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異世界交流
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「いやぁ、やろうと思えばやれるもんだな、意外と」
「いやぁ、ホンマにできるとは思わんかったわ」
「オイ」
さり気なく隣で衝撃的な発言をした悠に反応を示す望。
二人は驚愕の出来事から復帰し、とりあえず街の中へと入れる門の近くへと来ていた。
情報を得るには街の中が一番なのだが、二人が入るのをしり込みしている理由があった。
「遠目やけど、ここに入るには見る限り、身分証みたいなものが必要っぽいな~。アレ、なんやろうか。ファンタジーな世界やし、ギルドカードやろうか? それかパスポートみたいな?」
「まぁ、そんなもんじゃねぇかな? 後は通行料か、だな」
遠目から見ていた二人は街の中へと入っていく人が門番の兵にカードを見せていたり、通行料であろう銀貨らしきものを支払っているのが見えた。
二人が入れずにいる理由はコレである。
この世界に来たばかりの二人にはカードもなければ、勿論お金もない。
そのため、街中へと入れないでいた。
「どうするよ」
「どうしようか。お金もないし、カードもないしなぁ。かと言って、お前の身体能力に頼って、壁を乗り越えようにも」
望なら、この程度の壁は超えられるだろうと思っていた悠だが、自身のスキルを発動して、街へと目を向けることによって、気付いたことがある。
【『感知結界』:結界に触れた物を感知し、術者に侵入を知らせる結界】
【『守護結界』:外敵の侵入と攻撃を阻むための結界である守りの結界】
(二重に結界を張っとるなぁ~。このまま望に頼んだとして、『守護結界』とやらを突き抜けたとしても、同時に張られとる『感知結界』によって、街の衛兵たちに侵入しようとしていたことがバレてまう。そんなことになれば……まぁ、逃げられるな。望頼りになるけど)
『夢の世界』へと繋がる扉は望さえいれば、どこでも出せると言うことがわかっているのだから、逃げようと思えば、いつでも逃げられる。
とはいえ、街に入るため、という目的のためだけに、そんな不法入国をするわけにもいかない。
そうなると、別の方法を考えなければならないが、さて……。
「あの、何かお困り事ですか?」
後ろからかけられた女性の声。
どうやって街に入ろうかと悩んでいたところに、コレは渡りに船と言わんばかりに嬉しそうに悠は振り返る。
「あ、そうなんです! 実は身分証もお金もなくて、どうやって街にはい……ろう……かと……」
「そうなんですか? それは大変でしたね。ここに来る途中で盗賊にでも襲われたんですか?」
「まぁ、そんな感じかな。気づいたら、平原で寝てたみたいな」
「それは災難でしたね……。眠らされて、物とかを盗んだと言うことでしょうか。命をとられなかっただけ運がよかったかもしれませんね」
「ホントホント。もう目が覚めた時はびっくり」
「いや、ちょっと待ってぇな」
悠は声をかけてきてくれた少女の姿を見て、思わず言葉を詰まらせ、固まってしまったが、何事もなく会話をする望に待ったをかけた。
それもそのはず。
何故なら、二人の目の前にいる少女の姿に問題があった。
背中に生えた蝙蝠の様な、悪魔の様な翼。
腰から伸びる悪魔の尻尾、そして頭には羊角。
そこまでは問題はない。
ファンタジーな世界にいるのだから、色んな種族がいるのは当たり前だろう。
だが、問題はその服装にあった。
「なんでビキニアーマー着てる人と普通に会話出来んねん! お前は!?」
「え? だって、そういう世界だからじゃね?」
「そういう世界だったとしても! ハイ、そうですか。って納得して、受け入れんの無理やねん! 俺ら思春期真っ盛りの高校生やぞ! 余計に気になってまうに決まってるやろ!」
「ん~? そうか?」
「お前、やっぱおかしいんとちゃう!? 普通の男ならな、こんなスタイル抜群で、こんな格好でおる女性見たら、目のやり場に困るに決まっとるやろうが!」
「いや、普通に顔見て話せばいいじゃん」
「ナメんなァー! こちとら、お前とつるんでばっかで、まともに女性とお付き合いどころか、お話もあまりしたことない男やぞ! いや、俺に勇気がなかったのは認める! やけど、そんな奴がこんな美少女と普通に顔を見ながら会話できると思うなァー!」
「それ言ったら、俺も同じだけど。お前が唯一の友達だし」
「嬉しいこと言ってくれるけど、それはそれ、これはこれや!」
そう、悠が固まった理由、それは声をかけてきた少女の恰好がゲームやアニメでしか見たことがないビキニアーマーという姿でいたからだ。
それもそれだけではない。
流石ファンタジーな世界というべきなのだろうか。
出るところは出ており、引き締まるべき場所は引き締まっているという理想の体つき。
それも胸が大きいことにより、叫び声をあげながらも、悠の視線は少女の胸の方をチラチラ見ていたりする。
「それにやで! よく見てみぃ! 人間ちゃうやん! No、ヒューマン! No、ホモ・サピエンス!」
「うん、見事な羊角と羽と尻尾だよな。悪魔っぽいよな~」
「いや、もうちょっと驚いた反応せえやァー! ファンタジーな世界やとわかっていても、初めて見るんやから、ちょっとくらい驚くなり、反応するなりしろやー!」
「お姉さん、失礼かもしれないけど、種族聞いていい? 俺の親友が気になるようで」
「違うねん! お前の気を遣うところっていうか、反応するところがずれとんねん! いや、気になってるのは確かやけども! 違うねん! 今、そういう話ちゃうねん!」
少女は二人の言う通り、他にも目が惹かれる物があった。
それは人間にあるはずのない頭の側面部分から生えている二本の羊角。
背中には蝙蝠を思わせるような羽と腰から悪魔の様な尻尾が生えている。
望は悠がそれによって、どういう種族なのか、気にしているんだと思い、少女に尋ねたのだ。
「あ、はい。別に隠すことでもないので、自己紹介がてら、いいですよ。私は女淫魔のリフューノ・カナンナ。リノって、よく呼ばれてますから、そう呼んでくれると嬉しいです」
「これはご丁寧にどうも。俺は人間の夢見 望。ちなみに望が名前だ。で、こっちで叫びまくってたのが親友の清描 悠。同じくヒューマン」
「なんで俺の時英語なん!? なんで!?」
「No、ヒューマンと叫んでたから、そう言ってほしいんだと思って」
「いらん所で気を遣わんでええねん! ホンマに!」
二人の漫才とでも思える言い合いに、リフューノ――リノと名乗った少女はクスッと笑う。
その声に二人は反応し、言い合いを止める。
「え? 今笑ったん?」
「いえ、あの。すみません。なんというか、お二人のやり取りは見ていて、とても面白いものがありまして。それで思わず」
「別に笑わせるつもりでやってないんだけどな。いつも通りだよな?」
「そうやな。いつも通りのノリが最早漫才っぽいのを除けば、いつも通りやな。やから、人によっては笑っても仕方ないと思うで」
いつも通りの会話なのだが、と首を傾げる望に対し、自分たちの会話がどういうものか、理解している悠はため息交じりながらも、相方の疑問に答える。
クスクスと笑い終えたリノは二人の会話で不思議に思ったことがあったのか、小首を傾げる。
「思えば、私の様な亜人を初めてみると言っていましたよね。全国的に考えても亜人は普通にいるのに、初めてみるなんて変わってますね。名前もあまり聞き馴染みがないような感じですし。ふぁんたじー? と叫んでいたのも気になりますけど。後、ホモ・サピエンスというのも」
「あぁ、最後の方の二つは気にせんでええんです」
「そうそう。悠がたまに変なこと口走るのはいつものこと」
「じゃないねん!」
変なことを口走る前にと言わんばかりに、悠は望の頭を叩く。
因みに叩かれた望よりも、叩いた悠の手の方がダメージを受けていたりする。
ジンジン痛む手を空いている手で抑えながらも、リノへと涙目ながらも、目を向ける。
「そ、それで話が大分逸れてもうたけど、どうにかして街ん中に入れないか、考えてたんですけど」
「それなら、私が二人の分の通行料も払いましょうか? 私もついさっき『オルラリア』に到着したばかりでして」
「そうだったのか?」
「はい。で、ちょうど二人が困っていたのを目撃し、『騎士』を目指す者としては放っておけなくて」
「へぇ、『騎士』を目指してるんだ。それで鎧を着てるのか。大きな盾を背負ってるのにも納得だな」
「はい。『騎士』らしく見えますかね?」
「うん、見える見える。『騎士』に対する思いが強いんだなって、伝わってくるよ」
「ホントですか! そういってもらったのは初めてです!」
(騎士みたいに見えるって……あの鎧で? いや、確かに漫画とか、薄い本とかではよく見るで? でも、そういう物語の世界だけやろう? あの恰好で騎士って、いうのは少し無理があるんやと思うんやけど……あ、ここファンタジーな世界やったわ)
一人頭の中で自己完結した悠は何度かうんうんと頷く。
とりあえず、渡りに船なので、リノについていけば、不法入国の様なことをせずに済みそうだ。
「それならお願いしようや。入る方法がなかったのも事実やしな」
「おう、そうだな。それじゃ、お願いします。リノ騎士」
「り、リノ騎士だなんて……。まだ『騎士ギルド』に所属してないんですから、そういう風に言わなくていいですよ!」
「という割には嬉しそうな顔だ」
「そうやな」
リノは嬉しそうに顔をにやけさせているのを見て、二人は確かめ合うように目を合わせる。
「あ、それよりも『騎士ギルド』言っとりましたよね? 普通騎士って、国に仕えるもんやないんですか?」
「え? 確かに『騎士』は国に仕えるものですが、そのためには『騎士ギルド』に所属しないといけないんです。でないと『騎士』として、認められませんから」
「なるほど。えっと、他にもギルドがあったりするんでしょうか?」
「え? そうですね。商業ギルド、鍛冶ギルド、錬金術ギルドや医師ギルドなどたくさんありますけど……これは常識だと思うんですが」
「あぁ、いや。俺ら、大分田舎から来たもんですから、街とかのそういう話に疎くて」
「そう、なんですか。確かに場所によっては知らないっていうところもあるかもしれませんね。いや、でも、ギルドに依頼くらいは出したことは」
「自給自足が成り立つ場所やったもんで!」
流石にこの嘘はきついだろうか、などと悠は思いながらも、自分たちが異世界人だとバレない方がいいと思い、嘘八百を並べるしかない。
「そうなんですね。そういうところもありますよね。魔物の被害とかには合わなかったのか、不思議ですけど、戦える人がいたんでしょうね。それなら、知らなくて仕方ないかもしれません」
(誤魔化せたァー! まぁ、魔物の疑問を言われた場合は、望もおるし、大丈夫やろう。こいつ、人間離れしとるしな)
「でも、俺たちって自給自足なんてし」
「さぁ! 早く行きましょうや! 時間は有限! ギルドが開いてる時間も決まっとるんやないですか!?」
「あ、そうですね。『騎士ギルド』が24時間やってるって言っても、受付は時間も決まってるので。それでは行きましょうか」
望が余計なことを口走りかけたことに、悠は大声を上げることで誤魔化す。
リノは受付の時間があることを思い出し、街の門へと向けて歩き出す。
悠は余計なこというなよ、という感じで望を睨みつけ、望はそれにわかりました、という感じに頷き、リノのあとについていった。
「いやぁ、ホンマにできるとは思わんかったわ」
「オイ」
さり気なく隣で衝撃的な発言をした悠に反応を示す望。
二人は驚愕の出来事から復帰し、とりあえず街の中へと入れる門の近くへと来ていた。
情報を得るには街の中が一番なのだが、二人が入るのをしり込みしている理由があった。
「遠目やけど、ここに入るには見る限り、身分証みたいなものが必要っぽいな~。アレ、なんやろうか。ファンタジーな世界やし、ギルドカードやろうか? それかパスポートみたいな?」
「まぁ、そんなもんじゃねぇかな? 後は通行料か、だな」
遠目から見ていた二人は街の中へと入っていく人が門番の兵にカードを見せていたり、通行料であろう銀貨らしきものを支払っているのが見えた。
二人が入れずにいる理由はコレである。
この世界に来たばかりの二人にはカードもなければ、勿論お金もない。
そのため、街中へと入れないでいた。
「どうするよ」
「どうしようか。お金もないし、カードもないしなぁ。かと言って、お前の身体能力に頼って、壁を乗り越えようにも」
望なら、この程度の壁は超えられるだろうと思っていた悠だが、自身のスキルを発動して、街へと目を向けることによって、気付いたことがある。
【『感知結界』:結界に触れた物を感知し、術者に侵入を知らせる結界】
【『守護結界』:外敵の侵入と攻撃を阻むための結界である守りの結界】
(二重に結界を張っとるなぁ~。このまま望に頼んだとして、『守護結界』とやらを突き抜けたとしても、同時に張られとる『感知結界』によって、街の衛兵たちに侵入しようとしていたことがバレてまう。そんなことになれば……まぁ、逃げられるな。望頼りになるけど)
『夢の世界』へと繋がる扉は望さえいれば、どこでも出せると言うことがわかっているのだから、逃げようと思えば、いつでも逃げられる。
とはいえ、街に入るため、という目的のためだけに、そんな不法入国をするわけにもいかない。
そうなると、別の方法を考えなければならないが、さて……。
「あの、何かお困り事ですか?」
後ろからかけられた女性の声。
どうやって街に入ろうかと悩んでいたところに、コレは渡りに船と言わんばかりに嬉しそうに悠は振り返る。
「あ、そうなんです! 実は身分証もお金もなくて、どうやって街にはい……ろう……かと……」
「そうなんですか? それは大変でしたね。ここに来る途中で盗賊にでも襲われたんですか?」
「まぁ、そんな感じかな。気づいたら、平原で寝てたみたいな」
「それは災難でしたね……。眠らされて、物とかを盗んだと言うことでしょうか。命をとられなかっただけ運がよかったかもしれませんね」
「ホントホント。もう目が覚めた時はびっくり」
「いや、ちょっと待ってぇな」
悠は声をかけてきてくれた少女の姿を見て、思わず言葉を詰まらせ、固まってしまったが、何事もなく会話をする望に待ったをかけた。
それもそのはず。
何故なら、二人の目の前にいる少女の姿に問題があった。
背中に生えた蝙蝠の様な、悪魔の様な翼。
腰から伸びる悪魔の尻尾、そして頭には羊角。
そこまでは問題はない。
ファンタジーな世界にいるのだから、色んな種族がいるのは当たり前だろう。
だが、問題はその服装にあった。
「なんでビキニアーマー着てる人と普通に会話出来んねん! お前は!?」
「え? だって、そういう世界だからじゃね?」
「そういう世界だったとしても! ハイ、そうですか。って納得して、受け入れんの無理やねん! 俺ら思春期真っ盛りの高校生やぞ! 余計に気になってまうに決まってるやろ!」
「ん~? そうか?」
「お前、やっぱおかしいんとちゃう!? 普通の男ならな、こんなスタイル抜群で、こんな格好でおる女性見たら、目のやり場に困るに決まっとるやろうが!」
「いや、普通に顔見て話せばいいじゃん」
「ナメんなァー! こちとら、お前とつるんでばっかで、まともに女性とお付き合いどころか、お話もあまりしたことない男やぞ! いや、俺に勇気がなかったのは認める! やけど、そんな奴がこんな美少女と普通に顔を見ながら会話できると思うなァー!」
「それ言ったら、俺も同じだけど。お前が唯一の友達だし」
「嬉しいこと言ってくれるけど、それはそれ、これはこれや!」
そう、悠が固まった理由、それは声をかけてきた少女の恰好がゲームやアニメでしか見たことがないビキニアーマーという姿でいたからだ。
それもそれだけではない。
流石ファンタジーな世界というべきなのだろうか。
出るところは出ており、引き締まるべき場所は引き締まっているという理想の体つき。
それも胸が大きいことにより、叫び声をあげながらも、悠の視線は少女の胸の方をチラチラ見ていたりする。
「それにやで! よく見てみぃ! 人間ちゃうやん! No、ヒューマン! No、ホモ・サピエンス!」
「うん、見事な羊角と羽と尻尾だよな。悪魔っぽいよな~」
「いや、もうちょっと驚いた反応せえやァー! ファンタジーな世界やとわかっていても、初めて見るんやから、ちょっとくらい驚くなり、反応するなりしろやー!」
「お姉さん、失礼かもしれないけど、種族聞いていい? 俺の親友が気になるようで」
「違うねん! お前の気を遣うところっていうか、反応するところがずれとんねん! いや、気になってるのは確かやけども! 違うねん! 今、そういう話ちゃうねん!」
少女は二人の言う通り、他にも目が惹かれる物があった。
それは人間にあるはずのない頭の側面部分から生えている二本の羊角。
背中には蝙蝠を思わせるような羽と腰から悪魔の様な尻尾が生えている。
望は悠がそれによって、どういう種族なのか、気にしているんだと思い、少女に尋ねたのだ。
「あ、はい。別に隠すことでもないので、自己紹介がてら、いいですよ。私は女淫魔のリフューノ・カナンナ。リノって、よく呼ばれてますから、そう呼んでくれると嬉しいです」
「これはご丁寧にどうも。俺は人間の夢見 望。ちなみに望が名前だ。で、こっちで叫びまくってたのが親友の清描 悠。同じくヒューマン」
「なんで俺の時英語なん!? なんで!?」
「No、ヒューマンと叫んでたから、そう言ってほしいんだと思って」
「いらん所で気を遣わんでええねん! ホンマに!」
二人の漫才とでも思える言い合いに、リフューノ――リノと名乗った少女はクスッと笑う。
その声に二人は反応し、言い合いを止める。
「え? 今笑ったん?」
「いえ、あの。すみません。なんというか、お二人のやり取りは見ていて、とても面白いものがありまして。それで思わず」
「別に笑わせるつもりでやってないんだけどな。いつも通りだよな?」
「そうやな。いつも通りのノリが最早漫才っぽいのを除けば、いつも通りやな。やから、人によっては笑っても仕方ないと思うで」
いつも通りの会話なのだが、と首を傾げる望に対し、自分たちの会話がどういうものか、理解している悠はため息交じりながらも、相方の疑問に答える。
クスクスと笑い終えたリノは二人の会話で不思議に思ったことがあったのか、小首を傾げる。
「思えば、私の様な亜人を初めてみると言っていましたよね。全国的に考えても亜人は普通にいるのに、初めてみるなんて変わってますね。名前もあまり聞き馴染みがないような感じですし。ふぁんたじー? と叫んでいたのも気になりますけど。後、ホモ・サピエンスというのも」
「あぁ、最後の方の二つは気にせんでええんです」
「そうそう。悠がたまに変なこと口走るのはいつものこと」
「じゃないねん!」
変なことを口走る前にと言わんばかりに、悠は望の頭を叩く。
因みに叩かれた望よりも、叩いた悠の手の方がダメージを受けていたりする。
ジンジン痛む手を空いている手で抑えながらも、リノへと涙目ながらも、目を向ける。
「そ、それで話が大分逸れてもうたけど、どうにかして街ん中に入れないか、考えてたんですけど」
「それなら、私が二人の分の通行料も払いましょうか? 私もついさっき『オルラリア』に到着したばかりでして」
「そうだったのか?」
「はい。で、ちょうど二人が困っていたのを目撃し、『騎士』を目指す者としては放っておけなくて」
「へぇ、『騎士』を目指してるんだ。それで鎧を着てるのか。大きな盾を背負ってるのにも納得だな」
「はい。『騎士』らしく見えますかね?」
「うん、見える見える。『騎士』に対する思いが強いんだなって、伝わってくるよ」
「ホントですか! そういってもらったのは初めてです!」
(騎士みたいに見えるって……あの鎧で? いや、確かに漫画とか、薄い本とかではよく見るで? でも、そういう物語の世界だけやろう? あの恰好で騎士って、いうのは少し無理があるんやと思うんやけど……あ、ここファンタジーな世界やったわ)
一人頭の中で自己完結した悠は何度かうんうんと頷く。
とりあえず、渡りに船なので、リノについていけば、不法入国の様なことをせずに済みそうだ。
「それならお願いしようや。入る方法がなかったのも事実やしな」
「おう、そうだな。それじゃ、お願いします。リノ騎士」
「り、リノ騎士だなんて……。まだ『騎士ギルド』に所属してないんですから、そういう風に言わなくていいですよ!」
「という割には嬉しそうな顔だ」
「そうやな」
リノは嬉しそうに顔をにやけさせているのを見て、二人は確かめ合うように目を合わせる。
「あ、それよりも『騎士ギルド』言っとりましたよね? 普通騎士って、国に仕えるもんやないんですか?」
「え? 確かに『騎士』は国に仕えるものですが、そのためには『騎士ギルド』に所属しないといけないんです。でないと『騎士』として、認められませんから」
「なるほど。えっと、他にもギルドがあったりするんでしょうか?」
「え? そうですね。商業ギルド、鍛冶ギルド、錬金術ギルドや医師ギルドなどたくさんありますけど……これは常識だと思うんですが」
「あぁ、いや。俺ら、大分田舎から来たもんですから、街とかのそういう話に疎くて」
「そう、なんですか。確かに場所によっては知らないっていうところもあるかもしれませんね。いや、でも、ギルドに依頼くらいは出したことは」
「自給自足が成り立つ場所やったもんで!」
流石にこの嘘はきついだろうか、などと悠は思いながらも、自分たちが異世界人だとバレない方がいいと思い、嘘八百を並べるしかない。
「そうなんですね。そういうところもありますよね。魔物の被害とかには合わなかったのか、不思議ですけど、戦える人がいたんでしょうね。それなら、知らなくて仕方ないかもしれません」
(誤魔化せたァー! まぁ、魔物の疑問を言われた場合は、望もおるし、大丈夫やろう。こいつ、人間離れしとるしな)
「でも、俺たちって自給自足なんてし」
「さぁ! 早く行きましょうや! 時間は有限! ギルドが開いてる時間も決まっとるんやないですか!?」
「あ、そうですね。『騎士ギルド』が24時間やってるって言っても、受付は時間も決まってるので。それでは行きましょうか」
望が余計なことを口走りかけたことに、悠は大声を上げることで誤魔化す。
リノは受付の時間があることを思い出し、街の門へと向けて歩き出す。
悠は余計なこというなよ、という感じで望を睨みつけ、望はそれにわかりました、という感じに頷き、リノのあとについていった。
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