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画廊の怪人

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そして勇気を出して最初の一歩を踏み出した玲は

もう一度ゆっくりと深呼吸をした後で、2階へと続く大きな階段を一気に駆け上がり、

一週間前にレイピアがプレゼントをしてくれた『時の砂の設計図』に従って、

一番最初のドアに書かれた秘密の数字を思い出しながら

*****

(じゃあまずは、3階に続く階段の部屋へ行ってみよう!)

と気合い充分で、ホラーゲームみたいな最初のドアを開けてすぐに、

薄暗い部屋の中へと一気にサッサと入ってみたら……

次の瞬間、バタンッ!と大きな音を立てて、

重たいドアにオートロックが掛かったが、この時に玲が見た物は、

まるで壁の様に大きなサイズの『不思議な黒い扉』だったので……!


(あー―っ!この部屋の一番奥に、
メッチャ見えにくい真っ黒なドアがあるって事はつまり……!)

この番号の部屋が大正解って事ですよね~!と心でガッツポーズを取りながら

思い切って黒いドアを一気に開けたら、案の定……!


(あっ、やっぱりココに階段があったんだー!)

やはりレイピアが教えてくれた通り、薄暗い部屋の壁に隠れていたドアの先で

3階に続く秘密の螺旋階段が現れたので、この方法で最上階へと繋がる全ての階段を

見事にトットと登りきった玲は、このままの勢いで最後の大きなドアーをゆっくりと開けた後

銀色のシェルターが一キラキラと輝く、トンデモナイ部屋の片隅へと向かい………

レイピアのアドバイスを思い出しながら、

めっちゃ高そうな壺を並べた白いキャビネットに近付いて……


(確かレイピアは、左下にボタンがあると言ったから、
じゃあ きっと……この白いボタンを押せって事だよね?)

と勇気を出して、小さなボタンを一気にカチッと押したら この直後……!

ガタン!ガタン!
ガタガタガタガターー!!
ゴゴゴゴゴゴーーー!!!


(なっ!?何これーー!!)

なんと!いきなりグルグルと回り始めた白いキャビネットと一緒に玲は、

あっと言う間に前代未聞の『不思議な隠し部屋』へと瞬間的に移動していたから!

*****

突然の出来事にビックリしすぎたヘタレの玲は、勿論この後

冷凍マグロの様にカチンコチンに固まっていたけれど………

流石に今の状況でマグロごっこをやっている余裕は全然ないので

サッサと気分を直しながら、特殊な部屋の中をぐるっと見渡してみると

今の自分が立っている場所は、まさにハリウッド映画でよく見る様な

超~ハイテクの凄い装備で囲まれた、キンキラキンの隠し部屋だったから!


(けっこう狭いスペースの部屋だけど……
でも裏を返せば、ここまで狭いと言う事はつまり、
誰もこの部屋の存在に気が付かないって事だよね?)

なる程 なる程、これなら安心して動画の撮影に専念できるじゃん!

なんて事を思いながら、まるで鏡の様にハッキリと部屋全体が見渡せる、

超~鮮明なマジックミラーの前に立った玲は、この勢いで大きな鞄のファスナーを開けて

そして早速ビデオカメラと専用の三脚を取り出した後すぐに、携帯電話の時計表示を見ていたら


(えっと今は~、夜の10時48分だから……
じゃあ あと1時間くらいで、この部屋にエスパーが来るのー??)

こうして早くも心がハイテンションになったので


(いやいや、こんなにうわついた気持ちじゃダメでしょう?
だって もしもこれがホラー映画なら、メガネの童貞だけが何故か絶対に助かって、
私みたいな非処女の浮かれた女子が必ず、開始5分で真っ先に殺されるんだから!)

と一般的なホラー映画の理論を心の中で呟きながら

いつもの落ち着きを取り戻そうとしたけれど、やはり今はそんな事よりも……


(…って言うか、そもそもエスパーって何?
いったい何をどうやったら、あんなに大きな銀色のシェルターをひらく事が出来るの?)

なんて事しか考えられない玲の瞳に映る光景は

まるで銀行の金庫みたいに、大きなハンドルが付いた厚い扉だったから


(いくらなんでも、あの扉を素手で開けるのは絶対に無理だから……
じゃあまさか、本当に念力を使って あのシェルターの扉を開けるつもりなのかなぁ)

…って感じの小学生みたいな高揚感に包まれながら、

まだ見ぬエスパーの到来をひたすら無言で待っていたのだが……

*****

しかしとても残念な事に、このあと夜中の2時をまわっても

最上階のシェルターがある部屋に、誰かが来る気配は全然なかったので


(もうかれこれ3時間以上は待ったけど
結局誰も来なかったから、もうそろそろ帰ろうかなぁ……)

なんて事を思いながら静かに椅子から立ち上がっていたのに

このあと突然!あまりにも唐突に!

…ガチャッ…

ガチャガチャガチャッ!

……ガッチャ――ン!!  

と大きな金属音を立てながら

最上階の部屋のドアーがバーーンと開いたその瞬間……!


「ウフフフフ~~……、
こんなに単純なトラップでは簡単すぎて~、
退屈しのぎ~にもなりませんでしたねぇ、あぁ残念、残念~」

なんと、いきなり、

気持ちが悪いネチネチとした声で喋る一人の男が

なぜかオペラ座の怪人みたいに

意味不明な黒い仮面を付けた状態で部屋の中へと入った直後……


「さてと~……じゃあ誰も居ないうちに、
さっさとシェルターの鍵を開けちゃいましょうかねぇ」

なんともキモい裏声で独り言を呟きながら

やたらと上機嫌な態度で突然ヘッタクソなタップダンスを踊りだし!


「じゃあ今日は久し振りに~、
このステッキを使ってみる事にしましょうか~、
だって『コレ』を使ったら~……
少しは楽しい気分になれるかもしれませんからねぇ~、
ウフフフフ~……アハハハハーー!」

もうこれは どの方向から見ても完全にヤバい態度で

謎の黒いステッキをブンブンと振り回した挙句の果てに


「最近はインゴットの価値が上がっていますから~
今回の報酬を5億もらったら~、今度はどこの国に行こうかなぁ~」

と更に大胆な事を大きな声で喋りながら

銀色のシェルターに向かってジワジワと歩いてきたけれど

そんな事よりも とにかくコイツは、過去最大規模のヤバい奴なので!


(えっと、この人、絶対にヤバい人だから
サッサと動画を撮影した後は、今夜の内に警察に通報した方がいいよね?)

なんて事を思いながらも、冷静にカメラのスイッチをオンにした玲は

勿論この後すぐに動画の撮影を始めたが……

まさに不気味を絵に書いた様な、キモい画廊の怪人が、

ステッキを片手に踊る姿を呆れた様子で見ていた玲はこの時まだ、

このエスパーが隠し持っている、トンデモナイ実力を全然わかっていなかった。
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