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おっさん、異世界転移する

おっさん、話し合いをする

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 そしてあっという間に、四本あった魚が胃袋に消える。

 でも、まだまだ食えそうだ。

「どうだ? ソラは足りたか?」

「は、はいっ! お腹いっぱいです!」

「そうか、なら良かったよ。遠慮はいらないからな」

「た、食べ過ぎて苦しいくらいです」

「ははっ! それはいいことだ!」

「えへへ……はいっ」

 美味しい物を食べて、お腹いっぱいになるということは、とっても幸せなことだ。
 それだけで、生きる活力になったりする。

「さて……問題はここからだな」

「えっと……どうしよう?」

「とりあえず、お腹は膨れたみたいだし……まずは、わかることを教えてくれるか?」

「す、すみません。あの村から出たことなくて……ただ、商人って人は北から来たって言ってました。ドラゴンがいたのは村から南側で、ドラゴンはその先の山を越えて来たって」

「なるほど……少なくとも、北に行けば何かがあるってことか」

「そ、そうだと思います」

「じゃあ、とりあえず行くか。その村とやらにはいかない方が良さそうだし」

 この少女を見る限り、とてもじゃないが帰せない。
 俺が引き取るか、安全な場所まで連れて行かないとな。
 その覚悟がないなら、助けてはいけないと個人的には思うし。

「うん? ……何かくるな」

「えっ?……あっ……」

 向こうから、何かが来る音がする。
 これは……馬が駆けてくる音だ。
 そう理解した瞬間、馬が駆けてくる姿を確認する。

「いたぞ!」

「なんであの獣人は生きてるんだ!?」

 ……なるほど、あれが村の奴らか。

「あっ、あっ、ごめんなさい、ごめんなさい……」

「いいか、ここを動くなよ」

「ふえっ?」

 俺はソラを庇うように、二人の男の前に立つ。

「き、貴様はなんだ!?」

「人に聞くときは、自分から名乗るのが礼儀だと思うのですが?」

「な、なんだと!?」

「落ち着け……我々は村の者だ。 ドラゴンに生贄に捧げた娘の様子を確かめにきたら、ドラゴンも娘もいなかった。故に、探していたら……煙が上がっている場所を見つけた」

 怒鳴ってきた若い方は話が通じなそうだが、もう一人の方は話が通じそうだ。
 さて。どうするか……その時、俺の服の端をソラが掴む。
 ……ならば、俺のやることは決まってる。

「ドラゴンなら、俺が倒したから平気です」

「……なんだと?」

「う、嘘だ!」

「お前は黙ってろ……本当か?」

 その言葉に、若い男は黙り込む。

「ええ、本当です。どう倒したかはわからないが、倒したことは間違いないかと」

「なに? ……証拠はあるか?」

「あそこにいないことが証拠だと思いますが……あっ、これがありましたね」

ポケットの中から、先ほどの白銀色の宝石を取り出す。

「そ、それは、白銀の魔石……本当にドラゴンを倒したのか?」

「ええ、そう言っています。俺が倒したらドラゴンは消えて、その場にこれが残っていたということです」

「確かに見る影もなかったし、辺りも確認はしたが……つまり、村の恩人ということか……感謝する」

「いや、たまたまなので気にしないでください」

「何か、報酬を与えたいところだ。よければ、村に来てくれるか?」

 その言葉を聞いた時、ソラの握る力が強くなる。
 ……勝手に連れ出しても良いが、この子のために後顧の憂いは消しておいた方がいいか。
 あとで、文句を言われたり追ってこられても困るし。

「それはやめておきます。それより、報酬があるなら……この子を、俺が引き取る事を許可してほしい」

「ふぇ?」

「なに? ……そんなことで良いのか?」

「ええ、それで構わないです」

 すると、それまで冷静だった男の表情が強張る。
 どうやら、俺の発言に驚いているようだ。

「自分が何をしたかわかってるのか? ドラゴンを倒すのがどういうことなのか……」

「いえ、わかってはいません。しかし、貴方の反応から大体はわかります。その代わり、もう二度とこの子に関わらないでくれると助かります」

「……わかった、いいだろう。そんなので済むなら安いものだ」

「じゃあ、帰ってもらえますかね? この子が、ずっと怯えているので」

「ああ、そうしよう」

「い、良いんですか!?」

「いいんだよ。そもそも、人が減ってる。その上で足手まといなどいても仕方ない。何より、ドラゴンを倒した相手だぞ? 逆らう方がまずそうだ」

「あと、俺がドラゴンを倒したことは黙っていてくれると助かります。できれば、静かに過ごしたいので」

「わかった……では、帰るぞ」

「は、はい」

 そして、二人の男は去っていく。

「平気か?」

「ひゃ、ひゃい!」

「うん? どうした?」

「え、えっと……良かったんですか? その、わたしを引き取って……」

「ああ、もちろんだ。あそこに戻るよりは良いと思ったんだが……というか、お父さんだしな」

「い、いえ! あそこには戻りたくないです!」

「なら良かった。俺が責任を持って安心できる場所に連れて行く。さて、そろそろここを去るとしよう」

「……信じても良いの?」

「ん? 何か言ったか?」

「い、いいえ! あ、ありがとうございました!」

「気にしないで良い。それじゃ、行くとしよう」

 俺が手を差し出すと、ソラが恐る恐る手を握る。

 どうやら、あのやり取りで少しは信用されたらしい。

 うんうん、交渉した甲斐があったというものだ。

 ……ただ、こっからどうして良いのかはさっぱりだが。
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