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変化する義妹との関係

温もりを感じる

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 そこからは、トントン拍子に話が進んでいき……。

 和也とお袋さんが、俺のところに住むことになり……。

 兄貴達が住むところと、俺たちが住むところも決まって……。





 それぞれドタバタと準備をしてるうちに、夏も終わりに近づき……。

 いよいよ、兄貴が帰ってくる日を迎えた。

 俺の住処の最寄駅で待っていると……。

「パパ!」

「お父さん!」

「おおっ! 可愛い娘達よ! お父さんは帰ってきたぞー!」

「あらあら、テンション上がっちゃって」

「まあ、仕方ないですよ」

 片腕に詩織を抱きかかえて、兄貴が俺に近づいてくる。

「宗馬、世話をかけたな」

「いや——家族だし」

「そうか……そう言ってくれるのか」

「お、おい、泣かないでくれよ」

「これが泣かずにいられるか! 今日は飲むぞ!」

「はいはい、良いワインがあるから安心してくれ」

 店に移動して、貸し切り状態で、お祝いをする。

 もちろん、従業員のみんなも一緒だ。

 あるところでは……。

「パパ! ママ! この人がおじいたん!」

「詩織がお世話になったみたいで……」

「ありがとうございます」

「いえいえ、私など大したことはしておりませんよ。むしろ、こちらがお世話になりましたし、楽しませてもらいましたよ。生きる活力になって、これからも頑張れます」

「もしよろしければ、これからも遊んでやってもらえますか?」

「私からもお願いします。この子が、こんなに懐くなんて」

「し、しかし、実の親子さんがいるのに……」

「聞けば、弟まで世話になったとか……ならば、他人とは思えません」

「私たちには、祖父母がいませんので……詩織にとって、そうなってくれたら嬉しいです」

「おじいたんは詩織のおじいたん!」

「おお……す、すみません」

「どおして泣いてるお? どっか痛いお?」

「い、いえ……嬉しいんですよ。では、たまに遊ばせて頂きますね」

 ……不思議な光景だな。
 しかし、とても良い光景だ。
 もう一方では……。

「で、どうなの? 大将は優しく触ってくれる?」

「宗馬君くらいの年齢が一番脂が乗ってるわよね~。色々と凄そうだわ」

「ふえっ!? ま、まだ、そういうのは早いって……」

「あらあら~大事にされてて良いわね~」

「えー? そうですかね? ただヘタレたんじゃないですか?」

「わ、わたしは、その……あぅぅ……」

「あははーごめんごめん!」

「あらまあ~可愛いわね」

 ……見なかったことにしよう。
 別にヘタレたわけじゃないが……一度手を出したら歯止めがきかなくなるからな。

「兄貴、なんか良いっすね」

「宗馬さん、嬉しそうですね?」

「健二君、和也……そうだな、嬉しくなる」

 自分の大事な人たちが、仲良くしている姿は……。

 美味い食事に、美味い酒、親しい者達との会話……。

 きっと、これ以上の幸せはない。
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