竜殺しの料理人~最強のおっさんは、少女と共にスローライフを送る~

おとら@ 書籍発売中

文字の大きさ
上 下
21 / 64
おっさん、異世界生活を始める

おっさん、絡まれる?

しおりを挟む
 無事に冒険者登録も終えたが、まだクレアさんは戻っていない。

 なので、ついでに聞いてみる。

「すみません」

「はい、なんでしょう?」

「初めに受けた方が良い依頼ってありますか?」

「そうですね……まずは雑用系とかですね」

「わかりました。それでは、何か依頼表を見てきますね」

「こちらから斡旋もできますが……」

「ありがとうございます。とりあえずは、自分で確認してからにします」

 流石に異世界に来たから、不躾に色々と聞いてきてしまったが……。
 個人的に、なんでもかんでも聞くのは違う。
 まずは自分で調べたり、実行や確認して、それでもわからなかったら誰かに頼るものだ。

「わかりました。それでは、待ちしてますね」

「はい、色々とありがとうございました」

 ひとまず挨拶をして、右側にある掲示板を眺めと……。
 そこには受付に近い左奥から順に、ランク別に紙が貼ってある。
 もちろん俺は、入り口付近の一番下のランクを眺めることになる。

「まずは近隣の住民と接していかないとかな? あとは、地理関係も知っておかないと」

 冒険者をやるにしても、飲食店をやるにしても顔を売る行為は大事だ。
 特に俺みたいな見た目と、よそから来た者には。
 コツコツと仕事をして、少しずつ人柄を知ってもらわないと。
 そうしないと、いざ店をやるときに困る。

「そうなると街の清掃、家の片付け、急募薬草取り……この辺りが良いか」

 ひとまず、それら3枚の紙を剥がす。
 あとは、これを受理して貰えば良いってことだ。

「……ん? なんだ?」

 視線を感じたので、そちらを見ると……。

「ププッ……あのおっさん、清掃とか片付けだってよ」

「ギルドマスターの部屋に呼ばれるから、どんな奴が来たのかと思えば……」

「なんてことない、ただの新人のおっさんか」

 ……ああ、そういうことか。
 まあ、仕方ない。
 前の世界でも、三十五歳はおっさんだし。
 すると、何やら若い男性が近づいてくる。

「おい、おっさん」

「うん?  俺のことかな?」

 確かに目の前の男性は、俺より随分と若い……多分二十五歳前後。
 身長175、体重は80キロってところか。
   ゴツイ体に、精悍な顔つきをしている。
   ただ、纏ってる空気感はあまり良くない。
   少しやさぐれている感じだ。
 
「ああ、そうだよ。なに、ジロジロ見てんだよ?」

「いや、すまない」

「ちっ、良い歳こいて冒険者か?  そんな甘いもんじゃないぜ?」

「忠告感謝するよ。それじゃ、俺は依頼を受けるので」

 これ以上目立つのは良くないと思い、俺が動こうとすると……その男に肩を掴まれる。

「おい、待てよ」

「うん? 何か用かな?」

 引っ張られるので、少し力を入れて立ち止まる。
 当然……俺の身体が動くことはない。

「おっ!? ……このおっさん」

「それじゃ」

 そして、急激に力を抜けば……彼が尻餅をつく。

「ま、待て……とっ!?」

「おいおい! ダイン、何やってんだよ?」

「絡んだ癖にダセー」

「悪いね、急いでるもので」

 彼が周りの冒険者達に野次を飛ばされているのを尻目に、俺は先ほどの受付に向かう。

「アリスさん、依頼をお願いします」

「この方……今の攻防だけでわかりますね」

 俺が話しかけるが、どこか上の空といった感じだ。
 多分だけど、さっきのことについて考えているのかも。

「アリスさん?」

「あっ、ごめんなさい!」

「すみません、早速問題を起こしそうになって……」

「いえいえ、あれくらいは日常茶飯事なので。では、依頼を確認します……うんうん、良いですね。ちなみに、都市のことや人々を知るためですか?」

「ええ、そうです。まずは、そこから始めようかと思っています」

「ふふ、良い心がけですね」

 そんな会話をしつつも、慣れた手つきで書類にハンコやサインを書いていく。

「はい……これで受理されました。あとは、その紙を持って指定の場所にいけば良いです。今日はもう夜なので、明日からよろしくお願いします」

「わかりました。それでは、明日から頑張ります」

 冒険者か……年甲斐もなく、楽しみになってきたな。
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

目立ちたくない召喚勇者の、スローライフな(こっそり)恩返し

gari
ファンタジー
 突然、異世界の村に転移したカズキは、村長父娘に保護された。  知らない間に脳内に寄生していた自称大魔法使いから、自分が召喚勇者であることを知るが、庶民の彼は勇者として生きるつもりはない。  正体がバレないようギルドには登録せず一般人としてひっそり生活を始めたら、固有スキル『蚊奪取』で得た規格外の能力と(この世界の)常識に疎い行動で逆に目立ったり、村長の娘と徐々に親しくなったり。  過疎化に悩む村の窮状を知り、恩返しのために温泉を開発すると見事大当たり! でも、その弊害で恩人父娘が窮地に陥ってしまう。  一方、とある国では、召喚した勇者(カズキ)の捜索が密かに行われていた。  父娘と村を守るため、武闘大会に出場しよう!  地域限定土産の開発や冒険者ギルドの誘致等々、召喚勇者の村おこしは、従魔や息子(?)や役人や騎士や冒険者も加わり順調に進んでいたが……  ついに、居場所が特定されて大ピンチ!!  どうする? どうなる? 召喚勇者。  ※ 基本は主人公視点。時折、第三者視点が入ります。  

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

悪役令嬢に転生したので、ゲームを無視して自由に生きる。私にしか使えない植物を操る魔法で、食べ物の心配は無いのでスローライフを満喫します。

向原 行人
ファンタジー
死にかけた拍子に前世の記憶が蘇り……どハマりしていた恋愛ゲーム『ときめきメイト』の世界に居ると気付く。 それだけならまだしも、私の名前がルーシーって、思いっきり悪役令嬢じゃない! しかもルーシーは魔法学園卒業後に、誰とも結ばれる事なく、辺境に飛ばされて孤独な上に苦労する事が分かっている。 ……あ、だったら、辺境に飛ばされた後、苦労せずに生きていけるスキルを学園に居る内に習得しておけば良いじゃない。 魔法学園で起こる恋愛イベントを全て無視して、生きていく為のスキルを習得して……と思ったら、いきなりゲームに無かった魔法が使えるようになってしまった。 木から木へと瞬間移動出来るようになったので、学園に通いながら、辺境に飛ばされた後のスローライフの練習をしていたんだけど……自由なスローライフが楽し過ぎるっ! ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

もふもふと始めるゴミ拾いの旅〜何故か最強もふもふ達がお世話されに来ちゃいます〜

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
「ゴミしか拾えん役立たずなど我が家にはふさわしくない! 勘当だ!」 授かったスキルがゴミ拾いだったがために、実家から勘当されてしまったルーク。 途方に暮れた時、声をかけてくれたのはひと足先に冒険者になって実家に仕送りしていた長兄アスターだった。 ルークはアスターのパーティで世話になりながら自分のスキルに何ができるか少しづつ理解していく。 駆け出し冒険者として少しづつ認められていくルーク。 しかしクエストの帰り、討伐対象のハンターラビットとボアが縄張り争いをしてる場面に遭遇。 毛色の違うハンターラビットに自分を重ねるルークだったが、兄アスターから引き止められてギルドに報告しに行くのだった。 翌朝死体が運び込まれ、素材が剥ぎ取られるハンターラビット。 使われなくなった肉片をかき集めてお墓を作ると、ルークはハンターラビットの魂を拾ってしまい……変身できるようになってしまった! 一方で死んだハンターラビットの帰りを待つもう一匹のハンターラビットの助けを求める声を聞いてしまったルークは、その子を助け出す為兄の言いつけを破って街から抜け出した。 その先で助け出したはいいものの、すっかり懐かれてしまう。 この日よりルークは人間とモンスターの二足の草鞋を履く生活を送ることになった。 次から次に集まるモンスターは最強種ばかり。 悪の研究所から逃げ出してきたツインヘッドベヒーモスや、捕らえられてきたところを逃げ出してきたシルバーフォックス(のちの九尾の狐)、フェニックスやら可愛い猫ちゃんまで。 ルークは新しい仲間を募り、一緒にお世話するブリーダーズのリーダーとしてお世話道を極める旅に出るのだった! <第一部:疫病編> 一章【完結】ゴミ拾いと冒険者生活:5/20〜5/24 二章【完結】ゴミ拾いともふもふ生活:5/25〜5/29 三章【完結】ゴミ拾いともふもふ融合:5/29〜5/31 四章【完結】ゴミ拾いと流行り病:6/1〜6/4 五章【完結】ゴミ拾いともふもふファミリー:6/4〜6/8 六章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(道中):6/8〜6/11 七章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(本編):6/12〜6/18

狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~

一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。 しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。 流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。 その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。 右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。 この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。 数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。 元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。 根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね? そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。 色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。 ……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!

処理中です...