竜殺しの料理人~最強のおっさんは、少女と共にスローライフを送る~

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おっさん、異世界に慣れる

おっさん、テンプレしない

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……なるほど。

ひとまず、焦る心配は無くなったか。

急いてはことを仕損じるともいうし、ここは冷静になれ。

まさか、あいつらも……

そして、あいつらの会話をこっそり聞いていることも。

俺ははやる気持ちを抑え込み、クレアさんの元に戻るのだった。




安全地帯から少し離れ、無事に合流する。

離れたのは俺一人なら気配も消せるし、聴覚に集中すれば遠くまで聞こえるからだ。

「どうだった?」

「ひとまず、ソラは無事です。どうやら、起きてから痛めつけないとつまらないとか……」

クレアさんに、聞いた話を簡潔に説明する。
すると……血が沸騰しそうになるが、精神で押さえ込む。
そんなことをさせてたまるものか。

「っ……」

「あっ、す、すみません」

「い、いや、無理もない。しかし、それは抑えないと相手に気づかれるぞ?」

「はい、分かってます」

「それにしても無傷なのは良かった。しかし、私がきた意味はなかったか。いや、いいことだな」

「そんなことありませんよ。クレアさんの道案内がなければ、もっと時間がかかったはずですから。何より、クレアさんがいるおかげで冷静になれます」

「そ、そうか、それで冷静なのか」

……どうやら、自分ではわからないが怖い顔をしてるっぽい。
いかんいかん、おじさんにも散々言われただろ。
怒りは何もかもを曇らせると。

「はい、これでも頑張ってます」

「うむ……それで、この先はどうする? 安全地帯にどのようにいた?」

「広い空間の真ん中辺りに、キャンプを立てて陣取っていましたね。ブライが少し離れた位置に座っていて、ソラの近くにはザザとかいう男らしき奴がいました」

「なるほど……戦うとしても、広いし魔物も来ないのであの場所が良いだろう。あとは、如何に隙をついてソラを救出するか」

「ええ、そこです。幸い、まだソラは寝ています。できれば、起きる前に終わらせたいですね」

よく見た小説などでは盾にとられてピンチになったり、相手が助けを求めるシーンなどがあった。
しかし、怖い思いは出来るだけしないに越したことはない。
テンプレなど知ったことか、そんなものはクソ喰らえだ。

「ふむ、それが一番だな。私は何を手伝えば良い? 使えるのは水の玉や、水の波や壁くらいだが……」

「ありがとうございます。それは射程はありますか?」

「そうだな……ソラに回復魔法を使う必要は無くなったし、ソーマ殿のおかげで魔力は満タンに近い。最低でも十メール以上は出せるはずだ」

「わかりました、少し考えてみます」

俺達は連携プレーをしたことがない。
こういう時は下手に小細工をすると失敗する恐れがある。
そうなると、作戦はシンプルに……そして、クレアさん自身に危険がいかないように。
クレアさんを人質にでも取られたら目を当てられない。

「あとは、あいつらの能力とかはわかりますか?」

「ああ、有名な二人だからな。ブライの方は、見た目通り物理タイプの戦士だ。その物凄い力で、大剣を振り回して敵を粉砕する。ステータスもソーマ殿と、そこまで差はないはずだ。油断していると、危ないかもしれん」

「なるほど……近接のパワータイプか。油断ですが、そこは安心してください。どんな相手だろうと、油断だけはするなと教わっているので」

そこはおじさんに叩き込まれている。
三分間という剣道の試合に置いて、一瞬の油断が勝負を決めるからな。

「ふむ、ソーマ殿なら安心か。ザザだが、ある意味であいつの方が厄介だ。風の魔法使いで、脚にまとって速さをあげたり。音や気配に敏感だし、遠距離攻撃もある」

「なるほど……決まりました、ここは単純に行きましょう。クレアさんには魔法を使ってもらいます」

「うむ、それが良いだろう。私とて足手まといにはなりたくないからな」

そして、手短に作戦を説明する。

もちろん、作戦と呼べるような内容ではないが……俺としては一瞬の隙さえあれば良い。

ソラ……お前が眼を覚ます前に終わらせるから安心すると良い。


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