竜殺しの料理人~最強のおっさんは、少女と共にスローライフを送る~

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おっさん、異世界生活を始める

おっさん、冒険者になる

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 その後、ギルド内に戻ると……周りから視線を浴びる。

「ん? なんだ?」

「な、なにかな?」

 俺がクレアさん達に視線を向けると……。

「はぁ、気にしないで良い」

「ええ、そうですね。多分、ギルドの奥に入ったから気になってるんだと思います。あそこに入るイコール、ギルドマスターに会うということですから」

「奥に行けることなど、ほとんどない。本来なら、B級以上でないとな。それに、ソーマ殿は顔が知られてないから気になるのだろう」

「あっ、なるほど」

 色々な意味で、物珍しいってことか。
 あんまり目立ちたくはないが、こればっかりは仕方ない。

「お、お父さん……」

「ん? ……ありゃ、眠くなっちゃったか」

「う、うん……」

 ソラの頭がゆらゆら揺れている。
 まあ、こんなところに来るのは初めてだし疲れるわな。
 俺自身も、ステータス効果がなければどうだったか。

「えっと、どうしたら良いですかね?  この後の予定とか……」

「もうすぐ日が暮れる。なので、ギルド登録したら宿に案内する予定だ」

「まだ時間はかかりますから、私が預かりますね。二階には座るスペースがあるので、そちらで待ってます」

「ミレーユさん、すみません」

「いえいえ、これくらい良いですよ。ソラちゃん、行こうか?」

「ん……」

 ミレーユさんに手を引かれ、ソラが二階へと上がっていく。
 ……やはり、女性が引き取った方が良いのだろうか?
 八歳ということは、これから思春期に入っていく。
 いや、責任は取るつもりではあるが……悩ましいところだ。

「……ーマ殿……ソーマ殿!」

「あっ……すみません、少しぼーっとしてました」

「いや、構わん。お主も疲れてるだろうし。ここではあれなので、端の方で待ってるとしよう」

「ええ、そうですね」

 その後、端っこの方に行き、呼ばれるのを待つことにする。

「そういえば、さっきはどうしたのだ?」

「いえ、ソラのことを考えてました。正直言って、独り身が長かったので。これから、男の俺が育てるにはどうしたら良いかと」

「むっ? ……そうなのか?」

「ええ。お恥ずかしい話、十年くらい女性とお付き合いしてないですね」

「ほ、ほう? ……私よりはマシだと思うが」

「はい?」

 すると、クレアさんは何やらモジモジしている。

「……笑わないでくれよ?」

「ええ、約束します」

 そして、俺の耳元に近づき……。

「実は、男性とお付き合いしたことがないのだ……良い歳して恥ずかしい話だが」

「そうなんですね。別に恥ずかしいことじゃありませんよ」

 この世界の基準は知らないが、二十二歳なんかまだまだ若い。
 最近の若者も恋愛離れしているし、珍しいことじゃないし。

「ほ、ほんとか? 」

「ええ、これから良い人が現れますよ」

 うんうん、こんな美人さんが独り身では勿体無い。
 それに意外と面倒見も良いし、良い母になりそうだ。

「う、うむ、そうかもしれないな」

「ええ、きっと」

「ふふ、楽しみにしてよう」

 そう言って微笑む姿は、とても美しい。
 こんな女性に惚れられる男性は幸せ者だな。
 そして、そのタイミングで……。

「あっ、呼ばれましたね」

「では、行ってくると良い。悪いが、私は一度出る。宿に行って、部屋を空いてるか確認してくるのでな」

「すみません、俺達の分ですよね」

「気にするでない。それくらいはさせてくれないと割に合わない」

 そう言い、颯爽と歩いていく。
 ふむ、カッコいい女性でもあるな。
 それを見送り、俺は受付に行く。
 すると、いくつかあるうちの一つから手招きをされる。

「こんにちは、ソーマさん」
 
「こんにちは」

 そこにいたのは、童顔で可愛らしい感じの女性だった。
 茶色の髪をサイドテールにして、背筋を正して座っている。

「私、受付のアリスっていいます。以後、ソーマさんの担当となりますのでよろしくお願いしますね」

「えっと……? 担当とかあるんですか?」

「本当はないんですけど、今回はギルドマスターに頼まれたので。私、こう見えて優秀なんですよ?」

 そう言い、ウインクをしてくる。
 なるほど、中々愉快な女性らしい。

「わかりました。それでは、以後お願いします」

「固いですよ。でも、不真面目よりは良いですね。それでは、冒険者の説明をしていきます」

 そして、簡単な説明を受ける
 冒険者ギルドとは、国とは別の組織である。
 よほどのことがない限りは、国には干渉しないし、されない。
 だが、それぞれの国で、関係性は多少は異なるとのこと。 
 ちなみにアシュタルト王国とは、持ちつ持たれつの良好な関係を築いているらしい。

 次にランクだ。 
 上から順に、SS,S,A,B,C,D,E,F,G,Hの10段階。
 H~Gがルーキークラス。
 F~Eがブロンズクラス。 
 D~Cがシルバークラス。
 B~Aがゴールドクラス。
 Sがマスタークラス。
 SSがレジェンドクラス。
 このように、呼ばれるとのこと。

 ちなみに、シルバーになれば一人前と言われるらしい。
 SSは形式上あるだけだそう。
   冒険者ギルドを作ったと言われる、勇者ワタルのみ。

「自分が受けられる依頼は同じランクか、その上下のみとなります。同じランクならポイントが二、上なら三、下なら一がもらえます。そして、ポイントが十溜まったら試験を受けることができます」

「なるほど」

 そうすれば、上のランクが下のランクの仕事を奪わないってことか。
 下の方も、早く上がりたいなら方法はあると。

「ただし、依頼を三回失敗したら降格になります。一番下なら……冒険者自体を剥奪です。あとは大きな犯罪などもした場合も、剥奪となりますのでお気をつけてくださいね」

「大きな犯罪ですか?」

「別に大したことじゃないですよ。盗みや性犯罪、殺人などをしなければ平気かと。冒険者なので、多少の諍いは仕方ありませんから」

「それなら平気そうです」

 どうやら、前の世界と似たような感じか。
 人としていけないラインを超えなければ良いと。

「以上ですが、質問はございますか?」

「いえ、ひとまず大丈夫です。色々とありがとうございました」

「いえいえ。では手続きをするので、血を貰ってもよろしいですか?」

「えっと、血が必要なのですか?」

「ええ、そうですね。ご存知ないですか?」

 どうやら常識らしい。
    やっぱり、設定しておいて良かった。
  
「すみません、田舎者でして」

「いえいえ。大丈夫ですよ。冒険者カードという物があります。それを、他人が使用できないように、自分の血の情報を入れるのです。他の人が持っても、何も映りません。ただのカードです。そして、身分証にもなります。さらに、倒した魔物が記録されます」

 なるほど!と思った。
 凄い便利なカードだ。
 それなら、不正もできないし。
   
「ご丁寧に、ありがとうございます。では、どうすれば?」

「手を出してもらっていいですか?すぐ、終わりますよー」

 俺は、大人しく手を出す。
 すると、その下にカードを置かれる。
 大きさは、クレジットカードより少し大きいくらいか。
 そして針で刺されると、血が垂れて……カードに触れると光る!

「はい、これで完成です。これから、よろしくお願いします」

「え?もう終わり……?いえ、こちらこそ、よろしくお願いします」

 俺はカードを眺める。

 そこには、名前、年齢、種族とHという文字が刻まれていた。
   
 これで正式に、俺は冒険者になれたようだ。

 よし! ソラを養うためと、店を出すために頑張るとするか!
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