竜殺しの料理人~最強のおっさんは、少女と共にスローライフを送る~

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おっさん、異世界に慣れる

おっさん、ワイバーンを狩る

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 さて、刀を構えたが……ここからどうするかが問題だ。

 相手は飛んでおり、地上からでは攻撃は届かない。

 ジャンプすれば届くかもしれないが……隙がでかく、カウンターを食らう恐れがある。

 俺自身がダメージを負うことは構わないが、その隙に後ろの二人を狙われてはいけない。

「そうなると……」

「ソーマ殿! くるぞっ! そいつが風の竜、または緑竜と呼ばれる所以の技が!」

「ほう?」

 ワイバーンを見ると、なにやらお腹が膨らみ……体と同じ緑色の玉が吐き出される!
 その大きさはバスケットボール並みだ!

「グァァ!」

「よっと……中々速いな。そして、威力も高いと」

 俺が避けた場所には、小さな穴が出来ていた。

「気をつけろ! 次々くるぞ!」

「ええっ!」

 クレアさんのいう通り、次々と風の玉が吐き出される!
 俺は左右にステップをすることで、それを躱していく。

「お父さん!」

「問題ない! クレアさん! こいつのコレは無限ですか!?」

「いや、そんなことはない! ただ、まだ余力はあると思って良い! 普通なら弓使いや魔法使いで、倒したり怯ませたりするのがセオリーなのだが……すまん、私もこんな格好でなければ。せめて、槍だけでも持って来れば良かった」


「いえ、お気になさらずに。大丈夫です、すぐに片付けます」

 おそらく、倒すこと自体は問題ない。
 あとは、ソラのためにもいかに早く倒すかだ。
 弱い者から狙ったり、空から風の玉を打ってくるということは、頭は悪くなさそう。
 そうなると……挑発するしかないか。

「グァァ!」

「よっと……それでいくか」

 俺は鞘から手を離し、両手をぶらんとさせて棒立ちする。
 更には目を閉じ、自分を無防備な状態にする。

「ソーマ殿!?」

「平気です……よっと」

 目を閉じてても、風の玉は音でわかる。
 なので、避けるのは容易い。

「グカァァァァァ!!」

「くっ!?」

「ひぃ!?」

「どうした? 言っておくが、いくら放っても当たることはないぞ?」

「グ——シャャャャ!!」

 ワイバーンの顔つきが変わり、目が大きく見開く。
 そして、俺を食らおうと急降下してくる。
 どうやら、理性を無くしたらしい。
 俺は脱力した状態から、素早く居合の構えを取る。

「所詮は獣か——シッ!」

「グカ? ……カ、カ……」

 迫り来る首にカウンターを決める。
 すると、頭と胴体が別れ……地に伏せた。
 ガラン殿の刀が良いのか、血一つ付いていない。

「ふぅ、これでよし」

「お父さん! すごい!」

「まあ、上手くいって良かった」

 刀を仕舞い、飛びついてくるソラを抱き上げる。

 「さて、ただ殺してしまいましたね。さすがに、処理をしないとまずいですよね?」

「ああ、そうだな。待て、首だけならどうにかなる。火の魔石があったな……これでよしと」

 クレアさんが荷物から魔石を取り出し、首の部分をバーナーの炎のように炙ってくれた。
 これなら、しばらく血が漏れ出すこともない。
 何より、保存方法としても悪くない。

「ありがとうございます」

「いや、これくらいはな。戦いを全て任してしまったし」

「いえいえ、せっかくの可愛いワンピースが汚れたらいけませんから」  

 ひとまずソラを下ろし、ワイバーンを担ぐ。
 流石に大きすぎて、引きずるような形になってしまう。

「か、可愛い……女の子扱い……」

「クレアお姉ちゃん? お顔真っ赤だよ?」

「き、気のせいだっ! と、とにかく……一度、都市に戻ろう。このことは、ギルドマスターと領主に報告せねばなるまい」

「わかりました。それでは、戻るとしましょう。ソラ、また来くるか?」

「うんっ! 楽しかったっ!」

 危険な目にはあったが、どうやら楽しんでくれたらしい。

 まあ、この世界に完全に安全な場所などない。

 この子のために俺ができることは、それを排除することくらいだな。

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