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変化する義妹との関係

告白

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 八月の十日……この日は丁度定休日だ。

 俺は顔を洗って気合いを入れて、リビングに入る。

「お兄ちゃん、もうお昼ご飯だよ」

「おじたん! おはよ!」

「ああ、おはよう。すまんな、昨日は寝つきが悪くてな」

 まずは話をする前に用意してくれていた朝ご飯を食べる。
 ちなみに、二人はパスタを食べるようだ。

「うん、もう言うことはないな」

 卵の焼き方、味噌汁の味……十分及第点だ。
 これなら、どんどん上手になって行くだろう。

「わぁ……えへへ、ありがとぅ」

「おねえたん! おいちい!」

「ふふ、ありがとね」

 ……この感じも、後少しか。
 四ヶ月半か……寂しいものだな。
 あの後兄貴から連絡があった……正式に帰れることになったと。
 九月までには帰れるので、二人に知らせて欲しいと。

「お兄ちゃん? ……どうしたの?」

「いや、何でもない。ほら、食べちまうぜ」

「う、うん……」



 食べ終わったら、そのまま話を切り出す。

「二人とも、大事な話がある」
 
「は、はい」

 「なぁに?」

「兄貴達……お前達のお父さんとお母さんが帰ってくるそうだ」

「えっ? ……そっか……うん、嬉しい」

「ふえっ? ……ほんと!?」

 春香は複雑そうな表情、詩織は笑顔……対照的だな。
 まあ、俺自身も色々複雑ではある。

「ああ、ほんとだ。今月末には帰ってくるそうだ。というわけで……お前たち二人はお引越しだな」

「おじたんは!?」

「おじたんは、一緒には行けないんだよ」

「どして!?」

「どうしてと言われても……」

「おじたんも一緒!」

 そう言って、俺に抱きついてくる。
 やれやれ、随分と懐かれてしまった……嬉しいけど、複雑だ。

「詩織、わがまま言わないの」

「うぅー……なんでぇぇ」

「泣くなよ、詩織。別に今生の別れじゃないんだ。いつでも会えるさ」

「グスッ……ほんと?」

「ああ、本当だ」

 こりゃ、こまめに顔を出す必要があるか……。
 幸い、兄貴達もこの近辺で部屋を借りるっていうし……。

「あいっ……我慢するの」

「良い子だ。そんな良い子にはプレゼントがある」

「ふえっ?」

 多分……そろそろ……来たか。
 カンカンと、誰かが階段を上ってくる音が聞こえる。

「お兄ちゃん、誰か来たよ?」

「ああ……鍵はあいてるので入って良いですよ!」

「な、何だろ?」

「どしたのー?」

 ガチャガチャと音がして……誰かがリビングに入ってくる。

「ママ!」

「お、お母さん!?」

「あらあら、大きくなって……ふふ、久しぶりね」

「どして!?」

「お、お兄ちゃん!?」

「まあ、落ち着け。桜さん、お久しぶりです」

「ええ、お久しぶりね。宗馬君、二人をどうもありがとう」

「いえ、大したことはしてませんよ。まあ、とりあえず座ってください」



 飛び跳ねる詩織と、呆然としている春香を落ち着かせ……四人でテーブルにつく。

「ママだ!」

「はいはい、ママですよ」

 いや、一人は膝の上にいる。

「そ、それで、お母さんがどうして?」

「実は、四日前には帰ってきてたのよ」

「まあ、お前達に難しい話はわからないだろうから簡単にいうが……帰国する際には、色々と手続きがあるんだよ。住民票とか役所に行って色々しないといけない。帰ってきて住むところも用意しないとだしな」

「あっ、そうだよね。新しいおうちに引越すんだよね」

「ママ! パパは!?」

 うん、全く話を聞いてないね。
 まあ、聞いてもわかんないし……良いか。

「パパはまだ帰ってないわよ。色々とお仕事が残ってるからね。でも、もうすぐに帰ってくるわ」

「じゃあ、またみんなで暮らせるの!?」

「ええ、そう……いや、うん、どうかしら?」

「ママ……?」

 桜さんの視線が俺に向く……しまった。
 そうか……場合によっては、詩織から春香を奪ってしまうことになるのか。
 ……さて、どうしたものかね。





 ひとまず落ち着いてきたところで……。

「詩織、ママと買い物行こうか?」

「あいっ!」

「じゃあ、夕飯の材料も買って来ちゃおうかしら。適当でいい?」

「え、ええ、お願いします」

「私達は行かなくていいの? お母さん、疲れてるのに……」

「いいのよ、久々だもの。二人にご飯を作りたいわ。それに、宗馬君からお話があるって」

「ふえっ? ……お、お兄ちゃん?」

「まあ……そういうわけだ。じゃあ、お願いします」

「ええ、こちらこそ。詩織、行くわよ」

「うんっ!」



 二人が出て行ったあと……。

「「………」」

 さて、どうしたものか……いや、ひとまず予定通りに行くとしよう。
 今更言い訳するのも男らしくない。

「春香」

「ひゃい!?」

「……ハハッ!」

「あぅぅ……笑われたよぉ」

「すまんすまん……まずは、お誕生日おめでとう」

 俺は用意していたネックレスを渡す。
 高くもなく、安くもないといったところか。

「わぁ……嬉しい」

 それを宝物のように抱きしめている。

「おいおい、そんなに上等なものじゃないからな?」

「ううん! 一生大事にする!」

「いや、それは……まあいいか」

「そっかぁ、だから詩織達を出掛けさせたんだ」

「あん?」

「えっ? 詩織が、お姉ちゃんはずるいって言うからじゃないの?」

「あぁー……いや、違うんだよ。本題は、別にある」

「な、何だろ……」

 落ち着け……噛むなよ……よし。

「春香——俺と結婚してくれ」

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