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義妹との生活

義妹と義兄の変わりゆく関係?

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ディナータイムを終えて、家に帰ると……。

「お兄ちゃん、お帰りなさい」

「おう、ただいま」

「お腹空いてるよね?」

「ああ、そうだな」

「すぐに食べる? それともお風呂にする? ……あぅぅ……」

「あん?」

なんだか、いつもと様子が違う。
モジモジしてるし、心なしか顔が赤い気がする。

「わ、わ、わた……舞衣ちゃん、言えないよぉ~!」

そう言うと、リビングへ引き返していった。

……一体、なんだったんだ?

……まさか、新婚夫婦ごっこか?




ひとまず、ご飯を食べながら話を聞く

「へぇ、良かったな」

「うん!」

どうやら、舞衣って子とライン交換をしたらしい。
クラスのグループラインには入らなかったが、特に何も言われなかったみたいだし。

「お昼ご飯とか一緒に食べるのか?」

「うん、良かったよー。一人で食べるの辛いもん。ただね、舞衣ちゃん美人さんでしょ?」

「うん? まあ、美人かもな」

ロングの黒髪に、均整のとれたスタイルをしてた気がする。
顔も可愛いというよりは、キレイ系だったかもな。

「むぅ……お兄ちゃんは、舞衣ちゃんみたいのがタイプなの?」

「あん? 何故そうなる? 今のは一般論だ」

「そ、そうなんだ……」

「で、それがどうかしたのか?」

「う、うん……だから、男の子たちがいっぱい集まって来ちゃって……でも、すごいんだよ? 舞衣ちゃんがひと睨みしたら、みんなどっかに行っちゃった」

「へぇ、まあガキンチョには怖いかもな。大人っぽい女の子は、あの年頃には難しいよな」

「カッコいいよね……わたしも、あんな風になれるかな? 早く、大人になりたい」

「クク……」

「ふえっ? ど、どうして笑うの?」

「すまんすまん……俺も似たようなことを思ってたよ。早く大人になって、兄貴たちを安心させてあげたいってな」

「お兄ちゃん……」

「春香、そんなに急がなくて良い。お前は自分のペースで行けばいい。兄貴たちも、そう願っているはずだ」

今なら、兄貴たちの気持ちがわかる。
俺も、散々に言われてきたから。

「で、でも……それじゃ間に合わないよ……」

「うん? 何にだ?」

「う、ううん! よーし! 頑張らなきゃ!」

「あん?」

「お、おやすみ!」

「お、おう」

そう言い、自分の部屋へと入った。

うーむ……やはり、そういうことなのか……。

しかし、そうだった場合……俺は、どうすれば良い?

 




◇◇◇◇◇


うぅー……上手く出来なかったよぉ~。

布団に入って、今日の出来事を思い出します……。

あれは、お昼休みの時間でした……。

教室だと目立つからって、校庭内のベンチで食べてたんだよね。


「ねえ、お兄さんのこと好きなの?」

「ふえっ!?」

な、なんでわかるの!?
まだ、一回しか見てないのに!

「なるほど……禁断の恋ってやつね」

「あっ——ち、違くて!」

そっか、知らない人から見たらそうなっちゃうんだ……。

「何かありそうね? 私でよければ話を聞くわよ? ……面白そうだし」

「舞衣ちゃん?」

「コホン……さあ、どうぞ」

……ど、どうしよう?
でも、このままじゃ変に思われちゃうし……。
舞衣ちゃんは、大人っぽいから色々教えてくれそうだし……。
頼ってみようかな? ……誰かに聞いて欲しかったし。

「あ、あのね……」

実の兄弟じゃないこと、お父さんの従兄弟だと伝える。
あとは飲食店を経営してることと、その二階で妹と一緒に暮らしていること。
お兄ちゃんの、不幸な事故のことは話さないように。

「なるほど、だからお兄ちゃんってことね。確かに、おじさんには見えないものね。いくつなの?」

「えっと、二十六歳だったかな」

「約十歳差ね……彼女はいるの?」

「た、多分、いないよ。仕事してるし、休みの日もわたしたちの相手をしてくれてるし」

「へぇ、モテそうなのにね。まあ、あまり興味がないタイプなのかも」

「そ、そうなの?」

「ええ、何となくわかるわ。自分で言うのも何だけど、私はモテるから」

舞衣ちゃんが言うと嫌味に聞こえない。
だって、スタイルも良いし綺麗だもん。

「すごいなぁ……」

「いや、貴女も負けてないわよ? 教室でも、男子たちから見られてるじゃない」

「ふえっ!? そ、そんなことないよ! あれは、舞衣ちゃんが綺麗だから……」

「たまにいるのよね、こういう子が。天然モノね……ふふ、面白いわ」

「え、えっと……」

何が面白いんだろ?
舞衣ちゃんの方が面白いと思うけど……。

「話がずれたわね。私は年上の人にもナンパされたりするからわかるんだけど……そういう視線を感じなかったから。もちろん、お兄さんが分別のある大人って意味でもあると思う」

「う、うん。確かに一緒に働いてる人も言ってたよ。大学生の人と、色気たっぷりのお姉さんがいるんだけど……そういう視線を向けないって。そ、その……無意識的なものはあるらしいけど」

「それは仕方ないわよ、お兄さんだって男の人だもの。なるほど……そうなるとガードも固そうね。どんどん攻めていかないと気付いてもらえないわね。もしくは、気付いても尻込みされるわ」

「ど、どうすればいいかな?」

「お色気系は……やめた方が良さそうね。貴女には向いてないし、お兄さんも戸惑うでしょうし」

「あぅぅ……やっぱり、色気ないかなぁ」

「いや、そんなことないわよ。えいっ!」

「ひゃっ!?」

「ふむ、マシュマロタイプのお胸でCはあるわね。はっきりいって、同年代の男子からしたら凶器よ」

「うぅー……」

「わ、悪かったわ……これはこれでアリね」

「もう!」

舞衣ちゃんは少し変わった子みたい。

「何というか、段階を踏んだ方が良さそうね。少しずつ、意識させる方向かしら? あと、その年頃の男の人なら、お色気よりも家庭的な面を見せてあげた方がいいかも」

「家庭的……ご飯は作ってるんだけど……」

「ただいまの時に、お疲れ様とか、ご飯は?とか、お風呂は?とか、今日は何があったの?とか聞くといいかも」

「お疲れ様とかは言ってるけど……」

「つまり、お嫁さんにしたら良いなと思わせれば良いのよ」

「な、なるほど……どうして、そんなにわかるの?」

「大したことじゃないわよ。年上の彼氏がいることと、私にも兄さんがいるから」

「……大人だぁ」

「ふふ、頼ってくれて良いわよ?」

「う、うん!」

「定番だけど、ご飯? お風呂? わたしにする?とか言ってみたら?」

「が、頑張ります……!」





……結局、言えなかったけどね。

でもでも、こういうのを積み重ねていったら良いのかな?

そしたら、お兄ちゃん気付いてくれるかな?

……気付いても、無視されたら……ダメダメ! 

もやもやしたまま、わたしは眠りにつくのでした……。
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