竜殺しの料理人~最強のおっさんは、少女と共にスローライフを送る~

おとら@ 書籍発売中

文字の大きさ
上 下
61 / 64
おっさん、異世界に慣れる

おっさん、みんなに恩返しがしたい

しおりを挟む
話が終わったので、席を立とうとすると……ハウゼン殿に呼び止められる。

「そういえば、何やら物件を探しているとか?」

「ソーマ殿、私の方からハウゼン殿に伝えたのだ。この方は三十年以上前からいるし、顔も広いからな」

「えっ?  クレアさん、ありがとうございます。はい、料理屋をしながらも自分達が住める家を探しています」

「それは新築が良いとかあるのか?」

「いえ、特にはないですね」

別に中古であっても、条件さえ整ってれば問題ない。
前の世界でも居抜き店舗もあったし、それに改築許可さえあれば好きにできる。

「おおっ! そうかそうか……ならば、恩を返すのには丁度いい」

「えっと……?」

「すまんすまん。実は俺の昔のパーティーメンバーに、飲食店を閉めて田舎に帰った男がいる。金に困っていたので、俺が店を買い取ったんだが……それを貰ってくれるか? 金は良い、お主には迷惑をかけてしまった。本来なら、俺がしっかりしてれば……」

「俺個人としては、ありがたいお話ですが……本当によろしいのしょうか?」

見てないことには何とも言えないが、願ったり叶ったりなことだ。
店を探す手間も省けるし、ギルドマスターなら信頼もある。
何よりギルドに貢献していけば、お金もきちんと支払えるはず。

「ああ、もちろんだ。では、こちらの方で手配をしておこう。その間に解体屋に行くと良い」

「ありがとうございます! それでは、解体屋に行ってみます」

話を終えた俺達は、そのまま併設している解体屋に向かう。
そこでは、ドワーフ族のガラン殿が待ち構えていた。

「きたか」

「ガラン殿、ちょうど良かった。貴方にお礼を言わせてください。あの刀のおかげで、ソラを助けることができました」

「ふん、儂はお主なら扱えると思ってくれてやっただけだ。それをどう使おうと、お主の勝手じゃ。だが……役に立ったなら何よりだ」

「はい、とても助かりました。素晴らしい出来栄えの刀かと」

「ならば儂としては言うことはない。さて、本題に入ろう」

すると、後ろにある台に目をやる。
そこにはバラバラにされた肉の塊が置いてあった。
羽の部分、足の部分、胴体の部分などに分かれている。

「あれがワイバーンの肉ですか?」

「うむ、大きさの割取れる部位は少ないが」

「いえ、あれだけあれば十分です」

「しかし、本当に食べるのか? 硬くて食えたもんじゃないが……切るのにも一苦労したわい」

「ええ、必ず美味しくしてみせます。というわけで、ガラン殿にも食べて欲しいのですが……きっと、良いものを提供できるはずです」

この方がくれた刀がなかったら、ソラを助けるのが遅れていたかもしれない。
そもそも、こんな業物を貰って何も返さないなどあり得ない。

「……ふむ、わかった。そこまでいうなら行くとしよう」

「ありがとうございます。では、とりあえずこれは持って帰りますね」

荷車を借りて、クレアさんと一緒に宿を出ると……そこにはアリスさんが待っていた。

「あれ? アリスさん?」

「あっ、ソーマさん! この度はお疲れ様でした~」

「ご心配をおかけしました。それで、どうしたのですか?」

「今、仕事終わりなんです。そしたら、ギルドマスターから頼まれまして~」

俺に見せたその手には鍵があった。

「あれ? それって……」

「例のお店の鍵ですねー。クレアさんに、これを渡すように頼まれました」

「私にか?」

「ええ、この地図と鍵を渡せばわかるって」

クレアさんが地図を受け取ると……。

「うむ、この場所ならわかるな」

「なんか、もう自由に使えるようになってるみたいですよ?」

「それはどういう……?」

「ギルドマスターってば、素直じゃないんですよー。実は、前もって用意していたみたいです。昨日から忙しくしてましたから」

「あっ、そうなんですね。では、お礼をしないと」

なるほど、昨日の時点で用意してくれたってことか。
他にもやることがあったろうに……是非、お礼をしないと。

「ふふ、喜ぶと思いますよ?」

「そうだ。料理を作る際には、アリスさんもどうですか?」

「ええ~私も良いんですか?」

「ええ、アリスさんがよろしければ」

すると、アリスさんがクレアさんを見つめる。

「クレアさん、良いですかね?」

「な、なんで私に聞くのだ!?」

「いや、何となく」

「べ、別に好きにすれば良い」

「えっと?」

「どうやら良いみたいなので、お邪魔させて頂きますね」

「はい、是非。わかったらすぐにご連絡しますね」

よし、決めた。

今回はお世話になった方々のために料理を作ろう。

そう決めた俺は、クレアさんと地図の場所に向けて歩きだすのだった。

しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~

一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。 しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。 流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。 その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。 右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。 この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。 数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。 元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。 根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね? そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。 色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。 ……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

スナイパー令嬢戦記〜お母様からもらった"ボルトアクションライフル"が普通のマスケットの倍以上の射程があるんですけど〜

シャチ
ファンタジー
タリム復興期を読んでいただくと、なんでミリアのお母さんがぶっ飛んでいるのかがわかります。 アルミナ王国とディクトシス帝国の間では、たびたび戦争が起こる。 前回の戦争ではオリーブオイルの栽培地を欲した帝国がアルミナ王国へと戦争を仕掛けた。 一時はアルミナ王国の一部地域を掌握した帝国であったが、王国側のなりふり構わぬ反撃により戦線は膠着し、一部国境線未確定地域を残して停戦した。 そして20年あまりの時が過ぎた今、皇帝マーダ・マトモアの崩御による帝国の皇位継承権争いから、手柄を欲した時の第二皇子イビリ・ターオス・ディクトシスは軍勢を率いてアルミナ王国への宣戦布告を行った。 砂糖戦争と後に呼ばれるこの戦争において、両国に恐怖を植え付けた一人の令嬢がいる。 彼女の名はミリア・タリム 子爵令嬢である彼女に戦後ついた異名は「狙撃令嬢」 542人の帝国将兵を死傷させた狙撃の天才 そして戦中は、帝国からは死神と恐れられた存在。 このお話は、ミリア・タリムとそのお付きのメイド、ルーナの戦いの記録である。 他サイトに掲載したものと同じ内容となります。

もふもふと始めるゴミ拾いの旅〜何故か最強もふもふ達がお世話されに来ちゃいます〜

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
「ゴミしか拾えん役立たずなど我が家にはふさわしくない! 勘当だ!」 授かったスキルがゴミ拾いだったがために、実家から勘当されてしまったルーク。 途方に暮れた時、声をかけてくれたのはひと足先に冒険者になって実家に仕送りしていた長兄アスターだった。 ルークはアスターのパーティで世話になりながら自分のスキルに何ができるか少しづつ理解していく。 駆け出し冒険者として少しづつ認められていくルーク。 しかしクエストの帰り、討伐対象のハンターラビットとボアが縄張り争いをしてる場面に遭遇。 毛色の違うハンターラビットに自分を重ねるルークだったが、兄アスターから引き止められてギルドに報告しに行くのだった。 翌朝死体が運び込まれ、素材が剥ぎ取られるハンターラビット。 使われなくなった肉片をかき集めてお墓を作ると、ルークはハンターラビットの魂を拾ってしまい……変身できるようになってしまった! 一方で死んだハンターラビットの帰りを待つもう一匹のハンターラビットの助けを求める声を聞いてしまったルークは、その子を助け出す為兄の言いつけを破って街から抜け出した。 その先で助け出したはいいものの、すっかり懐かれてしまう。 この日よりルークは人間とモンスターの二足の草鞋を履く生活を送ることになった。 次から次に集まるモンスターは最強種ばかり。 悪の研究所から逃げ出してきたツインヘッドベヒーモスや、捕らえられてきたところを逃げ出してきたシルバーフォックス(のちの九尾の狐)、フェニックスやら可愛い猫ちゃんまで。 ルークは新しい仲間を募り、一緒にお世話するブリーダーズのリーダーとしてお世話道を極める旅に出るのだった! <第一部:疫病編> 一章【完結】ゴミ拾いと冒険者生活:5/20〜5/24 二章【完結】ゴミ拾いともふもふ生活:5/25〜5/29 三章【完結】ゴミ拾いともふもふ融合:5/29〜5/31 四章【完結】ゴミ拾いと流行り病:6/1〜6/4 五章【完結】ゴミ拾いともふもふファミリー:6/4〜6/8 六章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(道中):6/8〜6/11 七章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(本編):6/12〜6/18

髪の色は愛の証 〜白髪少年愛される〜

あめ
ファンタジー
髪の色がとてもカラフルな世界。 そんな世界に唯一現れた白髪の少年。 その少年とは神様に転生させられた日本人だった。 その少年が“髪の色=愛の証”とされる世界で愛を知らぬ者として、可愛がられ愛される話。 ⚠第1章の主人公は、2歳なのでめっちゃ拙い発音です。滑舌死んでます。 ⚠愛されるだけではなく、ちょっと可哀想なお話もあります。

ド田舎からやってきた少年、初めての大都会で無双する~今まで遊び場にしていたダンジョンは、攻略不可能の規格外ダンジョンだったみたい〜

むらくも航
ファンタジー
ド田舎の村で育った『エアル』は、この日旅立つ。 幼少の頃、おじいちゃんから聞いた話に憧れ、大都会で立派な『探索者』になりたいと思ったからだ。 そんなエアルがこれまでにしてきたことは、たった一つ。 故郷にあるダンジョンで体を動かしてきたことだ。 自然と共に生き、魔物たちとも触れ合ってきた。 だが、エアルは知らない。 ただの“遊び場”と化していたダンジョンは、攻略不可能のSSSランクであることを。 遊び相手たちは、全て最低でもAランクオーバーの凶暴な魔物たちであることを。 これは、故郷のダンジョンで力をつけすぎた少年エアルが、大都会で無自覚に無双し、羽ばたいていく物語──。

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

処理中です...