上 下
46 / 64
おっさん、異世界に慣れる

閑話

しおりを挟む
お父さん、今頃頑張ってるかなー。

ミレーユさんに編み物を教えてもらいながら、そんなことを考えます。

「ねえ、ミレーユさん」

「何かしら?」

ミレーユさん自身も編み物をしながら、私の問いに答えてくれる。
人族の人って怖いイメージだったけど……狭い世界に居たんだなって思います。

「お父さん、受かるかな?」

「ふふ、問題ないでしょうね。ソーマさんの実力と人柄なら」

「実力はなんとなくわかるんですけど、受かるのに人柄がいるんですか?」

「ええ、そうよ。ランクが上になるとお偉い人からの依頼とか、護衛なんかもあるから。人柄がいいと依頼主も安心するし、依頼を頼むギルドも安心だから」

「そうなんですね! じゃあ、お父さんなら安心です!」

お父さん、優しいもん! 
見ず知らずのわたしを引き取ってくれたし、クレアさん達にも優しい。
散歩してると、都市の人にお父さんのことを褒められたりするし。
これも、お父さんがしっかり仕事をしてるからだって聞いた。
だから、その娘であるわたしのことも良い子だって。

「ええ、そうね」

「じゃあ、強い冒険者さん達はみんな良い人なんですね」

「……そうだと良かったんだけど」

「ミレーユさん?」

「悲しいけれど、そうじゃない人がたまにいるのよ。その圧倒的強さでランクを上げざるをえない人とか、そもそも魔物狩りや迷宮攻略を中心にしてる人とか。単純に戦いや強さを求めたりする人が……もちろん、悪いことではないんだけど。そういった人は、人柄が良くない印象だわ」

「そ、そうなんですね……」

そ、そっかぁ……冒険者って言っても良い人ばかりじゃないんだ。
わたしの知ってる冒険者さんは、良い人たちが多いみたいです。

「あっ、別に脅すわけじゃないからね? ただ、良い人ばかりじゃないから気をつけてって話よ」

「はい、気をつけます!」

「良い返事ね。まあ、ソーマさんがいるから平気だとは思うけど……ところで、それは言わないの?」

「な、内緒です!」

それとは、わたしがお父さんに編んでいるマフラーというものだ。
寒暖の差があるので、日が暮れると使う人が多いらしい。
わたしはそれを、お父さんにプレゼントしようと思っていた。

「ふふ、きっと喜ぶわよ」

「そうだと良いんですけど……お父さん、体丈夫だからいらないかも」

「そんなことないわ。お父さんにあげたいっていう、その気持ちが大事なのよ」

「……が、頑張る!」

その後もわたしは、ミレーユさんに教わりながら編み物をするのでした。

お父さんが喜んでくれる顔を想像しながら……。
 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約破棄されて異世界トリップしたけど猫に囲まれてスローライフ満喫しています

葉柚
ファンタジー
婚約者の二股により婚約破棄をされた33才の真由は、突如異世界に飛ばされた。 そこはど田舎だった。 住む家と土地と可愛い3匹の猫をもらった真由は、猫たちに囲まれてストレスフリーなスローライフ生活を送る日常を送ることになった。 レコンティーニ王国は猫に優しい国です。 小説家になろう様にも掲載してます。

アラフォー料理人が始める異世界スローライフ

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
ある日突然、異世界転移してしまった料理人のタツマ。 わけもわからないまま、異世界で生活を送り……次第に自分のやりたいこと、したかったことを思い出す。 それは料理を通して皆を笑顔にすること、自分がしてもらったように貧しい子達にお腹いっぱいになって貰うことだった。 男は異世界にて、フェンリルや仲間たちと共に穏やかなに過ごしていく。 いずれ、最強の料理人と呼ばれるその日まで。

【完結】転生少女は異世界でお店を始めたい

梅丸
ファンタジー
せっかく40代目前にして夢だった喫茶店オープンに漕ぎ着けたと言うのに事故に遭い呆気なく命を落としてしまった私。女神様が管理する異世界に転生させてもらい夢を実現するために奮闘するのだが、この世界には無いものが多すぎる! 創造魔法と言う女神様から授かった恩寵と前世の料理レシピを駆使して色々作りながら頑張る私だった。

異世界転移したけど、果物食い続けてたら無敵になってた

甘党羊
ファンタジー
唐突に異世界に飛ばされてしまった主人公。 降り立った場所は周囲に生物の居ない不思議な森の中、訳がわからない状況で自身の能力などを確認していく。 森の中で引きこもりながら自身の持っていた能力と、周囲の環境を上手く利用してどんどん成長していく。 その中で試した能力により出会った最愛のわんこと共に、周囲に他の人間が居ない自分の住みやすい地を求めてボヤきながら異世界を旅していく物語。 協力関係となった者とバカをやったり、敵には情け容赦なく立ち回ったり、飯や甘い物に並々ならぬ情熱を見せたりしながら、ゆっくり進んでいきます。

(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅

あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり? 異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました! 完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。

少女は自重を知らない~私、普通ですよね?

チャチャ
ファンタジー
山部 美里 40歳 独身。 趣味は、料理、洗濯、食べ歩き、ラノベを読む事。 ある日、仕事帰りにコンビニ強盗と鉢合わせになり、強盗犯に殺されてしまう。 気づいたら異世界に転生してました! ラノベ好きな美里は、異世界に来たことを喜び、そして自重を知らない美里はいろいろな人を巻き込みながら楽しく過ごす! 自重知らずの彼女はどこへ行く?

異世界でのんびり暮らしてみることにしました

松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

処理中です...