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変化する義妹との関係

定番?

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 ……何故、こうなった?

 落ち着け、俺……こういう時は素数を数えるんだ。

「お、お兄ちゃん……? 目をつぶってたら危ないよ?」

「お、おう」

 目を開けて、まじまじとその姿を見る。

 10代特有の張りのある白い肌、程よく肉のついたついた太もも……。

 健康的な二の腕のラインから……綺麗なデコルテ、そして……見事な双丘。

 フリフリタイプの青い水着に包まれた姿は、清楚だが色香も漂うようだ。

「はぅ……」

「す、すまん! お、泳ぐとするか!」

「う、うん!」

 手を引いて、プールの中へと入っていく。

 ……はて? 一体全体何がどうなって、このような状況になったのだろう……?









 あれは、この間の定休日の日だった。

 詩織のお昼寝中だったっけ……。

「お、お兄ちゃん!」

「うん?」

 ソファーでくつろいでいた俺に、春香が話し掛けてくる。

「あ、あの……」

「どうした? テストの結果が悪かったのか?」

 確か、この間期末試験の結果が出たとか言ってたな。

「う、うん! それは問題なくて……」

「じゃあ、なんだ? もうすぐ夏休みだからバイト休みたいか?」

 高校生にとって、夏休みは重要だ。
 中学生と違って遠出もできるし、やれることも増える。

「バ、バイトは続けるよ……プ、プールに行きたいです……」

 春香は、モジモジしながらそう言った。
 ……プール……なんと、懐かしい響きだ。

「うん? ……連れて行けってことか?」

「う、うん……ダメ……?」

 不安そうな表情で、上目遣いをしてくる。
 ……こんなのが、プールにいたら狼の群れに羊を放り込むようなものだな。

「いや、良いさ。じゃあ、計画を立てるとしよう」

「わぁ……! ありがとう!」

 そして、詩織も行きたいということで……。

 一人では目が届かないこともあるので、亮司さんに頼んだら快く引き受けてくれて……。

 土曜日の定休日に行くことを決めて……。

 いざ、到着したら……詩織がはしゃいでて……。

 亮司さんが、子供用に連れて行くから、春香ちゃんを待ってると良いですよって……。







 ……そうだ、そういう流れだった。

「お、お兄ちゃん!?」

「平気だよ、ほら、バタバタさせてみなさい」

「は、離さないでね!?」

「へいへい。それにしても、未だに泳げないとは……」

 春香の手を引きつつ、俺は口に出してしまう。
 なるほど、この姿を詩織に見られたくなかったのか。
 だから、出てくるのを遅らせたのか。

「うぅ……だってぇぇ……中学からプールなんて授業ないもん」

「えっ?」

「えっ?」

「な、ないのか?」

「な、ないよ?」

 ……そういや、そんなニュースを見たことがある。
 少し前から、プールの授業がなくなった所が増えたとか。
 設備の問題や、嫌がる生徒が多かったり、怪我や事故などが一因らしい。

「そっか……まあ、仕方ないのか」

 運動会とかも危険な種目がないし、色々と過保護すぎるよなぁ。
 海難事故とかで溺れたらどうするんだろう?
 何でもかんでも守ってしまったら、いざという時どうするんかね?

「お、お兄ちゃん! ちゃんと見てて!」

「いや、それは……」

 どうやら、俺がずっと顔を背けているのがお気に召さないらしい。
 しかし……正面を向くわけにはいかない。
 どうしても、胸元に目がいってしまうからだ……情けないことに。

「は、早く覚えないと……!」

 まあ、姉としての沽券に関わるよなぁ。
 仕方ない……息子よ、反応しないでくれよ?

「へいへい、わかったよ……ぐぉぉ……!」

「ふえっ?」

「な、なんでもない……!」

 子供だと思ってたのに、もう子供とは思えん。
 いや、胸の谷間に吸い寄せられるのは男の性だから仕方ない。
 そう、これは、あれで、それで、あれじゃないはず。
 ……何言ってんだ、俺は。

「せ、成功なのかな……?」

「あん?」

「う、ううん!」




 その後休憩を取り、子供用プールに移動する。

 そこでは、詩織が気持ちよさそうに泳いでいる。

 もちろん浮き輪付きだが、きっちりと泳いでいるように見える。

「おじたん! おねえたん! みて!」

「おぉー、上手だな!」

「えへへ! おじいたんが教えてくれたお!」

「いえいえ、私など大したことはしてませんよ」

「うぅー……どうして、姉妹なのに違うのかなぁ。あの子、運動神経もいいし」

 プールの傍に座り込んで、春香が落ち込んでいる。

「なに、気にすることはない。姉妹だろうが、別の人間だ。それぞれに良さがあるだろう」

「わ、わたしの良いところってなにかな……?」

「うーん……面倒見が良いし、何事にも一生懸命だし、苦手でも頑張ろうとするし……」

「えへへ……嬉しい」

「お、おう……そういや、髪伸びてきたな?」

 隣で微笑む顔を見るのが照れ臭いので、話題を変える。

「ど、どうかな? もう、ポニーテールもできるんだよ?」

 そういって、両手で縛る素振りを見せてくるが……。
 そうなると、綺麗なうなじや、胸元が強調される。
 その姿は、まるで雑誌に出てくるグラビアのポーズだった。

「し、しくった……!」

 自ら死地に飛び込んでしまった……!

「ふえっ?」

「い、いや……似合ってるよ」

「う、うん……ありがとぅ」

 ……はぁ。

 どうやら、俺の方が……色々まいってしまったなぁ。



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