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おっさん、異世界転移する
おっさん、魔法を使うが
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その後、気を取り直して……ちなみに、ソラは頭を撫でられてうっとりしている。
……なんだこれ? 可愛いのだが?
もしや、これが父性というものなのか?
「コホン……では、今日の夕飯はイノブタを使うとしよう」
「わかりました。それでは、俺が料理をしますね」
「しかし……」
「いえいえ、慣れているので」
俺が持っていた店は、山の近くの店でジビエ料理もやっていた。
猟師さんが狩った獣などを、自分で捌いたりもしていたし。
それどころか、たまに狩りに同行したり。
だからこそ、生き物を殺すことにそこまでの忌避感はない。
無論、良いことというわけではないが……この世界では助かりそうだ。
「私もクレアも、料理に関してはからっきしですからね……女性失格です」
「かたじけない……」
「そんなこそないですよ。別に料理ができなくても、素敵な女性はたくさんいますから」
「そ、そうか……とにかく、まずは水で洗い流す必要があるな」
「うーん、さっきの泉に戻れば良いか?」
「……魔法を使えば良いのでは?」
「へっ?」
「……もしかして、異世界には魔法がない?」
そうだった……異世界から来たことは説明したけど、世界観の説明はしてなかった。
というか、まだお互いにほとんど知らない。
「はい、魔法がない世界でした」
「そ、そうか……考えられんな。だが、ソーマ殿にも使えるはずだ。きちんとした魔法はともかく、生活魔法くらいなら今すぐにでも。あれは、獣人族以外なら使えるはずだ」
「ほ、ほんとですか!?」
「あ、ああ」
アラフォーおっさんの俺だが、やはり魔法という言葉にはテンションが上がる。
男なら誰もが、一度は使いたいと思うだろう。
それこそ、中二病的なセリフとか……包帯の巻き方は忘れてしまったがなとか。
「お、教えて頂くことは可能でしょうか?」
「ふふ、まるで子供みたいだな。ああ、私でよければ教えよう」
「クレア、私が……」
「いや、私が教える。では、手を出してくれるか?」
俺としてはどちらでも構わないが、ひとまず言われた通りに手を差し出す。
すると、俺の手にクレアさんの手が触れ……何か、暖かいものが流れてくる。
「これは……」
「それが魔力だ。私の魔力を今、ソーマ殿に送っている。この方法は、魔法が苦手な者にわかりやすく伝えるために編み出された技だ」
「なるほど……確かに、何かがあるのはわかります」
「その感覚のままに……水を流れるのを想像して放つと良い。もちろん、唱えても良い」
「わかりました……水よ」
その暖かいモノを意識しつつ、俺が唱えると……掌からホースのように水がチョロチョロと流れる。
「おおっ! 水が出た!」
「よし、成功したな。これが魔法だ。魔法には六大属性があり、火、水、風、地、闇、光となる。光と闇は選ばれた者しか使えない。基本的には、その他の四属性が一般的だと思って良い」
「なるほど」
「攻撃魔法のようなものは、才能と訓練が必要だ。割と、使えるものは限られている。私とミレーユは、そこそこ使えはするがな」
「その才能っていうのは、どうやってわかりますか?」
もしかして、俺にも才能があったり……。
「うーむ……あくまで主観だが、ソーマ殿に魔法の才能は無いと思う」
「な、なぜですか?」
「うーむ、魔力に対して威力が低すぎる。それについても、街に着けば説明しよう」
「わかりました……」
ここまで言うなら、きっとそうなのだろう。
さようなら、俺の中二病よ……。
「ま、まあ、ソーマ殿は物理で殴った方が早いから平気だろう」
「慰めてくれてありがとうございます……」
「そ、それより、さっきの泉の方が気になるな」
「綺麗な泉でしたよ。それこそ、身体を洗えそうなくらいです」
「なに? ……それは入りたいところだ」
「では、三人で入って来て良いですよ。水さえ出せるなら、俺一人で処理できますから」
「むっ? しかし、料理ばかりか処理まで任せるのは……」
短い会話しかしてないが、やはり律儀というか真面目な性格の方のようだ。
こういう方には、好感が持てる。
「その代わり、この子を洗ってあげてほしいのですが……なにせ、俺がやるのもアレなので」
「ふえっ?」
ソラは、多分十歳前後だ。
俺は間違ってもロリコンではないので、体を洗うことに特に何も思わない。
ただ、ソラは気にするだろう。
できるなら、女性の方にやって貰った方がいい。
「なるほど、それは言えてるな」
「クレア、ここは適材適所です。ソーマさんにお任せしても良いのではありませんか? その代わり、街に着いたらお礼をしましょう」
「うむ、それなら良いか……ソラといったな?」
「ひゃ、ひゃい!」
すると、クレアさんが膝を曲げてソラの目線に合わせる。
その姿勢に、俺の中での好感度が上がる。
「すまないが、我々と一緒に水浴びをしてくれないだろうか?」
「え、えっと……」
「ソラ、大丈夫だ。この人達は平気そうだし、何かあってもすぐに駆けつける」
「う、うん……よろしくお願いします」
「うむ、決まりだな。では、早速行くとしよう」
そして、三人が森の中に入っていく。
この方々に会えて良かったな。
ソラに関しては責任持っているが、俺に依存だけはしてはダメだし。
人は色々な人と関わって、成長していくと思うから。
……なんだこれ? 可愛いのだが?
もしや、これが父性というものなのか?
「コホン……では、今日の夕飯はイノブタを使うとしよう」
「わかりました。それでは、俺が料理をしますね」
「しかし……」
「いえいえ、慣れているので」
俺が持っていた店は、山の近くの店でジビエ料理もやっていた。
猟師さんが狩った獣などを、自分で捌いたりもしていたし。
それどころか、たまに狩りに同行したり。
だからこそ、生き物を殺すことにそこまでの忌避感はない。
無論、良いことというわけではないが……この世界では助かりそうだ。
「私もクレアも、料理に関してはからっきしですからね……女性失格です」
「かたじけない……」
「そんなこそないですよ。別に料理ができなくても、素敵な女性はたくさんいますから」
「そ、そうか……とにかく、まずは水で洗い流す必要があるな」
「うーん、さっきの泉に戻れば良いか?」
「……魔法を使えば良いのでは?」
「へっ?」
「……もしかして、異世界には魔法がない?」
そうだった……異世界から来たことは説明したけど、世界観の説明はしてなかった。
というか、まだお互いにほとんど知らない。
「はい、魔法がない世界でした」
「そ、そうか……考えられんな。だが、ソーマ殿にも使えるはずだ。きちんとした魔法はともかく、生活魔法くらいなら今すぐにでも。あれは、獣人族以外なら使えるはずだ」
「ほ、ほんとですか!?」
「あ、ああ」
アラフォーおっさんの俺だが、やはり魔法という言葉にはテンションが上がる。
男なら誰もが、一度は使いたいと思うだろう。
それこそ、中二病的なセリフとか……包帯の巻き方は忘れてしまったがなとか。
「お、教えて頂くことは可能でしょうか?」
「ふふ、まるで子供みたいだな。ああ、私でよければ教えよう」
「クレア、私が……」
「いや、私が教える。では、手を出してくれるか?」
俺としてはどちらでも構わないが、ひとまず言われた通りに手を差し出す。
すると、俺の手にクレアさんの手が触れ……何か、暖かいものが流れてくる。
「これは……」
「それが魔力だ。私の魔力を今、ソーマ殿に送っている。この方法は、魔法が苦手な者にわかりやすく伝えるために編み出された技だ」
「なるほど……確かに、何かがあるのはわかります」
「その感覚のままに……水を流れるのを想像して放つと良い。もちろん、唱えても良い」
「わかりました……水よ」
その暖かいモノを意識しつつ、俺が唱えると……掌からホースのように水がチョロチョロと流れる。
「おおっ! 水が出た!」
「よし、成功したな。これが魔法だ。魔法には六大属性があり、火、水、風、地、闇、光となる。光と闇は選ばれた者しか使えない。基本的には、その他の四属性が一般的だと思って良い」
「なるほど」
「攻撃魔法のようなものは、才能と訓練が必要だ。割と、使えるものは限られている。私とミレーユは、そこそこ使えはするがな」
「その才能っていうのは、どうやってわかりますか?」
もしかして、俺にも才能があったり……。
「うーむ……あくまで主観だが、ソーマ殿に魔法の才能は無いと思う」
「な、なぜですか?」
「うーむ、魔力に対して威力が低すぎる。それについても、街に着けば説明しよう」
「わかりました……」
ここまで言うなら、きっとそうなのだろう。
さようなら、俺の中二病よ……。
「ま、まあ、ソーマ殿は物理で殴った方が早いから平気だろう」
「慰めてくれてありがとうございます……」
「そ、それより、さっきの泉の方が気になるな」
「綺麗な泉でしたよ。それこそ、身体を洗えそうなくらいです」
「なに? ……それは入りたいところだ」
「では、三人で入って来て良いですよ。水さえ出せるなら、俺一人で処理できますから」
「むっ? しかし、料理ばかりか処理まで任せるのは……」
短い会話しかしてないが、やはり律儀というか真面目な性格の方のようだ。
こういう方には、好感が持てる。
「その代わり、この子を洗ってあげてほしいのですが……なにせ、俺がやるのもアレなので」
「ふえっ?」
ソラは、多分十歳前後だ。
俺は間違ってもロリコンではないので、体を洗うことに特に何も思わない。
ただ、ソラは気にするだろう。
できるなら、女性の方にやって貰った方がいい。
「なるほど、それは言えてるな」
「クレア、ここは適材適所です。ソーマさんにお任せしても良いのではありませんか? その代わり、街に着いたらお礼をしましょう」
「うむ、それなら良いか……ソラといったな?」
「ひゃ、ひゃい!」
すると、クレアさんが膝を曲げてソラの目線に合わせる。
その姿勢に、俺の中での好感度が上がる。
「すまないが、我々と一緒に水浴びをしてくれないだろうか?」
「え、えっと……」
「ソラ、大丈夫だ。この人達は平気そうだし、何かあってもすぐに駆けつける」
「う、うん……よろしくお願いします」
「うむ、決まりだな。では、早速行くとしよう」
そして、三人が森の中に入っていく。
この方々に会えて良かったな。
ソラに関しては責任持っているが、俺に依存だけはしてはダメだし。
人は色々な人と関わって、成長していくと思うから。
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