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変化する義妹との関係

一緒に寝る

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 その後、二人が帰ってきたので……。

 何事もなかったかのように振る舞う。

 そして、楽しい夕飯の時間となる。

「詩織~、美味しい?」

「うんっ!」

「お、お姉ちゃんだって美味しかったよね?」

「あいっ!」

「おいおい、俺のご飯のが美味しいだろ?」

「えっ……うぅー……」

「ふふ、困っちゃうわよね?」

「ご、ごめんね!」

「わ、悪い!」

 ……なんか、いいな。
 結局、俺は詩織が生まれてからは、遊びに入っても……。
 夕飯を共にすることはなかった。
 ここに兄貴もいれば、もっと楽しくなったろうに……。
 俺は、なんて無駄な時間を……もっと早くに気づいていたら。




 詩織のお風呂の世話を桜さんがしていると……。

 ソファーで書類を作成している俺に、春香が近づいてくる。

「お兄ちゃん……まだ、お兄ちゃんでいい?」

「ああ、好きに呼ぶといい。いきなり、生まれてからの呼び名を変えるのは違和感あるだろう……お互いに」

「う、うん……あと、詩織やお母さんもいるし……」

「詩織かぁ……どうするかね」

「えっ? 詩織がどうかしたの?」

「いや……結婚したらどうするんだろうな?」

「えっと……?」

「俺と春香は、ここで住むのかとか……」

「ど、同棲……?」

「いや、それは兄貴とも相談しないと……いや、俺と春香の関係を説明が出来んなと思って」

「説明……あっ——理解できないよね」

「ああ、まだ五歳だし。あと二、三年すれば、少しは理解できると思うが」

「うん、そうかも」

「とりあえず、まあ、あれだ……俺たちは普通にしておこう。恋人っぽいことはしない方向で。何より、桜さんいるし」

 母親がいる前で娘といちゃつくとか……どんな精神力の持ち主だって話だ。

「うん、その方が良いね。詩織が戸惑っちゃうもん」

「クク……俺はきっと、お前のそういうところが好きなんだろうな」

「へっ!? ど、どういうところ!?」

「妹想いというか……自分の気持ちよりも、人の気持ちを考えられるところだな」

「お兄ちゃん……」

「多分、俺は……それに救われたんだと思う」

「でも……お兄ちゃんだってそうだよ? 小さい頃、いつだってわたしを優先してくれた」

「俺は……そんなに出来た人間じゃない。今思えば……春香の面倒を見ることで、自分の存在理由を確認していたんだ。俺は、ここにいて良いんだって。この家族の中にいても良いんだって」

「それでも良いもん……わたしが嬉しかったっていう気持ちには変わりないから」

「春香……」

「コホン! 良いところ悪いわね」

「さ、桜さん!?」

「お、お母さん!?」

「いや、もう少し待とうかと思ったんだけどね……これだし」

「スヤ……ムニャ……」

 その腕には眠った詩織が抱かれている。

「髪を乾かしたら寝ちゃって……春香、寝かせておいてくれる?」

「えっ? い、良いけど……」

「宗馬君とお話があるから」

「う、うん」

「平気よ、とったりしないから」

「そ、そんな心配してないもん!」

「おい、起きちまうぞ? というか、そんなことになるわけがないだろうが」

「へぇ? こんなおばさんは眼中にないってことかしら?」

 こわっ!? ……そういや、俺はこの人に頭が上がらないんだった。

「い、いえ! 兄貴一筋の桜さんですから」

「まあ、いいでしょう。ほら、お願いね」

「う、うん」

 春香は詩織を抱えて、部屋へと入っていく。

「さて……少し、出ましょう」

「では、ベランダにしますか」

 二人でベランダに出て、並んで夜空を見上げる。

「あの……そういうことになりまして」

「ええ。宗馬君、ありがとう。あの子の気持ちに応えてくれて。それに、詩織の面倒も見てくれて。あの子ったら、すっかり懐いちゃって」

「いえ……きっと、救われたのは俺です。色々と気づかれました、二人に」

「ふふ……ずっと、私のことを気にしてたものね?」

「いや……うん、そうですかね。兄貴はともかく、桜さんにとって……俺は邪魔以外の何者でもないと思っていました」

「きっとあの頃に、そんなことないよって言っても……宗馬君は信じなかったわね」

「ええ、そうかもしれません。俺は兄貴に感謝してますけど……実は負い目があんまりなくて……兄貴は血が繋がってるし、何かあれば面倒を見るように両方の両親に言われてましたから。でも、貴女は違う。結婚を決めた後に、俺という存在が現れた」

「そうね……正直言って、どうしよう?って思ったわ」

 ……初めて言われたけど、少しきついなぁ。
 いや、もちろん当たり前の話だ。

「ええ、そうでしょうね」

「あっ——勘違いしないでね? 一緒に育てることには問題なかったのよ? わたし、孤児院出身だし」

「えっ? 」

「 男の子だし、色々とどうして良いかわからないじゃない?  あと、生まれてくる子供とも仲良くしてくれるかな?とか。わたし、襲われない?とか」

「お、襲いませんよ!」

「ふふ、冗談よ。でも、すぐに優しい子だってわかったから。ずっと、私たちに気を遣って……宗馬君——あの頃から、貴方は私の家族で、息子です」

「あ、あれ……?」

 いい歳した大人だってのに……涙が。

「ありがとう、宗馬君。私達の家族になってくれて。これからもよろしくね」

「は、はい……」

「じゃあ、私達も寝ましょうか」

「ええ、戻りましょう」





 部屋に戻り、寝る準備を済ませ、布団に入ると……。

「お、お兄ちゃん」

「あん?」

 部屋に春香が入ってくる。

「い、一緒に寝ても良い……?」

「へっ? ……桜さんは?」

 確か、詩織と春香が一緒に寝て、桜さんは春香の布団で寝るって。

「やっぱり狭いからって……お兄ちゃんの隣で寝かせてもらえって……」

 ……なんつーことをしてくれる!?
 バカなの!? さっきのいい話は!?
 ……でも、そういう人だったなぁ。

「だ、だめ……?」

「はぁ……ほら、さっさと入れ」

「お、お邪魔します……」

 布団に入ってくると、甘い香りが鼻腔をくすぐる。
 た、耐えてくれ……! 最近稼働してないのはわかってるから!

「えへへ、お兄ちゃんだ」

「ぐはっ……」

 ゴリゴリ削れていく……。

「う、腕枕してくれる……?」

「お、おう」

 俺に抱きつく形で、腕枕の姿勢になる。

「懐かしいね……よく、こうしてもらった」

「……そういやそうだったな」

 大分、色々と違うけど。
 柔らかなモノが当たってるし。
 なんか、めちゃくちゃ良い香りするし。

「ずっと……また、こうしたいって思ってたんだよ……」

「春香?」

「すぅ……」

「寝つき早……」

 この日、俺があまり寝れなかったのは……いうまでもない。
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