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変化する義妹との関係

幸せとは

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 それからが、大変だった。

 夏休みが終わる前に、色々なことを済ませないといけなかったからだ。

 自分や兄貴達の引っ越しや、和也とお袋さんの引っ越し……。

 前もって用意していたとはいえ、目の回る忙しさだった。

 しかし、その甲斐もあって……。

 


「お、終わった……」

「お、お兄ちゃん……疲れたね」

 ひとまずダンボールだらけの部屋で、大の字になって寝転がる。

「ああ、引っ越しは疲れるな。今度戻る時は、家具や荷物は一新しよう」

「勿体無いくない?」

「いや、元々一人暮らし用の物ばかりだし。いずれ……その、あれだ、家族が増えれば買い換えるさ」

「か、家族……お、お兄ちゃん……じゃなくて、宗馬さん」

「ん?」

「ふ、不束者ですがよろしくお願いします!」

 俺は起き上がり、正座をして……。

「こちらこそ、よろしくお願いします。これから、夫婦として力を合わせていこう」

 無事に入籍も済ませたので……完全なる新婚さん状態である。

「う、うん! えへへ……夢みたい」

 自分の保険証を見て、ニヤニヤしている。

「わたし、もう芹沢なんだね……」

「その……よかったのか? 俺は、卒業まで待っても良かったんだが……」

 苗字が変わると、色々説明も面倒だし……。
 高校生妻とか、苛められたりしないか?

「ううん、わたしが早くしたかったもん。それに、十年以上前から願ってたことだから……」

「春香……」

 愛おしくなり、そのままキスをする。

「んっ……」

「おじたん~! おねえたん~!」

 ドタドタと部屋に入ってくる音が聞こえる!

「「っ——!?」」

 二人で同時に離れ、何でもない素振りを見せる。

「あれ!? どうしたの!?」

「な、何がだ?」

「おねえたん、顔真っ赤!」

「はぅ!?」

「おいおい、耳まで真っ赤じゃねえか」

「うぅー……宗馬さんのせいだもん!」

「あらあら~邪魔しちゃったかしら」

「……嬉しいやら、悲しいやら複雑だな」

「兄貴に桜さんまで……どうしたんだ?」

 二人と詩織は、すでに引っ越しを済ませている。
 俺達は、その隣の部屋を借りて暮らすことになった。
 これなら、詩織も寂しくならないだろうと。

「腹減ったろ? 引っ越し祝いしよう」

「お蕎麦に天ぷらもあるわよ」

「昼時か……じゃあ、有り難く頂戴します」

「おねえたん! 早く早く!」

「はいはい、わかってるから」

 詩織は一生懸命に、春香を引っ張っている。
 ……良かった、本当に。
 俺の選択は間違ってなかった……少し大変だけど。

「桜、二人を連れて先に部屋に行ってくれ」

「ええ、わかったわ」

 扉が閉じ、二人きりになる。

「兄貴?」

「すぐに終わる……ありがとな、宗馬。俺達と詩織のために。正直言って。嬉しい反面……寂しい気持ちもあった。まだ高校生の娘と離れるのはな。だが、お前が汲み取ってくれた……その行為より、その気持ちが嬉しい」

「いや、俺のためでもあるから。十八歳で家を出て、もう十年……もっと、兄貴や桜さんと過ごせば良かったと後悔していたし」

「そうか……ああ、これからでも間に合うさ」

「あと……ストッパーになるかなぁなんて」

「うん?」

「いや、親である兄貴に言うのもアレなんだが……春香が可愛くてな……つい、手を出しそうになる」

「……確かにアレだな」

「あぁー……一応、高校卒業までは手を出すつもりはないから。流石に、高校生を妊娠させるのはな。何せ、あの時代の時間は貴重だから」

「まあ、親としても安心だ。なるほど、隣にいるからストッパーか」

「そういうこと。まあ……出来なかったらすまん」

「ハハッ! その時はその時だ。じゃあ、飯を食うか。詩織が待ちくたびれてるだろうし」

「だな、腹減ったし」





 その後、五人で食卓を囲む。

「おじたん! オトメがね! 部屋んぽしたお!」

 うさぎであるオトメは、兄貴のうちで飼うことになった。
 なので、先に引越しをしている。

「ほうほう、慣れてきたか。一人でお世話できるか? これから、俺やお姉ちゃんはいないぞ?」

「できるお!」

「ふふ、私も見るから平気よ。いつのまにか、新しい家族が増えてるなんて嬉しいわ」

「しかも、しっかり世話もできてるし……着替えも出来るようになってるとは。パパは感激だっ!」

「お父さんとお母さんを驚かせるんだって言ってたもんね?」

「あいっ!」

 ……俺の心に、暖かい何かが染み渡る。

「おじたん? 泣いてるの? どっか痛い……?」

「いや……嬉しいんだよ。詩織、ありがとな」

「お兄ちゃん……」

「春香もありがとう。二人のおかげで、俺は前を向くことが出来たよ」

 そうだ……この二人が、俺をもう一度家族にしてくれた。

 ずっと、一人だと思っていた。

 そして、一人でも平気だと思い込んでいた。

 でも、そうじゃなかった……みんなが気づかせてくれた。

 きっと、従業員のみんなを雇ったのも、寂しさや孤独を分け合いたかったのかも。

 そして、それをみんなにも気づかれていたに違いない。

 俺が、心の奥底で何を求めているのか……。

 俺は……この幸せが欲しかったんだ。

 家族という……もう二度と失いたくないものを。

「お兄ちゃん?」

「春香……俺、幸せだ」

「えへへ……わたしも」

 そんな春香の笑顔を見て……。

 両親が死んで以来、止まっていた時間が動き出した気がした。

 父さん、母さん、俺……幸せになるから。
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