよ…マルガの初めてをすべて奪う…解った?」
「はい…ご主人様に、私のすべての初めてを捧げます」
私にキスをするご主人様を抱きしめながら、私は今迄犯されなかった事に喜びを感じていた。
『ご主人様に、私の初めてを貰って頂ける…嬉しい…』
私が喜びに浸っていると、ご主人様は何かを用意されています。
私は気になって聞いてみると、『今後のお楽しみ』と、言われて、詳しくは教えて頂けませんでした。
そんな私にご主人様はキスをされて、服を脱がしてくれます。私は裸になって恥ずかしくしていると、ご主人様が、キスをしてくれて、私の体を愛撫していかれます。
「ご…ご主人様…き…気持ち良い…です…」
私のその声を聞いて、嬉しそうに私を更に愛撫してくれるご主人様。
私の秘所は、自分でも解る位に、濡れているのが解ります。それを見て嬉しそうなご主人様。
「ほらマルガ…。マルガの大切な所はこんなになってるんだよ?」
「とっても…気持よくて…恥ずかしいです…」
きっと私の顔は真っ赤になっているのでしょう。熱さで解ります。体も火照っていて、その気持ち良さに、頭がボーっとしてきます。
そんな私にご主人様は、立派なモノを私の口の前に出されます。
「さあマルガ…その可愛い口で、俺のモノに奉仕するんだ…」
「解りました…ご主人様…」
私はご主人様のモノを味わえる喜びを感じながら、口に咥えて舐めていきます。
ご主人様の味を感じながら、気持ち良さそうなご主人様を見て、幸せな気持ちに包まれている私。
もっと…気持良くして上げたい…
更に念入りに激しく、ご主人様の立派なモノを愛撫していると、ご主人様の体が、ピクっと強張ります。その瞬間、私の口の中に、ご主人様の子種が、口の中いっぱいに広がります。
私は、ご主人様のモノから、残っている子種を吸いだすと、口を開けてご主人様に見せる。
それを見たご主人様に、子種を頂く許可を貰った私は、味わいながら、コクコクと飲み込んでいく。
ご主人様の精を味わって幸せを感じている私に、ご主人様は愛撫で答えてくれる。
私の秘所やお尻の穴まで、丹念に愛撫をしてくれるご主人様。
その余りの気持ち良さと、ご主人様にしてもらえる喜び、恥ずかしさ、申し訳なさが、体中を駆け巡り、私を更に興奮させます。私の秘所は、まるで洪水にあったかの様になっていました。
「マルガの処女を奪うからね…。優しくはしない…全力で犯すからね…一生に一度の…マルガの処女の喪失している時の顔を存分に見たいから…さあ…おねだりしてごらん…」
そう言って、私ににキスをされるご主人様に、私は両足を開いて、両手で秘所を広げる。
「ご主人様…マルガの処女を捧げます…存分に奪って下さい…」
「ああ…解った…」
いよいよ…ご主人様に…私の初めてを貰ってもらえる…
私が喜びに支配されていると、ご主人様のモノが、誰も入った事の無い、私の中に中にと入ってくる。
「イッ…は…んっうん…」
私は痛みを感じ、少し声を出す。ふと、視線を下に移すと、ご主人様のモノを根本まで入れている、私の秘所が見える。それを見て、喜びが体全てを支配する。
「…マルガの処女膜を破ったよ…。俺のモノを咥えちゃったね…」
「はい…ご主人様に私の処女を奪って貰えて…嬉しくて幸せです…」
私は嬉しさの余り、涙を流してしまった。そんな私の表情を見て、嬉しそうなご主人様は、
「マルガ…此れから全力で動くから…その初めての表情をもっと俺に見せて…」
「ハイ…ご主人様…私の初めての全てを見て下さい…」
そう言い終わると、ご主人様は全力で私を犯し始める。私の体に、身を切り裂く痛みが駆け巡る。
処女を喪失した破瓜の傷み…ご主人様に奪って貰えた喜びの痛み…
私は労働場で、沢山の男達に犯されている女達を見てきました。女性達の表情も良く覚えています。
苦痛、快感、悲愴、屈辱…。様々な感情を篭めた表情で犯されていました。
私も、その様な感情を持って、その様に犯され、全てを無くすのだと思っていました。
でも現実は違った…
私はご主人様に、初めてを奪って貰え、犯される事に喜びを感じている。
好きな人に、処女を捧げ、全てを犯される事が、こんなにも嬉しい事だったなんて…
身を切る痛みさえ、喜びを感じる為の、1つの要因にしかなっていない。私の秘所に出入りしている、ご主人様の立派なモノには、私の愛液と破瓜の血が付いて、艶かしく光っている。
私はそれを見て、至高の気分に浸る。
『ああ…私の愛液が…私の破瓜の血が…ご主人様の立派なモノを汚している…』
私の心は完全にご主人様に囚われている。力一杯私を犯すご主人様が愛おしい。
犯されながら私がキスをせがむと、ご主人様は艶かしい微笑みを湛え、私の口の中に舌を入れてくれる。私は、上と下の口を、ご主人様に犯される事に、喜びを感じていると、ご主人様の体が、少し震えてくる。
「マ…マルガ!出すよ…マルガの可愛いアソコの中に、一杯精液出すからね!」
「ハイ!私の…私の中に沢山注いでください!」
私は、快感に染まっているご主人様の表情を見て、ギュッとご主人様にしがみつく。
すると次の瞬間、ご主人様は大きく体を強張らせる。ご主人様の立派なモノから、勢い良く子種が、私の膣の中に、沢山注がれる。私はソレを感じ、ご主人様をきつく抱きしめる。
『熱い…膣の中が…ヤケドしちゃいそう…私の中に…ご主人様の子種が…染みこんでいく…嬉しい…』
私はご主人様に、焼印の様な精を注がれて、至高の幸福に、身を包まれていた。
「マ…マルガ…出したよ…マルガの可愛い膣に一杯…精子出してあげたよ…」
「ご主人様…マルガに精を注いで頂いて、ありがとうございます…」
私はご主人様の言葉に、お礼を言うと、優しくキスをしてくれるご主人様。
ご主人様の舌を味わい、ご主人様にも私の舌を味わって貰う。
「これでマルガは俺だけの物だからね…」
「はい…マルガはご主人様だけの物です…ご主人様専用です…ご主人様の物になれて…私…幸せです」
心の底から出た私の感謝の言葉を聞いたご主人様は、ギュっと私を抱きしめてくれる。
私もご主人様をきつく抱き返す。何度もキスをしてくれるご主人様が、とても愛おしい…
私とご主人様は、抱き合ったまま、そのまま眠ってしまいました。
私は、暖かい何かに包まれている。
その居心地の良さは、まるでお母様に包まれている様です。
そして、優しく何かに顔を撫でられた私は、光を感じて、目を少しずつ開ける。
するとそこには、私を慈しむ様に、微笑みを向けているご主人様の顔を見つける。
そんな私の頭を優しく撫でてくれるご主人様…。そんな愛おしいご主人様にギュっと抱きつく。
『ご主人様…暖かい…ああ…なんて…幸せなんだろう…』
私は一頻り幸せを噛みしめて、ご主人様に挨拶をする。
「ご主人様…おはようございます…」
私はそう言って、ご主人様にキスをする。ご主人様の口の中に舌を忍ばせる。ご主人様は入れた私の舌に、舌を絡めて味わってくれる。私もご主人様をタップリと味わ合わせて貰って、お互い顔を離します。
「マルガおはよう」
ニコっと微笑むご主人様に見蕩れていると、ご主人様のモノが大きくなっているのが解った。
「ご主人様辛そうです…。此方も毎朝ご奉仕致します…」
私はご主人様のモノを咥え愛撫をします。ご主人様が少し体を悶えさせています。
ご主人様の顔を見ると、とても気持ち良さそうに、私がご主人様のモノを咥えているのを見ています。
私はそのご主人様の顔を見て、また心が鷲掴みにされた様な感覚に囚われ、ご主人様のモノに奉仕するのにも力が入ります。すると、ご主人様は、体を強張らせて、私の口の中に精を注いでくれます。
私はご主人様の精を全て吸出し、口の中で、ご主人様のモノと一緒に味わい、コクコクと飲み込んで行きます。最後に、私の口の中を確認したご主人様は
「マルガ…可愛かったよ…」
「ありがとうございます…ご主人様…」
黒く吸い込まれそうな瞳を私に向け、ニコっと微笑むご主人様に抱きつく。
ご主人様も優しく私を、抱き返してくれます。
『ああ…本当に幸せ…ご主人様…大好きです…』
私とご主人様は暫くの間、そうやって抱き合っていました。
暫くベッドの中で抱き合っていた、私とご主人様ですが、今日は何処かに出かける予定があるとの事で、私とご主人様は、朝食を食べて、宿屋を後にしました。
まだ男物の奴隷服を来ている私ですが、綺麗にした事で、もう男の子には見えないねと、ご主人様にいって貰えた。それに喜んでいると、1軒目の目的の場所に就いた様です。
そこは、宝石や細工品を売るお店で、店構えも大変綺麗にされていた。
その店の前で暫く待っていると、ご主人様が帰ってこられる。
「ご主人様おかえりなさい!」
「待たせたねマルガ。じゃ~行こうか」
私に微笑むご主人様。そして次の目的地に歩き出すご主人様の腕に、思い切って抱きついてみました。
実は外に出てから、ずっとそうしたかったのです。ご主人様とくっついて居たい…
怒られるかな?と、思ったのですが、ご主人様は嬉しそうな微笑みを私に向けてくれる。
『…やりました!作戦成功です!』
私は心の中で作戦の成功を喜んで、ふとご主人様を見ると、ご主人様も何だか嬉しそう。
そんなご主人様を見て、幸せに包まれている私は、ご主人様に付いて行く。
暫く一緒に歩いていると、大きな石造りの立派な建物が見えて来ました。入り口には沢山の鎧を来た兵隊が警護しています。その兵隊達の間を、沢山の身なりの良い人々が出入りをしていました。
「ご主人様…此処はどこですか?」
私は身分の低い三級奴隷。この様な身分と地位の高い人が来る様な所には、一番縁遠い人種。私は辺りを見回して、その事を感じ戸惑っていました。
すると、ご主人様は、何時もの様にニコっと微笑んで
「此処はラングースの町唯一の役場だよ。色々な公的手続きをする所だよ」
「や…役場ですか!?」
ご主人様の返答に、思わず大きな声を出してしまいました。
役所…三級奴隷である私が、役所に連れて来られる…その理由は1つ…
私はその事を考えだし、今迄幸せに浸っていた自分が、とても悲しくなってきました。
そんな私をご主人様は気にしていない様で、私の手を引いて、役所の中にどんどん入って行かれます。
そして、1つの受付の前で歩みを止めるご主人様が、私にニコッと微笑みながら、
「此処が奴隷の財産管理をしている公証人の受付だ」
私はそれを聞いて、目の前が真っ暗になりました。
役所に奴隷を連れて来て、奴隷の財産管理をしている公証人の所に来る理由は…
『ソレは、不要になった奴隷を処分する時…』
私はさっき迄浮かれていた自分が、恥ずかしかった。私はご主人様に気に入られ、喜んで貰って居るとばかりだと思っていた。でも…ソレは違った…
ご主人様は、私を処分なさる為に、此処に連れて来た…それが事実。
私がそんな事を思っていると、私に此処で待つ様に言い、ご主人様は受付の方に歩いて行かれる。
そんなご主人様の後ろ姿を見ながら、ご主人様に気に入って貰えなかった自分が許せなかった。
短い間だったけど、ご主人様と一緒に居られた楽しい時の思い出が、頭の中一杯に広がっています。
すると自然と目に涙が浮かんできました。涙を必死に堪え、ご主人様が戻ってこられたので、最後の感謝を伝えようと、ご主人様に近づく。
「ご主人様…今迄有難うございました…こんな私に色々して下さった事感謝しています。ご主人様のご期待に答えられなかった私を、お許し下さい…」
私はご主人様の足元で平伏して、足の甲に何度もキスをします。
そんな私を見て慌てられるご主人様は、両脇に腕を入れて私を立たせ、少し申し訳なさそうな顔をする。
その顔を見た私は、涙を我慢出来そうに無い位に堪えていました。
すると私を見たご主人様は、私をギュッと抱きしめ、額に優しくキスしてくれます。
「マルガ心配させちゃってごめん。マルガの思ってる様な事じゃないよ?」
そう言って、何時もの優しい微笑みを、私に向けてくれるご主人様。
私はどういう事なのか解らずに戸惑っていると、私の優しく頭を撫でながら
「マルガ、何も心配しなくていいから、あの公証人の所に行って来て」
そう言って、公証人を指さすご主人様。私は、ご主人様を信じて、公証人に向かいます。
途中で不安になって、何度もご主人様に振り返ります。その都度ご主人様は、優しい微笑みを私に向けてくれるのです。
何回かその様な事を繰り返し、公証人の前に来ると、私を見た公証人は、フンと鼻で言うと
「お前が、葵 空の所有している、三級奴隷だな?ネームプレートを見せろ」
そう淡々と告げる公証人。私は頷き、公証人に言われるままネームプレートを差し出します。
「ウム。間違いないな。では、そこでじっとして立っていろ。動くなよ?」
公証人は私に右手を額にかざします。
そして、何やら呪文の様な言葉を発すると、掌から光が出て、私を包みます。
私はその光に若干の恐怖を感じながら見ていると、その光は私に吸い込まれ消えていきます。
何が起こったのか解っていない私に、その表情を見た公証人は、再度フンと鼻で言うと
「これで終わりだ。奴隷の階級変更は無事完了した。ネームプレートで確認する事だな」
そう言って公証人は、私にネームプレートを返却してきました。
私は戸惑いながらネームプレートを受け取ると、ご主人様の所に戻って来ました。
そんな私を見て、少し悪戯っぽい微笑みをするご主人様は、
「マルガ…ネームプレートを、開いて見て。そして、自分の身分の所を見てよ」
私は戸惑いながら、ご主人様の言われた通りに、ネームプレートを開き、確認をする。
「…身分 一級奴隷 所有者 葵 空 遺言状態 所有者死亡時奴隷解放……え!?…わ…私が…一級奴隷!?」
思わず声を上げてしまいます。それほど予想外の事だったのです。
一級奴隷はごく一部の者しかなれない、奴隷階級。人権も普通の人の様に保証されているし、差別される事も無い。しかし、高額な人頭税が掛かるので、余程の事が無い限り、選ばれる事は無いのです。
しかも、三級奴隷から、一級奴隷になるなど…聞いた事が在りません。
私は見間違えかと思い、何度もネームプレートを見直します。目を擦ってはネームプレートを見て、また目を擦って、ネームプレート見る。
そんな私を見て楽しげなご主人様は、優しく私の頭を撫でてくれます。
「マルガを一級奴隷にした。三級奴隷のままなら、他の人に気軽に殺されちゃう可能性が有るからね」
「な…なぜ…私なんかを、一級奴隷になされたのですか?」
私は自分の身に起きている事が信じられず、ご主人様を見ていると、私をギュッと抱きしめるご主人様は
「言ったでしょ?もう離さないって…マルガは俺だけの物、他の誰にも触らせないし、どうこうさせる気はない…大切なんだマルガが…。もう一度聞くよ…マルガは誰の物?俺の大切なマルガは誰の物?」
ご主人様に抱かれながら、耳元で囁かれたその言葉に、私の体は歓喜に支配される。
ご主人様が、私を大切だと言ってくれている…私を…私を…
「私はご主人様の物です!私はご主人様の為にあります!私の全てはご主人様の物です!」
私はそう叫んで、ご主人様の胸に顔を埋め、嗚咽をあげて泣きだしてしまいました。もう我慢出来ませんでした。
そんな私をギュッと抱いて、優しく頭を撫でてくれるご主人様は、ポケットから何かを取り出しました。
「これは、奴隷が首に付けれる唯一のアクセサリー。奴隷専用のチョーカーだよ」
奴隷は、奴隷の証である首の輪っかの様な奴隷の紋章を、隠してはならないと言う奴隷法があります。
しかし、国が認める形式の首飾りなら付けることが出来ます。何故なら、この美しいチューカーも、奴隷だという事が解るように、赤い色をして、その先端には、鎖を繋ぐ飾りが付いているからです。
「マルガ…これはね…俺がマルガに付ける首輪だ。マルガが俺の物だと言う証…さあ…マルガ…言ってご覧…俺に…おねだりするんだ…」
ご主人様に顎を掴まれている私は、その吸い込まれそうな黒い瞳に、歓喜の瞳を向ける。
「ご主人様…その首輪を私につけて下さい…私がご主人様の物であると言う証明に…」
私が首をご主人様に差し出すと、ご主人様はゆっくりと優しく、その奴隷専用の豪華な赤い革のチョーカーを、首に付けてくれました。
「マルガ…可愛いよ。よく似合っている…」
「私にご主人様の証の首輪をつけて頂いて、ありがとうございます…」
ご主人様の可愛いと言う言葉と、ご主人様の物になれた事の嬉しさで、きっと私の顔は、ニマニマしていたと思います。
そんな私を見てクスッと笑うご主人様は、もう一つのポケットから何かを取り出します。
「じゃ~きちんと言えたマルガにご褒美を上げないとね」
そう言って、もう一つのポケットから何かを取り出します。ソレを見た私は、思わずご主人様の手を取って見てしまいます。
「そ…それは!私が無くしたと思っていた、お母様の形見の首飾り…」
ご主人様の手の中には、あの奴隷館で無くしたと思っていた、お母様の形見の石が握られて居ました。
どうやらあの時に、ご主人様がコレを拾って居てくれた様なのです。
私の驚いている顔を、楽しそうに見ているご主人様は
「このマルガの形見のルビーはかなり汚れていて、装飾も傷んでいたからね。俺が直しておいたんだ」
「こんなに綺麗に…まるで…お母様に貰った時の様…」
お母様の形見の石を見て、目を潤ませている私に、ご主人様は
「これね、ちょっと手を加えたんだ。これをここに…」
私から赤いルビーを取り、首に付けられているチョーカーの鎖を繋ぐ部分に、赤いルビーをペンダントのトップの様に付けてくれました。それを、手で触りながら、私が嬉しさを噛み締めていました。
「うん、更に可愛くなったね。凄く似合ってるよマルガ」
ご主人様がそう言って、私の頭を優しく撫でてくれます。私はまた我慢出来無くなって、ご主人様に抱きついて、胸の中で泣いてしまいました。そんな私を、ギュッと抱きしめてくれるご主人様が愛おしい。
「マルガは俺だけの物…絶対に手放さないからね…」
「はい…私はご主人様だけの物です…永遠に…」
ご主人様の言葉に、私は全身全霊で、今ある気持ちの全てを言葉に乗せる。
もう嬉しすぎて、涙が止まりませんでした。私が泣いている間、ずっと抱きしめて、頭を優しく撫でてくれるご主人様。
暫くそうして私が泣き止む迄待ってくれたご主人様は、私の涙を指で拭いてくれます。
そして、私とご主人様は役所を出て外に出てきました。
外は春先の暖かい日差しが眩しくて、先程まで泣いて目を腫らしている私には、少し刺激が強く目を細めてしまいます。そんな私を見て、クスッと笑うご主人様は
「…マルガ…帰ろうか」
ニコッと微笑んで、私の手を優しく握ってくれるご主人様の手を、私はギュッと握り返します。
「ハイ!ご主人様」
力いっぱい返事する私を見て、またクスッと笑うご主人様に、手を引かれる私。そんな私は、正に幸せの絶頂の中に居ました。
『…見てくれていますかお母様。マルガは今こんなに幸せです。…あの時、私を助けてくれてありがとう…お母様』
私は首に付けられた形見の石を握りながら、心の中でそう呟いて、ふと、ご主人様を見ると、何時もの優しい微笑みを私に向けてくれる。春先の暖かく眩しい光に輝らされたその微笑みはとても神々しく、私の瞳に映りました。まさに、黒い天使様…
『私は…この黒い天使様の傍を離れない…この黒い天使様と一緒に行くんだ…何処までもずっと…』
心の中でそう誓った私は、ご主人様に手を引かれて帰って行くのでした。
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