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彰編 百戦錬磨で冷酷非情なシンデレラのお姉さん

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そしてまさにこの瞬間……

百戦錬磨のスイッチがオンになった彰はこのまま女に近付きながら、

どこをどう見ても非力で弱くて可愛くて……

強く抱き締めたら折れてしまいそうな女に向かって開口一番、

過去最高レベルの優しい声で、何かお困りですか?可愛いお嬢さん?

と後ろから声を掛けてみたのだが

*****

この後すぐにクルッと後ろを振り向いて

あっと言う間に彰と打ち解けた小さな女は明るく元気な表情で


「金融ヤクザさんですか?
じゃあ全然大丈夫ですよ綺麗なお姉さん。
だって私はヤクザを狩るのが趣味ですからね?」

て感じの高いコミニュケーションスキルで彰を笑わせて

しかも真顔で彰の事を何度も何度も綺麗なお姉さんと呼びながら

なんと今すぐ一人でサラ金ビルに乗り込みたいと言ったので

これは流石にシャレにならないと思った彰は勿論この後

可愛い女の鞄を取り戻してやる為に、今から急いでバンブーファイナンスへ行こうとしていたのに

なんと、この後、彰の目の前に……!


「いやよ彰さん、私やっぱりこんな終わり方なんて、到底納得が出来ないわ!」

と甲高い声の黒岩高子が再び現れたので、

小さなシンデレラをビビらせない為に笑顔を作った彰はこの後

もちろん優しい態度で高子に接していたけれど

ふと気が付けば、いつの間にか小さな女は彰の元を離れていたから

この瞬間にキレた彰はガラッと豹変した怖い表情で

偉そうに腕を組んでいる高子を睨みつけながらスマホを出して、

そして この直後……!

「もしもし支店長か?黒岩交通グループの件だが、
今日中に全ての融資を白紙に戻してくれないか?あぁ、そうだ…もちろん俺の判断だ」

と璃音みたいな鶴の一声で

黒岩交通のメインバンクである都市銀行の支店長に向かって

そりゃあもう冷酷な命令を下した後すぐに

冷たい眼差しでサッサと電話を切りながら


「これが最後通告だ。今度俺に絡んできたら、
銀行融資の撤回くらいじゃ済ませないからな?
お前の父親が一代で築いた黒岩交通の取引先に
誰も逆らえない圧力を掛けて会社を潰す位の事はな?
3日もあれば簡単に出来るんだよ俺は!」

こうして本気で黒岩交通を潰す決断をしたのだが

そんな事よりもこの直後……

*****

『あの恐ろしい』龍崎璃音が突然いきなり乗り移ったかの様に

あまりにも冷酷非情な彰の言葉に本気でビビった高子は真っ青な表情で

「わ、わかったわよ。貴方の事はもう諦めるから、
だから父の会社に手を出す事はやめて下さい彰さん」

と小さな声で懇願しながら頭を下げて、

そしてこのまま逃げるような足取りで彰の元を去ったので、

これでやっと平穏を取り戻す事が出来た彰は とにかく一旦落ち着く為に

自販機でコーラを買ってベンチに座って飲みながら


(しかし女の独占欲は何度経験しても最悪だよな全く!
でも待てよ?じゃあ今の俺が追いかけているシンデレラもいつの日か、
高子みたいな嫉妬だらけのストーカー女に変わるって事なのか?
いや、あの子の場合、きっとそれはないだろうな。
なぜなら俺は、あの子のお姉さんだからな…フフフッ)

と心の中で、まだ名前も知らないあの子を思い出しながら、

つかの間の短い休憩を終えた後すぐに

気合を入れてヤクザだらけのバンブーファイナンスへと向かったのに

とにかくガラの悪いサラ金ビルに到着早々、彰がその目で見たものは


「お母さんの御位牌OK!お婆ちゃんの御位牌OK!
現金よーし、ゲーム機よ~し!アンパンよーし!」

て感じのカオスな点呼をとりながら、

なんと既に鞄を取り返していた女が母親の位牌を片手に持って

アンパンの在庫を数えているトンデモナイ光景だったから

もちろん彰は吹き出しそうになったけど、

そんな事よりも実は彰も恵と全く同じ様に、大切な両親を事故で失っていたので


(お母さんの位牌って事はつまり、この子も母親をなくしているのか?)

と僅かに一瞬、この女の事を哀れだと思ったが

やはり今はそんな事よりも、とにかくサッサとこの女を落としたいから

もう一度気合を入れ直した彰は勿論このままの勢いで

まるでアニメのヒロインみたいな可愛い女に優しく微笑みながら


(どうやってヤクザから鞄を取り戻したのかは分からないけど、
とにかくお前は本当に元気で可愛くて、しかも非力で小さくて
今まで出逢った誰よりも可憐な女だから…今すぐ食べてしまいたいよマジで……)

そんな下心を隠して彼女を食事に誘った迄は良かったが……

小さな女に連れて行かれたボロボロのパスタ屋は既に潰れていて、

しかもこの女は来週からこの店で働く為に、

今日この街に上京したばかりの星野恵である事が分かったから

上京初日で無職になった恵の事は、そりゃあもちろん可愛そうだと思ったけれど、

そうは言っても結局のところ……

所詮この女も どうせ一夜限りのアバンチュールなんだから

これで全ての条件が整った彰はこの後すぐに、意気揚々と目の前のタクシーを止めていた。
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